【カオ転三次】今更転生ごちゃまぜサマナー   作:ふーじん

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9話:へへへへっ……誰が修行なんか、修行なんか怖かねぇ!!

「いぇーいグランクラス席~!」

「うわ……すごく豪華……。本当にいいの? これ」

「いーのいーの、金はいくらでもあっからねー」

 

 どーも新青森の車窓から、命子さんです。

 今日は例のシオリちゃんを連れてぶらり山梨の旅の日だ。

 青森の駅弁ってのは意外と魚メインのやつが多くて彩り豊かね。

 とりあえず有名どころをまとめて買って、大宮までの旅をグルメで埋め尽くすぜ!

 

「シオリちゃんはどれからいくー? あたしはこの海の宝船からいこうかな!」

「……じゃあ私はこっちの津軽づくし弁当で」

「こっちのひとくちだらけも開けようぜ~! シェアしよシェア!」

「にしても買いすぎじゃない? 食べ切れるかしら……」

 

 金に飽かせて予約したグランクラス席は居心地抜群。

 やいのやいのしているうちに列車は動き出し、あっという間に高速に入る。

 まぁあたしが飛んだ方が速いんだけど、今日はシオリちゃんを本部に連れて行くのが目的だからね。

 覚醒したてのひよっこに生身で空の旅は厳しかろうて。

 

「……ねぇ」

「んー?」

「本当に良かったの? 結局一度も異界……に入らなくて」

 

 駅弁をぱくつきながらお喋りしてると、シオリちゃんが神妙な顔で言ってくる。

 

「転生者とか、終末とか……正直まだ呑み込みきれてないけど……。レベル? だっけ。そういうの、上げなくてよかったのかしら……」

「んー、結構難しいところじゃんね」

 

 何を心配しているのかと言えばそのことか。

 確かにシオリちゃんを保護してから一ヶ月ちょい経つけど、その間一度も異界には連れてないもんね。

 それなのに年下の妹分達がお務めで小規模異界に潜ったりしてるのを見てれば気にもなるか。

 実際悪魔同士の戦いを目にしてもいるし、危機感を抱いても当然やね。だけど……

 

「異界に行きたかったん? 怖くないの?」

「行きたい……よりは、どうせ行かなきゃいけないならさっさと覚悟を決めたかった、ってとこかな。それに()()()()()がいると知ってしまったのに、弱いままのほうが私は怖い……」

 

 あのときのことを思い出したのか、震える身体を抱いて俯くシオリちゃん。

 うーん、親近感。あたしもお務め始めたばっかの頃はこんなんだったなー。

 今じゃすっかり慣れっこだけど、初めての異界や悪魔退治はまーじで怖いもんね。

 だけどそんなシオリちゃんに朗報があります!

 

「ご心配めさるなシオリちん! 不安がらずとも俺達(あたしら)には約束された才能があるってばよ!」

「……なにそれ、慰め? そんなのわからないじゃない」

「んーん、まじまじ、大マジよ~。詳細はショタオジから聞くとして、やる気があればいくらでも強くなれるし何でもできる! これ、ホントの話」

 

 この命子さんを見なさい!

 齢15にして稀代の降霊術士にしてイタコ筆頭、恐山が誇る必殺の霊的暴力装置ぞ!

 そして今はガイ連の至宝とも言える存在や……あまりの威光に眩しかろう!

 

「あたしとペ天使の戦い見てたっしょ? あんなん余裕綽々よ、やる気があればすぐよすぐ! なかったら……ナオキです」

「本当かしら……でもまぁ、結局はやる気次第なのは、そうね」

 

 はぁ、と溜息を吐いたその口におかずをゴールイン!

 お腹が空いてるからネガティブ思考になるんよ、飯食え飯!

 

「んぐ。……あーあ、人生プランめちゃくちゃになっちゃったなぁ」

「まぁそういうこともあらぁな。その人生からも強制ドロップアウトさせられかねないのがこの世界ですしおすし」

「せっかくあと数年であのクソ田舎から離れられると思ったのに……あの欲ボケ村長のせいで!」

 

 クワッ、と目を剥いて怒気を顕わにするシオリちゃん。

 うっかり力が漏れそうになったのを中和しつつ。

 

「その言い振りってぇことは前々からやっぱクソだったん?」

「私からすれば、ね。狭い村だから権力を握ってた村長一家は、横暴に感じられたかしら……」

 

 「いや、実家もか」と溢しつつ言葉を続ける。

 こりゃあ回想フェイズやな? 空気の読める命子さんは大人しく聞き手に回るぜ。

 

