私は手鞠川咲。
今世の名前はマリィム。
管理者Dとかいうやつのせいで、この滅びかけの世界に転生してしまったわ。
そしてクラスメイトと再会できたはいいものの、何度も死にかけた。
もう戦いたくないわ。
ていうか、どうして前世がただの高校生だったのに戦わないといけないのよ。
これも主に緋色のせいだわ。
私を拾ってくれた恩はあるけど、あの特訓はきつすぎる。
しかも、桜崎くん、あ、今はチェリシアだったわね。
彼女のような才能がないからってもっとひどい特訓を課してくるのよ。
人の心がないわ!
……実際にそんなものがないから困るのよ。
緋色には感情がない。
いや、無かった。
超大きいUFOが出現した事件で、緋色とその恋人の白織が神になった。
その時に、若干人より薄いけど感情を獲得したのよ。
しかも弱くなったから、これでやっと特訓から解放される!
と思ったんだけど、私の体はなぜか闘争を求めているわ。
なんで!?私は別に戦いたくないのに!
なんなら一日中馬車で寝こけていたいわ。
けど、染みついた社畜根性とでも言うのかしら、これのせいで休めない。
休というスキルが生えてきたのに、休めない。
そのスキルがいつのまにか無精にまで進化していたけど、まだ休めない。
どうしてよ!?
……よく考えたら、私だけがやる気ないのね。
チェリシアはポティマス殺す!って感じでやる気あるし、ソフィア姉は戦うことが好きみたいだし……。
多分そんな二人に触発されてるわ。
ああー、働きたくない、寝たいー。
もふもふに癒されたい。
だから私は、定期的にレーヌさんのふさふさの髪を触らせてもらっている。
蜂特有のあのもふもふした毛も。
ちなみにレーヌさんは雌だから毒針があるけど、普段は安全のために収納してくれている。
特訓が終わった後、これだけが救いだわ。
このまま寝てしまいたいところだけれど、今度はチェリシアが緋色たちの介護をしているの見て手伝いたくなってしまう。
それで結局手伝ってしまうのよ。
ああ、休みはどこかしら?
やっと魔族領についたみたいね。
ここまで長かったわ。
笹島くんが理性失ってますって顔で襲い掛かってきたのは怖かったわ。
いちおうこれでも私ステータス七千超えてるのよ?
それを超えてくるって、どんな化け物なの?
たしかにチェリシアと比べたらステータスは見劣りするわ。
けど、私の戦い方は決して一人が前提じゃないの。
なにかを従えて、数の暴力で押しつぶすのが得意なのよ。
なのに、数もくそもない状況で勝てるわけがないでしょうが!
……ふう、取り乱しちゃったわ。
周囲の魔力が私を慰めてくれる。
落ちついたわ。
そんなことをしている間にも、アリエルさんによって話は進められていた。
どうやらこのフィサロ邸で生活するらしいわね。
そこで私達に家庭教師をつけて教育するらしいわ。
でもチェリシアはもうなにもしなくていいんじゃないかしら?
ほら、佇まいからして熟練のお嬢様よ。
毎日夜に嬌声を響かせている人とは思えないわ。
「ちょ、それは誤解よ」
「いーや、毎夜毎夜〇〇〇〇の声がうっさいのよ!」
毎日一人で……そんなんだから色欲系のスキルを獲得するのよ。
アリエルさんが言ってたじゃない、大罪は上げるな……って。
この年で色欲系とかいろいろやばいとも。
ソフィア姉でさえ嫉妬系なのに。
気が付いたら堕淫になってたとか、笑えないわよ。
獲得し始めたの最近なのに。
まあ、無精持ってる私が言えることではないけど。
さーて、それじゃあぐーたらするわよー。
……。
落ち着かないわ!
