姫蜘蛛ですが、なにか?   作:トンTon

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5 進化する蜘蛛子さん、見守る私

私と蜘蛛子さんは、簡易ホームで眠っていた。

ふと目が覚める。

肌を突き刺す感覚。

何かが来る。

 

<エルローバラドラード ステータスの鑑定に失敗しました>

 

それは大きな蛇だった。

反射的にクモーニングスターを投げ、私は反転して逃げる。

勝てる訳がない。戦略的撤退。

 

『待って、糸に絡まってるよ』

 

蜘蛛子さんにそう言われて立ち止まると、無理矢理糸を引きちぎりながら絡まっている蛇が見えた。

いける、ここは私達(クモ)のホーム。

クモーニングスターを追加し、レベルアップ回復ができる蜘蛛子さんは蛇に突進していった。

蛇が激しく暴れまわる。

そこに私は延々と糸を追加していく。

蜘蛛子さんは硬い鱗を突破して毒牙を打ち込んでいる。

ただ私は蜘蛛子さんに比べてスタミナが低いと思う。

そんなに糸は出せない。

攻撃力も、防御力も、持久力だって低い。

いつ体力が尽きるか、それが問題だ。

無心に糸を巻きつけていると、蛇が反撃してきた。

私は壁に叩きつけられる。

もう意識が持ちそうにない。

だけど、最後に蜘蛛子さんのサポートはする!

 

直後、私の体からなにかが抜けていく感覚がした。

それを操って、蛇に当てる。

これが、魔法?

それを撃ったきり、私は意識を失った。

 

 

 

 

 

《経験値が一定に達しました。個体、プリンセスタラテクトがLV9からLV10になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「操糸LV1」が「操糸LV2」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「過食LV1」が「過食LV2」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「隠密LV9」が「隠密LV10」になりました》

《条件を満たしました。スキル「隠密LV10」からスキル「隠蔽LV1」が派生しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。個体、プリンセスタラテクトがLV10からLV11になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「奉呈LV3」が「奉呈LV4」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「蜘蛛糸LV4」が「蜘蛛糸LV5」になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

声が聞こえる。

私は目を覚ました。

 

『姫蜘蛛ちゃん、大丈夫?』

 

どうやら蛇は息絶えたらしい。

よかった、蜘蛛子さんが無事で。

私はそれだけで満足だよ。

まあ、レベルアップで傷が回復しないからボロボロなんだけど……。

緑のバーはそこそこ減ってるくらい?

軽傷なら健康に生きている限り自動で回復するはず。

蜘蛛子さんが言うには、私のHPはちょっと減ってるらしい。

これはもっと慎重に動かないと。

あ、蜘蛛子さんが鱗を取り始めた。

私も手伝うよ。

 

鱗とったー!

あぁ疲れた。

硬いし剥がれないし、もう散々だった。

蜘蛛子さんの役に立てたから、そこは嬉しいけど。

 

『うぇ、召喚!?』

 

召喚?なんのことだろう。

聞いてみると、調教のスキルをカンストさせたら派生したらしい。

それで私を契約してと頼んだ。

まあ、いつでも蜘蛛子さんの近くにいるから召喚するような機会は無いと思う。

契約してから蛇を一緒に食べる。

苦い、そして苦しい。

これは絶対毒だね。

蜘蛛子さんは平気そうだけど、私はそんなことない。

結構虚弱だから、ちょっとずつ食べることにする。

 

 

 

 

 

数日が経った。

蛇戦の時に掴んだ魔法のやり方は、もう忘れてしまった。

だから地道に魔力操作の練習をしている。

早くここから離れて旅に出たいのだけど、まだ蛇が残ってる。

新しい獲物もかかってきてしまう。

このままではニートに逆戻りしてしまう!と蜘蛛子さんは叫んでた。

そんなある日、蜘蛛子さんは進化をしたいと言う。

私は進化なんてできないので、蜘蛛子さんを見守っておくしかない。

どうか進化が上手くいきますようにと願いながら、蜘蛛子さんが進化するまでを待った。

ただ一人、静寂の中で。

ああ………………。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「並列思考LV9」が「並列思考LV10」になりました》

《条件を満たしました。スキル「並列思考LV10」からスキル「並列意思LV1」が派生しました》

 

[こんにちは……私?]

 

そんな静寂を破ってくる者が一人。

この所ずっとレベルが上がっていた並列思考がカンストした。

そしたら私が増えた。

並列意思……つまりは私が二人になるということ。

今考えている私が本物だと思うけど、一体どういう理論で偽物と本物を見分けるのだろう。

本物の私はもしかすればあっちかもしれないし、二人に分かれた時点で消えてしまったのかも。

私は一体何なのか?

自分が何なのかあやふやになってくる。

 

[私は……私?私は誰?私はスキル?それとも本物?]

 

もう一人の私も困惑している。

チラリといつものように蜘蛛子さんを見る。

そして解った。

ああ、そうか。私は蜘蛛子さんを助けるためだけに生まれてきたんだ。

その使命の前には、自己の存在定義なんて些事でしかない。

 

[私は私。蜘蛛子さんを助けるために私が生まれた]

 

私は私であるが故に私なのではない。

蜘蛛子さんを一番にするが故に私なのだ。

一番にしない私は私じゃない。

ならば私は紛れもなく私。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「奉呈LV4」が「奉呈LV5」になりました》

 

蜘蛛子さんのために魔物を狩り、蜘蛛子さんに献上する。

そのためには狩りをする。

ということで鑑定と魔法の練習を私に頼もう。

今日から精神担当と呼ぼう。

私は私のことを行動担当と呼ぶ。

今から巣を拡張するよ。

蜘蛛子さんを危険にさらす訳にはいかない。

今回もレリーフ状の糸を配置していく。

スキルレベルは上がっているし、前よりいいものができると思う。

目につく範囲全てを糸で覆っていく。

最終的には操糸の練習。

MPは無くなっても大して問題なかった。

強いて言うなら、意識を失いそうになって精神担当に全てを丸投げしたことかな。

根幹が削れていくみたいなデメリットも無さそう。

意識は、精神担当が鑑定とかで意識を失うなら失う意識をつくっておけばいいと言ったから、それを採用した。

私に任せろとかいうもんだから本当にできるのか不安だったけど、案の定今意識を失ってる。

操糸がLV4になり、私がLV12になる頃、蜘蛛子さんが目を覚ました。

 

『うわぁ……なにこの銀世界』

 

褒めて褒めてとねだると、頭をポンと軽く叩いてくれた。

その後に説明をしてもらう。

蜘蛛子さんはどうやらスモールタラテクトという種族になったらしい。

私が溜め込んでいた獲物を全て食べつくして、お腹いっぱいだと呟いた。

満足してもらえたのなら良かったよ。

それじゃあ出発しようか。

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