トランスオーダー・ディストラクション   作::Crane

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ふと思い浮かんだ設定ではじめた、行き当たりばったりの内容です。
暖かい目でよろしくお願いします。
※本当は数話書き貯めて投稿するつもりでしたけど、我慢出来ずに投稿しちゃいました。


#0: 心臓は規則正しく動いている

 薄暗い本だらけのアパートの一室で僕は目を覚ました。

 上半身をゆっくり起こし、枕元で充電中の携帯電話を手に取って時間を確認する。

 眩しい画面にある『05:13』の数字。うん、今日はいつもより長く眠れたみたいだ。

 

『おはよう、ハイジ。今日は良く眠れたみたいだな』

 

 そう言って、僕に挨拶してきたのは、()()()()()()()()()()()()()()()。僕は頭をぐわんぐわんさせつつ、その細腕に挨拶を返す。

 

「おはよう……VB……。あ、そっちの本はまだ片付けないで。読んでる途中だから……」

『途中ってどれだよ。この赤い表紙のやつか?』

「うん。あ、栞挟んでおいてくれると嬉しい……他は適当に積んどいて。僕があとで片付けとくから」

『おう、分かっ……ん? なんだァこの派手な表紙の本は……』

「それ官能小説」

『何読んでんだ馬鹿野郎っ。お前まだ高一でしょーがっ』

 

 VBが開いてた本を勢いよく閉じた。

 行きつけの古本屋で手当り次第買ったやつなんだよ。あそこなんでも売ってるから。僕も買った後に気づいた。ごめんよ。

 僕は布団の上に立って伸びをし、ストンと肩の力を抜く。

 目を閉じ、首を触り、胸に手を当てて数回深呼吸…………。

 

「――――よしっ」

 

 今日も僕の心臓は規則正しく動いている。

 

 御影琲爾(はいじ)、15歳。

 謎の地球外生命体をこの身に宿した、地球生まれ地球育ちの高校生だ。

 

 ――少し昔話をしよう。

 僕が7歳の時、両親と一緒に交通事故に遭った。

 父さんと母さんは即死で、僕は意識不明の重体により生死を彷徨っていたらしい。

 だが、幸か不幸か事故現場にいたVBが僕の身体に寄生し、止まりかけていた心臓を再構築して生かしてくれたのだ。

 理由を聞いても教えてくれない。多分気まぐれだろう。

 ちなみにVBの名前は僕がつけた。

 世界で一番黒い物質、VantaBlack(ベンタブラック)の英語頭文字から取ったもの。中々のセンスだと自負しているけれど、当のVBは微妙な顔していた。無いよりマシだと思う。

 

 時刻は現在7時半。

 部屋の片付けをしている合間に本を読んでいたら、いつの間にかこんな時間になってしまった。

 なので洗面台の前に立ち、鏡に映る自分の顔をぼんやり見ながら歯を磨き、口内を濯いで……吐き出す。

 ……うわ、相も変わらず顔色が悪い。色白で病人みたいだ。目の下のクマも中々な消えないし……あ、白髪増えてる。

 

「……えーっと、ピアス……ピアス……」

『まずは寝癖をどうにかしよーぜ。アーティスティックになってんぞ?』

「え、何点?」

『及第点』

「手厳しい」

 

 と、足元の影から黒い腕が伸びてきた。その手には櫛が握られてある。

 

『ほらじっとしてろ。俺様が直してやる』

「えー、別にそこまでしなくてもいいのに。水でぐしゃぐしゃやってれば大丈夫だよ」

『オイオイ、無頓着すぎるぜ。そんなじゃ学校のメスにモテねーぞ?』

「僕、モテたいなんて思ってないけど。あとメス呼びはやめろ」

『弱っちくも見える』

「あ゙? 誰が弱っちいだ。喧嘩売ってんなら買ってやるよ。かかってこいよ、オラっ」

『え、滅茶苦茶キレんじゃん……。怖ぁ……』

 

 結局寝癖はVBの手によって直された。

 朝食は好物のカロリーメートで済ませ、僕は学校の準備を始める。

 長袖のインナー(夏用)の上から半袖のワイシャツを着て、その上に薄手のカーディガンを羽織る。9月の半ばでまだ暑さが続くけれど、我慢すれば無問題。……不快にさせるよりマシだ。

