ついに、ポティマスを殺すときが来た。
とりあえずその前に、システムの支配者権限を掌握しないとだけど。
大体の予定は終わらせて、後はポティマスを殺し、システムを破壊するだけになった。
ユリウスによって大怪我を負って、山田くんによって色々予定が狂って、私はもう油断なんてしないよ、緋ちゃん。
大鎌を持って、私はシステム中枢に向かった。
魔王が私を止めようとしたけど、大丈夫、私は元気だから。
ふぅ、でもなんだか少し、疲れたな。
現在持っているキーを全て差し込み、ピッキングを始めようとした瞬間、やはり防衛機構が発動した。
これは勇者を消そうと思ったときに発動して、システム関連分体の邪魔をしたものだ。
……ただし、私にとっては大した敵じゃない。
現れたのは数人の黒い人影。
とりあえず真っ先に突進してきた奴を鎌で斬る。
そいつは塵になって消えた。
次に霧になって近づいてきた奴を斬る。
避けようとしたみたいだけれど、死がその身を侵食し、霧の人影は消滅した。
呆気ないな。
次に別の人影が糸を飛ばしてきた。
それを鎌で一振り。
それだけで糸は消滅し、さらに本体に向けて腐蝕の波動を一閃。
それだけで糸の人影は消滅。
じゃ、次。
武器やら魔法やら色々なものを放ってくる人影に接近。
そして一閃。
結界を張っている人影と盾を持っている人影にも暗黒波動波を一発。
それだけで腐蝕に身を侵食され、結界、盾もろとも消滅。
なんか知らないけど守られていたふくよかな人影も一閃。
なんか何をしてたのか分からない人影が庇ったけど、これ範囲攻撃だから意味ないのよね。
一緒に消滅させる。
卑怯?容赦なし?
勝てばよかろうなのだ。
じゃ、次、と思ったら、何もしていなかった人影が動いた。
そして高密度のエネルギーを込めた波動を放つ。
これは大鎌では受け止められないとすぐ私は判断し、ナイフを取り出してそれを斬る。
暴食の邪眼の効果をつけて、ね。
私はこれを暴食攻撃と呼んでいる。
すると、全てを出し切ったのかその人影は力尽きた。
残念だけど、相手が悪かったね。
そして、腐蝕の塵がこの部屋全体に充満したのを確認すると、まだ残っている対象全てに向けて腐蝕を侵食させる。
よし、掃除完了。
これで安全だね。
《緊急事態。システム防衛機構EXを発動します》
だけど、流石にシステムもそれは許してくれないらしい。
また人影が私の目の前に出現する。
《初代万能の支配者、初代叡智の支配者、初代龍王の支配者、初代夢魔、渇望の支配者、初代虚飾の支配者、初代憂鬱の支配者、初代多重魂魄の支配者を再現します》
は?
私は耳を疑った。
今、こいつは何と言った?
目の前に、魔王を成長させたような人影、アラクネのような人影、三人の龍の羽と尻尾を持つ人影、小悪魔のような人影、神々しいオーラを放つ二人の人影、そして……。
私が忘れるはずもない。
緋ちゃんの人影が現れた。
そう認識した瞬間、私はすぐにナイフを出す。
油断はできない。
少しでも気を抜いたら、負ける。
そう思った瞬間、私を覆っていた防御結界が消える。
これは……。
真なる龍の結界だ。
まずいと思った瞬間、あほらしいほどのスピードで魔王を成長させたような人影、というかマザーだなこれ。
超スピードで迫ってきた。
ナイフで応戦するも、圧倒的怪力に私は吹き飛ばされる。
そりゃそうだよね。
マザーは全ステータス99999、つまりは今の私の速度を超えている。
そして、真なる龍の結界の中にいるのにも関わらず、小悪魔、チェリシアちゃんの人影が魔術を放つ。
いや、これあれだ。
魔術を無理矢理発動して結界の許容量を超えてるだけだ。
どんだけ威力強いんだか。
仕方ない。
私は異空間「マイホーム」を発動する。
システム中枢でこんなやつらと戦ってたらシステムが壊れちゃうからね。
そしたら、早速八百万の暴食の邪眼を発動。
それで真なる龍の結界とチェリシアちゃんの魔術を無効化する。
やばいな、このエネルギーの量。
禍々しいまでの強烈なエネルギーの量。
とても99999では説明できないほどの。
最近やっと再現できた鑑定を試してみる。
<模造:夢魔の神 LV鑑定不能 名前 模造チェリシア
ステータス
HP:鑑定不能
MP:鑑定不能
SP:鑑定不能
平均攻撃能力:鑑定不能
平均防御能力:鑑定不能
平均魔法能力:鑑定不能
平均抵抗能力:鑑定不能
平均速度能力:鑑定不能
スキル
「神」「システム内攻撃無効」「迷宮創造LV10」「n%I=W」
スキルポイント:鑑定不能
称号
「神」>
……あーっ。
まじかぁ。
やっぱ鑑定って難しいな感じると同時に、なんてやべぇステータスなんだとツッコみたい。
なにさ、称号「神」って。
しかもスキルも随分すっきりしちゃってさ。
チェリシアちゃん強くなりすぎじゃない?
