私は緋ちゃんに歩み寄る。
いや、緋ちゃんの分体か。
これは緋ちゃんであって緋ちゃんではないもの。
作る分体の力に差は無いけど、逆に差を作ることもできる。
それが、思考の誘導。
お義父さんから聞いた。
緋ちゃんのやろうとしていること、その全貌を。
「ヒイロはね、人柱になろうとしているんだ」
凶悪性を高めた分体を放ち、大戦を起こす。
そして、大勢のスキルの成長と、死が集まる。
するとどうなるか?
MAエネルギーがどんどんたまっていく。
そして、最終的には死者を全て生き返らせ、全員のステータスを還元。
それをもってシステムを破壊する。
Dが作ったシステムから緋ちゃんの作ったシステムへと変更し、自身がその人柱となることによって人類を、いや、私を助けようとした。
緋ちゃんの作るシステムには限界が無い。
だから、Dの興味が私から逸れることを望んだのだと思う。
「わざわざ異世界のオイラの能力を解析して再現してのけたんだぜ?すごい奴だよ」
上の義兄、サンズはそう言って、肩を竦める。
下の義兄、パピルスは心配そうな顔でそれを見ている。
なんとも、自分が無事であることをまるで勘定に入れない緋ちゃんらしい。
ナイフを構える。
ダガーじゃない、ナイフを。
これはほんもののナイフ。
そして、首にかけるのはロケットペンダント。
感じる鼓動が、私を勇気づける。
皆はよく分かってなかったみたいだけど、この緋ちゃんは幻影のようなものだ。
ケツイによって肉体を構築しただけの、不完全な分体。
そんなの、このナイフを一振り、空振りするだけでいい。
MISS
戦う意志は、私にはない。
それを一度証明し、そして――
[MERCY]
*にがす
システムを崩壊させ、生命を根絶させるケツイと、星を再生させ、生命を存続させるケツイ。
殺戮と平和主義は紙一重だ。
その両方のケツイを持つことで、私は力を得ることができた。
私のタマシイは、白く、そして赤く輝く。
まるで、終わりを告げる夕焼けのように。
これからの始まりを連想させる暁のように。
幻影は消えた。
次は本体へと向かう番だ。
「そこだね、知ってるよ。緋ちゃんが行きそうな場所だもん」
システム中枢。
緋ちゃんの本体が存在する場所。
そこでは、レッド達と冥土さんが疲れた様子で座っていた。
「ああ、いつぞやの突然変異の蜘蛛ですね。本体らしきものならその黒い泉の先にいますよ」
黒い泉が、システム中枢から昇っているのが見える。
私はそれに近づいていく。
ロケットが、タマシイが、共鳴して赤く輝く。
闇を消し去るように輝く。
恐らく緋ちゃんはナイフでこの泉を作ったんだろう。
なら私は、ロケットでそれを鎮めてみせようじゃないか。
「緋ちゃん、そろそろ出てきなよ」
「嫌だね。白ちゃんを助けるにはこれしかない」
「無理しなくていいんだよ。自分のことだって少しは考えな?」
「私は無敵。死んでも死なない」
「そういう問題じゃないよ。ねぇ、緋ちゃん」
「何?」
私が緋ちゃんを助けられたのは、いつだろう。
それこそ思い出す限り最初の時だけ。
そこから先は……緋ちゃんが色欲を手に入れてから先は……。
私はずっと緋ちゃんに頼り切りだったと思う。
本当にそれでよかった?
いや、良くない。
愛とは、支え合いとは、片方だけが奉仕するものじゃない。
「私は、緋ちゃんを愛してる」
だから、ちゃんと言葉に出そう。
私はずっと言いたかったんだ。
もう無理しなくていいよって。
ああ、そうだよ――
「重圧を背負わせてごめん。命を懸けさせてごめん。緋ちゃんは……神になんてならなくて良かったんだよ」
緋ちゃんには、ずっと、ずっと……。
「
いや、ここではこれはふさわしくないな。
こう言おう。
貴女は――
「貴女は、姫蜘蛛ちゃんでいて!」
ねぇ、だからさ、また仲良くバカ騒ぎしようよ。
姫蜘蛛ちゃん。
「――ッ!」