悪夢だ。
あれほど頼もしかった緋色様が、敵に回っている。
それはまさに
瞬きをする度に人が死に、建物が破壊される。
私が避難誘導をするも、それすら碌に間に合っていない。
緋色様が触手を振るうのが見える。
それだけで、美しい魔族の都は跡形もなく破壊されてゆく。
そこら中に絶叫、悲鳴、泣き叫ぶ声が響く。
触手に刺し貫かれる者。
衝撃で爆散する者。
倒壊した建物に埋まり、窒息する者。
怖気のする液体に触れ、衰弱死する者。
突如として地面から生える骨に貫かれる者。
黒い龍の頭の骨のようなものが放つ光線を受け、消滅する者。
ここには等しく死があった。
兵士、住人、無垢な子供。
皆等しく、悪夢を感じていた。
あぁ、なんと無情だろうか。
こうして私が避難を、励ましの言葉を叫び続けているが、それでも刻一刻と希望が消え失せてゆく気配を感じる。
戦える者は真っ先に殺されてゆき、屍が積み重なってゆく。
しかし、それは一部。
大多数は跡形もなく消滅し、塵となっている。
こうしている間にも兵は数を減らしている。
滅亡の時が近づいていると感じる。
そして、我が魔族の最後の希望さえ容易く握りつぶされるのだ。
ダラドが死んだ。
頬に涙が伝うのを感じる。
希望は時とともに消えてゆき、そこには絶望しか残っていない。
虚無だ。
私がこうして避難誘導をしていることに、はたして意味はあるのだろうか。
決意が鈍ってゆく。
目の前が暗くなってゆく。
一度死に、生き返った私には、何も為せないのだろうか。
これが魔族への罰だとでも言うのか?
MAエネルギーを浪費し、星を滅亡に招いた。
その罪は知っている。
しかし、それでも魔族はここまでやり遂げてきたのだ。
たとえまだ償えていないとしても、罪から逃げたわけではないのだ。
ずっと、魔族は贖い続けている。
それこそ、魂が滅びる直前までずっと。
それは、無駄だったとでも言うのか?
あぁ、どうか、どうか。
誰か、誰でもいい。
魔王様でも、白様でも。
何か、何でもいい。
悪魔に魂を売っても、世界にこの身を捧げてもいい。
贖った後の、励ましを――
「良いだろう。私も折角貰った肉体を生かしたいからな」
今にも膝から崩れ落ちそうな私に、声が聞こえた。
周囲に光が瞬く。
思わず目を閉じてしまうほどの、ケツイの光。
そこには、横縞のシャツを着た子供と、ヤギのような獣人が立っていた。
「行くぞ、アズ!」
「仕方ないな、キャラ!」
「「カオスセイバー!!」」
星と光が輝き、二本の剣が触手を切り裂く。
ダラドでさえ全力を賭して傷つかなかったあの触手を、さも当然のように。
「ショッカー・ブレイカー!」
「スター・ブレイジング!」
今度は流星と雷が降り注ぎ、広範囲に衝撃が走る。
虹色の光の波動は、あたりを優しく包み込んだ。
*きぼうを いだきつづけた……
*ダメージが けいげんされた
その光は私達を包み込み、触手はもう脅威では無くなった。
生き残った者には触手が当たってもかすり傷にしかならず、虹色の光が常に回復してくれることもあり、ダメージは無いに等しい。
「邪魔しないで、キャラ。ガスターブラスター」
「そうはいかんな、ここに住まわせたのはお前だろう。カオスバスター」
あの絶望の象徴たる黒い光線と、虹色の光線が衝突する。
それは全く互角に拮抗し、その隙にアズと呼ばれた者が召喚した雷と流星が、先程よりも激しく降り注いだ。
「ショッカー・ブレイカーII、ギャラクティック・ブレイジング」
明るく輝くそれは、私達が希望を抱くには十分。
あぁ、なんと、なんと、優しい光だろうか。
「「カオススライサー!!」」
さらに剣が触手を切り裂き、光は闇を消し去ってゆく。
禍々しい液体は虹色の奔流に消えてゆく。
「さて、そろそろ終わりにしよう」
「嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ。白ちゃんを取り戻すんだ」
「安心して、ヒイロ。僕達も手伝うよ。勿論、平和な方法でね」
「止めて止めて止めて。私は私は私は」
「「ハイパーミッシング」」
暖かい……。
それは優しく緋色様を包み込み、気が付いた時には消えていた。
……私は、今まで魔族の為に生きてきた。
だが、こんな風に、こうしてまで救いたいと思うような人が、緋色様にはいる。
ならば私も、それを手伝おうではないか。
平和的に。