「最近のマリーってさ、なんか追い詰められてる感じがなくなったわね」
あの私ぶっ倒れ事件から数日、チェリーからはたとそんなことを言われた。
……そうかしら?
普通に働かなくちゃっていう気持ちはあるけど。
まあ確かに、寝るようにはなったわ。
三時間くらい。
サイリスが口うるさいから。
寝ろ、寝ろって、私はガキじゃなのよ。
……あ、いや結構ガキだったわ。
でも精神は大人よ。
いくら私よりサイリスの方が年上だからって、私は前世があるから。
あ、でもサイリスはあの空間で将棋の練習をしてたって言ってたわね。
……っまさかあいつの方が年上!?
そんな、訳ないわ。
私は立派な大人のレディ。
よし。
「今日もあの人のところに行くの?」
「そうよ。あいつ、私が来なくて寂しがってるに決まってるわ」
「またまたー、顔に出てるわよ」
「黙りなさい!あんたも似たようなものでしょ!」
「……私のは友情よ」
「嘘吐け!」
「ふふふ、思考超加速LV10舐めるんじゃないわよ。いつでも貴方を追いかけて、問いかけてあげるわ」
「……うっ」
これ以上この話題を続けたら負ける気がしたから、転移で逃げる。
今の私ならほぼ無意識でも転移ができる。
魔力が自動で調節してくれるし。
「……ん?今日は転移で来たのか。珍しいな。前は窓の鍵を閉めたのにこじ開けてきたからな」
「っっっ!悪かったわね!」
「で、今日はなにをする?将棋か?オセロか?」
「……じゃあオセロで。何を賭ける?」
「そうだな……では私の今日のケーキを賭けよう」
「私は緋色からパクってきたチョコを賭けるわ」
「……おい、それは大丈夫なのか」
今回は負けないわよ。
将棋では負けてばっかりだから、オセロで勝ってやるわ。
トランプでも勝てなくなってきたし、もう私がこいつを煽るにはこれしかないのよ。
「ふふふ……私が押してるわよ!ざぁこざぁこ!」
「角はいただいたぞ」
「あ!ちょっ!」
「ふん、雑魚め」
「~~~っ!」
け、結局負けてしまった……。
こいつはどういう頭の構造してるのよ……。
私が勝てるのは最初の数回だけ。
それ以降はこいつが無双してる。
こうなったら、手っ取り早く暴力で従わせるしかないわ。
チョコをサイリスにぶん投げてから、「
特殊な許可証がいるからいつものようにサッと転移って訳にはいかない。
「はい。案内の人、通行証よ。それと、連れが一人いるわ」
「了解しました。ようこそ、お連れの方。スパイダーラ亜人王国へ」
「ん?これは何だ?」
「転移門」
「そうか」
サイリスを連れて門の中に入る。
するとそこは空港のような場所だった。
いや、空港で間違ってはないんだろうけど。
改札をくぐって、外に出る。
別にこの空港に用があるわけじゃないし。
……緋色から聞いてたけど、これは予想外だわ。
目の前にはコンクリートで舗装された橋があり、その先にはビル街が広がっていた。
そして車と思わしき乗り物は当然のように空を飛んでいる。
とりあえず、目的の所に行くわよ。
「ご自由にお持ちください」と書かれた地図を一枚取る。
スイッチを押すと、小さなプレートのような画面に立体地図が現れた。
は?見た感じ空と地底にも街があるんだけど。
空のやつはどうやって浮いてるのか知らないけど、とんでもない技術があるのはわかる。
……わざわざ考えても仕方ないわ。さっさと進むわよ。
「おい、ここは何だ?」
「私も知らないわよ。ただ、ここなら存分に暴れられる場所があるだけ」
「鉄の塊が空を飛んでいるぞ。一体どういうことだ」
「だから私も知らないって!」
すれ違う人は大体が亜人。
動物の耳が生えてる人とか、背が小さくて髭を蓄えたおじさんとか。
天使みたいな羽が生えてる人もいれば悪魔みたいな羽の人もいる。
あ、ちょくちょくダークエルフを見かけるわね。
緑色の肌の人とか、背がすごく高い人もたくさんいるわ。
光景はファンタジーなのに、技術が現代、いやそれ以上で気持ち悪い。
……っと、着いたわね。
お邪魔します。
「おお、来たかマリィム君。歓迎するぞ」
「私、あなたとは初対面のはずなんですけど」
「ふむ。だがまあルシフェル様から色々と聞いているよ」
「そう。で、あなたは?」
「私はフォドゥーイ。以後、お見知りおきを」
「早速どこかで暴れたいんだけど、なんかいい所紹介してくれない?」
「それならルーム3-5くらいがいいかもしれないな。五万程度のステータスなら耐えられるようにしているよ」
「それじゃあそこで。鍵は?」
「受付にあるよ」
受付で鍵を受け取ってから、エレベーターに乗る。
そして3というボタンを押した後に5のボタンを押して、通路に出た。
突き当りには扉がある。
多分あれがルーム3-5ってやつね。
鍵をかざして、ロックを解除する。
すると当然のように扉は自動で開いた。
はぁ、いちいち驚いてたらきりがないわ。
「ここまで来て、いったい何をするつもりなんだ?」
「勿論、貴方を痛めつけるわ」
「私にもお前のように強くなれということか?」
「そ。精々頑張りなさい」
そう言ってから私はサイリスに飛び掛かった。
ここは魔力に満ちている。
致命傷だとしても一瞬で回復するから、訓練にはもってこいね。
さあかかってきなさい。
やっと私は蹂躙できる。
「ざぁこ♡ざぁこ♡」
「……くそっ、今に見ていろよ。寝て起きれば知識は頭に染みつくからな」
「寝る暇なんてないわ。全ての時間を戦いに費やすのよ」
「お前はこんな訓練をしているから寝てないんだろうが……」