遊戯王VRAINS―GB   作:甘枝寒月

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遊戯王二次創作用特殊タグ(ウボァー 様)
novel/284034/

のタグを使用させていただきました。


4話 エースカードを奪り還せ!

 

「私のターン!」

 

 先行はハノイの騎士。

 嫌々(いやいや)ながらやむなく、といった風を隠そうともせずの荒々しい所作。

 初期手札が勢いよく引き抜かれる。仮想空間でなければ握り潰していただろう圧が指先に籠もっている。乱雑に広げて、目にしたとたん「ハーハッハ!」と手のひら返しの高笑い。

 

「完璧な手札だ! これなら1ターン目からヤツを呼べる!

 《ハック・ワーム》2体を特殊召喚。そしてリリース!

 《クラッキング・ドラゴン》をアドバンス召喚!」

 

 

クラッキング・ドラゴン

闇属性 ☆8 ATK/3000 DEF/0

【機械族/効果】

①:このカードは、このカードのレベル以下のレベルを持つモンスターとの戦闘では破壊されない。②:このカードがモンスターゾーンに存在し、相手がモンスター1体のみを召喚・特殊召喚した時に発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時までそのレベル×200ダウンし、ダウンした数値分だけ相手にダメージを与える。

 

 

 ギャアアオン!

 

 雄叫びをあげながら、ふたたび鋼鉄竜(こうてつりゅう)が現れた。

 憎い誘拐犯のしもべとして扱われる不満からか、姿が現れた瞬間からもがくようにがむしゃらにひどく暴れる。

 

「うわ! 佐藤、もっと離れろ!」

 

「はいっス!」

 

 《クラドラ》の巨体がのたうつように振り回され、中継しているマスコミが巻き込まれそうになり、あわてて逃げていく。

 ガラガラ、と生き残りのビルがまたひとつ崩壊した。

 

「心配するな! 必ず奪り還してやる!」

 

 余波の衝撃波に襲われながらも、プレイメイカーが声を張り上げた。

 

 グルルルル……

 しぶしぶ。《クラドラ》は手綱の強奪者であるハノイを眼光鋭く――実際に光らせながら――睨みながらも、ひとまずおとなしくしてくれる。

 ……期待に、きちんと応えなくてはな。

 

「はっ。モンスター風情が勝手に暴れて。困るなぁ」

 

 ハノイは小馬鹿にした大仰(おおぎょう)なアメリカン肩すくめ。

 

「黙れ!」

 

「あ~ん? まだ私のターンだぞぉ? カードを2枚伏せてターンエンドだぁ~」

 

「俺のターン!」

 

 ターンエンド宣言と間断(かんだん)なくプレイメイカーはドロー。

 引いたカードをちらと確認し、一切の躊躇(ちゅうちょ)なく発動した。

 

「魔法カード《サンダー・ボルト》! お前のモンスターをすべて破壊する!」

 

「なにぃ!?」

 

 初手から超強力カード。

 それに驚くのは、なにもハノイの騎士だけではなかった。

 

 

 

 

「……《サンダー・ボルト》。プレイメイカーってリアリスト系のデュエリストなのね」

 

 ティアドロップが張るシャボン玉型障壁のなかで、ブルーエンジェルが呆然(ぼうぜん)とつぶやいた。

《サンダー・ボルト》は超強力。たいがいのデッキに入り、逆転へと一気に導いてくれる反撃チケット。

 

 ――であるがゆえ、カリスマデュエリストのあいだでは暗黙の禁じ手になっていた。

 カリスマデュエリスト同士のデュエルでは、エンターテインメントであるがゆえに、全員が似たようなカードを使うのではなく、各々(おのおの)のデッキカラーに合ったカードを使うことが良しとされている。

 

 つまり、あの魔法カードは、プレイメイカーがカリスマデュエリストなどのエンタメデュエリストとは違う、競技型デュエリストであることを示していた。

 

「……ん。レイメイは勝つためには容赦ない」

 

 つぶやきにティアドロップは苦笑で答え、でも、と反語。

 草野球に元甲子園球児が出てきたときのような顔をしていたブルーエンジェルとは対照的な、憧憬を籠めた声で。

 

「だけど。それだけじゃない。レイメイは」

 

 

 

 

 トゥマンボ!

 落雷。破裂音と閃光が《クラッキング・ドラゴン》を飲みこんだ。

 

 しかし。

 

「トラップカード《ディメンション・ガーディアン》。

 この効果で、《クラッキング・ドラゴン》は戦闘・効果で破壊されない! 残念だったなプレイメイカー!」

 

「くっ」

 

 不発に終わった。

 ひとつうなり、しかし惜しむことなく次の一手を打つ。

 

「《バランサーロード》を召喚!(☆4)」

 

「ここで《クラッキング・ドラゴン》の効果!

