やっぱり戦闘シーンは難しいですね。
学校帰りの僕を狙って拉致ろうとした宇宙人が言っていた。
自分達は金色の闇に恨みがある。同じ恨みを持つ殺し屋の女と一緒に金色の闇を殺すため地球に来た。そして自分は、金色の闇の居場所を教えてくれた人物の依頼でお前を狙った、と。
その人物は恐らく……いや、確定でヤミさんを唆した先日のヤツだろう。そうとしか考えられないし、顕著で分かりやすい。ていうか行動早すぎるだろ。
どんだけヤミさんを殺し屋に戻したいんだよ……。まったく、ヤミさんは普通の女の子だって言ったのにな。……そう思うのはちょっと傲慢かも?
あの宇宙人を返り討ちでボコって吐かせた場所に、急いで来たのは正解だった。ボロボロで服が剥がされていたし、察するに、襲われる直前だったのだろう。少しでも疑って行かなかったらと思うとゾッとする。マジで胸糞悪い。反吐が出る。
第三王女達がいるのにも驚いた。十中八九巻き込まれたのだろう。よく見れば、美柑さんがぐったりしている。
……もっと殴っとけば良かったかな? 邪魔だったからゴミ捨て場に放置したのは、失敗だったかもしれない。
VBが有象無象を蹴散らしてくれたお陰で、敵の数は、残りわずか。四つ目のデカブツがこいつらの頭で、転がっている女は例の殺し屋? 仲間割れでもしたのだろうか。
まあ、何にせよ、ちゃちゃっと下っ端を片付けて、デカブツをぶっ飛ばすとしよう。
「ん?」
何かを拾った。たいやきのキーホルダー? ……もしかして。
「これ、ヤミさんの?」
「! は、はい。拾ってくれて、ありがとうございます」
「ん。カワイイね、それ」
「……美柑がプレゼントしてくれました。私の宝物……です」
「へぇ。いいじゃん」
ヤミさんはキーホルダーを優しく抱きしめている。よっぽど嬉しかったんだろう。すごく微笑ましい。
さて、正直、第三王女達にVBの存在は知られたくなかったし、これからやる事も見られたくなかった。でも、仕方ないよね。全部、何もかも、アイツらがヤミさんを傷付けたから悪いんだ。
「じゃぁ、そろそろ始めよっか、VB」
『ああ、俺はいつでも大丈夫だ。思う存分、破壊欲求の赴くまま、』
息を長く吐いて神経を研ぎ澄し、右手を前に差し出す。
「
右手に収斂された影が形を成し、真っ黒でシンプルな見た目の金槌へと変わった。
心臓の鼓動と血の流れが激しさを増す。次いで、全身に浮かび上がる罅割れのような痣。それは相変わらず僕に痛みを与える。
今日の体調からして長時間の戦闘は出来ない。だから迅速に、邪魔な奴らを片付けて、デカブツをぶっ壊そう。
転がってる殺し屋の女の人は動かないっぽいし、とりあえず無視でいいかな。……名前なんだっけ? あの宇宙人が言ってたよな? えっと……確か、暴……ぼ……ぜん……、あっ。
「暴食のマゼンタ」
『暴虐のアゼンダな。なんだその売れない大食い芸人みたいな名前は』
おしいじゃん。
「殺せ!! 撃ち殺せ!!」
デカブツが叫んだ命令で、下っ端達が、一斉に銃を僕へと向ける。SFっぽいデザインの銃だ。【
銃口から放たれた光弾の数々。それらを弾き落としながら敵陣に突貫する。残りの光弾はVBに影腕で禦いでもらう。
「まずは一人」
「ごふッ!?」
一番近くにいたタコ顔の男の脇腹付近を殴打。肋骨が砕ける音が手に響いた。
次いで、タコ顔の後ろ――僕から見て十時の方角で銃を撃ち続ける単眼の男をロックオン。【
「“伸びろ”【
伸ばした【
傍観していたデカブツが叫び出す。
「な、何なんだソレは!?」
「これは伸縮自在なんだよ。だからさっきみたいに伸ばしたり、搦めたり、大きくも出来たりする。ほらほら、カワイイ部下が残り一人になっちゃったよ?」