 登校の時間になるまで、VBとテレビでやっている誕生日占いをのんびり眺める。

 どうやら今日は、10月生まれの人に、予期せぬ出会いがあるらしい。なるほど、ラッキーアイテムは……蟹甲殻類大腿部歩脚身取出器具? ……ああ、カニの身をほじくるフォークみたいなやつ。蟹とか食べないし持ってないよ。

 

『作ろうか?』

「いらない」

 

 時間になったので外に出ると、朝にも関わらず直射日光が、容赦なく僕の肌を突き刺す。……これだから夏は苦手だ。ジリジリ焼ける。

 

「………………帰りたい」

 

 小言を呟くと、VBが僕の脳内に話しかけてきた。

 

《玄関の扉開けたばっかだけどな。せめて少し歩いてから文句は言えよ》

「…………だいたい何でまだ暑いんだよ。もう9月も半ばだぞ。多少は涼しくなってもいいんじゃないっ? 太陽はどうなってんだっ」

《太陽に文句言ってもしょうがねーだろ。ほら、このままグダグダやってっと遅刻すんぞ》

「地球の温度調節機能がおかしい……。なるほど、そうか……これが地球の温暖化ってやつか」

《だから歩けって》

「反吐が出る」

《出すな》

 

 ――彩南高校の校門を潜り、校門前に立っていた大柄な指導部の先生へ軽く頭を下げて挨拶。

 すると少し驚かれた。なんでさ。他の人と同じようにしただけなのに。笑わないでよVB、凹むぞ。

 テンションが下がったのを感じつつ、下駄箱で上履きに履き替えて1-Bの教室に向かう。

 その途中、目の端に、階段付近で明るい茶髪の男子生が長い黒髪の女子に飛びついて、その女子の下着を器用に脱がしていたのが見えた。

 

「…………うわぁ」

 

 学校の中で堂々と不純異性交友に励んでるよ。普通に引く。TPOをわきまえてほしい。

 数秒の間を開けて、男子は女子にビンタされた。スゴい音だ。それを見てなのか、階段の中腹に立っていたピンク髪の人が楽しそうに笑っている。……笑うところなの?

 こういうのは見なかったことにして。早く教室に行こう。

 

《……あれがウワサのやつか》

(ウワサって?)

 

 周りに聞かれないよう脳内でVBと話す。VBにため息を吐かれた。何故。

 

《お前のクラスで話題になってたろ? この学校にはとんでもない美人の宇宙人のメスがいるってよ》

(ふーん、そうなんだ。ていうか、さっきもだけどメス呼びはやめろって、相手に失礼)

《ハイジの数少ない友達の嬢ちゃんと一緒だ》

(少ない言うな)

 

 まあ……あの子が可愛いのは否定しないけど。

 

《興味無さそうだな》

(うん)

《即答かよ》

(例え廊下ですれ違うことがあったとしても、それだけで終わるでしょ。その人が上級生なら尚更ね。関わられても困るし)

《そういやさっきの階段にピンク髪のやつがもう二人いたな》

(へー)

《少しぐらいは興味持とうぜ、男子高校生》

 

 無茶言わないでほしい。

 辿り着いた1-Bの後ろ扉を開けると、僕に気づいたクラスメイトたちの視線が集まる。

 見たくないもの見たかのように、すぐに視線は外され、各々談笑に戻った。

 不気味、怖い、得体がしれない……――それがクラスメイトたちから見た僕の印象らしい。つまり、良く思われていないうえに嫌われているのだ。慣れてるのでノーダメージ。

 

「ふぅ……」

 

 自分の席に座り、小休止。

 さて、今日の1時間目は――視界が遮られて暗くなる。これは手の感触だ。

 こんなお遊びをするのは、このクラスで一人しかいない。

 背後から楽しげな声が聞こえる。

 

「だ〜〜〜れ」

「それ、何回やれば気がすむんだよ、黒咲さん」

「もうっ、最後までさせてよ!」

 

