当てもなくこの洞窟を歩く。
正直、逃げることに手一杯で先のことなにも考えてなかった。
どうしよ、お腹減った。
分かれ道も多すぎる。
数えるのに飽きちゃったよ。
ん?少し大きめな分かれ道?
チラッと大きめな方の分かれ道を見ると、なんかバケモノがいっぱいいた。
鋭い角を持つ鹿とか、デカい蝙蝠とか、六本足の狼とか。
ムリムリムリ突破できるわけない。
幸い隠密のおかげで気付かれてないけど、ここを突破するのは無理でしょ。
もう片方はまた迷路。
仕方ない迷路探索するかー、と思ったけど、端っこに三つ目の通路があった。
そこに行ってみる。
そしたら、蜘蛛の巣に捕まった。
うん、蜘蛛が蜘蛛の巣に捕まるとか……私、バカだな!
巣の主も困惑してるよ。
ジッと巣の主を見つめてたら、なんか変な感覚になった。
こうなんというか、体中を舐めまわされる感覚。
ちょっと気持ちいいかも……って私は一体なにをされてるの?
巣の主は一向に襲ってこないし、会話を試みてみようかな。
テレパシーとかできない?こう意志を送る感じで。
《熟練度が一定に達しました。スキル「念話LV1」を獲得しました》
できた。
もしもーし、蜘蛛さん。
戦うのやめませんか?
『うぇ!?』
なんか驚いた反応をしたっきり、ずっと黙る蜘蛛さん。
でも、あの言葉は紛れもなく私が話してる言語。
「うぇ」という発音で表す別の言葉もあるかもしれないけど。
その後見つめ合うこと数分。
『転生者?』
と言葉が返ってきた。
うん!そうだよー、って送る。
そうすると蜘蛛さんは考える動作をして、また時間が過ぎる。
結果私を網から解放してくれた。
言葉は無し。
まあ仕方ないよね、得体の知れない私を信用してくれるはずないもん。
でも、先程狩ったらしい蛙を分けてくれた。
ありがと!って念話で送った。
腹ペコだったから、本当に助かる。
蛙に齧りつく。
苦い、痛い。
腹の中でなにかが暴れている。
多分毒。
私は苦しすぎてのた打ち回った。
いや、苦しいというか痛いというか……。
ていうか、どうして私は体と違ってこんなに冷静なんだろう?
ま、痛いことに変わりは無いよね。
すると、見かねた蜘蛛さんがこっちに近づいてくる。
私は毒で苦しいと蜘蛛さんに伝えた。
疑問の感情が伝わってくる。
『毒耐性』
『……なにそれ?』
『持って、ない?』
そんなもの多分持ってないと思うけど……。
蜘蛛さんは持ってるんだね……。
同じ蜘蛛のはずなのに、どうして私は持ってないんだろう……。
腹痛が痛いなぁ。
すると蜘蛛さんは、毒と糸は?と聞いてきた。
体が怠いけど、ちょっとやってみたら普通にできた。
あ、これはあるんだ……。
というか……そろそろ……限界……。
意識が朦朧としていると、何故か蜘蛛さんが私に噛みついてきた。
みるみるうちに私の体内の毒が蜘蛛さんに吸われていく。
これは……毒を流し込むのではなく、吸い取ったのかな?
おかげで助かった。
でも食べる度にこんなことしてたら、私の体が蜂の巣になっちゃうよ。
回復魔法とか使えないかなー?
《スキルポイントが不足しています》
だよね知ってた。
LV上げないといけないのかな。
LV……よりLoveが欲しい。
天の声が冷たい。
はー……。
蜘蛛さんと一緒にいればLV上げるの楽になるかな。
決めた。私は命の恩人……恩蜘蛛?の蜘蛛さんに服従するよ。
でも「蜘蛛さん」じゃ名前は味気ない。
蜘蛛子さんと呼ぼう。
そういえば、蜘蛛子さんの前世って誰だろう?
うーん……分からないから保留で。
前世の顔なんていちいち覚えていられるかってね。
蜘蛛子さん、養ってね!
尽くすからね!
蜘蛛子さんの巣で魔法の練習をしている。
回復魔法が使えたらなーって思いながら。
魔法って、大体魔力を操作しないと始まらないイメージがある。
だから魔力操作的なスキルがあると思ったんだけど、案の定スキルポイント不足。
でも私は諦めない。
空中に恐らく漂っているであろう魔力を操作しようとしてる。
そんなスピリチュアルなこと中々できないけど。
できたとしてもそれは中二病に見えるだけなんだよね……。
むぅーと唸っていると、巣に反応があった。
蜘蛛子さんと一緒に見に行くと、人間がかかってた。
此方を見て驚いた表情をする人間さん。
大丈夫だよ、私悪い蜘蛛じゃないよ。
念話で話しかけてみても反応が返ってこない。
やっぱり異世界って言語違うのかな?