「クソっ、図に乗るな!! 行け!!」
「はっ!」
見るからに身体が硬そうなヤツが突っ込んできた。
僕は走ってそいつの懐に潜り込み、タコ顔の男同様、脇腹を狙って【
「!? ……ちっ」
弾かれてしまい、反動がビリビリと伝わる。
カチカチ野郎がこれ見よがしに笑う。
「ガッハッハッ! 俺の鋼鉄の身体は、圧倒的な硬度を誇る! テメェのちんけなハンマーなんざ痛くも痒くもねェんだよ! オラっ、ぶっ飛びやがれ!!」
極太の腕から繰り出される横薙の一撃。
それを伸ばした【
僕は空中で体勢を立て直し、【
「み、御影、大丈夫かっ? つーか顔にヒビ入ってるぞ!?」
「あ、結城先輩、こんばんは。このヒビはデフォルトなんで大丈夫です、気にしないでください。ああ、それから、第三王女」
「第三王女!? な、なんですかその呼び方は! 私にはモモ・ベリア・デビルークっていう立派な名前があるんですけど!」
「君は、結城先輩と美柑さんを連れてヤミさんの所へ。一箇所に集まってくれてたら、戦いやすいし守りやすい」
「っ。わ、分かりました。……御影さん、あなたは一体……、それにさっき
「全部終わったら、ちゃんと説明する。だから行って!」
【
「学習しねェ地球人だな! そんな攻撃じゃ俺に傷一つ付けられねェぞ! ガッハッハッごっあ!!??」
大きく開けてくれた口の中に【
【
「ぐがぇっ、まっ、待へっ」
「せーーのっ!!」
「ッッッ!!!!???」
力任せで引き抜いて口の中をぶっ壊す!!
これには堪らずカチカチ野郎が悶える。【
第三王女達の方は――よしっ、移動してくれてる。
『ハイジてめぇ、野郎の口ん中に俺を突っ込むんじゃねぇ。汚ぇだろうが』
「めんご」
『うわっ、うそっ、こいつ全然悪びれてない』
本当に悪かったって思ってるよ。うん、マジごめん。
さて、と。
「お待たせ」
「ばっ、馬鹿な!? 私の部下達がっ、こんな呆気なくやらるとは……、相手は地球人のガキ一匹だぞ!?」
「続ける?」
「〜〜〜〜ッッ、巫山戯るなッッ!!!」
鼓膜を劈くほどの怒号。
デカブツがネクタイを引きちぎる。
「地球人風情がっ、マダクアファミリーのボスである私を!! スカム・マダクアをナメるなァ!!!!」
デカブツ――スカムの身体が膨れ上がっていき、スーツを破ってみるみると異形の姿へと変貌していった。
肌は赤黒く、頭部には歪な角が二本。全身は爬虫類のような鱗で覆われている。二メートルほどあった体長も倍ぐらいに。
おまけにSFチックな銃も両刃の大剣に変形していた。……不覚にもカッコイイと思ってしまった。異形化と武器の変形はロマンの塊だし、少年心が擽らてしまう。……って、集中しろ、琲爾。時間はあまりないんだから。
「死ね!!!!」
スカムが凶悪な刃を以て連続で斬り掛かってくる。
その一撃一撃は重く、凌ぐのは至難の業だ。ここは回避に専念して……いや、壊すか、あの大剣を。
幸い恐れているのは火力ってだけで、動きは単調で分かりやすいうえに遅い。このまま回避し続けるのは簡単だけど、時間の無駄だし、【
だから後方跳躍でスカムから距離を取り、再び神経を研ぎ澄ます。
「
影の金槌から、自分の背と同じくらいの巨大な
そして【
「はッ!」
「ぐッ!」
斬り結ぶ大鋏と大剣が火花を散らせた。
互いに弾かれて離れるも、僕は小休止を挟まず突っ走る。そして飛び跳ね、開脚させた【
「小癪な!!」
思惑通りスカムが大剣を横にしてガードしてくれた。そのお陰で大剣に罅が入り始め――
「ぶった斬れろッ!!!!」
「何ッ!!??」
大剣を破壊することに成功!!
