TFONE面白すぎたので初投稿です。
TFONE未視聴で本作をお読みになる場合、前書きと本編の間に透明文字がございます。そちらの内容を把握してくださると、理解がスムーズかと思います。
本作はTFONEのネタバレを含みます。
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クインテッサ星人と何千年も戦争をしているトランスフォーマー達は、身を守るために洞窟状の地下都市アイアコンを作り上げ、そこで生活をしていた。
センチネルプライムはかつてプライムの部下だったが、プライムを騙し討ちで壊滅させ、クインテッサ星人とエネルゴンの取引をすることでサイバトロンの支配者となった。
プライムと共にマトリクスが失われ、サイバトロンでエネルゴンが湧き出なくなる。そこでセンチネルは、生まれる前のトランスフォーマーからトランスフォームコグ(変形に必要なパーツ)を秘密裏に取り上げ力を削ぎ、エネルゴンの含まれた鉱石を採掘させることでエネルゴンを賄う政策をとる。彼らは労働者と呼ばれ社会的地位も低く、トランスフォームコグを本当は自らも持っていたということを知らずに働いている。
スタースクリームは元々、親衛隊と呼ばれるサイバトロン最高戦力部隊のリーダーをしていたが、プライム全滅以降は隊を引連れ地上で逃げ隠れしていた。
何十サイクルの間、追手から隠れる日々が続いていた。かつての栄光は色褪せ、スタースクリーム率いる親衛隊は今や僅かな妨害を繰り返すだけだった。
プライムの時代、エリートとして脚光を浴びた
彼らにはもうアイアコンに対する未練は無い。多くが軍用の戦闘機として設計され、生まれた時から軍に所属してきた彼らにとって、その居場所は親衛隊にしかなかった。その親衛隊が丸ごと地上にほっぽり出されたのだから、経済活動を懐かしく思うことはあれども、特に地下へ戻る意味はなかった。
そんな暮らしの中、強奪したクインテッサ星人へのセンチネルの貢物に、酷い精製不足の粗悪なエネルゴンが混じっていた。しかしそんなことは露知らず。まさか献上品にそんなものが混入しているとは思いもしないスタースクリームは、粗悪品を変わり種のエネルゴン加工品だと思い込み摂取してしまった。直後、体内を走るエネルゴンが異常に反応し、彼の動きが急激に鈍くなった。油圧が下がり、視界がぼやけた瞬間、スタースクリームはその場に倒れた。
そして、偶然にも近くをさまよっていた、別次元のスタースクリームのスパーク、その僅かな欠片が入り込んでしまったのである。
異なるスパークは融合し、果たしてスタースクリームは別次元の記憶と共に新たなパーソナリティを手に入れた。
これは、ひょんなことから元科学者の知識とデストロン元航空参謀の経験を得てしまった、親衛隊のリーダーの物語である。
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モニターに映し出された「該当なし」のメッセージを睨みつけ、彼は拳を固く握りしめた。苛立ちが信号となって機体を駆け巡り、機体からはかすかにジョイントの軋む音が聞こえる。「一体どこで油を売っているんだ」と、怒りがこみ上げた。
彼の名はスタースクリーム。この星イチの
スタースクリームは、デストロンの面々の中で、サウンドウェーブやショックウェーブ、ジェットロン部隊のメンバーは親衛隊に揃っているのに、ただ一人探している者がいないことに違和感を抱いていた。
先日、スタースクリームは事故によって別次元の己の人生、その末路を知るに至った。妄想だとか、はたまた前世だとか非科学的なことを言うつもりは一切なく、ただ事実として彼の頭脳は平行世界の存在を認めた。そこでは彼は親衛隊のリーダーではなく、デストロンと呼ばれる軍団、そのナンバー2の座についていた。
平行世界の自分は軍団の長の座を狙い続け、その度に返り討ちに遭っていた。だが、それは彼でありながら彼自身では無い。あくまで自分は親衛隊のリーダーだと言い切る彼は、その見知らぬ、しかしよく知る背中に未来を見た。
メガトロン。
スタースクリームは悔しさを感じつつも、追放されてからの親衛隊の惨状を思い返していた。リスクを負うことを恐れ、十分な安全マージンの中でゲリラ的にセンチネルへ嫌がらせをする日々。誰がどう見ても、今の親衛隊は負け犬だと言い切るだろう。
スタースクリームは認めた。自分一人の力ではセンチネルを打倒し、この星からクインテッサ星人を駆逐することはできない。かつてプライムの下で指揮を執っていた頃の記憶が、己の力不足とメガトロンを探す必要性を浮かび上がらせる。そして彼は、もしかすると自分はナンバー2としての方が実力を発揮できるのかもしれない、と冷静に分析した。
センチネルの策略やクインテッサ星人に幾度も打ちのめされ、その度に屈辱を味わった彼にとって、リーダーの座の優先順位は低い。これが元航空参謀ならば、こうも易々と受け入れることは出来なかっただろう。しかし、彼のオリジナルは間違っても科学者上がりではなく、既に苦渋を何度も喫した軍人であった。
