俺、山田俊輔は、今とても困惑している。
多少の不穏な動きはあったとはいえ、王国でクーデターが起きた。
そしてあっという間に俺は窮地に立たされている。
スーが父上を撃ち殺し、そこにユーゴーが突如として現れ、俺に王殺しの罪を着せた。
どうやらスーは洗脳されているようで、ニタニタと笑っているユーゴーを見ているととても怒りが湧いてくる。
その声を聞いて駆け付けたサイリス兄様も勘違いをしたまま俺に罪を着せ、俺は王城を追われることになった。
どうやら王国は洗脳された人であふれているようだ。
さらに、洗脳されたカティアを救い、なんとか逃げ出すというころ、ユーゴーが誰かを引き連れてやってきた。
「はぁ、なんで弱いのを相手にしなくちゃならないのよ」
「一人やって、効果のほどでも、な」
「仕方ないわねぇ」
それは一言で言うなら、儚げな少女だった。
ただし、とてつもない力を感じる。
俺が今までに出会った何よりも。
<鑑定が妨害されました>
それは、鑑定した結果がこうなっていることからも分かる。
鑑定を妨害するなんて、聞いたことがない。
なのに……。
<鑑定が妨害されました>
<鑑定が妨害されました>
<鑑定が妨害されました>
<鑑定が――
ユーゴー、そしてその周囲にいる黒装束の集団全員から、この結果が返ってきた。
冷や汗が額を伝う。
こんな状況で、俺に勝ち目はあるのか?
とりあえず、何とか逃げ出さないと……。
軽い洗脳だったのか、時間経過で解けた人たちを連れて黒装束の集団とにらみ合うことしばし。
空から黒い光の奔流という矛盾したものが降り注いだ。
その奔流は俺の味方に的確に命中させ、全て急所を外して止まった。
まるで、機動力を奪い、逃げ出させないようにするかという風に。
空から、何かが舞い降りた。
それは、黒く、そして光り輝いている。
悪魔のような羽と、少し捻じれた小さな角、細長いスペード状の尻尾を持った、少女が立っていた。
おびただしい量の汗が顔を伝うのを感じる。
たしかに黒装束の集団は脅威だった。
しかし、この少女は、もっと別格なナニカ。
勝ち目がないとか、そういう話ではなく、戦意さえ湧いてこないほどの。
<鑑定不能>
だめだ。
これは、だめだ。
妨害でもなく、不能。
つまりは、鑑定できるものの外側にいるということ。
俺の鑑定のレベルは10だ。
鑑定できないものがある方がおかしい。
「まだ片づけてなかったの?ソフィア姉」
「ちょっと遊ぼうと思ってたのよ」
「ふーん。まあでももうレベル9だし、問題ないんじゃない?」
「そうね、だったら知るのはすぐそこになりそうね。でもチェリー、貴女には貴女の仕事があったはずよ?」
「停止して終わらせてきたわ」
「便利ねー、それ」
ソフィアと呼ばれた儚げな少女と、チェリーと呼ばれた怪物のような少女が仲良く会話をしている。
こんな戦場でそれができる精神がわからない。
俺が動けずにいると、何故か俺を置いて彼女らは去っていった。
その場にへたり込む。
な、なんとか、生き残った……。
未だに動悸が収まらないのを感じる。
あれは、何だったんだ?
☆
[No.13]
目を覚ますことが難しくなったと聞いた。
少々、タマシイが定着しすぎたようだ。
それに、タマシイが肉体から離れる期間が長くなったことにより毒が少しずつ勢力を増しているように感じる。
[No.14]
ふむ。興味深いな。
どうやら姫神殺毒には自我のようなものがあるようだ。
しかし、それはどうやら宿主を害するようなものではないらしい。
毒を作り続け、それでもまだ宿主を救おうとしているのか。
何とも、ちぐはぐなものだ。
毒を作りながらも、分解する能力を持たないとは。
[No.15]
どうやら、体がまだ動くうちに最後の挨拶を済ませてきたようだ。
ここで毒を遠隔で分解し、ある程度中和できる能力を身に着けてから戻る、と言っていた。
望んだ言葉は、貰えなかったようだが。
……ふむ、私には少々理解できないが、愛するというものは大事なことなのだろう。
[No.16]
あちらの世界のことを私は監視しているわけだが、興味深いことになっているな。
あの白い蜘蛛が一人で世界を救おうとしている。
不可能ではないが、苦しいことこの上ないだろう。
それでもやるというケツイが、愛によるものなのだろうが。
だが……管理者Dが黙っているかは別だ。
もしそんなことになったのならば……。
緋色は暴走しかねない。
暗く、暗く、さらに暗く。
闇は濃度を増してゆく。
影は次第に深く染み入る。
フォトンの数値はマイナス表示。
……目覚めたか。
闇が部屋を覆いつくしてゆく。
そして転移したのは、ふむ。
エルロー大迷宮、最下層。
システム最奥か。
……実に、実に、興味深い。
今までに支配下におさめていたが使っていなかったシステムを全て乗っ取ったか。
これは……。
面白いことになりそうだ。
君たち二人はどう思う?