 手が離れたので後ろを振り返る。

 そこには、おさげの赤髪少女、黒咲芽亜が頬をぷくーと膨らませていた。

 いや、つまんなかったからって、背中をポカポカ叩かないでよ。痛くも痒くもないけれど、クラスの男子たちからの視線が痛い。僕は、これ見よがしにため息を吐く。

 

「はぁ……。いつも言ってるけど、そういうの、あんまりやらない方がいいよ。特に男子とかには」

「なんで?」

「なんでって……変に勘違いされるからだよ。『黒咲さんって、もしかして自分のことが好きなんじゃ?』……みたいな」

「ハイジくんは勘違いしてくれないの?」

「うん。しない」

「え〜。でも、私――」

 

 黒咲さんが小悪魔っぽい表情をする。

 

「ハイジくんにしかしないよ?」

「……………………」

「わぁ! おもしろい顔♪」

 

 全然面白くない。勘違い……いや、絶対しない。してやんない。

 黒咲さんは二学期が始まったタイミングで、このクラスに転入して来たのだ。そして、席が隣同士のためなのか、事ある毎に絡んでくるわけで。

 

「…………僕みたいなやつに話しかけるなんて、黒咲さんは、本当に物好きだよ」

「だって、ハイジくんとおしゃべりするの楽しいんだもん。それにいい匂いするし」

「コラコラ、汗かいてるから嗅ぐんじゃない」

 

 ほらもう、周りの歯ぎしり音が凄いから。

 VBも笑ってんじゃねーよ。

 またため息が出てしまう。

 

「はぁ〜〜〜〜」

「さっきからため息ばっかり。幸せ逃げちゃうよ?」

「誰のせいだと」

「ただでさえ幸薄そうなのに」

「誰が幸薄そうだ」

 

 失礼な女の子だな。こちとら今日のラッキーアイテム、蟹甲殻類大腿部歩脚身取出器具があるんだぞ? これで僕の運気は僅かながら上がる…………って、いつの間に作ってたのかな、コレ。うちには蟹を買う金なんてないぞ。全部本で消えるから。

 と。朝のホームルーム開始を報せるチャイムが鳴って、クラスメイトたちが各々の席へ。

 ん?

 クラス全体……というより、男子がソワソワしているような……?

 扉が開かれ、担任の小川先生が入ってくる。その後ろには、ピンク髪をした少女が二人。

 八重歯を見せた勝ち気そうなツインテールと、大人しく清楚な見た目で肩にかかるくらいのショートヘア。そして、二人には先の尖った悪魔のようなしっぽがあった。それぞれの特徴からして双子は間違いないだろう。

 なるほどね、これがソワソワしていた理由か。

 

「ナナ・アスタ・デビルークだ! よろしくな!」

「モモ・ベリア・デビルークです。よろしくお願いしますね」

 

 ツインテールの少女は明るく元気良く。

 ショートヘアの少女は柔らかく丁寧に。

 第一印象どおりの性格が現れる自己紹介だ。

 

 ふと、他の人に倣って拍手する僕が思いだしたのは、今朝テレビでやっていた誕生日占いの内容。予期せぬ出会いって、まさかこれの事? ……いや、それは流石に自意識過剰かもしれないね。うん、普通にキショい。

 

 この時、ある少女の計画(プロジェクト)に巻き込まれるなんて事を、僕はまだ知らなかった。




【キャラ紹介】
御影琲爾(みかげはいじ)
彩南高校に通う、15歳の高校1年生。
謎の地球外生命体であるVBを、心臓として宿している。
やんちゃなお年頃なので、売られた喧嘩はとことん買うし、(気に入らなければ)自分からも売る。つまり不良。
幸薄い顔と言われがち。暑くても常時長袖。
好きなものは本とカロリーメート。嫌いなものは煙草。

VB
琲爾の心臓で保護者的存在な謎の地球外生命体。
名前は琲爾がつけたもので、なんだかんだ気に入っている様子。
琲爾の影から細長い腕を出すことが可能で、それを用いて琲爾のみならず、他者とコミユニケーションを取っている。というかそうしないと声が出せない。琲爾と2人きり以外の時は、脳内で会話している。
琲爾には心の底から幸せになってほしいと思っている。というかなれ。


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