「お、アカネクゥンじゃん! どしたんこんなとこで」
「あー命子か……まぁいいか。ちょっとツラ貸して?」
本社修業場*1前をたまたま通りがかった命子が声を掛けたのは、友達の一人である新条アカネ。
掲示板では【怪獣ネキ】のHNで知られ*2、その名の通り怪獣好きであり趣味も怪獣プラモ制作(自作も含む)を趣味とするTS勢転生者である。
二人は共にクリエイティブなオタク気質ということもありその一点で意気投合しつつも、やたら我が強い上に愛好対象の方向性が真逆なせいで衝突も多く、言うなれば仲の良い喧嘩友達とも言うべき間柄だった。
その彼女が何やら神妙な顔をして修業場の前で佇んでいる。
やたら身奇麗な割に内包MAGの消耗が激しいことから察するに
どうやら随分と気が立っているらしい。普段ならもっと感情を表に出して喚くのがこうも表面上大人しいのは、それだけ腸が煮えくり返っているからか。
ともあれ話があるとのことなので手近なカフェに寄ってテーブルを囲んだ。
「んでどしたん? 死に戻ったのは見りゃあ分かるけど、なんか内心めちゃくちゃブチギレてんじゃん」
「いやさー、ショタオジからやっと制限解除されたからこないだ試験突破して下層行ってきたんだけどさー」
「えっ、早くね? ついこないだまで遠征組だったじゃん」
連合に属する転生者は数多いるが、その中には固有の霊質や資質が及ぼす危険性が高く
力の根源が某Nだったせいで
【悪魔の改造や合体】に関する強力すぎる異能がため悪魔を使役することすら禁じられていたのだが、高位悪魔を容易に生み出しうるその異能を許せばGPがあっという間に跳ね上がるため妥当な処分であろう。
神主からすれば世界の均衡を崩さないため(本音を言えば転生者の庇護のため)の措置だったが、当の本人がそれに納得するかは別の話。
前述した通り我の強い、言ってしまえば我儘気質な彼女からすれば口煩い(と彼女は思っている)神主には反抗心しか無く、さりとて庇護を離れて暮らしていけるかと言えばそのはずもない。
結果として神主の目論見通り遠征組となった彼女は安全圏である本社でぬくぬく過ごしてきたのだが、だからといって沸き立つクリエイティブなインスピレーションを消費しきれたかと言えばそうはならず。
帰還した神主から「もう魔界に落ちちゃったしGP関係なくなったから好きにしていいよ」と布告された途端、我が世の春が来たとばかりに動き出し異能を駆使して早くも下層試験を突破したのだった。
遠征でレベルだけはそれなりにあっただろうが、それだけで突破できるほど修業場の試験は甘くない。にも関わらずこの短期間で突破できたのは偏に彼女の才覚と言えよう。先行者としてその過酷さを知る命子が驚くのも当然であった。
ちなみに同様の理由で燻り続け、終末後にはっちゃけた連中はそれなりにいる。
彼らの多くはモチベーションと才覚を持て余していたため無駄に行動力が高く、猛烈な勢いで戦闘力を向上させていった。
当然先輩修羅勢は大歓喜であり、満面の笑みで彼らを
結果として修業場は終末を経ても尚大盛況である。世はまさに大ヒャッハー時代!