 そいつはレベル×(かける)200ポイント攻撃力をダウンし、同じだけお前にダメージを与える!」

 

《バランサーロード》 ATK1700→900

 

 プレイメイカー LP8000→7200

 

「どうだ! 攻撃力3000でありながら、敵対する者の攻撃力を下げ、さらにダメージまで!

 これこそハノイにふさわしい力! 反抗を許さぬ、敵を屈服させる力よ!」

 

「《バランサーロード》の効果! ライフ1000を支払い(7200→6200)、サイバース1体を召喚できる!

 こい、《サイバース・ウィザード》!(☆4)」

 

「ふたたび《クラッキング・ドラゴン》の効果!」

 

《サイバース・ウィザード》 ATK1800→1000

 

 プレイメイカー LP6200→5400

 

「《ウィザード》の効果!

 《クラッキング・ドラゴン》を守備表示に変更し、このターンサイバースたちの攻撃は貫通する!

 サイバース・アルゴリズム!」

 

《クラッキング・ドラゴン》 ATK3000→DEF0

 

 

 

「やたっ。これでハノイにダメージ与えられるね!」

 

 手放しで喜ぶティアドロップの横で、ブルーエンジェルは難しい顔で思案していた。

 

 確かに、このままバトルすれば1800ダメージを与えられる。でもたかが1800。

《クラッキング・ドラゴン》の効果の影響でバトルダメージは減り、また《ディメンション・ガーディアン》の効果で戦闘破壊もできない以上、返しのターンで自分もそれ以上のダメージを受ける。

 

 なら、()()召喚法を使って、《ディメンション・ガーディアン》を破壊できれば。

 

 

 

「トラップ発動! 《無力の証明》!

 私の場にはレベル8の《クラッキング・ドラゴン》がいる。よってお前の場のレベル5以下のモンスターはすべて破壊だ!

 お前こそモンスターをすべて失い、戦闘ダメージを稼ぐ目論見(もくろみ)も消え失せた。ざぁんねんだったな~」

 

「《サイバネット・バックドア》!

 破壊される前に、この効果で《ウィザード》を除外。そして、その元々の攻撃力以下の攻撃力を持つサイバース、《レディ・デバッガー》を手札に加える」

 

 《サイバース・ウィザード》は虚空にできた穴に飲まれた。

 《バランサーロード》は破壊され三角のテクスチャがはじけた。

 二の矢も無為になりカラになったフィールドに、「カードを1枚伏せてターンエンド」

 

《サンダー・ボルト》もモンスターも不発に終わり、かろうじて伏せカード1枚。

 それをハノイは悪あがきだと取ったようで。

 

「私のターン。ククク、ハーハッハッ!

 永続魔法《つまずき》発動だ! 場に出るモンスターはすべて守備表示になる!

 もはや私の勝利は確実なものになった!」

 

 

つまずき

永続魔法

召喚・反転召喚・特殊召喚に成功したモンスターは守備表示になる。

 

 

「バトル! 《クラッキング・ドラゴン》でプレイメイカー、貴様にダイレクトアタック!」

 

 ハノイによる不本意な攻撃命令。《クラッキング・ドラゴン》はデュエルモンスターズとしての本能に抵抗するも、耐え切れず火を吹いてしまう。

 叫喚(きょうかん)ビームは、あくまでデュエルでの行為。ゆえに、デュエルアンカーによる阻害も発生せず、無抵抗でプレイメイカーは飲みこまれた。

 

 プレイメイカー LP5400→2400

 

 ビームによるダメージは大きく、プレイメイカーのアバターは焼け焦げ、ノイズが走り出す。「ぐっ」身もココロも削る衝撃にうめき声が漏れる。

 だが(ひる)まず、プレイメイカーは第3の矢、伏せカードをオープン。

 

「俺がダメージを受けた今、《サイバース・ビーコン》を発動できる。デッキから《ドットスケーパー》を手札に加える!」

 

 しかし、発動したトラップカードは1枚で戦況をひっくり返すものではなく、ただの手札増強。窮余(きゅうよ)の一策。

 ハノイの嘲る薄ら笑いは、いよいよもって最高潮。

 

「プレイメイカー。お前はもう詰んだんだよ! 強力モンスターを()ぶライフもなく、()んだところで《つまずき》によって守備表示になる。いまさらモンスターを補充しても遅いわ!」

 