「いつの間にか女に生まれ変わって、碌にネットも無いようなド田舎で時代錯誤な暮らしをして……わかる? 今時女は家庭に入って男に従えなんて男尊女卑も甚だしいわ」

「わかるわかるー、ド田舎ほどそういうとこ多いよねー」

「少しでも女らしくないことをしたら折檻されて、悪ガキ共には男女呼ばわりされて……頑張って家事を覚えて女らしい仕草を身に付けたら、今度は村長の孫(馬鹿なボンボン)の嫁にしてやるなんて言われて!」

「うわー引くわぁ……昭和かよって話やんね。まぁあたしら生まれはバリバリ昭和だけども」

「冗談じゃないから絶対に村を出ていってやるつもりで猛勉強して、特待で外の進学校に入ったのに……そしたら拉致だなんてふざけんなって話よ!」

 

 怒りに任せて空き缶を握り潰すシオリちゃん。

 相当腹に据えかねてるのか両手でさらに丸めてビニール袋へ乱暴に投げ込んだ。

 ……これ、普通の空き缶ゴミで大丈夫かな?

 

「貴方に助けてもらえたのは本当に幸運よね……あのまま飛ばされてたら私、どうなってたことやら」

「んまぁ碌なことにはならないですねぇ。……ちなみに聞きたい?」

「いや、いい。聞きたくない。あんな連中のやること聞いたら頭おかしくなりそう」

 

 賢明やね、その直感は当たっとるで。

 さすがのあたしも資料見てドン引きしたからね……既に実例があるとかちょっと理解超えるもん。

 マジで海外どうなってんだろうね。表向き平穏っぽいけど裏は霊視ニキも引くぐらいドロッドロやで。

 

「……なんにせよ、もう終わったことだものね。あの村もそのうち無くなるんでしょう?」

「んだね、近いうちに合併して消えるかな。もちろん行政も他所預かりで」

「いい気味だわ。あんな時代錯誤な村、跡形もなくなればいいのよ」

 

 言うだけ言ってスッキリしたのか、心持ち晴れやかな表情で最後のおかずを口に放り込む。

 最初は食い切れるかどうか心配していた駅弁もすっかり空っぽ。

 ……もうちょっと買っててもよかったかな?

 

「……改めて、ありがとう。あのとき私を助けてくれて」

「ええんやで。こちらとしても間に合ってよかった。俺達(あたしら)がメシアの手に落ちる方が怖いしねぇ」

「メシアっていう連中のこと、覚えておくわ。まだガイア連合……のことはよくわかってないけど、そいつらは私の敵よ」

「そりゃ頼もしいですねぇ」

 

 見たところメンタル的な調子は良さそうね。

 むしろ区切りがついたのか大分前向きになって、やる気にも溢れてるっぽい。

 こりゃ期待の新人かもですねぇ。

 

 とこっそり感心していたところ、「あっ」と思い出したようにシオリちゃんが赤面して。

 

「その……つい元は男だったこと言っちゃったけど……」

「かまへんかまへん、そういう俺達もいっぱいいますしねぇ」

「そう? なら……よかった。今まで誰にも言えなかったから……その人達ともお話できたらいいわね……」

「なんなら今世で後天的に女になったニキもおるしね」

 

 TS魔人ニキネキとかね。あいつマジクールだよ、とても真似できねぇ。さすがマイフレンド。

 シオリちゃんも「マジで?」って顔してるけど、そういうのもあるのが俺達です。誇らしいよね。

 

 ◇

 

「ようこそ星霊神社へ。僕が神主にして【ガイア連合山梨支部】の盟主を務める者だ。気軽にショタオジと呼んでくれていいよ」

「宮古シオリと申します。ではショタオジ……さん? と呼ばせていただきますね」

 

 そんなこんなで本部に到着し、そのままショタオジにお目通り。

 久し振りの新人転生者に、ショタオジがちょっとかっこつけながら空から舞い降りた。

 ちなみにあたしは横っちょで様子見守りの構えね。

 

「うーん、初々しい反応。それじゃあシオリネキ、ちょっと視させてもらうよー」

「ネキ……? それに支部って、本部はここじゃないんですか?」

「うわっ、ピュアピュアじゃんこの子。あんまりネット見ない感じ? ああそれと【ガイア連合山梨支部】で組織名だから。支部だけど本部はここだよ」

「生まれ変わってこの方ネット環境が無くて……それにしてもなぜそんな名前に?」

「ちょっと安価でね……安価ってわかる? ……わかんないか、まぁくじ引きみたいなもんだよ」

「はぁ……」

 

