部屋を優しく照らし出す柔らかい照明。
清掃の行き届いた部屋には埃一つ無く、清潔の二文字をそのまま体現したような一室。
温かみのある暖色系のレイアウトに彩られた部屋の窓際に据えられた、染み一つなくパリッとノリの効いたシーツの上で目を覚ましてぽつりと呟く。
「知らない天井だ……」
「寝起きでボケる余裕があるならもう大丈夫だネ」
おはようございます、命子さんです。
あと知らない天井というのは嘘です、バリバリ見覚えあります。
フェイスレスニキがいるということは、ここは本社医療棟の病室だろう。
あたしの記憶では最後の力で道南支部に跳んだところで終わってるけど……ここにいるということは誰かが運んでくれたのだろうか?
「カズフサニキ達に感謝しなよ~、MAG切れで昏倒したキミ達を連れてきてくれたのは彼らだからサ。支部の施設じゃ回復が遅いからってわざわざ本社までね」
「何から何までお世話になってるじゃん。カズフサニキ達はいないの?」
「彼らも彼らで忙しいみたいだからね、届けてすぐ出ていったよ」
「そっかー、ならまたあとでお礼言っとかなきゃやね」
今回の戦いを完全勝利まで導けたのは彼らのおかげだからね。
因果断ちの松明とかいうチートアイテムがなけりゃ片手落ちに終わってたところだからこの借りはでかい。
あとで悪縁断ちのためにもまたお世話になることを考えると、しばらくはニキ達に頭が上がらんわね。
「んで他の二人はどしたん?」
「彼女達なら先に目覚めて検査を受けてるよ。といっても特に問題は無かったケド。キミが一番消耗してたからねぇ」
「まー我ながら無茶はしたと思うよ、高レベル悪魔を一度に十二体も情報改竄とか脳味噌焼けるかと思ったもん」
「ちなみに真っ先に目覚めたのが魔人ネキだね。ショタオジの調整も受けたおかげでもうピンピンしてるよ」
マジかカレンちんパネェ。さすがフィジカルゴリラ。
「もちろん邪視ネキの方も無事さ。さ、カス子ネキもちゃちゃっと検診しちゃおうか。見た感じ大丈夫そうだけど一応ネ」
「うーい、よろしゃーす」
◇
というわけでサラッと検診を受けて問題なしとの太鼓判を貰ったあと。
ショタオジの使いから呼び出しを受けて応接間へ向かうと、ショタオジに加え霊視ニキと、先に着席していた二人の姿があった。
あたしが席に着いたのを確認すると、ショタオジが軽い調子で口を開く。
「まずはお疲れ様。無事因縁を果たしたようで何より! キミ達に結ばれていた因果は……まぁ残り香程度にはあるけど、ただちに影響は無いから安心していいよ」
「ありがとうございます。これも偏に神主とくそみそニキのお力添えあってのことです。改めて感謝申し上げます」
カレンちんが丁寧に頭を下げたのに満足そうに頷くショタオジ。
日頃遠慮というものを知らない問題児に囲まれている彼からすればさもあらん。
ちなみにあたしが素直にお礼を言うと裏に何かあるんじゃないかと訝しまれるんだぜ。おふぁっく!
