姫蜘蛛ですが、なにか?   作:トンTon

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15 クソトカゲと管理者がにじりよってきた!

トラブルがなーんにもない。

 

あまり美味しくなかった火竜を倒した後、美味しいものを食べるために奮起した私達。

蜘蛛子さんと中層を進んでるけど、本当になにもない。

トラブルが無い。

ここら一体の魂を刈り尽くした訳でもないだろうに。

多分蜘蛛子さんの覇気を見て逃げてると思うけど、そんなにひどいかな?

命の危機を感じてヒリヒリするくらいじゃない?

私はそれが気持ちいいけどねー。

ちょっと強くなり過ぎたよね。

蜘蛛子さんが。

私は蜘蛛子さんを助けるにはまだまだ足りない。

この魔物がいない現状は私の身体を食べて飢えをしのいでるけど、一つの味だけじゃ飽きるよね。

自分の足を食べながら考える。

やっぱり迷宮の外に出たいよね。

私の分体は元気にしてるかな。

あー、とにかく最強の敵マグマをどうにかしてくれないかな。

 

なんて油断してた私達は、恐怖に震えることになる。

生まれた時に感じた、あの絶望を。

……正確には、蜘蛛子さんが。

私は感じてない。

まあでも、火竜や猿なんて虫けらにすぎない。

それだけの威圧が、マザーにはあった。

こんにちは、マザー。

私ならシステムを辿って鑑定できる。

けど、それをする気にはなれない。

おぞましいステータスなことは予想できる。

けど、私の本能が言っている。

鑑定すれば、死ぬと。

恐怖は無くても、本能はあるからね。

でもここから観察するくらいなら死なないでしょ。

マザー大きいなー。

あれ?背中になにかいる。

あの桜色のような緋色のような身体……プリンセスタラテクトか。

三体いるね。

私を合わせたら、マザーは四体産んだわけか。

確かに私が生まれた時、周りに私の卵と同じ色の殻が散乱してたね。

ということは私、末っ子なのか。

あ、マザーが結界みたいなのを張った。

何だろうと思ったら、マグマから火龍っぽいのが出てきた。

我が子を守ろうとしてるのかな。

ステータス底上げ系スキルが無かったら、プリンセスタラテクトってそんなに強くないしね。

子を守るっていうハンデがある辺り、いい勝負になるんじゃないかな。

いくらマザーでも火龍軍には苦戦するでしょ。

なんて呑気なことを考えていた私は、その後の光景に絶句……いや感激?した。

マザーがブレスを一発放っただけで、地面にクレーターができたのだ。

火龍軍は塵も残ってない。

マザーすごーい。

でもようやく平和が戻ってきたかも。

マザーは下に戻っていったし。

と思っていたのか?とでも言わんばかりに火龍がダバーっと出てきた。

うわー……。

めんどくさいから地獄門でも数十発やろうかな。

いや、そんなことしたら迷宮崩落するね。

ささっと蜘蛛子さんと作戦会議を済ませ、私は前に出た。

ここは私が囮になる。

火炎無効、物理攻撃無効なら火龍の攻撃ほとんど効かないでしょ。

蜘蛛子さんは火龍の後ろに回り込む。

勿論そっちには向かせないよ、火龍。

虚空魔法を火龍に向けて放つ。

深淵魔法並みの制御を必要とする虚空魔法だけど、その範囲は小さい。

それだけエネルギーの密度が多いってことだけど。

ふとした瞬間に暴発しそう。

魂のバックアップは取ってあるし、死ぬことはないと思う。

火龍の身体に小さな風穴を開けていく。

その隙に蜘蛛子さんは毒合成で火龍に攻撃するという作戦だ。

毒合成は避けられたけど。

……想定外だったのは、毒合成を摂取しかけた後、私を無視して蜘蛛子さんを攻撃したことだ。

私は身を焦がすような痛みを感じた。

蜘蛛子さんが自分を攻撃する可能性を考慮してプランBを提案していた。

あれは幻影!あれは幻影!

外道魔法式の幻影は効果が薄い。

私が制御に力を貸して、空中にホログラムを映すような感じの魔法を蜘蛛子さんに教えた。

幻影を使って火龍を騙している。

それを今やった形になる。

けど……けど!

この燃え盛る怒りはどうすればいいんだろう。

初めて感じた感情……怒りは……。

 

《条件を満たしました。スキル「怒LV10」が「激怒LV1」に進化しました》

 

視界が赤く染まる。

蜘蛛子さん以外の全てを破壊してしまえと、怒りは叫ぶ。

そう、それは私でさえも。

火龍……いやクソトカゲに体当たりする。

腐蝕攻撃で火龍の身体に傷を付ける。

蜘蛛子さんを、よくも!

す べて を 破 壊し て――

 

『ストーップ姫蜘蛛ちゃん!私はここ!正気に戻りなさい!』

 

はっ……そうだった。

怒りに染まった魂を破棄する。

ふぅー、もう私は冷静だよ。

じゃあこのクソトカゲに止めを刺そうか。

私達は糸を使って、攻撃してきたクソトカゲの動きを止め、腐蝕攻撃で止めを刺した。

 

けど、私はそれで許す気なんてない。

ふふ、しっかり魂を回収しておいた。

殺して、蘇生して、殺して、蘇生して。

とりあえず称号の龍の天災に至るまでこれを続けよう。

分割して、増殖させて、複製する。

大事な事なので三回言いました。

それを壊して直して壊して直して……。

あ、繋がりの回路が魂に組み込まれてる。

龍の王とかの系譜だったのかな。

勿論破壊する。

ばれないうちにこういうのは破壊しておくに限る。

よし、天災化完了。

レベルも50になった。

てかまだ進化しないのー?

進化とかガセネタなんじゃないかな。

あ、蜘蛛子さんが今回獲得したスキルポイントで邪眼を取ったみたい。

今は重力修行してる。

多分重力系の邪眼かな?

それ私にもかけて。

 

『いいよー』

 

目指せ重力一万倍克服。

いや死ぬか。

肉体は死んでも魂は死なないし問題ないかな。

――ッ!?空間に歪み!?

なにか転移してくる!

妨害は……無理そう。

邪魔ならできるけど、魔術が弾かれるからめんどくさい。

転移してきたのは、全身が黒い人。

鑑定結果は鑑定不能。

蜘蛛子さんは親近感を感じているようだけど、私はなにも感じてない。

マザーのように超越した存在なのでは?

何を伝えようとしているのかも理解できない。

私は理解できない存在は嫌いなんだ。

いや、蜘蛛子さん以外の全てが嫌い。

じゃあこの黒い人は……敵?

 

『もしもし、こちら管理者Dです』

 

身構えていた私の耳に、日本語が響く。

気がつけば目の前には光る板が落ちていた。

これはどうやって現れた?

私の探知に全く引っかからなかった。

 

『はい。Dです。蜘蛛さんはちょっと待っててください。そこの従魔にも命令を』

 

あれ?このDって人は私が転生者だって知らないのかな。

まあいいや。

待てと言われたので待つ。

その後、Dは蜘蛛子さんと会話をしてから消えた。

いや、正確にはあの光る板が。

それが、管理者との出会いだった。

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