やっぱり働いてないと私はだめね。
あー働きたくない……。
とか思いつつ、魔術を使う。
魔力感知とか魔力操作とか、システムには便利な機能がいっぱいある。
けど、それに頼らずに魔術を使えとはどういうことなのよ。
そう言ってた時期が懐かしいわね。
私の持っているスキル、「ケモナー」は、色々な魔物を従えやすくなる効果がある。
けど、その範囲を広げて私は魔術へと昇華させた。
支配するのは、この世のすべて。
ちょっと誇張したけど、それに近いわ。
私が火を望めば、魔力が自動的に火となる。
水を望めば、空気中の水蒸気が自動的に水となる。
風を望めば、気圧やらなんやらが変化して風が吹く。
地を望めば、地面が動く。
星、魔力、その他諸々。
色々なものを操ることができるのよ。
だから、使い方によっては龍の結界と同じようなこともできる。
魔術が自主的に役目を放棄してくれるの。
だけど、それをするにはかなり集中しないといけないのよね……。
でも私は一人でバトルバトルを繰り広げるほど器用じゃないし。
これってぶっちゃけ使いにくいのよね。
私にはチェリシアみたいな才能がないし。
だいたいメラゾフィスさんと同じくらいの成長速度だわ。
もともとメラゾフィスさんは普通の人だったんだけど、かなり魂が傷ついていたからそれを緋色が治した。
その結果、私達転生者と同じような成長速度になったの。
とはいっても、それにも得意不得意があるのよ。
私は正面戦闘とか超苦手だし。
このフィサロ邸についてから結構時間が経った。
今私は白織の部屋でお菓子をひったくって食べてるところよ。
数日前までここに糸を張ってひきこもりしてた白だけど、ここの当主の弟がその糸を燃やしたらしく、今では普通に出入りできる。
その時白織が本気で当主の弟をにらんでたのは印象深かったわ。
後でレーヌさんに聞いた話では、生じた煙で緋色がせき込んでたらしいわね。
……あー、そりゃ怒るわ。
緋色はちょっと小突いたら死にそうなんだもの。
やめといた方がいいわよ、当主の弟。
その二人は相思相愛だから。
どちらか片方傷つけば、もう片方が激怒するのが目に見えてるわぁ……。
そんな忠告したのに、こいつはずっとここに来る。
今日は酒を持ってきたみたいね。
え、まじで?贈り物としてそれはどうなの?
まあいいや、試しに私も一口飲んでみよう。
ソフィア姉は酒に超弱いからやめといた方がいいと思うわよ。
チェリシアは……うん、やめといた方が……。
ここ来てからもステータスがバカみたいに伸びてて、今オール六万なのよ?
それなのに暴れたりしたら……。
止めてもそのころにはこの家が消し炭になっているわよ!
だから絶対に止めないと……。
白織は……ほどほどにしときなさいよ?
緋色は……本当に大丈夫なんでしょうね?
まあ、大概なんとでもなるでしょ、この二人なら。
そんな風に考えていた時期が、私にはあったわ。
今では間違いだったと身をもって知ったけど。
なんなのよ!酒飲んで力を取り戻すって!
白の暗黒の波動受けて体中が痛いのよ?
緋色もしれっと体が溶けなくなってるし。
流石に全盛期ほどの力は出せないっぽいけど。
けど、謎生物を生成しては消してを繰り返してるのを見た感じ、魂の増殖はできてるわね。
おっそろしいわー。
緋色って弱そうだけど内包するエネルギーはバカみたいに多いんだもの。
白織はエネルギーがただ多くて強そうなだけ。
それに対して、緋色は底が見えない。
白織の方が神気みたいなの放ってるのに……。
そんなやばいエネルギー量を無制限にコピーできるって……。
うーん、化け物が再誕した感じがするわ。
で、私はいつまで吊るされなきゃいけないの?
はぁ、別にこのまま寝ててもいいけどね。
逆に縛ってくれてありがとうって感じだわ。
やっと激務から解放される……。
《熟練度が一定に達しました。スキル「無精LV9」が「無精LV10」になりました》
《条件を満たしました。スキル「無精LV10」が「怠惰」に進化しました》
《条件を満たしました。称号「怠惰の支配者」を獲得しました》
《称号「怠惰の支配者」の効果により、スキル「睡眠無効」「退廃」を獲得しました》
《スキル「睡眠大耐性LV5」は「睡眠無効」に統合されました》
あっ。