同胞がスパークを散らす程熾烈な争いを繰り広げたクインテッサ星人に対する、今の親衛隊の体たらく。そのなんと歯がゆいことか! かつての戦いで墜落した仲間を思い出すと、悔しさでスパークがはち切れそうになる。親衛隊の面々も、程度の差はあれど思うことはスタースクリームと同じだろう。
でも、もう諦めてしまっていた。
プライムは最早全滅し、プライムを受け継いだと
だが、別次元の記憶がその残った志に火をつけた。メガトロンが親衛隊を、サイバトロンを率いれば、詐欺師を打ち倒してクインテッサ星人を排除できるかもしれない。別次元の自分でもって、 "超えたい" と思わせられる程のスパークの持ち主。彼ならば、現状を変えられるに違いない。スタースクリームのすべき事が定まった瞬間だった。
こうして、リアリストとしての側面を強く持った彼はメガトロンを探すべく、その日以来暇さえあればアイアコンの機体情報データベースをハッキングしているのだ。
*
連日続く、データ漁りの日々。どれほど熱心に探せども手応えのない様子に、「もしかして、まだ誕生していないのか?」と、スタースクリームは思案するほどだった。
が、しかし。
全ての住民のデータを読み漁って、現存する機体にメガトロンという名を持つ者は存在しない、という結論を得たのが昨日のことである。そもそも、明らかにメガトロナス・プライムから着想を得たであろうこの名前が本名であるとは考えづらい。
そして、では違う名前だと仮定しても、これだ! という機体は存在しなかったし、かつてのアイアコンでの記憶を振り返っても該当しそうなヤツは居なかった。メガトロンならば、それがいいものか悪いものかはさておき、正常に稼働しているのならばその名を馳せていないわけがない、とスタースクリームは彼を評していた。
「まさか、もうスクラップになってしまったのだろうか?」
そんか推測に至り、スタースクリームはありえないとその考えを捨てた。ふと、クインテッサの猛攻がブレインを過り、慌てて頭を振りかぶる。コンボイや自分以外にメガトロンが破壊されるなど、考えられなかった。文字通り、殺しても死ななかったあのメガトロンが。
では、
スタースクリームはセンチネルの非道な策を思い出した。喪われた、いや、センチネルによって消失させられたマトリクスの代わりにエネルゴンを掘り出す "装置" 。
いつか、聞いたことがある。かつての、戦前のメガトロンは炭鉱夫であった、という噂を。スタースクリームは確信した。間違いなく、メガトロンはそこに居ると。そして、メガトロンならば必ず地下で生きていると。
スタースクリームは労働者の機体情報を照会しようとしたが、杜撰な管理を受けている彼らの事でデータバンクに登録されているのといえば、機体名、製造時期、採掘量のみで何も参考にできなかった。Tコグを取り上げたことで、もう彼らにはなにも出来ない、どうでもよいと見なしたセンチネルの考えが透けて見え、スタースクリームは憤りで吐き気がした。
彼は決して己のことを善人だと思ったことはないが、センチネルのそれは常軌を逸している。炭鉱夫が必要にしても、Tコグを取り上げる必要はない。人道的な扱いをすれば彼らが反抗することはないからだ。ましてや、彼はスタースクリームの(反抗は何度もすれど)尊敬したメガトロンのTコグを奪っている。
スタースクリームは、己の翼が喪われ、胸にぽっかりと穴が空いている様子を想像して身震いした。だがおそらく、メガトロンはその状況の中で過酷な労働に従事している。スタースクリームは決意した。
───アイアコンに戻ってメガトロンを探す。
名前が、姿が違ったとしても、あの憧れた背中を間違えることはない。一目見れば必ずメガトロンを見つけられる。そんな自信が彼を突き動かした。
「新たなリーダーを迎えに行く。留守は任せた。」
側近のサウンドウェーブ、ショックウェーブにそう告げて後を任せ、スタースクリームは追放されたアイアコンに舞い戻った。
……所属不明のコグ無し機体として。
サイクル(時間の単位)
シリーズ毎によってちょくちょく変わるが、劇中のセンチネルの発言よりONE時空では1サイクル=トランスフォーマー主観で1年に相当する模様。
ちなみに、キャスト対談曰くオライオンは地球の時間に換算して生まれてから900万年らしいが、実際は多分相対性理論とか絡むし数字盛りすぎで人間にこの数字は扱いづらいので、本作では1サイクル=1年のトランスフォーマー目線で描写する。
親衛隊(ハイガード)
過去作のエリートガードに位置する組織だと思われる。W波を含めて全員が飛行タイプのトランスフォーマーで構成されている。
センチネル
諸悪の根源。数々のセンカスが観測される中、コズミックルストを使用する実写センカスを超え、圧倒的自分勝手さで鬼畜ランキング1位に躍り出た。
プライムを始末し、クインテッサ星人に諂うことでサイバトロンを牛耳る。
誤解しないよう告白すると、筆者はこいつが好き。