「いつまでもだらだらし続けるのも飽きたしさー……遠征組だからって
「あーいるいる、そういうニワカ。中途半端に実力あるから勘違いしちゃう奴~。まぁすぐに鼻っ柱折られて黒歴史化するけど。ちゃんと
「あったりまえじゃん。あいつらの言う
「殺すのが趣旨ではないけどやるじゃん!」
言葉尻に草を生やしながら悪どく笑む二人。カスが響き合う二人は言うまでもなく性格が悪かった。
「で、結局何が問題なんよ?」
「下層に行ったら修羅勢の一人に『そんな怪獣じゃこの先生きのこれないぜ』って
「
「半裸に腰蓑装備の仮面の変態」
「棍棒ニキじゃねーか!! まーたアイツ調子乗ってペラ回したんか」
棍棒ニキ――彼は根っからのお調子者なムードメーカーだが、それ故に時折調子に乗り過ぎて舌禍を招く節があった。しかし彼とて命子にだけは言われたくなかろう。
ともあれそこまで事情を聞いて命子は得心し、性悪な笑みを浮かべながら。
「なるほど理解した。つまり棍棒ニキも
「ついでに言うなら
「一番調子ライダーなのはアカネクゥンって点を無視すればいい度胸だ、気に入った! よっしゃわかった、命子さんに任せとき!!」
そう言って命子は転移すると、しばらくしてから戻ってきた。
一緒に連れてきた三人を背後に並べ、命子が彼らを指し示す。
「悪巧み三銃士を連れてきたよ」
「悪巧み三銃士?」
「人外型を語らせれば右に出る者はいねぇ! 式神の育成・運用の専門家、佐倉千代」
「なにこれ」*4
「名誉副王にして名誉ソロモンにして名誉ファラオ。最近ファラおじと呼ばれ出した悪魔の召喚・運用の専門家、高館絶徒」
「がんばります、よろしく」*5
「過去は元の肉体と共に捨ててきた。美貌の貢がせ系TS美少女、氷麗(源氏名)」
「おもしろそうな気配を感じて!」*6
以上三名、それぞれ【蟲姫】、【脳缶】、【TS魔人】のHNで知られる連合の有名人である!
ちなみに命子が本来誘うつもりだったのは前者二名だけだが、脳缶ニキを誘いに
「千代ちゃんとぜっちゃんは分かるけど、そこのTS変態魔人はいらなくない? 役立たずっしょ」
「えーひどーい! 私だってできることあるよ! ……多分」
「急に連れてこられて状況飲み込めてないんですけど?」
「かくかくしかじか」*7
「まるまるうまうま。――
「うーん、確かに面白い試みではあるかも……私としても参考になるかもだし、まぁいいかな」
「なら私はアイデア出しとか担当! 腕が鳴るぜ!!」
状況を説明されてなんやかんや了承した三銃士。
そこに依頼主のアカネと発起人の命子を加え、才覚だけはやたらあるバカ共*8が邪悪にほくそ笑む。
かくしてアカネクゥンの逆恨みに端を発する報復プロジェクトは始動した!
◇
――
「
「自前で合体できるのやっぱつえーなぁ。あたしも【デビルソース】用意したよん」
「アカネちゃんの好みが
「いきなり高レベルの悪魔は危ないんで、手頃な
「私悪魔合体するの初めてだわ、最初の組み合わせ選んでもいい?」
・
・
・
「アカネクゥン、もうちょい繊細に扱ったほうがええで。ほらこう」
「ふんふん……こうかな? お、スキル変質した」
「やっぱり式神とは勝手が違うなぁ、勉強になる。……あ、ここの構成はこうしたほうが
「ここでデビソをシューッ!! 超☆エキサイティン!!」
「ぜっちゃんテメー!! 容量ギリギリなとこで急にぶっ込むんじゃねーよ! キチゲの解放タイミング今じゃねぇだろ!!」
「あっこれやばい合体事故だ!!」
「退避、退避ー!! 私遠くから応援してるから!!」
「逃げ足早くて草。やっべ事故相手めっちゃおこじゃん」
「はやくとっちめて、やくめでしょ」
・
・
・
「大体把握した。そろそろ本格的♂合体改造に着手してもええかもしれんね」
「合体する悪魔も決めたし、ビルドの方向性も定まった。運用方針もざっくり考えたし……確かに頃合いかな」
「こちら悪魔全書から追加の素材準備よし」
「改造に対応した合体表も整理できたよー」
「あたしも秘蔵のスキカ出すで~! じゃじゃーん、【巨大化:EX】!!」
「うっわ激レアじゃん! それどこで手に入れたの!?」
「カレンちんのログボ*9で集まったのをまとめて合成したらできた。でもめっちゃ相性選ぶから使い道無くて死蔵してたんだよね、こいつなら使えるんじゃない?」
「確かに逸話的にもピッタリだもんね。じゃあせっかくだし使わせてもらおっかな、カスのくせにやるじゃん」
「HAHAHAHA!! そっくりそのまま返すぜカスゥ!」
「あ、それ使うなら中に乗り込めるようにしたら良さそうじゃね? よくわからんけど聞いてる感じ電車みたいなもんでしょ?」
「! その発想は無かったわ……でもどうする? なんか方法ある?」
「異界作成技術を応用すればなんとかなりそう。異界を内包するのもコレなら可能だろうし……ここは僕にお任せあれ」
「じゃあそれに合わせて無理のない構成も考えてみるね。試算見直しになっちゃうけど……」
「ま、ここで焦って失敗したら元も子もないしね。んじゃ私ももっといいチャートないか見直してみるかぁ」
◇
――数週間後、【修業場:下層】
本日の
だだっ広い荒野に入り乱れる高位分霊!
