ついに、ついにこの時がやってきた。
長年の苦労を重ね、エネルギー回収のための大戦の準備が整った。
緋ちゃんには無理をしてほしくない。
だから私が頑張らないと。
緋ちゃんはたまに目覚めて、私に良いアイテムをくれる。
例えば、バタースコッチシナモンパイっていう美味しいパイとか。
夢の中で作ったって言ってたこのパイは、一口食べるだけで体に活力が湧いてくる。
とはいっても、何故か人間に食わせた場合は消化しきってから活力が湧いてくるらしいんだけど。
魔王や私はそんなことないんだけど……。
そんな感じで聞こうと思った時には、緋ちゃんは既に寝ていることが多い。
無理に起こすのも忍びないし、効果は自分で考えることにする。
この数年、私は色々なことに精を出してきた。
第十軍軍団長とかいう職を魔王から与えられて、その育成だったりとか。
エルフを狩ったりとか。魔族領だけじゃなくて人族領もね。
ギュリギュリの手伝いで、古代遺跡の破壊巡りとか。
吸血っ子へのお仕置きとか。
チェリシアちゃんへの不純異性交遊の指導とか。
マリィムちゃんとロリコン王子の婚約の手続きとか……。
緋ちゃんにキスしたりだとか。
え?最後関係ないだろって?
私には一番大事だわ!
起きてる時少ないんだからな!
まあそんな感じで、頑張ってきたわけですとも。
おかげで戦争まであと一歩ってところ。
あとは進軍するだけ。
戦争に反対的なのはコゴウさんと合法ショタくんくらい。
過半数以上の軍団は進軍に賛成してるし、一部の人にはこの世界の真実も教えてる。
ワーキスさんとかにね。
後は、スパイダーラにも色々動いてもらった。
私が唯一の神であり王って呼ばれてるし、指示を出したら十倍くらいすごいのをやってくれるし。
有能すぎて逆に怖い。
ちなみに今は魔王が部屋に来るのを待っている。
戦争前の最終会議ってやつだね。
まあ開戦で決まりなんだけど、本題は誰がどこを攻めるかの最終確認とすり合わせだね。
忘れてる人なんて流石にいないよね?
「白ちゃん、緋ちゃんは?」
「寝てるよ」
「……そっか」
私だって寂しいさ。
本当ならずっと緋ちゃんとイチャイチャしてたいよ。
でも、この戦争は、世界を救うのは、私の力じゃないと。
緋ちゃんには助けられてばかりだから……。
この世界を再生させるために必要なもの。
それは、エネルギー。
そしてシステム破壊条件を達成するための、全ての支配者スキルのキー。
この支配者キーはもうほとんど揃っている。
傲慢、夏目くん。
憤怒、鬼くん。
色欲、チェリシアちゃん。
嫉妬、吸血っ子。
怠惰、マリィムちゃん。
暴食、魔王。
強欲、空位。
謙譲、スーレシア。
慈悲、誰か。
忍耐、メラ。
勤勉、ポティマス。
救恤、誰か。
節制、教皇。
純血、空位。
残っている敵陣営のキーや空位のキーは、もう誰も取らなさそうならピッキングするつもり。
この全てのキーが揃うことによって、システムは自壊する。
これはこの数年、システムを調べまくった結果判明したもの。
自壊すれば何とかなるって知ってはいたけど、まさかこんなに鬼畜な条件だったなんて……。
流石D、私にできないことを平然とやってのける。
そこに痺れも憧れもしない。
後、ここに含まれない支配者スキルは自陣営しかいないから多分問題ない。
っていうかそんなキーを入れる穴なんてないし。
万能、マザー。
英知、いっぱい。
叡智、チェリシアちゃん。
虚飾、ロリコン王子。
渇望、チェリシアちゃん。
憂鬱、マリィムちゃん。
龍王、龍王ブラザーズとメラの従者二人。
皆いつの間にこんなたくさんの支配者スキルを持ってたんだ……。
最初聞いた時はそう思ったね。
マリィムちゃんなんて普通に生活してただけで怠惰から憂鬱が派生したとか何とか……。
もうシステム半分壊れてるんじゃない?
うん、壊れてないことを祈る。
とりあえずは大戦を起こしてエネルギーを集めるところから。
そうしたら、エルフを滅ぼして、その後は世界を救おう。
「それじゃあ、戦争を始めようか」
魔王がそう宣言する。
本当は戦いたくなんてないくせに。
まあ、それは私だって同じか。
でも、こんな犠牲を払わないと、もう世界は生き続けることなどできないのだから。
戦いたくはない。
でも、時に戦わねばならない時がある。
緋ちゃんに恩を返すために。
真なる世界の平和のために。
「……私は行くよ、緋ちゃん」
この手に世界の平和を勝ち取るために、戦おう。