ありえない光景に、儂は固まる。
兵士がまるでゴミのように爆散してゆき、周囲にはそれを成した骨が散乱している。
赤色の骨、青色の骨、橙色の骨……。
そして、それを行なった人物こそ……。
「やほやほ~ロナント。まじだるだわー。てことでLOVE上げるからさ、そこどいてくんない?」
儂の師、夢喰様じゃった。
しかし、その風貌は前に会った時と随分違う。
服は刺々しい装飾が追加され、全体的に黒く、赤くなっておる。
そして、どこか優しい、しかし秘める狂気に怖気を感じさせるような目が、疲れ果て、それでもあの狂気を失っていない、そんな目に変わっている。
簡単に言うとすごく目つきが悪いのじゃ。
そしてピアスやタトゥーなど、所謂不良というやつじゃな、そんな服装をしておる。
うーむ、正直に言うと儂はかなりビビり散らかしておる。
今すぐにでもここをどき、逃げ出したい気分じゃよ。
とはいえ、D様が折角ここへ転移させてくれたのじゃ。
儂とて祖国を想う気持ちはある。
むざむざと見捨てるような外道にはなりたくないものじゃ。
「ティーバよ、国民に避難指示を」
「しかし、ロナント殿……」
「いいから行け!ここは儂が喰いとめる。正直言って負ける気しかせんが!」
足が震えているのを感じるが、まあ当然じゃな。
あの毒を浴び続けた身からすると、いつ殺されてもおかしくないと言える。
まじで怖い。
とりあえず炎の魔術を放ってみるが、容易くかき消された。
ひぇぇ、なんとも簡単に真なる龍の結界を使わないでほしいものじゃ。
儂とて使えない訳ではないが、それ結構むずいんじゃぞ?
むぅ、手札の中で果たして使えるものがあるか分からん。
詰み、かも。
しかし、儂の魔術は人を救うためのもの。
ここでやすやすと負けるわけにはいかぬわ!
銃を取り出す。
この中には、儂が準備した様々な魔術が込められている。
制御が難しい魔術でも、事前に準備しておけばなんとかなるもんじゃ。
これなら通じる、と思いたい。
「ロナント、それが選択ってことでおk?だったらシバくよ」
「は、はは。なんとも不本意ですがのぅ」
話しつつ、儂は虚空魔術を込めた弾丸、虚空弾を放つ。
卑怯?
上等じゃ。
この方は間違いなく強い。
ならば、どれだけ泥臭くても勝たなくてはならんのじゃ。
普通の方法では一瞬でやられるのがオチよ。
「――限定空間、時間停止――」
ほら来た!
儂は事前に準備しておいた真なる龍の結界を発動させる。
これで儂の周囲だけは正常に時が流れる。
準備をしてなかったら、ぬおっ!
これじゃ、この攻撃じゃ。
この骨で儂は貫かれれておったじゃろう。
勿論虚空弾にも結界が塗装してある。
当たる、と思った瞬間、その弾は塵となった。
まあ、分かっていたことじゃな。
まだ蜘蛛の御姿だった時もやってたしの!
ちょっと気を抜くと、骨の猛攻が儂を襲う。
それを避けつつ、二、三発虚空弾を放つ。
別の魔術を五個ほど並列操作しながら、じゃがの。
儂は曲がりなりにも魔術の天才と呼ばれた男。
魔術を爆速で覚え、使いこなしたんじゃからな!
「ロナント、じゃ、ホントの魔術ってやつを見せてあげちゃおうか」
「えっ?」
黒い光が夢喰様の手に収束してゆく。
そしてその閃光が瞬き――
儂は黒と呼ばれている管理者ギュリエディストディエス、そして女神その人、サリエル様に助けられていた。
「下がっていろ」
「危険な外来生物を確認――」
なんと頼もしい……。
しかしよく見ると、どちらも怪我をしておる。
何故ここにいるのかはわからぬが、少なくとも万全ではないのは確かじゃ。
「何故アリエル様と共にいたはずなのにここへ?」
「あのブラスターが当たろうかという直前、D様が私をここへ転移させたらしい」
「何を意味するのかは分かりません。ですが外来生物は排除するのみです」
そう言って儂の前に立つ二人。
じゃが、やはり無理をしているような気がしてならん。
儂も横へ並び立つ。
「下がっていろと言ったはずだ」
「悪夢様にボロ負けしておりましたな。だったらそれよりも強いと思える者へ勝てるわけがないでしょうが」
「むっ、だが……」
「何、儂はこう見えても魔術の天才。そこそこ戦えると思いますぞ」
「ギュリエ、今は戦力はあればあるほどいいでしょう」
「……ふー、いいだろう。共に奴を止めるぞ」
夢喰様は一瞬驚いたような顔をしたが、それが気のせいだったのかと思うほど次の顔は怒り狂っていた。
本気、じゃな。
儂等が太刀打ちなどできるのかと不安になる。
が、儂は覚悟を決めて魔術を構築する。
いざ魔術を撃つ、といった直前、夢喰様は先程とは打って変わって真面目に話し始めた。
「ギュリエ、私言ったよね。感情があるやつはいいなって。私はそれを知ることができたけど、だからこそ失うのが怖くなったんだよ。だから、私の邪魔をするのなら、殺す」
まずい、と思い魔術を放つも、それが果たして抑止力になったかどうか……。
すさまじい魔術の波動が辺りに吹き荒れる。
これが、ブラックホール、か!
そして、儂はそれに飲み込まれ――
「無様だな、貴様ら」
声が聞こえた。
暗い、目が見えぬ。
「所詮貴様らはその程度なのだ。私のように賢くないからな」
気取った話し方と、どこか頭にくるような声じゃった。
しかし、何故か、それは今だけは信頼できるような声で……。
「この私、ポティマス・ハァイフェナスが全て解決してやろう」