鑑定の儀。
六歳になった貴族や王族が行う、人生初の鑑定のこと。
それによってどのような才能を持っているのかを判断するらしい。
まあ、簡単に言えばクソみたいなお披露目ね。
まだ強くなってないガキに重圧を背負わすんじゃないわよ。
そんな場所に私は出席しなければいけない。
ドレスを着て、化粧をして、私はサイリスと合流した。
「来たか。では行くぞ」
会場に着いた。
そこはシャンデリアが輝き、色とりどりの料理が……って、この料理あれじゃない。
スパイダーラの料理がたくさんある。
あ、地球にある料理のことね。餃子とか、ラーメンとかの中華系は勿論のこと、カレーとかパフェとかとんかつみたいなものもあるわ。
スパイダーラはどこからこんな食材を持ってきたのよ。
まさか、地球から持ってきたとか言わないでしょうね。
「ユリウス、遅いな。遅刻か?」
「貴方の弟だっけ?勇者の」
「そうだ」
久々に地球の料理を食べたいし、何を食べようかしら。
やっぱり王道にカレー?
いや、ここは白米と味噌汁もいいかもしれない。
ちょうど焼き魚があるし。
……なんでこんな貴族のパーティーに和食があるんだとツッコんではいけない。
「すみません、遅れました」
「遅いぞ。何があった」
「弟と妹の晴れ舞台だと思うと緊張してしまって、昨日はよく眠れなかったんです」
あ、ユリウスが来たわね。
この国の第二王子で、勇者。
今私達の陣営がかなり警戒している人物の一人。
それにしても、こいつは演技が下手ね。
サイリスならもっと上手く演技をするわ。
お義母様はさらに上手いわよ。
「あれ?君は誰だい?」
「マリィム・W・スパイダーラ。サイリスの婚約者です」
「えっ」
「おいユリウス、お前何か変なことを考えただろう」
「いや、何でもない。大丈夫」
私の威圧に気づく様子は無い。
この程度の隠蔽が見抜けないなんて、弱いにもほどがある。
あいつから教えてもらった陰神法ほどの隠蔽は見込めないけど、それでも見抜けないなんて。
やはり警戒のしすぎだったかしら。
神話級すら倒せる気がしないわ。
サイリスでさえもう神話級の魔物を倒せるのに。
「これより、鑑定の儀を執り行う」
考え事をしているうちに、鑑定の儀が行われる時間になったみたいね。
それでシュレイン、山田俊輔のステータスを見る。
……存外、大したことはない。
警戒すべきものは天の加護だけ。
それに、やろうと思えばシステムの接続を遮断して、天の加護の効果を消すことすらあいつにはできる。
私は魔術を習得しているからいいけど、習得してない奴はなすすべがないわ。
そう考えると、つくづくあいつってやばいのね。
最近は目を覚ましてもすぐ寝てしまうみたいだけど。
気が付いたら死んでるんじゃないかって、白は心配してる。
私も、やばい奴だとは思っているけどあいつには死んでほしくない。
鑑定の儀が終わり、二次会が始まった。
政争とか何やらいろいろあるみたいだけど、私は興味ない。
サイリスの膝に乗せてもらってケーキにかじりついている。
あら?このシフォンケーキ、結構美味しいじゃない。
食べながらユリウスと黒い人の分体、ハイリンスの会話を盗み聞きする。
魔術で聴覚を強化している私を舐めるんじゃないわよ。
聴覚強化LV10よりさらに耳が利く。
「サイリス王子は、次代の王として相応しいのか?」
「……っ!」
気が付けば、私は威圧をユリウスとハイリンスに向けていた。
体が勝手にユリウスの近くまで転移した。
なにか、よく分からないけど、嫌だ。
サイリスを馬鹿にするのは、許さない。
「あ、いや、そういう噂があってね」
「俺たちが実際にそう思っているわけじゃないぜ?」
「……そう」
「マリィム、いきなり飛び出して……食べかけのショートケーキとチョコケーキはどうした」
「……なんでもないわ。行きましょ」
サイリスは頑張っている。
勉学も、武道も、私と一緒にやってきたんだから。
立派に王の器をしているわ。
でも、どうして私は威圧なんて……。
「流石にあんな小さい子をそういう風には見れないよ」
「……っ!」
私が自問自答していると、ユリウスがシュレインが何かしたみたいな話をしていた。
そこでカルナティアっていう奴の感想がどーたら……。
っていうかあいつ、スーレシアとチェリーが未来予知で見たシュレインを誑かす悪女ってやつじゃない?
いつの間に未来予知ができるようになったのかは知らないけど、それをすぐ習得するスーレシアも大概ね。
才能はチェリーの一歩手前くらいあるんじゃないかしら?
まあそれでユリウスがロリコンではないって言ったわけだけど……。
うん、サイリスはロリコンだからね。
お茶を吹いてて笑いがこみあげてくるわ。
あっはっはっはっは!
「はい、ハンカチ」
「あ、ああ、すまない。ってお前笑ってるだろ」
「あまりにも間抜けだったから。プークスクス」
あ、スーレシアがお義父様の静止を振り切ってシュレインに突撃していった。
やっぱ予知は合ってた……って言ってるのが聞こえた。
しかもかなり速いし……。
あれステータス1000くらいあるんじゃない?
魔術で体を強化してる?
まさかね……。
「おい、結構速い速度で走っていったがスーは大丈夫なのか」
「大丈夫よ。あいつは兄を傷つけるなんてこと絶対にしないわ」
「よく断言できるな」
「あーいう執着心が強いやつは不利益になるようなことは自分の意志では絶対にしないのよ」
とりあえず、あれは無視する。
そろそろ本題をやらないと。
ポティマスに寄生されてる貴族とかがいないか、このたくさんの貴族が集まってる場所で調べる。
あいつが作った、この寄生剥がし装置で。
このために、こんな所までわざわざ来てやったのよ。
「……始めるのか?」
「ええ。ポティマスの毒牙は回らないうちに解毒しておいた方がいいわ」