姫蜘蛛ですが、なにか?   作:トンTon

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閑話:ソフィアの恐怖体験

若葉姫色に抱いた感情、それは人生勝ち組。

でも、若葉姫色こと白に異様なほど執着している謎の人物、緋。

アイツは「理解不能」

転生者だと言い張っているけど、あんな不気味な奴はいなかったような気がするわ。

人生勝ち組と言えるほどいい顔をしているけど、笑みが不気味すぎて誰も近づかないでしょうね。

深淵を覗きこんだかのように、瞳は底知れない闇を放っている。

魔王ことアリエルさんが恐怖するのも分かる気がするわ。

いつもニコニコと、ずっとニコニコと……。

確かに面倒見はいいけれど……。

この前なんか、とんでもないシーンに出くわしちゃったわ。

 

私の目の前に塵が舞っている。

無謀に、白へと突進してきた狼の魔物。

そいつが爪を白の蜘蛛型の部分と接触させた……そう感じた瞬間、狼は塵になっていた。

あれ?と思い、後ろを向くと……。

無表情で佇む、緋の姿があった。

いつも感情を高ぶらせないのに、その時だけ、緋は激怒していた。

目を赤色に光らせ、口から黒い液体を少しだけ流している。

弱そうに見える。

覇気を感じさせない。

クールな大人。

そんな風に感じていた緋だけど、この瞬間違うと分かった。

アイツは子供。

情緒が発達していない子供。

白に関することだけに反応する、子供。

恋というにはおぞましい、異様な執着。

恐怖耐性が上がるほど、おぞましい。

ていうかあの黒い液体は何なのよ……。

 

そんな人生勝ち組の白と、面倒見はいいし優しいけど不気味な緋は今まさに不幸な目にあってる。

私達は人目を避けた旅をしているけど、物資の補給とかでも限度がある。

だから街に寄る必要がある訳だけど、白と緋は明らかに人外の見た目をしている。

つまりついていくことができない。

あ、でも緋はこの状況は幸せなのかしら。

とにかく、白に対して私はこう思うわ。

ざまあ!

私に酷い扱いしてきた報いね!

緋が懇切丁寧に理由を説明してなかったら、何の意味があるのか分からない教育をさせられてるんだって虚無感に襲われてたと思うわ。

あのスパルタ教育なんて生ぬるい言葉じゃ表せない特訓。

でも、私は逆らえない。

個人が持つ圧倒的な暴力、それがあるから。

置いていかれる白と、それをからかっているアリエルさんの間で火花が飛び交う。

怖い。

冗談とかじゃなく、本当に火花なんだもの。

メラゾフィスが止めてくれたおかげで、今回は事なきを得た。

それにしても、ずっとニコニコしてる緋は本当に不気味ねー。

 

「では、失礼いたします」

 

緋を見つめていた私の身体が、優しく持ち上げられる。

そうよね、私は赤ん坊だもの。

普通に歩いて行こうと思ってたけど、かなり毒されてたみたいね。

チェリーとマリーはレッドという龍人とレーヌさんって蜂人に持ち上げられてる。

チェリーとマリーは、緋が連れてきた転生者。

正直転生者は苦手だったけど、この二人、特に前世は桜崎一成のチェリーことチェリシア・ヴィコウの壮絶な人生を聞かされて、あまり苦手じゃなくなったわね。

姫神殺毒とかいう神をも殺す毒のシャワーを常時浴びながら行う特訓……そんなものを受けされられていたらしい。

この地獄の特訓なんか可愛く見えてくるほどの地獄。

だから、優しくしてあげることにしたわ。

結構懐いてくれてるみたいだし、私は立派なお姉さまに成長したって訳ね。

ちなみにもう一人、前世は手鞠川咲のマリーことマリィムは、姫神殺毒を一度浴びてトラウマになったって言ってたわね。

可哀想だったから、二人纏めて私が面倒見てあげてるわ。

 

再び白の方を見ると、両サイドにアリエルさんが召喚したパペットタラテクトがいた。

これは、監視ね。

まあ、白の方も監視をしてるから文句は言えないんだけど。

レッドとレーヌさん。

この二人は、緋が連れてきた用心棒ね。

アリエルさんが顔を引きつらせるほど強いみたい。

「この二人、私より強そうじゃない?ねえ、緋ちゃん聞いてるの?」とはアリエルさん談。

普通に面倒見がいい人達だけど?

まあ地獄を経験した人達みたいだし、強いのは間違いないわね。

あの人達がいるおかげで、私達は怪しまれずに旅ができる。

貴族一家の旅行みたいに思われてるらしいわね。

レッドが当主で、レーヌさんが妻。

メラゾフィスが従者で、私達が子供っていう設定らしい。

レッドとレーヌさんはラブラブだし、あまり違和感はない。

たまにブルーとグリーンっていう人が挨拶に来るわね。

レッドの兄弟らしいわ。

こうしてみると、ずいぶんと大所帯ねー。

半分くらいが化物だから、問題は無いのだろうけど。

転移であっちこっち行くのは、緋だけじゃないわ。

緋が連れてきた強い人は、転移で移動することが多い。

どうやら特訓してるみたいだけど……正直聞きたくないわ。

白と違って気さくな人ばっかりだから話しやすいんだけど、ね……。

 

 

 

 

 

街には通行料を払うだけで簡単に入れた。

メラゾフィスの恰好からしてなにか一悶着あるかなーと思っていたけど、そんなことは無かった。

深くフードを被った人なんて、珍しくないみたいね。

まあ、レッドが貴族のように振る舞っていたからだろうけど。

貴族の従者に文句をつけるほど勇気が出ないのかも。

それにしても、亜人が住む国の貴族だったというのは驚いたわ。

演技が上手いとは思っていたけど、本当に貴族だったなんて。

その亜人の国は、緋が作ったらしい。

本当に何者なのよ。

 

宿は比較的簡単にとれた。

その後は宿でアリエルさんの話を聞く。

勉強とか、雑談とか。

雑談では、アリエルさんが白との関係に思案していること。

緋の不気味さに、少なからず恐怖していることを聞いた。

優しくて賢いアリエルさんだけど、白と緋の関係は一筋縄ではいかないということかしら。

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