スカムが堪らず後ろに下がろうとする。だから僕は、スカムの左手の人差し指を掴んで捕らえ、逆袈裟斬りで畳み掛けた!!
「ぐぁッ!!」
切り裂かれた鱗は舞い、少量の血が噴き出す。ダメージが浅い!!
「クソ、踏み込みが甘かっ」
『ハイジ!』
「!?」
突然VBが僕の胴体を引っ張った。
右側の頬を掠った焼けるような痛み。僕がいた場所には溶けた跡。毒……いや、溶解液、か? え、お前そんなの吐けるのかよ。せこいな。
「ありがとう、VB」
『礼はいらん! あんな物騒なモン吐かれたらやべェぞ!』
「うん!」
体勢を立て直して直ぐに顔を上げる。
スカムの喉が膨らんでいた。また溶解液を吐く気か! でも、あいつ、僕じゃなくて何処を見て……、僕は舌打ちをした。
こいつっ、ヤミさん達を狙ってやがる!!
「くそ野郎!」
僕は全速力で走ってヤミさん達の前へ。既に独特な色をした液体の塊が、こちらに吐き出されていた。
【
僕は【
「みんな、伏せて!! VB!!」
脳を刺す凄まじい痛みは無視。【
「
上空で爆ぜる音が聞こえた。全員を濡らさないよう、影の傘で溶解液の雨を耐え凌ぐ。しばらくすると雨が止んで、付着した溶解液を払い飛ばすと、僕達を中心に円状の溶け跡が出来ていた。
「ふぅ……。みんな大丈夫?」
「あ、ああ。ありがとな、御影。お前のお陰で、モモも美柑も無事だ」
「それなら良かったです。ヤミさんは?」
「私も大丈夫です。……以前戦った時と比べて、能力の精度が上がっていますね」
「そりゃ鍛えましたから。次は僕が――」
何かが飛んできた。それを閉じた【
「な、何なんだっ、貴様は!!??」
「何って、言っただろ? バケモノだって。目の前の僕が普通に見えるのか? ネタ切れなんだったらもう諦めろ」
「ふ、巫山戯るなっ。我々は! 私はまだ!」
「あんたの負けだ」
スカムの方へ歩みを進める。
今度は自動販売機を投げてきた。無駄に足掻きやがって、往生際が悪い!!
公共物を壊すのは法律上アウトだろうけど、避けたら後ろが危ないし、緊急だから致し方ない。さっきの
手で土煙を晴らすと、スカムが部下を残して逃げようとしていた。マジでクソ野郎だな、あのデカブツは。
「待て――」
「私に任せてください!」
第三王女が僕の横に立って携帯電話を操作。すると地面から紫色の巨大花が数本生え、種を弾丸のようにスカムへと放たれた。爆発音が轟き渡る。
「ぐあっっ!!??」
そういえば前もこんな事があったな、あの時は人食植物みたいなのだったけど。第三王女が説明してくれる。
「私は
「植物園……」
「これはジュダ星で採取した、鳳仙花の一種『キャノンフラワー』。さっきみたいに拳サイズの種子が発射出来るんです」
「何それスゴい」
「ちなみに危険指定種です」
ヤバっ。とんでもないもん持ち歩いてるじゃん、このお姫様。
若干驚いていると、キャノンフラワーとやらの入れ替わりでツタが出現し、スカムを捕縛した。どうやら振り解くほどの力はもう残っていない様子。無様だなと思ってしまった。
僕はスカムを捕まえくれた第三王女に礼を言う。
「ありがとう、これで心置き無く、やれる」
「い、いえ。今の私は、これぐらいしか出来ないので……」
「全然そんな事ない、めっちゃ助かってる。あっ。合図したらスカムを解放してね。ツタ諸共やっちゃうかもだから。ツタとはいえ大切でしょ?」
「えっ? は、はい……」
「それじゃあよろしく。――VB」
『……ああ。ぶちかませ』
スカムに向かって全力疾走を開始。【
「ひ、ヒィ!?」
スカムの顔が歪み出す。
そして命乞いを始めた。
「まっ、待ってくれ! わ、我々、マダクアファミリーはこの
「…………」
「そ、そうだ! 女もだ! 女も選ばせてやる! 穴も自由に使わせてやる! き、貴様の女っ、金色の闇も殺さないでやるから、好きに使っていい!!」
スカムの手前まで辿り着く。
第三王女に合図を叫ぶ。
「今!!!!」
「はい!!」
ツタが解け、スカムが解放された。
地面を割る勢いで踏みしめる。
「――歯ァ食いしばろっか、スカム・なんちゃら」
「あ゙あ゙あ゙ぁぁぁっっっっ!!!??? 貴様には、ファミリーのナンバー2の座ぅをぉぉ!!!!」
「要るかそんなもん!!!!!!」
渾身の影の拳がスカムの腹にめり込んで炸裂!!