それらが展開しる大小無数の
更にそれらが撒き散らす異界法則から生まれ飛び散る環境変動!
そんな中
――を眼中にすら入れず縦横無尽に暴れ回る暴走特急!!!
「ランサー*10が死んだ!」
「この人でなし!! ――って悪魔の仕業に決まってんだろおきろ! アイツはもうダメだ、助からん!」
「なんだあのでっかいモノ♂……ボス悪魔か? その割に見境ねーな」
「いやまて……あのカスいVoiceは……!?」
「「「はーっはっはっは!!」」」
彼らのPTメンバーを轢き潰した超巨体から拡声音が響き渡る。
嘲りと挑発に満ちたメスガキボイスを耳にし、エリアにいる者達は即座にその正体へ思い当たった。
ガラガラと地響きすら生温い轟音を立てて自分達を包囲する
「出やがったな……深道ランキング*11害悪部門最上位常連――カス子ネキ!!」
「テメェがいるならおまえもいるよな……同じく害悪部門トップランカー、脳缶ニキよ!!!」
「もう一人はまさか怪獣ネキか!? 確かに性格は悪いがカス共の仲間入りをするだなんて……確かに性格は悪いけど!!」
「丁寧な説明ゼリフをどうもありがとう」
「如何かな、我らが叡智の結晶たる特製悪魔【邪龍 <世界を囲む>ミズガルズオルム】*12の味は?」
「私をカス二人と一緒くたにしたやつは許さん……というわけで死ねーっ!!」
「「「アバーッ!? パッシブもりもり【毒ガスブレス】!!!」」」
沸点の低い
標準装備の状態異常無効耐性を余裕で突破した致死量の毒ダメージ、紛れもなく権能レベルの威力である。
そしてその光景を目撃した他の修羅達は、戦慄と共に確信を抱く。
「まさか造り上げたというの……? 新しい
「カス二人が協力してるなんて害悪の極み確定ヤンケ……!」
「ちょっと音量でけぇな……あたしらだけじゃなくて千代ちゃんも監修してるゾ」
「もうダメだぁ……おしめぇだぁ……」
「やっほーおまえら! 私もいるぞ!!」
「なんでTS魔人ニキネキまでいるのかわからんけどおまえ下層試験突破してたっけ???」
「うるせー!!! 死ねーーーーーー!!!!!」
「「「「ギャー!?」」」」
完全に
僅かに難を逃れた者達は遠方や上空から攻撃魔法の雨霰を見舞うが、その巨体に見合った極大の耐久力を削るには至らず、倒し切るにはMAGを賭した全力の一撃しかないと判断。
儀式魔法の準備に入った術者を生き残った前衛が援護に回るが――規格外の超巨体を前に小賢しい戦術など意味を成さず、
「アイエエエエェェェ……アイエエエエェェェ……」
「いかん、完全に戦意を喪失している……
「ま、まて怪獣ネキ=サン! こちらに交戦の意思はない!」
「私にはある!!」
「ナンデ!?」
「よくも私にアイサツしてくれやがッテッコラー! ウエメセでナメてんじゃねッゾコラー!! こちとら
「わ、我々はそんなつもりは……」
「そういう目をしたッッ!!」
「「「グワーッ!!!! サ ヨ ナ ラ !!」」」
アワレ修羅達は爆発四散、地上へ
必死の抵抗も虚しく蹂躙され、羽虫の如く散らされていく若き修羅達。
これが下層最奥部や深層に手をかけた歴戦の修羅達ならば新手のレイドボス出現に目を輝かせたのだろうが、悲しいかな彼らは修羅界に足を踏み入れたばかりの雛鳥達である。
おとなげなくも面白半分で手を貸した
中には戦線を離脱しようとする者もいたのだが、何故かミズガルズオルムを中心とする一定範囲内から脱出できず、転移手段を持たない者は絶望に乾いた笑みを浮かべながらやはりプチッと潰されて死んだ。