ま、まあまだ何とかなる、か?
とりあえず暴食攻撃を何回も放つ。
が、それは神々しいオーラを放つ一人目、マリィムちゃんの人影が手をこちらに向けると相殺された。
なにあれぇ。
退廃?にしては威力おかしいよね。
まあ鑑定しても絶望するだけだからしないけどさ。
出し惜しみしても負けるだけなので、さっさと[fight]をやる。
幸い緋ちゃんの人影は立ってるだけだから、まずは他から対処しないとね。
一番弱そうな、神々しいオーラを放つうちのもう一人、サイリスの人影に攻撃を避けながら接近、そして一閃。さらに一閃。
miss
miss
が、それも簡単に避けられる。
ただし私はそれも見越していた。
攻撃体制に入っているのも確認し、すぐさま転移して避ける。
ふぅ、危ない。
というかこいつらは息切れしないのか?
息切れしないならやりようがないんだけど。
とりあえず、大きな一撃を撃つためにエネルギーを貯める必要がある。
まずは攻撃しつつエネルギーを貯めよう。
このロケットペンダントにはかなりの量のエネルギーを貯めることができる。
それがどれほどの量なのか私は知らない。
なぜなら今まで限界まで貯めたことないから。
でも、攻撃に使った後の余剰エネルギーをここに貯めて、放つ。
それだけでダメージは与えられるんじゃないかと解釈することにする。
四方八方から攻撃が迫るのを、時に普通に、時に転移で避ける。
暴食攻撃が運良く当たったら時間を停止して避ける。
とはいっても1秒が限界だけど。
それでも転移するくらいはできる。
ちなみに空間遮断をするとチェリシアちゃんが普通に貫通してくる。
理不尽。
しかもあれって、私より空間魔術が上手いとかじゃなくて、力押しで破ってるよね。
ただ無造作にパンチしただけなのにあの威力とかおかしいよ。
おまえは真の大魔王バ〇ンか!
天地とか魔とか闘いとかそんな構えするんだろう!そうだろう!
実際それに近い攻撃してくるから気が抜けない。
ずっと避け続けてて、私の方が力尽きそうだよ。
暗黒魔術の暗黒嵐と腐蝕攻撃を混ぜた暗黒波動波・嵐に暴食攻撃を混ぜつつ少しづつエネルギーを吸収。
これで体力を回復させる。
まだエネルギーを貯めて、よし、できた。
貯まったエネルギーで一閃。
名付けるなら暗黒波動斬って感じかな。
貯めてるから暗黒波動斬・溜か。
それで四人の人影が塵となって消えた。
まだ、四人、かぁ。
そんなことを繰り返し、やっとチェリシアちゃんの人影にとどめを刺す。
もう、なんてボロボロなんだろう。
ユリウスと戦った時もボロボロだったけど、今回はそれも超えた。
で、まだ緋ちゃんは動かないけど、どうしたの?
まさかシステムがバグったとか?
だったら私の勝ちだな。
さっさとピッキングを――
「ごはっ」
何だ。
見えなかった。
触手のようなものが、いや、違うな。
これは糸だ。
糸が私の胸を貫通している。
この私をして見えないほどの速度。
全く殺気も、なにも感じられなかった。
気配すらも。
これが、陰神法の極意。
時を止めて逃げ出そうとするも、止めているにも関わらず緋ちゃんはこちらへ近づいてきた。
ゆっくりと、まるで見せつけるように。
そして緋ちゃんが近づいてくるたび、私は自分の体が崩壊するのを感じた。
緋ちゃんが右足をこちらへ近づける。
そして、次に左足。
ゆっくりと、ことさらゆっくりと。
私の腕、足、胸、様々な場所が崩壊してゆく。
チェリシアちゃんの人影と戦った時とは比べ物にならないほどの傷をこの一瞬で私は負った。
私にはよくわかった。
緋ちゃんの人影だけが、他の人影と違い、細かく体が作られていることに。
その瞳は何を映しているのだろう。
そして、長い、しかし短くも感じられる時間が終わりを迎えようとしている。
緋ちゃんが私の頬にやさしく触れ、口を近づけ――
気が付けば私は、システム中枢に倒れ伏していた。
傷は、ない。
私は寝ていたのか?
これが夢なのか、現実なのか私にはわからない。
ためしに頬をつねってみる。
痛い、ね。
てことは、夢だったのかな?
指を口に近づける。
そして、ゆっくりと触れる。
……まだ残っている唇の感覚を思い出し、私は顔をカッと赤くした。