 そんなやりとりをしつつシオリちゃんの眼をじーっと覗き込むショタオジ。

 どっちも美男美女やから映えるわぁ……目の保養やで、視力上がりそう。

 そうしてしばらくシオリちゃんを視てから、ショタオジが笑顔で頷き太鼓判を押した。

 

「――うん、縁も、霊的素質も間違いなく転生者(俺達)だ。連合へ正式に加入することを認めよう。ようこそ【ガイア連合山梨支部】へ!」

「はい、よろしくお願いします。これからお世話になります、ショタオジさん」

 

 心配はしてなかったけど無事お眼鏡に叶ったようで、正式に仲間入りと相成った。

 まだよくわかってない様子のシオリちゃんとハイタッチを交わして膝の上に潜り込む。

 シオリちゃんでっかいから座り心地良くて好き~!

 

「カス子ネキもお疲れ様。改めてお手柄だったね」

「いえいえー偶然ですよぉ。バカがバカしなけりゃ危ういところでしたしぃ」

「ほんと油断も隙もありゃしない連中だぜ。シオリネキも気をつけな? この先遭遇しないとも限らない……どころか、いつか全面的に敵対する可能性も大きいからね」

「メシア教……ですよね。はい、十分注意します。」

 

 まぁあんな目に遭ったならそうそう油断はしないだろうし、ましてや傾倒するなんざありえないからそこはご安心やね。

 

「さてと。改めてウチの方針を説明しておくと、我が【ガイア連合山梨支部】は来たる"終末"に向けて生き残るため、様々に手段を模索する転生者達の互助組合だ」

「終末……あちらで霊視ニキさんにも説明を受けましたが、本当に来るんですか?」

「来る。いつ、どういう形で訪れるかは不明瞭だけど避け得ない事態であることは絶対だ。これに関しては()()()()()()として前提に考えてほしい」

「……わかりました。続けてください」

 

 覚悟を決めた様子で頷くシオリちゃん。

 それにショタオジは満足そうに頷いて話を続ける。

 

「終末を乗り越える手段はいろいろ考えているけど、前提として必要なのは()――霊能者としての力になる。これを僕達の技術で可視化したのが"レベル"だ。まずはこれを上げてもらうことになるね」

「それも説明は受けました。ですが、その……なんというか」

()()()()()()()()()、だろ? まぁ概ねその受け取り方でいい。キミは馴染がなかったようだが、前世であった【女神転生】というタイトルの要素を多く含む世界だ。もちろん、ゲームそのままってわけじゃないけどね」

「正直理解しきれるとは思えませんが、ひとまずそういうものと考えておきます。とにかくレベルを上げるのが基本原則、ですね」

「結構。そうやって素直に聞き入れてもらえるとこちらとしても助かるよ」

 

 中にはいますからねぇ、最後まで理解せず聞かなかったことにする連中。

 せっかくの優待チケットを溝に捨てるような真似なんてあたしには理解できないけど、まぁそれで困るのは当人らなんでね。あっしには関わりのねぇことでござんす。

 

「でだ。キミは神秘体験を経て一応覚醒してはいるけれど、今のままじゃまだまだ不十分だ。そういうわけだから異界に潜って悪魔を退治してレベルを上げる必要があるんだけど……」

「はい……それも覚悟の上です」

「だけどやっぱり不安が残る……死ぬかもしれないからね」

「そう、ですね……。やっぱりその不安は、拭えないかもです」

「だよね! そんなキミにうってつけのコースがあります! 名付けて『お手軽覚醒体験コース』!!」

 

 ん? 流れ変わったな??

 

「このコースを受ければ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だよ! もちろん既に覚醒済みでも更なる力を得る可能性もある! キミの場合間違いなく何かしらのスキルが追加で芽生えるだろうね、それだけの経験と素質はあるから!」

「はぁ……」

「あ、胡散臭いなって思ってる? 大丈夫だよーちゃんと実績もあるから! 先達の俺達の数割はこのコースを受けて覚醒してるからね! むしろ力を求めるなら断然こっちがオススメ!」

「よくわかりませんが……そういうことなら……」

「シオリっち、ちょいちょい」

 

 流石に見かねてシオリちゃんを手招きして耳打ち。

 いやこのまま挑ませるのはさすがにね、さしもの命子さんも良心が咎めるから。

 

「あのね、ショタオジのおすすめコースはマージーできっっっっっっっっついから! 生半可な覚悟で挑まないほうがいいですよぉ」

「そうなの? まぁでも超常の力に目覚めるのだから、辛くないわけはないわよね」

「まぁそれはそうなんだけど、シオリっちの場合このまま順当に修行場の浅いとこ潜ってもいけるし……」

「でもそれだと時間はかかるんでしょう? それにスタートダッシュはあったほうがいいに決まってるわ」

「んまぁそれはそうなんですが……」

 

