俺は桜崎一成。
何故か異世界に転生してしまった。
古文の授業を受けてたはずなんだが?
気が付いたら赤ん坊だった。
健は、あいつはどうなった?
俺の親友、夏目健吾。
不安と、異世界への困惑。
そして、俺はもう一つ気が付いてしまった。
女子になっている、ということに。
混乱する。
あまりにも情報量が多すぎて、なにをすればいいのかがわからない。
人が何を言っているのかもわからない。
だから俺は、人の会話を聞き取り、文法と単語を理解することに努めた。
体感で五分ほどたったあと、こんな声が聞こえた。
《熟練度が一定に達しました。スキル「並列思考LV1」を獲得しました》
そして俺は察する。
この世界、スキルなんてあるんだ……。
なら、効率良く言語を覚えることができるはずだ。
言語を覚えたら、次は魔法に向かう。
スキルなんてある世界だ。魔法は存在するはず。
そして転移を覚えて、健に会いたい。
早く言語を覚えないと……。
あれから数日、俺は言語を覚えた。
頭を隅から隅まで使い、理解しようとした結果だな。
どうやら俺の肉体はかなりハイスペックらしく、今まで知恵熱らしきものが一度も発生していない。
言語を習得するのにあまり苦は無かった。
ちなみにその過程で、俺の名前を知ることができた。
「チェリシア」それが今世の俺の名前。
父はヴィコウ家という有名な家の当主らしい。
祖父も昔の戦争の生き残りで、相当な強者だ。
そんなに有名な家なら、健の情報収集もできるだろう。
まずは魔法を覚えて、普通の赤ん坊ではないことを証明しなければ。
魔法を使うには、魔力感知、魔力操作というスキルが大前提として必要らしい。
これはスキルポイントを使用して獲得できる。
ほかにも獲得する方法はあるが、一番手っ取り早いのがそれだ。
なんか俺のスキルポイント一億あるらしいからな。
それと、魔力だけでなく他のものも感知できるようなスキルがないか天の声に確認してみた。
あ、ちなみに鑑定はゴミだった。
まあそんなことより、探知というスキルがスキルポイント100で取得できることを知る。
迷わず取得、したのはいいんだが、これも欠陥スキルだった。
発動すると激しい頭痛に襲われた。
鑑定も多少気持ち悪くなったが、これはやばい。
頭痛に苦しんでいると、外道耐性というスキルを習得できた。
少し楽になったので、スキルポイントを使って外道耐性をカンストさせようとする。
残念ながら外道大耐性というスキルにしかならなかったが、幾ばくかマシにはなった。
次は魔力の操作だ。
これは案外簡単だった。
ふよふよと浮かんでいる魔力に願い事をする感覚だな。
これで魔法を構築する。
家に来た神官が使っていた、きらきらする魔法を再現しようとする。
見よう見まねでなんとか成功することができた。
だが、普通はスキルなしで魔法を使うことなどできないらしいということを失念していた。
これは隠しておかなければ。
しかも今日は旅行で馬車に揺られるし。
「殺せ、そいつは危険だ」
盗賊が襲い掛かってくる。
馬車で移動していたのだが、異様に強い盗賊がこの馬車を襲ったのだ。
父は盗賊と戦い、殺された。
恐怖が湧いてくる。
この世界は、殺すか、殺されるか、なのか?
俺に力があれば、父を助けられたのかもしれない。
*30体 のこっている……。
こんな人数に勝てるのか?
っ!そうこうしているうちに、母が!
こ、れは!出血がひどい……。
冷たくなっていく母を見ながら、俺は茫然とするしかなかった。
ああ、なんて理不尽で、こんなにも……。
*ナイフはどこだ
憎い。
とても、憎い。
なにもできない自分自身が、俺を襲ってきた盗賊が。
そして、そんな世界が。
もし、俺に力があれば*全力で攻撃しよう
こんな、下らない世界は破壊して。
*もうこんな所に用はない
…………俺は、ただ。
健に、会いたい。
バシュッ――
『お、怪我はない?』
いつまでも衝撃が襲ってこないことに困惑して上を見上げると、そこには大きな蜘蛛がいた。
その蜘蛛、緋は俺を助けてくれたのだが、拷問ともいえるような特訓をさせられた。
その後は遠くまで旅をすることに。
これが幸せかは俺にはわからない。
けれど、後に手鞠川と根岸に再会できたのはよかった。
まだこの世界も捨てたもんじゃないな、と。
根岸、いや、ソフィアが俺にかなり優しくしてくれるし。
旅のメンバーはやばいやつしかいないが。
魔王がメンバーにいるっておかしいだろ……。
現在、俺は魔族領とやらに向かっている。
この数年間で色々なことがあった。
ソフィア達が人間を捨てる覚悟をしたり、バカでかいUFOが出現したり、緋とその、恋人?の白が弱体化したり……。
淑女教育を魔王からされたなんてこともあった。
仮にも貴族の子なんだから、礼儀作法くらい身に着けておけと。
ソフィアはすぐにやりたくないーって言ってやめたが。
俺はなんか、魔王の目からしてもスペックが化け物だから、絶対やったほうがいいと。
そんな風に言われた。
ちなみにステータスはアホみたいな速度で上昇し、もう平均四万を超えてしまった。
魔王の頬を引くつかせたくらいには才能が化け物らしいな。
何回それを聞かせられたら気が済むんだと俺は思っているが。
心の中では悪態ついても許されるだろ。
「ぁ、う、ぁぁぁ」
「大丈夫、師匠?」
おっと、緋が苦しみはじめたな。
やばいやばい。水でも飲んで落ち着いてもらわないと。
力を失ってから、緋は体が溶け始めた。
どうやら、肉体にケツイが耐えられていないんだと。
ケツイっていうのは、それさえ漲れば死なないものだ。
どういう原理でそうなってんのかは知らん。
だが、これはそれに耐えられる肉体があってこそ。
緋はとてつもなく脆弱な肉体になったせいで、ボロボロに崩壊したり、溶けたりする。
ただ、ケツイだけは俺から見ても圧倒的だ。
だから緋は死なない。
……死ねない、かもしれないが。
俺が寝返りをうって緋をぶん殴ってしまったことがあったんだが、ガラスを爪で引き裂いたような音がしたと思ったら、緋は傷一つついていなかった。
魔王の頬を腫れさせたくらいの怪力のはずなんだが。
あの、ステータス平均九万の魔王の、だぞ?
怖いくらいのケツイだよ!
「緋ちゃん、また抱きしめてあげようか?」
「お願、い、白、ちゃん」
ただ不思議なことに、白に抱き着いたときだけは肉体の崩壊が止まるんだ。
白も白で虚弱体質だから、俺としては重病患者二人の介護をしてる気分だよ。
魔王、レーヌさん、レッドさん、メラゾフィスさんも手伝ってくれるけど。
……問題は、それ一つじゃないんだよなー。
緋の体からは、常に「毒」が生成されている。
俺や手鞠川ことマリィムが浴びたあの姫神殺毒だ。
あれを定期的に解毒しないとずっと苦しむことになるらしい。
苦しむだけで死ねないっていうのが地獄だ。
これから魔の山脈に入る。
下手したらこの二人とも凍り付いて意識を失いかねない。
とりあえず俺たちは物資を買うために最寄りの町に来た。
二人はそこで休んでいる。
俺は散歩にでも行くことにした。
俺空間
「チェリシアちゃん、悪い人についていかないようにね?」
「わかってるわよ、心配しなくても殺して帰ってくるわ」
魔王は心配しているが、俺を過小評価しすぎだな。