姫蜘蛛ですが、なにか?   作:トンTon

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M5 鉄面皮は意外と簡単に崩れるもの

「おい、マリィム。お前を私の母に会わせようと思う。ついてこい」

「は?」

 

サイリスが私に若干追いついてきて不愉快だった今日この頃。

こいつはいきなりトチ狂ったことを言い出した。

だってよく考えてもみなさいよ?

私は平民よ?蛮族よ?魔王軍よ?

とても人族の王族の前に出していい人には思えないわ。

サイリス?ああこいつは今更よ。

もう魔王軍みたいなもの。

でも生粋の人族軍であるこいつの母に会わせるとか……。

やっぱこいつ頭おかしいわね。

転移を覚えてから私がこいつを死地に送り込んでも生還してくるようになってしまった。

いつの間に空間魔術なんて覚えたのよ……。

 

「母上、サイリスです」

「そうですか。入りなさい」

 

うわ、ポーカーフェイスじゃない。

まるで怒ったときのあいつを彷彿とさせるわ。

最近はずっと寝てるみたいだけど。

んー……でも、なんかこの人サイリスにすっごい似てる気がするわ。

演技が上手そう。

まさかこの無表情も演技とか?

 

「サイリス、そこの少女は?」

「今回はその話をしにここへ来ました。この少女を、私の婚約者にしてください!」

「は?」

「え!?」

 

ちょっと待ちなさいよ!

そんなこと一言も聞いてないわよ!

トチ狂ったことをやらかすのはいつものことだと分かってるけど、今回は本当に狂ったのかしら?

 

『私は王子、まあつまりは後継争いとか色々あってだな、派閥とか気にしないといけない訳だ。最近それが面倒になってきてだな。もうなんか、平民みたいな女を娶ったことにすれば気楽になるんじゃないかって思ったんだ。ってことで対外的には婚約者ってことにしろよ』

『は?つまり私にここの王族になれってこと?嫌よ面倒よ死ねよ』

『ボロクソ言うな』

 

どうしてこいつが面倒だからって理由で私が王族なんかに……。

ほんのちょっとでも期待した私が馬鹿みたいじゃない。

……あ、いや、今の無し!

誰が、こんな奴の、婚約者になんて……。

 

「えっと、マリィム・W・スパイダーラ、です」

 

なってあげてもいいわ。

いちおう姓は無いって訳でもないし。

あいつの名前がヒイロ・W・スパイダーラだから、私もそれを名乗っている。

なんか王族っぽい。

私って平民だけど、魔王と管理者の親族ではあるのよね。

あと、白はシラオリ・W・スパイダーラって名乗ってるから、多分もう結婚してるのと同じじゃないかしら。

アリエルさんはアリエルさんだけど。

ちなみにレーヌさんに教えてもらったんだけど、このWはウィングディングスっていう意味があるらしいわ。

確かあいつの父親の姓だった。

てことは私にとっても父か祖父にあたるのかもしれない。

 

「そうですか。では貴女はここで何を成すつもりですか?」

「……そう、ですね。サイリスを横で支えようと思います」

「……サイリス」

「どうしました?」

「若くない?」

「っ、愛に年齢は関係ないのですよ!」

「……そうですか。まあ、いいでしょう。貴女をサイリスの婚約者足り得ると認めましょう」

 

……っ、はぁー。

緊張、した……。

心臓が速く波打つ。

……ええ、これは緊張であって、嬉しさなんてことない。

ないったらない。

 

「どうした?ふっ、まさか緊張して動けないのか?間抜けめ」

「……うっさい、馬鹿」

「貴方達……仲が良いですね……」

 

「で、お前を公的な場で見せないといけない訳だが……そうだな、シュレインの鑑定の儀でいいだろう。そういえばお前は鑑定の儀を……いや、もうしたのか」

「こんな小さな子供が?」

「余計なお世話です!私は、もう、六歳なのに……」

「あ、ああ、ごめんなさいね」

「まあ、もっと幼いころに自分を鑑定しましたが……」

 

無表情な顔に対して、この人は本当は優しい人だというのが伝わった。

このオロオロしている顔が本当の顔なんだと。

普段は演技をしてるみたいだけど、どうして解けたのかしら。

 

「ああ、貴女を見ているとあの子を思い出します。本当はずっと可愛がっていたかったのですが、私には王妃という役割があるので」

「母上、レイレシアを可愛がっていましたね」

「スーも可愛いのだけど、お兄ちゃんっ子だから。でも最近は桃色の髪の子と仲良くなったって聞いているわ」

「チェリー……?」

「母上、言葉が崩れていますよ」

「ああ、そうでした、うっかり」

 

チェリー、またなんか暗躍してるのかしら?

レングザンド帝国の王子とこの国の姫を誑かして、いったいどこを目指しているのか。

挙動不審で帰ってきた時は驚いたけど。

……なんか、顔を赤くして帰ってきて、扇情的だったのを覚えているわ。

やっぱり、食べたのかしら?

血塗れだったし……。

 

「いつでも遊びに来ていいですよ。私も仕事で疲れているので」

「では母上、私はこの後も修行があるので」

「さようなら、お義母様」

 

鑑定の儀は数日後にあるらしい。

それまでに礼儀作法とか習得しておかないと……。

チェリーに聞くべきかもね。

まあでも、やってみたら以外と簡単かもしれないわ。

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