空や森の奥に殴り飛ばすのでなく、真下へ殴り落とす。
その衝撃は波となって、周囲の空気と木々を轟かせた。
スカムは泡を吹いて戦闘不能。ピクピクと痙攣している。
「はぁぁぁ……、疲れた」
◆ ◇ ◆
「…………………………何……アレ」
わたしはとても混乱していた。
視界は揺れ、胸に当てた掌からは心臓の鼓動と変な感情がぐちゃぐちゃになって伝わってくる。
今日はマスターの計画で、ヤミお姉ちゃんに恨みを持った人達を利用して、ヤミお姉ちゃんの殺し屋としての本能を刺激するはずだった。わたしはそれを遠くのビルから眺めていた。
結果は散々。
ヤミお姉ちゃんは、アゼンダやマダクア達を殺そうとしないし、ボロボロにやられていた。それはもうヒドイまでに。
あんなの、わたしが知ってる金色の闇なんかじゃない……!
ヤミお姉ちゃんなら瞬殺出来たのに……!
……そして、わたしを一番混乱させたのは、彼の乱入だった。
御影琲爾くん。
わたしのクラスメイトで、おもしろい男の子。
彼はマスターに喧嘩を売ったから、マスターの命令でマダクア達に誘拐させて、ここまで連れてくるはずだっだ。
でもそれは失敗に終わったらしく、ハイジくんはあの場所に現れ、ヤミお姉ちゃんの代わりにマダクア達を一掃した。
わたし達しか使えないはずの『能力』を使って……。
アレって
「素敵……♡」
瞬間、今まで感じた事のないゾクゾクとした感覚がわたしの背中をなぞった。それはとっても気持ち良くて、じゅわじゅわして、おへその下あたりを熱くさせる。脳もとろける。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
足がおぼつかなくなり、思わずへたり込んでしまった。
……こんなのってありえない。こんな感情は持っちゃダメ。
わたしは兵器。わたしは金色の闇の妹、赤毛のメア。
ヤミお姉ちゃんを元に戻して宇宙に帰るのが目的。
でも、彼の強さを見てしまった。彼の容赦の無さを知ってしまった。彼に目を奪われてしまった。
――ハイジくんを欲しくなってしまった。
『どうやら計画は失敗したようだな』
「! マスター!」
ぼんやりと現れたのは女の子のシルエット。わたしのマスターだ。
マスターはぼんやりとした姿のまま、今回の件について話を始める。気のせいかな? 思ってたよりがっかりしてない。それどころかちよっと昂ってる?