 ハノイは大いに勝ち誇る。

 攻撃力3000の《クラッキング・ドラゴン》、それを守る《ディメンション・ガーディアン》、そしてダメ押しの《つまずき》。

 無根拠ですら(おご)り高ぶっていたのに、強力盤面を築き上げたせいで、ますますもって付け上がる。

 

 ただし。

 その盤面が圧をかけてなお、プレイメイカーの目には、はっきりと闘志が宿っていた。

 いまだ残る勝利の可能性を信じ、彼は力強くデッキに手をかける。

 

「俺のターン!」

 

 そしてドローカードを見て、一瞬、笑った。

 

「このスタンバイフェイズ、《サイバネット・バックドア》の効果で除外された《ウィザード》は戻ってくる!」

 

「《クラッキング・ドラゴン》。《つまずき》。やれ!」

 

 ハノイはニタリと笑いながら手をかざし。なにも起きない。

 

「……なぜ動かん! てめぇ、なにかしたのか!」

 

《サイバース・ウィザード》 ATK1800

 

「《サイバネット・バックドア》の効果は『フィールドに戻る』効果。召喚でも特殊召喚でもない。よって、《クラッキング・ドラゴン》と《つまずき》の効果は発動しない!」

 

「ぐうぅ……だが、たかだか攻撃力1800、私の勝ちは揺るがん!」

 

「《レディ・デバッガー》召喚!(☆3:LP2400→1800)

 効果により、《デフコンバード》を手札に加える。

 俺のフィールドにはサイバースが2体、よって《サイバース・ホワイトハット》を特殊召喚!(☆6:LP1800→600)

 手札の《ドットスケーパー》を墓地に送り、《デフコンバード》を特殊召喚!(☆3)」

 

「レベル3! フハハハハ、自分のライフもわからなくなったか!」

「ゆ――レイメイ!」

 

 ☆3×200、600ポイント。

 そしてプレイメイカーのライフも残り600。

 ジャストダメージがプレイメイカーを……

 

《デフコンバード》ATK100→0

 

 プレイメイカー LP600→500

 

「ハハハ……なに!?」

 

「《クラッキング・ドラゴン》の効果は、『攻撃力を下げ、そのぶんライフにダメージを与える』というもの。

 よって、攻撃力100の《デフコンバード》を()んでも、下がる攻撃力は100しかない以上、ダメージも必然的に100となる。

 ……奪った力は、お前には難しすぎたようだな」

 

《クラドラ》の効果の仕様を誰よりも正確に把握していたことによる抜け道。

 ぬか喜びさせられ、挑発の追撃を食らい、ハノイはただ悔しがるのみ。

 

「さらに墓地に送られた《ドットスケーパー》は自身の効果で復活する!

 《ドットスケーパー》の攻撃力は0。ダメージはない!」

 

「クソ、クソ、クソ、クソ、クソォ!」

 

《クラッキング・ドラゴン》の穴を突いたモンスターの大量展開。思っていたのと違う展開に、ハノイは口汚くキレ散らかす。ダンダン足を踏み鳴らす。

 

 ところが、一転。プレイメイカーのフィールドを見て、「ん~?」とニヤニヤしだした。

 

「おやおや? モンスターは並んでいるが、守備表示ばかりだなぁ。おっと失礼。《つまずき》を使っていたんだった。

 これではいくら《サイバース・ウィザード》の効果を使っても、逆転できないなぁ。ライフを大量に失ったのに、ムダだったようだなぁ~」

 

《サイバース・ウィザード》。《レディ・デバッガー》。《サイバース・ホワイトハット》。《デフコンバード》。《ドットスケーパー》。

 4体は《クラドラ》より攻撃力が下げられたうえ守備表示。そして守っているのは、モンスターを()んだせいで風前の灯火どころか塵山となったライフポイント。本末転倒だと思い、見くびっている。

『もし仮に全モンスターを攻撃表示にできて、《ウィザード》の効果を使われたら?』という想定すら行わず、ただ今の盤面だけを見て笑っている。

 

 ――だからこそ。

 プレイメイカーの見る勝機には、気づくことができなかった。

 

「ムダ? そんなことはない。このモンスターたちが、俺を勝利へと導いてくれる!」

 

 調子に乗ったハノイの軽口にも、プレイメイカーはふてぶてしい笑みで返す。その光景は、どちらが真に追い詰めているかを明示する。

 もうプレイメイカーの目にははっきりと、サイバースたち、そして最後の手札が指し示す勝利のコードが見えている。

 そのコードを完遂すべく、手を空へと突き出し呼びかけた!

