姫蜘蛛ですが、なにか?   作:トンTon

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35 クレームと吐息

目を覚ました私は、白ちゃんと共にDにクレームをつけにいくことにした。

なんでそうなったのかは知らないけど、まあ白ちゃんが言うなら何も問題はないでしょ。

 

空中に転移。

白ちゃんはドロップキック。

からのー、私は暗黒波動波!

しかしそれは見切られていたのか、私が塵に変えたのは部屋の壁だった。

 

「いらっしゃい。けれど、もう少し静かにしてほしいわ」

 

登場していきなり部屋の一画を破壊した私達に部屋の主は苦言を呈する。

まあ、そんな文句はどうでもいいので、壁に刺さった白ちゃんの足を抜くためにさらに壁を破壊した。

壁の修理代?

なにそれ美味しいの?

 

そんなことがあったにも関わらずDはいそいそと再びゲームを始めた。

それに白ちゃんはムカついたのか、胸倉をつかんでDを引っ張り上げた。

いいぞー、もっとやってやれ。

しかし、ビリッと音をたててDの服がちぎれる。

あぁ、見るも無残な服を着たDがここに。

 

「少しは恥ずかしがろうよ」

「人に見られて恥ずかしがるような体はしていません。世界一の肉体美だと自負しています」

「あっそう。私は緋ちゃんみたいなひんぬーが好みだけど。この時点で負けてるね」

「それは貴女だけでしょうに」

 

やはりDには話が通じないね。

とりあえず私はクローゼットを開いて……。

うん、なんかよく分からん。

適当に服をぐわしっと掴んでハンガーごと放り投げた。

後はDがなんとかするでしょ。

クレームをつけにきたのは白ちゃんだし、私はこの家から妙なオーラを放つものを回収しようと思う。

Dは白ちゃんに任せた。

 

えーっと、このバットとかやばいな。

後はなんか変な時計もあるや。

ふむ、変な呪いをつけるお札もあるね。

かなり面白い。

……で、さっきから私を見てるメイドさんは誰かな。

 

「あら、気付きましたか」

「気配はほとんどないけど、全くない訳じゃないからね」

「それにしてはこの陰神法を見破っているようですが」

「私は時空間の歪みには敏感なんだよ」

「そうですか。で、貴女は一体?」

「私はただの蜘蛛だよ」

 

目の前にはとても強そうなメイドさん。

白ちゃんから時間と空間を操るメイドさんとか変な剣を持ったメイドさんとかを聞いてはいるけど、なんかこの人は、ただただ小細工なしに強そうな予感がする。

陰神法という魔術のようで魔術でない謎の技能を使っていることからもわかる。

このメイドさんは、強い。

 

「蜘蛛、ですか。それよりも私は貴女に魂が無いことが気になります」

「あるよ、一応」

「それは疑似的なものでしょう?後天的に魂を獲得しただけであり、生まれた時に貴女は魂を持っていませんね」

「あ、気づいちゃった?」

「最近魂の戸籍がおかしいのです。魂が増えたり、減ったり、それは貴女の仕業ですか?」

「え……。知らん、なにそれ。怖……」

「しらばっくれても無駄ですよ。最近様々な神の失踪が相次いでいるのです。龍や堕天使から生まれた悪魔共はまだいいとして、天使までも被害が出ているそうではないですか」

「だから知らんて」

「そして一番問題なのが、魂が不自然に増殖していることです」

「あー?んー?まさか……」

 

それってさ、別の私かな。

なんか天使やら悪魔やら龍やら殺してきて、「これ使って新しい種族つくろうずw」とか言ってたような気がする。

そんな感じで作った亜人だけど、宿らせる魂なんてどこにもない。

だから、システムに介入して、魂を鹵獲。

構成情報を抜き出して自分たちのエネルギーを使って複製しまくってたらしい。

それかなー。それだろうなー。

私ならやりかねない。

 

「やはり心当たりがあるようですね。不穏分子は処分しておくに限ります」

 

そうメイドさんが言ったのと同時に、私は変な空間に連れてこられた。

これは神が作り出す異空間!?

そこはおどろおどろしい地獄のような場所だった。

そこかしこに凶器が散らばっており、まさに「戦う」それだけの場所に見える。

古戦場、みたいな感じかな。

メイドさん、いや、地獄のような世界を作ってるから冥土さんかな。

冥土さんは大きな肉切り包丁を取り出した。

うーむ、はたして勝てるかどうか……。

 

「貴女は強い。それは分かっています。なので、最初から全力でいかせてもらいますね」

「それは遠慮したいなぁ……」

 

「――時間停止――」

 

え。

時が、止まる。

冥土さん以外の全てが静止する。

そして、すさまじいスピードで近寄ってくる冥土さん。

ちょ、これ私が停止空間で意識が無かったら一瞬で負けてるやつじゃん。

ちかみち!