『刺客をあてがえば、多少なりとも金色の闇の心は揺らぐと思ったが、相当この街に毒させているらしい。これは誤算だった。しかし良い事もあった』
「良い事?」
『こいつを見てみろ』
そう言ってマスターがわたしに見せたのは、顔面がボコボコに腫れ上がった宇宙人だった。両腕も折れている。……あれ、この人が着てるスーツって。
「ひょっとして、マダクアのひと?」
『ああ。私の依頼でミカゲハイジを誘拐しようとしたやつだ。見てのとおり、返り討ちにあって捨てられていたがな。くくく、あの男は随分と私を楽しませてくれる。興味も湧いた』
「ねぇ、マスター。ハイジくんの力って
『それは今から調べる必要がある』
マスターも知らないんだ、ハイジくんの事。
わたしはもう一度ハイジくん達がいる場所を眺める。
「あ。こっち見た♡」
これからもっと楽しくなりそうな予感を感じながら、わたしは少し冷たい夜風に赤毛の髪を靡かせるのだった。
◆ ◇ ◆
「…………ん?」
『どうした、ハイジ』
「いや、誰かに見られてる気がして……」
『妄想か?』
「お前シバくぞ」
騒動が解決して、僕はVBと一緒になんちゃらファミリーと暴食のマゼンタを一箇所に集めていた。第三王女が言うには、銀河警察とやらに引き渡すそうだ。勿論こいつらは逃げないようツタで縛ってある。
一仕事を終えてヤミさん達のところに戻ると、美柑さんが目を覚ましていてヤミさんに抱きしめられていた。第三王女の話では、美柑さんは暴食のマゼンタに操られていたらしい。あの様子だと後遺症は無さそうだ。良かった良かった。
そう思っていると、美柑さんが僕の存在に気づいた。
「あれ? ハイジさん?」
「こんばんは、美柑さん」
「こ、こんばんは……。えっと……なんでハイジさんもここに?」
『俺達がいるのは偶然ってやつだ。嬢ちゃんが気にする事じゃねぇよ』
「そうだったんですね。………………え?」
『ちゃっす』
軽い感じで美柑さんに挨拶をするVB。
え、こいつ勝手に何してんの? 見ろよ、美柑さんの目が点になってんじゃん。何も知らない人からしたらお前はホラーなんよ。
「ハイジさんの影からいっぱい手が出て喋ってる……?」
「こいつはVB。僕の影で僕の心臓だよ。見た目ホラーだし、なんかちょっと虫っぽいけど」
『もうちょいマシな紹介してくれよ。虫は泣くぞ』
「僕の相棒さ。喰べたり刺したりしないから大丈夫だよ~」
「う、うん」
美柑さんがおそるおそるVBと握手する。「ふわぁ~」と年相応でおもしろいリアクションをしてくれた。なんか和む。そして結城先輩と第三王女も、VBとふれあい始めた。
「…………ハイジ」
僕のところにヤミさんが来た。僕が渡したカーディガンをちゃんと着てくれている。…………あれだな。カーディガンのサイズが大きいから、ヤミさんが着るとスカートみたいになって、なんか……こう……チラリズムが、とても。
「ありがとうございます」
「? それは私のセリフでは?」
「ご、ごほんっ。……えーっと、色々と災難だったね。身体の方はもう平気なの?」
「はい。あなた達が来てくれたから……っ、ハイジ、鼻血が……」
「え?」
指摘されて鼻の下を拭う。うわっ、本当だ、気付かなかった。
ヤミさんが申し訳なさそうな表情をして、僕の右頬に優しく触れる。
「……やっぱり無茶しましたよね? あなたの
「それ以上言ったらダメ。僕はヤミさんの友達として、やりたい事をやったまで。無茶はハイになって自己管理が出来てなかっただけだし、この傷も僕のヘマなわけだから、気にしないでよ」
「ですが……」
「はい! この話はおしまい! みんなのところ行こ?」
僕はヤミさんの暗い背中をポンと軽く押す。
すると腕を掴まれた。顔を伏せた彼女の耳は少し赤くなっている。
「どうしたの?」
「…………あ、あなたが……ハイジが来てくれた時、本当に助かりましたし、すごく嬉しかったです。だから、えっと……その、ちゃんとお礼を言わせてください」
「んぇ? あ、うん、どーぞ」
いつもと雰囲気が違うヤミさんに、僕はキモイ感じで返事を返してしまった。
ヤミさんがゆっくりと顔を上げる。
「私のために戦ってくれて、ありがとうございます、琲爾」
そのはにかんだ表情は滅茶苦茶かわいくて、僕の胸を高鳴らせた。
お、おかしいな……、能力はとっくに解除して落ち着いているはずなのに、くすぐったくて変な感じだ。悟られないよう返事を返す。
「ど、どういたしまして」
どうやらこの胸の高鳴りは、しばらく止みそうにないらしい。