「襲撃そのものは無事解決したし特に言うことはないかな。地上の割に随分な高レベルがでてきたものだけど、キミ達と結ばれた因果ならこんなもんだと思うし」
「まぁ難易度そのものは深層のほうがずっと高いしね。精々パーフェクトゲームの条件がややムズいくらいだったし」
「だからって高レベル悪魔をその場で変質させるのは無茶だけどね……完全に霊質の相性頼りの力業だし。COMPや封魔管も使わず十二体も直接契約するとか、彼女でなきゃ容量が足りなくて破裂してたとこだよ」
「まぁせやろなとは思ってた。ショタオジから見てもあの子らは大丈夫そう?」
「形は違うけど電子異界の子達*1と同類だし、ちゃんと躾けてやれるなら大丈夫。そこはキミ達の今後の課題ということで。ああ、魔人ネキの身体は彼らに合わせて最適化しておいたから維持については問題ないよ」
それはよかった。あの場ではそうするしかなかったとはいえデカいリスクだったからね。
あとから調整可能なのは式神ボディの利点やね。といっても視たところティターンとの契約を安定化させるのに
とはいえそこは急ぐ必要もなくなったし、また折見てやっていくってことでいいでしょ。
「ともあれこれで事件は円満解決! 三人とも体調に問題もないし、あとは向こうで事後処理を終えれば大丈夫!」
「やったぜ! ワイらの勝利や!!」
「――とはいかないんだなぁ、これが」
笑顔のままショタオジのトーンが一段落ち、横で霊視ニキが溜息を吐いた。
ナンデ? あたしら完全無欠に勝利したが? おいおいおいせっかくの勝利に水を差すような真似は、いくらショタオジとはいえ看過できねぇぞ?
おう物言いがあるなら言ってみろや!!
「まずカス子ネキ、あなたは勝つために何をしましたか?」
「なにって……ネフィリムを情報改竄したけど?」
「そうだね。まぁこれに関しては問題ないね。無茶したとは思うけどカス子ネキなら全然許容範囲だし」
どうやらあたしではないらしい。ほっと一息ついている間に、次はカレンちんが名指しされる。
「それじゃあ魔人ネキ、あなたは勝つために何をしましたか?」
「……ネフィリム達をティターンとして産み直して、ウリエルを地獄へ叩き落としました」
「そうだね。これもやっぱり無茶したとは思うけどまぁいいや。ウリエルを地獄に叩き落としたのも……これ自体はそこまで問題じゃない」
どうやらカレンちんでもないらしい。となると残るはシオリっちか……?
自分で言うのもなんだが、あたしが何かやらかしてお小言を食らうならともかく、優等生のシオリっちがそんなやらかすとは思えないんだけど……。
流れ的に自分が問題らしいことを悟って焦りに視線を泳がせるシオリっちへ、笑顔のままのショタオジが指差して。
「最後に邪視ネキ。あなたは勝つために何をしましたか?」
「えっと、ええと……ウリエルとの悪縁を断って……あっ!?」
「ん? ……あっ、やっべ」
「…………*2」
三人とも今更になって気付いて冷や汗だらだら。
せやったわ……ウリエルを始末するためにあたしら……
「お気づきになられましたか……地上で魔界への直通ゲート開いて問題無いわけないじゃん?」
「ご……ごめんなさ~~~~~~い!!?」
シオリっちが顔を真っ赤にして泣いて謝った。
やべぇよやべぇよ……あのときはつい勢いでやっちゃったけど、冷静に考えたらとんでもねぇミスじゃん!?
てことはアレか? まさか……!
「……既に察してるとは思うが魔界への門が開いた影響で一時的に周辺地域のGPが急上昇。それに起因して異界が異常発生、悪魔の出没率が激増して現場は火の車だ」
「ぎええええええええええええええええええ!?」
「あわわわわ……!」
「なんてこと……」
霊視ニキの残酷な報告に悲鳴を上げる。
あばばばばば……せっかく一段落したと思ったのにもっとめんどくさい事態になってやがる……!!
「警戒態勢だったため幸いにも被害は出ていないが、このままでは現場のキャパシティを超える。高レベルが率先して動かんことには収拾がつかねぇんでな」
「というわけで回復して早々だけど三人には道南へ直行してもらいます。ちなみに抑制までの目処は立ってないから最悪終末までデスマ確定だから覚悟しといてね♪」
「お、お慈悲は……!?」
「ねぇよンなモン。それと邪視ネキは例のスキルは封印ね。少なくとも終末までは絶対厳禁、イイネ?」
「はいぃ……」
「カレンは……まぁ頑張れ。事務処理とか地獄だと思うが」
「くっ……わかり、ました……!」
三者三様に青い顔をして、待ち受けるデスマに項垂れる。
こ、こんなはずでは……うごごごご(
「それじゃあいってらっしゃーい。心配しなくてもそう遠くないうちにケリは着くだろうから、まぁ暫くの辛抱だよ。頑張れ頑張れ♪」
「他人事だと思って笑顔で送り出しやがってこの野郎……!」
「だって他人事だしー。ま、現地までは僕が送ってあげるから。というわけで――【
ショタオジが笑顔でサムズアップすると同時、展開された転移陣があたし達を包みこんだ。
クッ、このあたしですら干渉不可能な転移術式だと!? おのれショタオジ、抵抗も許さず地獄へ送り込む気か!!