攻撃を避ける。

まあ、体はほぼ動かないんだけどね。

だから空間転移くらいしか避ける術がない。

 

「驚きました。今のを避けますか。貴女は多少時間停止に耐性がある、と」

「大人しく喰らうとでも思った?」

 

そう言ってはいるけど、紙一重みたいな感じ。

時間停止空間だから普通の魔術は使えないし、肉体のみで戦うか、普通じゃない魔術を使うしかない。

普通じゃない魔術、ちかみち。

そして、虚空魔術。

[fight]は腐蝕攻撃が妨害されてるせいで使えない。

龍の結界?

そんなに柔いものじゃない。

魔術を使う回路そのものが、「停止」している。

これでも妨害程度で済んでいる腐蝕攻撃が異常ともいえる。

だから、攻撃するためには……。

 

「……ほう」

「いつも思ってたんだ。なんで皆最初に必殺技を使わないんだろうって」

 

ブラスターと重力攻撃を放つ。

パピルス兄ちゃんに教えてもらった骨攻撃も。

そして、もう一つ特殊な力。

お兄ちゃんが教えてくれた、あの力。

その名も、「Karmic Retribution」

略してKRという。

そしてまたの名を、カルマ。

これは相手の犯した罪によって威力が跳ね上がり、強力なスリップダメージとなる。

ただただ私利私欲のために何かを殺していくと、威力は跳ね上がる。

 

「*冥土 LOVE:貂ャ螳壻ク榊庄 - ATK:貂ャ螳壻ク榊庄 DEF:9999999

*地獄を統べる神

*その攻撃力はDすらも超える」

 

やば、ぶんせきしてみたけどとんでもないことになってる。

測定ができない。

どんだけ攻撃力高いんだか……。

 

「これは……避けないと私でもそこそこ喰らいますね」

 

冥土さんの攻撃を避けながら、こちらの攻撃を叩きこむ。

体が満足に動かないから本調子ではないけどね。

……っと、腕が少し動くようになってきた。

これで重力攻撃に指向性を持たせるのが簡単になった。

とはいっても、冥土さんもかなり抵抗してるし一瞬しか効かないんだけど、ね。

 

「チッ。予想以上にしぶとい。龍神、いやそれより上かもしれないとは想定外です」

「そう簡単にやられるわけにはいかない」

 

当たれば即死。

避けても風圧で体中が痛い。

息も切れてきた。

少し体が溶けているような気もする。

これは……まずいな……。

なんとか[fight]ができれば勝機が見えてくるか?といった感じ。

ブラスターで距離を取りながら戦っているけれど、超スピードで一瞬で距離を詰められてしまう。

ならば骨で迎撃!

だけど、手に持った肉切り包丁でことごとく砕かれている。

それって別に骨を砕くものじゃないよね?

砕け散った破片が当たって多少のダメージは受けているみたいだけど、防御力が高すぎて1ダメージしか与えられてないと思う。

なんとかKRでスリップダメージを与えているけど、HPがそもそも多いのか、本人が自動回復しているのか、少ししか効いていないっぽい。

指を吹っ飛ばしても一瞬で再生してたから再生能力っていう説が濃厚。

ずるくない?ずるいよね?

虚空魔術は貯めに時間がかかるから撃てない。

そもそも、身体強化魔術を使わずに強い方がおかしいんだよ。

ずるくない?ずるいよね?

 

「これで……、終わり、です!」

「っ、ぁ――」

 

――ブシュッ――

 

         50000

 

……っ!

やばいやばいやばい!

ケツイの力を貫通してダメージを与えてきた!

魔王やDでさえ貫けなかったバリアを貫通してきた!

ケツイのおかげで死ぬことはないけど、今にも肉体が消滅しそう。

魔力が、離散する。

このままでは肉体が塵になってしまう。

 

このまま、白ちゃんを置いて?

……。

 

 

 

 

 

ふふ……ゴホッ。

 

このまま……本当に、終わりだ、と思った?

 

こんな、ところで……諦めるわ、けにはいかない。

 

与え、られたチャンスを……台無しにはで、きない。

 

たとえ、何が、あっても……。

 

私は……白ちゃんを、守、る。

 

 

*緋色はかつてないほど真剣になっている

 

最後の一息(LASTBREATH)の、その時まで。

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