あ、巣を焼き切って逃げた。
まあそんなことより、人間さんがドロップしていったものの方が重要だよ!
そう、卵。
何の卵かは知らない。
蜘蛛子さんはこの卵を食べたいと思ってるみたい。
蜘蛛子さんが噛みついても殴っても、上から落としても割れなかったけど……。
でも確かにこの卵は毒なんてなさそう。
これなら私でも無傷で食べられるかな?
うん、割れなきゃ意味ないよね。
心なしか蜘蛛子さんからも落胆の感情が読み取れた。
でもなんか絶対に割ってやるぜって燃えてる。
卵に蜘蛛糸を巻きはじめた蜘蛛子さん。
はたして本当にそれで割れるのかはわからない。
でも燃えてるし邪魔しないでおこう。
私は蜘蛛子さんと一緒にいて嬉しいよ。
私はもう蜘蛛子さん色のインクに染まっているからね。
だから邪魔はしない。
もう単純作業に飽きたのか、別の事を考え始めたけど。
その間に私は、再び魔法の練習をする。
どうにかして魔力を操作できないかな……って。
それと並列して蜘蛛子さんのことも観察する。
しばらくすると、蜘蛛子さんがちょっとフラフラする。
大丈夫かな?助けたほうがいいかな?
《熟練度が一定に達しました。スキル「並列思考LV1」を獲得しました》
聞いてみたところ、命に別状はないみたい。
蜘蛛子さんは鑑定をレベルアップさせたかったと語った。
それを語るまで数分を要したけど、それはいつもの事。
それくらいなら流石に待てる。
話が終わったあと、蜘蛛子さんが私の方を向いて「鑑定」と呟いた。
『んうっ……』
変な感覚が私の体を駆け巡る。
鑑定されるとこんな感じなのかな?
『プリンセスタラテクト……?』
蜘蛛子さんがなにかを呟く。
プリンセス?なんのことか聞いてみたら、これは種族名らしい。
蜘蛛子さんの種族はスモールレッサータラテクト。
スモールな上にレッサーなタラテクト。
それに対して私の種族は
なにか文句言われるかな……と身構えるも、蜘蛛子さんは何も言ってこない。
文句の感情より、哀れみを感じた。
そんなに哀れに見えるかな?
……そういえば私、毒耐性無かったね。
それかな?というか十中八九それでしょ。
で、でもでも、蜘蛛子さんに助けてもらったから!
私は役に立てるよ!
絶対、絶対蜘蛛子さんに尽くすよ。
間違いない。
蜘蛛子さーん!捨てないでー!
《熟練度が一定に達しました。スキル「奉呈LV1」を獲得しました》
私の感情の変化を読み取ったのか、蜘蛛子さんが慌てる。
少しの時間私の背中に優しく手を置いて、巣の奥の方に行ってしまった。
その気まずい雰囲気の中、網に獲物がかかった。
いや、私は別に気まずいとか思ってないけど……。
あ、蛙かかってる。
蜘蛛子さんは蛙に向かってなにか憤っている。
そしたら攻撃を喰らいそうになっていたので、咄嗟に庇った。
ジュゥゥゥ、と音を出して傷が痛む。
幸い掠っただけのようで、傷は深くない。
『――ッ!!大丈夫!?』
『そんなことより蛙だよ!』
私は牙で蛙に噛みつき、毒を流し込んだ。
そのすぐ後蜘蛛子さんも蛙を攻撃した。
ふぅ……助かった。
《経験値が一定に達しました。個体、プリンセスタラテクトがLV1からLV2になりました》
《各種基礎能力値が上昇しました》
《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》
《熟練度が一定に達しました。スキル「奉呈LV1」が「奉呈LV2」になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル「暗視LV4」が「暗視LV5」になりました》
《スキルポイントを入手しました》
え?LV2?
これはレベルアップってやつ?
スキルポイントも入手できた。
『レベルアップ』
どうやら蜘蛛子さんもレベルアップしたみたい。
なんか脱皮してる。
蜘蛛子さんは全回復したらしいけど、私はなにもなかった。
なんでだろ?
まあいっか。そんなことよりスキルをゲットしたい。
なにかいいスキルないかな?