「ぬわーーーーーーーっっ!!!!」
「うわーん! みんなごめんなさーい!?」
「頑張りましょう、お二人共……」
お、おのれ……許さんぞメシア教、許さんぞウリエル!!
そして覚えてろショタオジ……地べたを這い、泥水をすすってでもガイア連合山梨支部にもどってきてやる……!!
そうショタオジへの報復を近い、あたし達は転移陣の放つ光へ吸い込まれていった――
◇◇◇
235:カス子
恥ずかしながら帰ってまいりました
236:名無しの転生者
おせーよホセ(
237:名無しの転生者
見ろよお前この惨状をよぉ!?
238:名無しの転生者
終わるまで寝かさないゾ♪
死ぬ気で働け(豹変
239:名無しの転生者
テメェの財布をからっけつにしてやっからなぁ~~~~???
240:カス子
正直すまんかった マジごめん(
・カス子
この後不眠不休で酷使され、報酬に財布は再び空になった。
作戦立案者はカス子なので罪が重さとしては二番目なのだが、日頃の言動のせいで主な批判はこいつに集中した。
内心ブチギレながらもそれどころじゃねぇので頑張ってなんとかした。
・邪視ネキ
連合加入以来最大のポカをやらかしデスマーチを招いた張本人。
天使を堕天させて地獄へ堕とすのと、地獄への門を開いて無理矢理堕とすのは似ているようで全く違うのだ。
暫くの間悲しきごめんなさいロボと化して終わりなきデスマーチに身を投じた。
・魔人ネキ
ちょっぱやで産休を終え育休に入る間もなく現場へ出る羽目になったバリキャリ。
自身の要望を受けて今回の作戦が実行されたので、任命責任者として責務を果たすべく覚悟のデスマ。
いつも言ってるでしょう。ヤバイ橋を渡る時は三人一緒です(ゲンスルー並感
・道南支部の皆さん
ラスボス戦を遠目に見守り、その後回収された三人が回復のため本社へ送られた直後にデスマが発生したため阿鼻叫喚の悲鳴を上げた。
みんなでファックファック言いながら激増した悪魔や異界を潰して回る日々を送る羽目になる。
言うなれば運命共同体(ry
・KSJ研究所の皆さん
実は決戦場の地下深くで一部始終を見守っていた。詳しくはアビャゲイルさんのところを見るべし。
決着後気を利かせて本社に送ってから戻ったら、なんか道南がデスマに突入してて慌てて助勢してくれた。
この一件で三人娘はすっかり彼らへ頭が上がらなくなってしまった。
・ショタオジ&霊視ニキ
三人娘を笑顔で送り出したあと、ゴトウやトールマンらと会談した。
終末の日は近い。
ということで本編完結です。ご愛読ありがとうございました!
9月末に思い立って投稿を始めてから、45話で年内完結まで持っていけたのは偏に感想をくださる皆さんのおかげです。
またこれまで楽しく執筆し続けられたのも、素敵な世界観を共有する許可をくださった本家様と、先駆者の三次創作者様、そして新たに三次を書いてくださった作者様方のおかげです。本当にありがとうございました。
本当に楽しい数カ月間でした。今後は不定期に外伝を投稿していく形になりますが、そのときは是非またお楽しみいただければ幸いです。
それと私事ではありますが、無事完結まで持っていけたので匿名投稿を解除します。
久々に完結作品をお出しできて満足です。まぁもうちょっとだけ続くんですが。
名前は変わりますがコンゴトモヨロシクお願いします。