久しぶりに激務から解放されたような気がする。
恩人を悪く言いたくないし、病人を悪くも言いたくないんだが、どうしても疲れるんだ。
こんな子供をこき使うなと。
今日くらいは遊んでも許されるだろう。
髪をゴムで括りながら、カツアゲしようとしてきた男達を踏みつける。
なんか路地裏に入ったらさらわれそうになったから返り討ちにしてやった。
ボス格のチンピラから摘出した脳を回しながら考える。
やはり俺は金を持っているように見えるのか?
別に間違いではないんだが。
魔王は金持ちだし。
恐怖を植え付けるために、脳とボス格の本体両方に治癒魔術をかけ、どちらが復活するか実験しようか。
チンピラの一人の腕を食べながら、やっぱり面倒だからやめよう、という結論になった。
なんでチンピラの腕を食べてるんだって?
これはエネルギー摂取のためだ。
人間は魔物と比べてスキルをたくさん持ってるから経験値が多い。
ということはつまり、魂だけでなく体にあるエネルギーも多いということだ。
ならば、その体を有効的に使うためにはどうすればいいか?
食えばいい。
保有していたエネルギーは俺がありがたく使わせてもらう。
腕の一本や二本、大したことじゃないだろう。
流石に脳を食べるのは非人道的だからやめるけどな。
脳をボス格のチンピラの頭に戻し、拘束していたタマシイを入れて回復する。
そして俺の血を一滴与えて、「レッサーインキュバス」にする。
俺はいつからか、人間をやめていたらしい。
オリジンサキュバスとかいう種族になった。
俺の血を他者に与えることで、その存在をサキュバス、もしくはインキュバスに変えることができる。
ソフィアの種族、吸血鬼と似たようなもんだ。
それと違うところは、日光が平気なとことか、まあ色々ある。
喰った腕もこれで治る。
ちなみに今の俺のステータスはこう。
<オリジンサキュバス LV83 名前
ステータス
HP:40830/40830(緑)+10000
MP:99999/99999(青)+10000
SP:38990/38990(黄)40020/40020(赤)+10000
平均攻撃能力:39000(詳細)
平均防御能力:37900(詳細)
平均魔法能力:43090(詳細)
平均抵抗能力:42300(詳細)
平均速度能力:45020(詳細)
スキル
「龍王LV6」「闘神」「魔神」「夢魔」
「毒合成LV10」「薬合成LV10」「神織糸」「操糸LV10」
「眷属支配LV10」「連携LV10」「軍師LV10」「遠話LV10」
「集中LV10」「思考超加速LV10」「未来視LV10」「並列思考LV10」
「並列意思LV3」「高速演算LV10」「帝王」「大魔王LV10」
「物理無効」「火炎無効」「水流無効」「氷結無効」
「暴風無効」「大地無効」「雷光無効」「聖光無効」
「暗黒無効」「重無効」「状態異常無効」「酸無効」
「腐食大耐性LV8」「気絶無効」「恐怖無効」「外道無効」
「苦痛無効」「痛覚無効」「暗視LV10」「万里眼LV10」
「五感大強化LV10」「知覚領域拡張LV10」「飽食LV10」「神性領域拡張LV5」
「英知LV3」「星命LV2」「星体LV1」「星魔LV4」
「禁忌LV5」「迷宮創造LV2」「n%I=W」
スキルポイント:100000
称号
「人族殺し」「人族の殺戮者」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」
「妖精殺し」「竜殺し」「竜の殺戮者」「竜の天災」
「龍殺し」「龍の殺戮者」「無慈悲」「悪食」
「暗殺者」「毒術師」「糸使い」「率いるもの」
「覇者」「王」「英知の支配者」「夢魔」
「夢魔を統べる者」「初級迷宮建築者」>
強い、と思うぞ。
俺の周りが化け物しかいないから判断しづらいが。
全盛期の緋を筆頭に、レーヌさん、レッドさん、ブルーさん、グリーンさん、魔王、全盛期の白。
強い人はたくさんいるからな。
ちなみに、俺は食ったやつの力をある程度コピーできる。
普通あるはずのない龍王があるのもそれだな。
レッドさんと模擬戦したときついカッとなって噛みついたことがあった。
その時に「龍王LV1」というスキルを手に入れたんだ
これって俺の才能をもってしても上げることが大変なスキルなんだよな。
ブルーさんとグリーンさんはLV5、レッドさんでさえLV8らしい。
それで、インキュバスにしたチンピラ共は……放置でいいか。
「お嬢、ご命令はありますか?」
「待機していること、わかったわね?」
「はっ」
チンピラから離れて路地裏をまた探検することにする。
屋根を飛び跳ねながら、翼で飛ぶ練習をするのも忘れない。
重力を操作して飛ぶことは簡単にできるんだが、なぜか翼で飛ぶのが苦手なんだよな。
サキュバスの癖に。
「ユーゴ―王子ー!どこですかー!?」
それにしても、さっきから周りが騒がしいな。
そういえば、魔王がここに帝国の王子が観光に来ていると言っていたな。
特異オーガが発生して危険な状況だというのに、暢気なことだ。
――って、やべっ!