「あはははは! 何してんのかさっぱりだけどすげー!! 自分ではやれる気しないしやりたくないけど、眺める分にはすげー楽しいな!」
「うん、経過は良好。割と無茶のある改造だったけど、もっとレベルを上げれば安定するかな」
その光景をミズガルズオルムの体内に設けられた
一方で冷静に状況を分析し、出来映えにひとまずの満足を見せたのは蟲姫ネキこと佐倉千代。
コックピットに相当するスペースには高笑いを上げていた
そう、ここは――この【ミズガルズオルム】こそは彼らの手掛けた決戦悪魔。
北欧神話に名高い世界蛇の名を冠し、レベルEXの【巨大化】によってレベルとMAGの許す限り理論上どこまでも巨大きくなれる規格外の体格とそれに比例した耐久力。
後に生み出される【世界】の冠詞を戴く新条アカネ擁する特記戦力【壊獣】シリーズが一柱、【邪龍 <世界を囲む>ミズガルズオルム】である!!
「クククク……壊獣シリーズ量産の暁には、我々が世界を手にする日も近い……」
「今回の結果には満足しております。次なる壊獣製造もご期待ください」
「あははははは!! すごいぞー、かっこいいぞー!! そこだー、やれー! ぶっ殺せー!!」
「アカネッチめっちゃテンションアゲアゲじゃん。そんな鬱憤溜まってたの?」
「逆恨みの報復戦でこんだけはしゃげるのも才能だよな。まぁ修羅勢相手だからいいけど。ケンシロウ、暴力はいいぞ」
「あ、私そろそろ帰らないとだから先に上がるね。命子ちゃん転移お願い」
「あいよー、長々と付き合ってくれてありがとね。煙さんにもよろしくー」
「こっちも収穫があったからいいよ。それじゃあ」
調子づく四人を他所にしれっと一抜けした千代を見送ってからも蹂躙は続く。
力押しの通用しない下層だがそれはあくまで考えたらずの脳筋ならばの話であり、無駄に知恵の回るバカ達の総力を結集した全身の筋肉是脳味噌とも言うべきインテリジェンス溢れる力押しならばその限りではない。
しっかり全環境対応型でもあるミズガルズオルムが蹂躙するに任せ、修羅もその嫁式神も当たるを幸い蹴散らしていると、やがて感知範囲内に残る人間は一組だけとなった。
「お、もうラス一だ。あっけねーなー、まぁルーキー共ならこんなもんか。流石に事前準備バッチリな生産型相手だと並の戦闘型だと相手にならんね」
「セツニキや探求ネキがいたら返り討ちだったけど、あのへんはもうみんな深層行っちゃったしね」
「へー、修業場って大変なんだなぁ。私はやっぱ見てるだけでいいや。んで、もう終わり?」
「はー笑った笑った、カス共の断末魔気持ちいいわぁ~~! んじゃあ残るは一組だけだし、サクッと処理したら帰ろっか」
「こんだけ大暴れした割に全然レベル上がらんの、性能にリソース割きすぎたせいで必要経験値爆上がりしちゃったかぁ~」
「まぁそこはアカネ氏の今後の努力次第ってことで。下層の奥で運用するにはもうちょいレベリングが必要ですし、深層レベルにはまだまだですね」
「コツは掴んだし他の仲魔造る時はもっと上手くやってやんよー。それじゃあトドメトドメっと」
この惨劇を前に全く悪びれる様子も見せないアカネが、サーチ対象目掛けてミズガルズオルムを全速前進させる。
彼女の中では今回の修業場チャレンジはもう終わったものとなっていて、絶徒の取り出した涜神スイーツを片手にすっかり上機嫌だった。
それは他の三人も少なからず同様であり、場はすっかり祝勝ムード。連日に渡る共同研究の挙げた成果に大満足し、あとは片付けして帰るだけ――だったのだが。
「そういや最後まで生き残ったラッキーマンは誰じゃろなっと。……げっ!」
