ブラスターが放つ閃光を何とか同程度のエネルギーを出し、大剣に少しヒビが入ったものの相殺に成功した。
黒とサリエル様は閃光に呑まれていったけど。
とはいえ気配はどこからかするので死んではいないはず。
メラゾフィスを治療しつつ、皆に安否を確認する。
一番心配なのはアリエルさんだわ。
「アリエルさーん!無事ー?」
「……う、む!なんとかねー!」
無事なのはいいんだけど、絶望的な状況なのは変わりない。
というか増えてないかしら?
「LOVEを上げる。私はLOVEを上げなきゃいけない」
「殺す、Dを殺す」
「ヘッドドッグにするのもいいかもしれないねぇ……」
三人の緋が目の前にいる。
しかも、同程度のエネルギーを持って。
いや、これが悪夢じゃないならなんだっていうのよ。
止めないと、世界が滅ぶかもしれないのは分かっているけれど。
チェリーが斧を持った緋に突進。
そしてナイフと斧が打ち合う嫌な音が響いた。
やっぱり、チェリーは速いわね。
ほっといても何とかなりそうだわ。
私とマリーはナイフを振り回してる緋と戦う。
フードを被っている緋はどうやら静観する感じみたいね。
今はその舐めプがありがたいわ。
メラゾフィスにはアリエルさんを下がらせるよう指示。
「第十軍!武装の使用を許可!制限の解除も許可!」
第十軍には、骨やブラスターなどの攻撃を破壊して私達のサポートに回らせる。
というか、最低でもフェルミナクラスじゃないと私と一緒に戦っても足手まといにしかならないわ。
ということでフェルミナ、ワルドは私と一緒に戦ってもらう。
チェリーはユーゴーと一緒みたいだし、あそこはあそこで何とかするでしょう。
チェリーなら私も一瞬でやられるんだもの。
だから多分、大丈夫よ。
あ、マリーがサイリス連れてきた。
正直忘れてたわ。
旋回する赤いナイフを避け、緋色に大剣を振るう。
それを容易く避けられるも、その隙にチャクラムとクナイが肉薄。
しかし、ナイフが新たに召喚され、それは弾かれた。
そこに陰神法が付与された二つの腐蝕の波動が襲い掛かるが、そのダメージはすぐに回復される。
私は氷をまき散らし、動きを鈍らせようとする、けど、効いてる感じしないわ。
負けイベントよねこれ。明らかね。
禍根を付与しつつ大剣を振るい、赤いナイフを破壊していく。
けど、赤いナイフを破壊することを優先すれば攻撃ができない。
かといって避け続ければナイフの量が増えてゆき、どうにもならなくなる。
膠着状態、というやつね。
ナイフを破壊さえすれば、大したダメージも無くこの状況を維持できる。
それは相手も同じだけれど。
膠着状態のまま戦うこと数分。
何かすさまじい爆音が聞こえた。
一旦緋から離れて周囲の様子を確認すると、倒れてるチェリーを見つけた。
うそでしょ!?
チェリーは生半可な相手には負けない。
それこそ、私達が数人がかりで苦戦しているくらいの力を持つ相手になら互角以上に戦えるほど。
なのに、そのチェリーが負けている。
……おかしいわね。
あのチェリーが圧倒されるほどの強さを敵が持ってるんだとしたら、私達とそう大差ないユーゴーがミンチになってないのが不思議だわ。
それに、敵の動きも速いとはいえ本気のチェリーだったら互角に戦うことくらい……。
「うっ……おえっ……」
いや、明らかに様子がおかしい。
顔色が悪い。
まともに戦えるような状態ではないのは確か。
なのにどうしてここに来たんだか……。
「まだ、まだ……」
「やめろ一成、下がってろ」
流石にあんな状態で戦わせるのは私も嫌だわ。
けど、あの子のことだし……。
「私は、最後まで戦う……」
やっぱり、言うと思ったわ。
頑固で、融通が利かなくて……。
いや、自己犠牲精神というか……
空気は読めるのに、自分のことは全く考えない。
色欲の支配者はそういう存在だわ。
緋だってそうだったわね。
だから、だから……。
そういう人から愛する人を奪ってはいけないのよ。
「一成、危な――」
「ユーゴー!」
斧が振り下ろされる。
そして、ユーゴーは大きく胸を切り裂かれた。
通常は、あれくらいでは私達は死なない。
けど、あれは魂まで影響を与える攻撃。
外道攻撃という、白でも再現できなかったものを容易く再現している。
全く、恐ろしいことこの上ないわ。
「あ、ぁあぁぁぁああ」
恐ろしい。
超越者とは、私達とは次元が違う。
白然り。
D様然り。
緋然り。
そして、私は忘れていた。
けど、仕方ないじゃない。
私達と同じかと錯覚してしまうのも。
チェリーもまた、超越者なのだとしても。
「*ナイフはどこだ」
空気が震える。
そして、私が戦っている緋の持っているようなナイフをチェリーは作り出した。
それを、ただ、振るうだけ。
それで、勝負は決まる。
9999999
斧を持った緋は消滅した。
それと同時に、チェリーも倒れたけど。
でも、これで倒すべき敵が一人減ったのね。
そう思った直後、凄まじい怖気が体中を駆け巡る。
目の前に拳が迫っていると認識した瞬間、私は体を逸らしてそれを回避した。
「ふふふふ、えへへへへ、トロフィー、やっぱり、トロフィーは白ちゃんのがいいなぁ……ふふふへへへへ」
狂ったように独り言を呟く、緋がそこにいた。
頭には四つのヒビがあるように見える。
それに、何より恐ろしいのは……。
血のような液体まみれの、小さな白の人形を持っていることだ。
狂った緋に気を取られていると、フードを被った緋が移動していることに気が付いた。
どこにいった!?
「さ、本当の戦いはこれからだよ」
「あーあ、ホラーはやられちゃったかぁ」
「えへへへ、えへへへへへ。始まるね、えへへへ」
「「「
声が聞こえて、振り向く。
そこには、絶望があった。