足を踏み外した!
咄嗟に目をつぶる。
俺はステータスが高いから平気なんだが、どうしても人間だったころの認識が抜けないことがある。
俺の唯一の恥とも言っていいだろう。
……?
「おい、大丈夫か」
いつまでも地面に激突しないな、と思って目を開けると、俺は誰かに抱えられていた。
大丈夫かって言われたし、俺はこいつに助けられたのか?
……同い年のソフィアより背が小さい俺を抱えるのはさぞかし簡単だっただろう。
「ええ。大丈夫よ、ありがとう」
いちおう表面上だけでも礼は言っておく。
それが淑女教育で教えられたことだからな。
……ん?俺まさかこいつに羽見られてないよな?
自分の背中に意識を向ける。
あ、やべ。
まだ羽出したままだった。
この様子じゃ、気づいて、ない、よな?
「お前、人間じゃないよな。悪魔ってやつか?ファンタジーだなー」
気づかれてたー!
夢魔の権能の中にある魅了の邪眼で忘れさせるしかない!
忍耐が無くても唯一これだけは使える。
……あれ?こいつ今ファンタジーって言わなかったか?
そんな言葉どこで覚えて……。
「この世界に悪魔っていたっけ?獣人やエルフがいるならいてもおかしくはないのか?」
「……貴方、まさか」
間違いない。
こいつは転生者だ。
いや、別世界から来た神の可能性もちょっとだけはあるが。
それでも、黒い人みたいな覇気は感じないから実質転生者だろう。
「私と同じ転生者?」
「……は?お前も転生者なのか?」
やはりな。
問題はこいつが誰なのか、だ。
俺と同じ平進高校の出身なのか、全く関係のない奴なのか。
「俺は夏目健吾。お前は?」
「……えっ!?健!?」
「は?お前、まさか、一成か?」
「そうよ!私、じゃなかった、俺は桜崎一成だ!」
「久しぶりだなー!一成!」
驚愕。
だが、やっと、やっと会うことができた。
ちょっと日本語を思い出すのに苦労したけど。
異世界に転生したと思ったら性別が変わってて、親を殺されて、地獄の特訓を味わって、人間をやめて……。
そんな生活を送ってきたわけだが、やっと、やっとだ。
二人で今世の思い出を語り合う。
今世の名前も。
「俺の名前はチェリシアだ」
「俺はユーゴ―、だな」
「ってことは王子様か?随分いいとこに生まれたな」
「そういいもんじゃねーぜ?醜悪な貴族が蔓延ってるからな」
「ふーん。それじゃあ、そんなとこぶっ壊して新しい国でも作れば?」
「そうできれば苦労しないんだけどなぁ」
「信用できる人を集めて、いずれ大ユーゴ―帝国でも作っちゃえよ」
「はははっ!いいなそれ!」
「あー、でも、権力を得ようと健に近づいてくる奴がいるかもしれないな。その貴族みたいに」
「……そうだなぁ。一成、何なら王妃になるか?」
「……っ!?いや、俺は、遠慮……して、おく」
醜悪な貴族がどうとかいう話をしていた時、健から王妃にならないか、と提案された。
何故だか分からないが、胸が、少しドキリとした。
いけないな、つい熱くなってしまった。
他者の肉体を食った直後だから拒絶反応が出てるのかもしれない。
《熟練度が一定に達しました。スキル「淫技LV1」を獲得しました》
……ん?なんか今聞き捨てならないことを言われたような気がするが、考え事をしていたせいで聞き逃したぞ?