「どうしました? ……あっやばいやばいやばい! アカネ氏ストップ、止まって! 止まれ!!」
「はぁ?」
全天周囲モニター越しに標的を確認した命子が顔色を変えるのと同時、絶徒の必死の制止も虚しく間に合わず蛇体がそれを跳ね飛ばした。
急な声に訝るアカネを構う余裕もなく、跳ね飛ばされた赤毛の人影を二人は見遣り――顔を見合わせて冷や汗を流した。
「やべぇよやべぇよ……どうすんよ……」
「い、一度轢いちゃったからにはトドメを刺すしか……アカネ氏、早く追撃してください!」
「完全にヤっちゃったときの態度なんだけど……?」
これまで散々蹴散らしといて何を今更と思うだろうが、二人の焦燥はガチだった。
その理由がわからず、指図されるのは癪だと感じつつもそこまで言うのならとアカネも指示に従おうとして――こちらに向けられた声をミズガルズオルムが聴き拾う。
それは跳ね飛ばされた人影に付き従っていた一人のメイド――専用式神だろう美女の場違いなほど淡々とした声。
「
「はやくしろアカネ!! 間に合わなくなっても知らんぞー!!」
「中途半端にHPが残るのが一番マズイ! このダメージ量だと――」
「えっ、えっ、えっ――?」
「一体何が始まるんです?」
跳ね飛ばされた人影は、赤髪を獅子の鬣のように伸ばしていた。
縦にも横にも太い力士体型。しかしイメージされる脂肪のそれではなくはち切れんばかりの筋肉が搭載された肉体は、さながら人の形をした重機の如し。
それが跳ね飛ばされた先で――けれど無傷のまま地面に倒れ、やがて目頭を擦りながらのそのそと起き上がる。
まるで深い眠りから目覚めるように、寝ぼけ眼で大きなあくびを吐きながら。
「――お目覚めの時間です、旦那様」
「あー…………久々に頭がスッキリしたぜ……」
「やばい!
「嫁さんも内心バチギレてるのかバフてんこ盛りだ! やばいですよ!?」
「んあああああああよくわからないけど先手必勝!! しねーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!」
「ひょっとしてこれヤバイ感じ?」
赤毛の獅子が如き益荒男――カビゴンニキが目覚めると同時、咄嗟の判断で氷麗を地上へ
カビゴンニキは深く腰を落としてから高々と片脚を掲げ――四股を踏むと同時に地響きを引き起こす。
そして迫りくるミズガルズオルムの巨体を
「――は?」
「随分活きのいいルーキーじゃねぇか。いっちょ揉んでやるよ……稽古の時間だオラァ!!」
言うや否や一本背負い、全長数百メートルの蛇体が唸りを上げて宙を舞った。
「ぎえええええええカビゴンニキ本気じゃん!! めっちゃ元気溌剌じゃん!!」
「なんで下層にいるんですか!? 貴方深層組でしょう!!」
「はー!? FOEがいるとか聞いてないんだけど!?」
「そらおめー稼ぎに来るくらいするだろ。寝惚けてたからはっきし覚えちゃいねぇがよ、随分暴れ回ったおまえらが言うな」
HNカビゴンニキ――本名、赤井
ラーマーヤナに登場するラークシャサ【クンバカルナ】を本霊とし、その影響で常に猛烈な睡魔に囚われている男。
にも関わらず修羅勢の上位に名を連ね、一度眠りから目覚めれば規格外のフィジカルと巨体で万物を捻じ伏せる夢遊する暴虐。
「まァいいや。久々に頭がスッキリして身体が温まってきてるんだ……最後までぶつかり稽古といこうぜ!!!」
しかしてその実態は、同じ深層の修羅勢からは「HN詐欺」だの「レオギガス」だの「赤獅子」だのと呼ばれる、連合きってのSUMOUパワーの持ち主である!
