唾の恨みは忘れないが、ありがとう蛙!
私蜘蛛子。前世の記憶は若葉姫色。
よく分からないままに蜘蛛の魔物に転生してしまったのだよ!
今私は蛙という初の獲物を狩った。
さっそく食べるかー、と蛙を半分ほど食べたあたりで、糸に反応が。
なんだなんだと見にいくと、蜘蛛がかかってた。
ええ……なんで?
蜘蛛が蜘蛛の巣に捕まっているという異様な状況。
攻撃してこない蜘蛛。
驚く私。
膠着状態が続いたけど、私はその蜘蛛を鑑定してみる。
どうせ大した情報出ないだろうけど。
<蜘蛛 名前 なし>
やっぱり役に立たねー!
ほんのり私より赤色してるし、緋色とか桜色とか表記してくれればよかったのに。
そんなことを考えていると、身に覚えのない天の声(仮)が聞こえた。
《熟練度が一定に達しました。スキル「調教LV1」を獲得しました》
調教……。
この蜘蛛、動いてないってことは私の仲間になりたいってこと?
なかまになりたそうにこちらをみている……。
ふはははは、そうか、私の偉大さに屈したか。
一人でうんうん唸っていると、頭の中に声が響いた。
『もしもーし蜘蛛さん、戦うのやめませんか?』
思わず「うぇ!?」と言っちゃったよね。
あれは不意打ちだった。
私人と話すの苦手だし。
生粋の陰キャ舐めんなよ!
ていうかこの蜘蛛喋ったよね。
うん、話しかけられたからには返さないと。
さーて、今から話すぞー、1、2、3、ダー!
待ってくれ!話せばわかる!
話せないけどな!
なんてバカなことを考えている間にも、目の前の蜘蛛はずっと待っててくれる。
なんというか待たせてる罪悪感というか、私なんかが話していいのかとか、負のスパイラルのせいで中々話せない。
落ち着け、こういう時は円周率でも数えよう。
スリー、トゥー、ワン、ファイアー!
って違う違うそれは円周率じゃない。
うむ、一旦落ち着こう。
よく考えたらこの蜘蛛日本語話してたな。
神様の親切設計で全言語が翻訳されてるならいいけど、そうじゃないならこの蜘蛛は私と同じ転生者なのでは?
だから私は、転生者?と聞いた。
すると、うん、そうだよーって返ってきたからもうほぼ確定でしょ。
人と長時間話す勇気なんて私には無い!
だから私は無言で網を外した。
背中で語る。というか察してくれ。
前世のゲームキャラのあいつみたいな感じで、私は背中で語るぞ!
まあ食べ物は半分くらいなら初回限定で分けてやらんこともない。
でも食べてすぐ苦しみ始めたのはビビったね。
こいつ毒耐性もってないのかなって。
いちおう聞いてみると、持ってないみたいだった。
え、どうしよう?
転生者に会って早々死なれるのはちょっと……。
あー、うー、うがー!!!
毒牙が毒を送り込めるなら、その反対もいけるんじゃないか?
ってことで噛みつく。
これで死んだらご愁傷様としか言いようがない。
でもどうせ死ぬし、楽な方がいいでしょ。
って覚悟でやったら、意外と成功した。
《熟練度が一定に達しました。スキル「調教LV1」が「調教LV2」になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル「調教LV2」が「調教LV3」になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル「調教LV3」が「調教LV4」になりました》
調教のレベルが上がったのは、多分感謝してるからじゃないかな。
いいことをした。
蜘蛛ちゃんと同居し始めて数分のこと。
卵を手に入れた。
冒険者っぽい人が卵を抱えてたんだよね。
で、自分で自分を燃やしてこの卵を置いていったみたい。
何に使うねんこれ。
やっぱ食べるためか?食べるためなのか?
だったらまずは卵を割るところからだ!
蜘蛛子選手の全力の右ストレート!
決まったァァァァ!
しかし卵選手、無傷です!なんたる耐久でしょうか!
痛ぁ。この卵が堅すぎて私が逆に割れそうだわ。
結局割れなかったから輪ゴム糸を巻く。
こうすりゃその内割れるでしょ。
その間に鑑定がレベルアップしたから、さっきの蜘蛛に鑑定してみる。
ちなみに私はスモールでレッサーなタラテクトだった。悲しい。
さっきからチラチラ視線は感じたし、文句は言わないでしょ。
<プリンセスタラテクト 名前 なし>
《熟練度が一定に達しました。スキル「調教LV4」が「調教LV5」になりました》
なんで調教こんなにレベル上がるの早いのさ。
ってかプリンセスタラテクトって何よ。
そっちの方が明らかに上位種族じゃん……と思ったけど、毒耐性持ってなかったしそうでもないのか?
よし、プリンセスタラテクトだから姫蜘蛛ちゃんと呼ぼう。
私が姫色だからお揃い!
そんなことを考えていると、また蛙がかかった。
オイ!また蛙かよ!
ポケットを叩けばビスケットじゃなくて蛙が出てきてるよ!
そんな感じでボケてたら、蛙が反撃してきた。
私アホだな!今さら気づく衝撃の真実!
あー!!!姫蜘蛛ちゃんが私をかばって負傷したー!!
あーばばばばば!
くぁwせdrftgyふじこlp!
どうすべき!?
自業自得、自己責任ならいいけど、庇われちゃ自己責任ではなくなるよ!
借りは残したくないし、私は姫蜘蛛ちゃんを助ける。
じゃあな蛙、姫蜘蛛ちゃんを攻撃した恨みは忘れん!
蛙を倒して、私達はレベルアップした。
でも姫蜘蛛ちゃんは全回復しなかった。
そういう仕様なのかな?
ますます私がボケてた責任が重くなる。
《熟練度が一定に達しました。スキル「調教LV5」が「調教LV6」になりました》
でも調教のスキルレベルは上がった。なんで?
マイホームを改造したり、沢山の獲物を狩ったりした私達。
糸で作ったクッションの上でウトウトと眠っていると、いきなり火の手があがった。
丹精こめて作り上げたこのマイホーム。
もう一度見渡してから、呆然としていた姫蜘蛛ちゃんを連れて逃げ出す。
姫蜘蛛ちゃんはボーッと巣の跡を見ている。
やっぱりマイホームを燃やされて悔しいのかな?
私も悔しい。
最後の網を超えて、私達は外へと旅立った。