「ほう、こんなところにいたか」
ゾクッ――
楽しく話していると、後ろから声が聞こえた。
額から汗が落ちるのを感じる。
この声は聞き覚えがある。
これは、俺の両親を殺した奴の、声だ。
「一成、離れろ!」
俺は健に突き飛ばされる。
小さな体では、いくらステータスが高かろうと抗うことができない。
健の方を見ると、エルフの男に胸を貫かれていた。
「ふむ、オカにはどう説明すべきか。子供ごときの力でも空間魔法を使えるボディでは反応できないか」
こいつが、こいつが!俺の両親を殺し!あのUFO事件の時に現れた男!
ポティマス・ハァイフェナス。
「健を、放せ!」
「……だが、これは好都合か。そうだな……小娘、こいつを放してほしくば、貴様の命を貰おう」
「わかった!俺の命は別に捨ててもいい。だが、健に手を出さないでくれ!」
「ごふっ……駄目だ、一成……。お前は、逃げてくれ……」
「ふむ、このままでは死ぬか。おい小娘。治癒魔法をかけろ」
「言われずとも」
俺が健を回復させると、今度は首にポティマスは手を回した。
こいつ……卑怯は誉め言葉とか言いそうな顔してるな。
……だが、待てよ?
空間魔法を使えるボディと言っていた。
それはつまり、弱いということではないのか?
現にあいつは健の速度にすら反応できなかった。
いや、俺の目からしても、ステータスが70はありそうなほどだったが。
ならば、殺せる。
「どうした?まさか私を殺せるなどと考えてはいないだろうな?オカに発見されぬため兵器は所持していないが、内部には埋め込んでいるぞ?」
だが、そんな俺の覚悟も虚しく、ポティマスは無慈悲に告げる。
「………………」
*じゃまだ
『*グローリアタイプα空間魔法ボディ - ATK3 DEF3
*覚えておく価値はない』
怒りと、憎しみ、そして別のナニカ。
熱く燃え滾るものが俺の心の中を支配する。
何故かはわからないが、俺は今ならなんでもできるような気がした。
これが、全能感というものか?
それじゃあ、試してみよう。
緋は言っていた。
腐食攻撃、深淵魔法、虚空魔術、それを使えば、特殊な攻撃ができると。
それの名前は、確か……。
[fight]
39000
「な、に!?」
俺が懐から取り出したナイフを振るうと、ポティマスは崩壊していく。
驚愕した顔をしていた。
そして、怪物を見る目をしていた。
とりあえず、さっさと去ね。
ポティマスの頭を粉々に消し飛ばした。
というか?今俺はどんな顔をしているのだろうか?
そんなに驚かれるような容姿はしてないぞ?
=)
「一成、ありがとよー!」
「っ!?……ああ、無事でよかったよ、健」
そして健とまた会おう、と約束を交わして、俺は帰路につく。
健が感謝の言葉を伝えてきた時、両手を握られた。
それは、なんともないはずなのに、顔が火照って仕方がない。
限界を超えて戦ったから体温が上がっているのか?
それとも、ポティマスから厄介な風邪でもうつされたか。
くそ、全力疾走したみたいに動悸が激しい。
これからは力の制御に気を付けないと……。
《熟練度が一定に達しました。スキル「淫技LV1」が「淫技LV2」になりました》