 

「現れろ! 未来を導くサーキット!」

 

 掛け声に応え、現れたるは召喚ゲート、『サーキット』。

 八方に突き出た(アローヘッド)にモンスターが飛び込むと、それが赤く活性化。

 《ドットスケーパー》・《デフコンバード》・《レディ・デバッガー》が3つのアローヘッドを染めたことで、中央の召喚ゲートが起動。

 大いなる力がEXデッキから天降(あも)り立つ。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚! 《ベクター・スケア・デーモン》!」

 

 

ベクター・スケア・デーモン

闇属性 リンク3 ATK/2400

◀︎
◀︎

◀︎
▶︎

◀︎
◀︎

【サイバース族/リンク/効果】

サイバース族モンスター2体以上

(1):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、このカードのリンク先の自分のモンスター1体をリリースして発動できる。このカードのリンク先となる自分・相手フィールドに、破壊したそのモンスターを特殊召喚する。この効果で相手フィールドにモンスターを特殊召喚した場合、このバトルフェイズ中、このカードはもう1度だけ攻撃できる。

 

「リンク……召喚、だと!? そんなモンスター知らんぞ!?」

 

 リンク召喚という、ハノイにとって想定外の一手。そして()ばれたモンスターのその威容に、そのイキがっていた笑いは自然と止まり、後ずさる。

 そして自身が圧倒されていたことを打ち消すかのように、上擦った声で自慢の盤面へと命令した。

 

「ええい! だが、私の場には――」

 

「ひとつ! リンクモンスターにはレベルがない!

 ふたつ! リンクモンスターには守備表示もない!

 みっつ! よって、お前の(すが)る《クラッキング・ドラゴン》も《つまずき》も、リンクモンスターには通用しない!」

 

「な、なんだとぉ!?」

 

 しかし。その盤面のすべては瓦解する。リンクモンスターという特殊な、しかしデュエリストならば誰もが知っているカードによって。

 

「さらに未来を導くサーキット! サーキットコンバイン! リンク召喚! 《フレイム・アドミニスター》!

 効果により、リンクモンスターはみな攻撃力を800ポイントアップ!」

 

《ベクター・スケア・デーモン》 ATK2400→3200

 

《フレイム・アドミニスター》 ATK1200→2000

 

「……んだよ。おどかしやがって。攻撃力3200どまりじゃねえか。《ディメンション・ガーディアン》を忘れちゃったんですかぁ~? プレ()メイカーちゃ~ん」

 

 プレイメイカーの場に並んだモンスターを見て、ハノイが虚勢を張る。

 虚勢であることは、しゃちほこばったしゃべり方が崩れ、チンピラ丸出しのものになっていることから明らかだった。

 

「それはどうかな!」

 

「あぁん?」

 

「俺はプレ()メイカーじゃない。奪還屋(ゲットバッカーズ)のプレイメイカーだ!

 魔法カード《三戦の才》発動!」

 

 発動されたカードを見て、ブルーエンジェルが声をあげる。

 

「そっか! 《クラッキング・ドラゴン》の効果は召喚・特殊召喚のときに発動する効果。《三戦の才》の発動条件を満たしやすい!」

 

「《三戦の才》の効果は3つの中から1つを選択するもの!

 俺は2番目の効果を選択。《クラッキング・ドラゴン》のコントロールを得る!」

 

 軍配が輝き、《クラッキング・ドラゴン》は不本意な従属から解放される。

 グォォオオン!

 喜びの遠吠えをしながらバレルロールを舞いプレイメイカーの場に降り立つ。

 

《ベクター・スケア・デーモン》 ATK3200

 

《フレイム・アドミニスター》 ATK2000

 

《クラッキング・ドラゴン》 ATK3000

 

 もはや。もはや、ハノイを守るものはなにもなく、プレイメイカーの場には充分な戦力が並び立つ。

 盤石だった勝利がまるで蜃気楼のように消え失せ、「クソが、クソがぁぁ……!」と(みにく)くわめく強奪犯に、奪還屋が最後通牒(さいごつうちょう)を突き付ける。

 

「バトル!」

 

 掛け声とともに、《アドミニスター》が殴り、《ベクター・スケア・デーモン》が暗黒球を発射。

 リンクモンスターたちのダイレクトアタックが、今日は脇を固める役としてハノイのライフを削る。花道を飾る。

 

「《クラッキング・ドラゴン》! インジェクションハウリング!」

 

 ギャオオオオン! ギャオオオオ!

 

 そして黒鉄(くろがね)鋼鉄竜(こうてつりゅう)が、すべての恨みや鬱憤を蒼炎のビームでもって吐き出し返し、強いられた暴虐に終止符を打った。

 

 ハノイ LP8000→0

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