超横綱級のスモトリを前に三人は為すすべもなく、それまで自分達がしてきたように最後は彼にプチッと潰されて
出待ちしていた被害者の皆さんに散々煽られた挙げ句、試験未達成の氷麗を下層へ連れ出した咎でショタオジのお叱りを受け、三人纏めて地獄送りとなったのだった。
インガオホー……嗚呼インガオホー(
・カス子
クリエイティブなオタクその1。アカネクゥンのことは腕前を認めつつも
アカネクゥンとはクリエイターとしての縁で仲が良く、お互い我が強いせいでしょっちゅう衝突している喧嘩友達。
今回は魂への干渉技術面で協力し、アカネクゥンの改造技術向上に貢献した。
・新条アカネ
本家小ネタで登場した新条アカネ似の俺達。クリエイティブなオタクその2。カス子のことは腕前を認めつつも
他の四人とは趣味が合ったり性癖が共通してたりなどで仲が良い友人同士。カス子とはしょっちゅう罵り合ってる。
終末後に固有スキル(=権能)が覚醒し、ショタオジからの禁も解かれたことで大躍進を果たした遅咲きの修羅勢。
自前で悪魔の合体や改造が可能というチートの持ち主で、後にレベルドレインの権能を持つ【邪龍 <世界を喰らう>ニーズホッグ】などの規格外悪魔を無数に持つ連合屈指のサマナーと化す。
・高館絶徒
ご存知脳缶ニキ。名誉ベルゼブブにして名誉ソロモンにして名誉ファラオなので並のファラオより三倍偉大なファラオ・トリスメギストス。
今回は合体素材の提供や実験場の提供などで協力し、【邪龍 <世界を囲む>ミズガルズオルム】の居住空間作成にも貢献した。
・佐倉千代
我らが蟲姫ネキ。式神の運用については右に出るものはいねぇヤベー奴。
アカネクゥンとは人外式神&悪魔好きという共通点でマブダチ。
今回は式神技術を応用した悪魔の改造やその手法の確立などで協力した。
異形体についてもめちゃくちゃ明るく、彼女なくして今回の壊獣は生まれ得なかった。
要領がいいので自分に累が及ばないうちにさっさと撤収した強かな姉御。
・氷麗(源氏名)
連合が誇る愛すべきバカ1号。式神技術の発展に大きく貢献した後天的TS俺達。物は言いようである。
恵まれたスペックを全力で無駄遣いし、ショタオジのスネを齧りまくって人生エンジョイしまくってる愛嬌の化身。
技能面で貢献することはまったくなかったが、ちょくちょく核心を突く意見を呈したりして地味に場を取り纏めていた影の功労者。バカはこれだから強い。
本人的には最後までわちゃわちゃしながら付き合ってただけで、ほとんどアトラクションを楽しむ感じだった。
・【邪龍 <世界を囲む>ミズガルズオルム】
三馬鹿+1名の総力を結集して造り上げた改造悪魔。
逸話補正による異界内包巨体と絶対包囲の権能、神をも殺す威力の毒に、数百メートル級の巨体によるシーン攻撃を可能にする対軍決戦悪魔。
後に生み出される【邪龍 <世界を喰らう>ニーズホッグ】ら壊獣シリーズの先駆けとなった悪魔であり、アカネクゥンの移動拠点も兼ねる特記戦力。
でも性能自体はシンプルなので主に格下絶対殺すマン仕様。
彼の登場によりアカネクゥンは急激に頭角を現し上位勢の一角に華々しく名乗りを上げた。
・カビゴンニキ
本名赤井
ムッキムキの相撲体型をした本霊クンバカルナのスモトリ。
本霊の影響で常に猛烈な睡魔に襲われており、一日の殆どを眠ったまま行動している。
しかし大ダメージを受けると眠りから目覚め、アホみたいなフィジカルをアホみたいな大きさに変えて暴れ回る暴虐の化身。
例えるなら普段は「特性:ぜったいねむり」で「ねごと」しか使えないのが、HPが減ると「特性:ちからもち」に変わって暴れ出すようなもの。
カビゴンニキのHNは自分から言い出したものだが、実態が知られるにつれ詐欺筆頭として認知された。
嫁式神は普段眠りこけてる自分に代わって諸々の世話をしてくれるサポート型のメイドさん。でもレベルが高いのでサポーターとしても超優秀。