 そう言って挑んだ俺達が漏れなく「ショタオジ殺す!!!!!!!!!!」ってなるのがこのコースなんでぇ……

 避けられる苦しみをわざわざ受けて立つこたぁないんじゃないかなって、命子さん思うワケ。

 

「大丈夫、ここまでで覚悟は決めたわ。言ったでしょう? このまま無力でいるほうが怖いって」

「シオリっち……」

「これ以上理不尽に振り回されるのはもう沢山。私は私の好きなようになりたい。……そのための力を得られるならなんだってするわ」

 

 な、なんて覚悟だ……わかった、そこまで言うならこれ以上は言うめぇ。

 その背中を押して見守るだけよ。シオリちゃんの覚悟、確かに見届けたぜ!

 

「いい覚悟だ、感動した! うんうん、キミは間違いなく大成するよ。僕が保証しよう!」

「その期待に応えられるよう頑張ります」

 

 シオリちゃんを見出した者としてあたしも鼻が高いぜ……!

 

「――じゃあカス子ネキも一緒に受けよっか?」

「へっ?」

 

 なんで? なんで? なんで?

 

「カス子ネキ、ちょっと鈍ってんじゃない? 地方のヌルい異界じゃ満足できなかったでしょ?」

「いやいや。いやいやいやいやいや! あたしLv36のパワー倒しましたけど!?」

「言うてたかが6レベル上なだけじゃん? しかも相性的に楽勝だったみたいだし、そんなんじゃ大して経験(レベリング)にならないよ」

「このあと修行場潜るつもりでしたけどぉ!?」

 

 なんだこの押しの強さは……!? やめろ! あたしはもう二度と騙されんぞ!!

 前もそう言ってなんやかんや受けさせたんやんけ!! あんな思いはもう二度とごめんじゃい!!

 

「ふぅん……そっか。ならいいや、修行場行けば? 凡人と同じ手段でせこせこレベリングすればいいんじゃない?」

「――は?」

 

 今なんつった? あたしを凡人っつったか????

 

「視た感じカス子ネキもいい感じに芽生えそうだと思ったんだけどなぁ……天才ならこれくらい軽くこなすと思ってたけど、どうやら見込み違いだったみたいだね」

「ふ、ふぅん……随分安い挑発かましてくれんじゃーねぇですか……!」

「ああいいよいいよ、無理しなくて。僕は()()()()()()()()()()()()()シオリネキの準備をしなきゃいけないからさ」

 

 …………。

 

「じゃあシオリネキ行こうか☆ カス子ネキはこれからちんたら修行場潜るのに忙しいみたいだからさ、キミはパパッとこっちでパワーアップしちゃおうぜ」

「あの……いいんですか……?」

「いーのいーの、凡人には凡人の道があるから☆」

 

 スゥゥゥ……フゥゥゥゥゥ……――やってやろうじゃねぇかこの野郎!!!!!

 

「あたしが凡人だと!? ほざけ! あたしは天才だ~~~~~~~!!!!!!!」

「め、命子……別に無理しなくてもいいんじゃ――」

「あたしには無理っつったか!? 馬鹿め! シオリっちの倍は軽くこなしたるわ!! 天才舐めんなよ!!!!」

「――その言葉が聞きたかった!」

 

 いいぜぇ乗ってやるよショタオジィ……テメーの挑発になぁ!

 天才が下手に出てればチョーシ乗りやがってよぉ……ぜってーキャーン言わせたるからな!!

 

「じゃ、二人ともこっちおいで。今は他に体験者もいないし、特別に僕が付きっきりでプロデュースしてあげよう☆」

「は、はい……それじゃあ命子、一緒に頑張りましょうね……?」

 

 ふしゅるるるるるる……がががっ!!




・カス子
このあと6回死んだ。
実際に強くはなったがショタオジへの殺意が増した。

・シオリ
実はTS勢。でも長年女らしさを強いられてすっかり馴染んでしまった。
彼女のハンドルネームとスペックについては次回。
3回くらい死んで追加覚醒した。

・ショタオジ
善意に満ちたドS。
カス子とシオリ両者への評価は本当だが、その素質を磨くために手段を選ばなかった結果がこれ。
いつものショタオジ。我らのショタオジ。ふぁっきゅーショタオジ。


アビャゲイルさんとこで言及されてウレシイ…ウレシイ…
いつか書こう(
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