県内の映画館でONE上映終わったので初投稿です。
10回観れたので満足ですが、早く国内配信か円盤発売して欲しい……。
今回は難産でした。
初めてクインテッサの艇に彼らが遭遇してから、3日目の朝。天気は良く、砂嵐もない。遠くにまだ夜空の名残が浮かぶが、既に太陽は登っていた。
未明から朝までの見張りをしていたスタースクリームは、最後まで起きようとしない寝汚いビーを足で軽く蹴った。ビーの寝言────起きているのかと勘違いするほど────がうるさかったので、仕返しのつもりだった。
「次はグーだぜ。」
「わかった! 起きる、起きるよ。まったく、もっと優しく起こしてよね!」
蹴られた部分の装甲をさすりながら起き上がるビー。昨晩は有機植物に隠れながらスリープしたため、そのジョイントには植物の葉が挟まっていた。
「何事もなけりゃ、今日中にはSOSの地点に到着だ。何を見ることになるかは俺にも分からねえが、各々覚悟を決めておけよ。5分後に出発する。」
スタースクリームが地図を開いて現在地を確認する。スリープから目覚めた彼らは、エネルゴンの欠片を口に含むとスタースクリームの言葉に頷いた。……1人を残して。
「Dも、それでかまわねえですか。」
スタースクリームは頷かない1人に向かって声をかけた。Dは、3日前からずっと黙ったままだ。いや、黙ったままというのは語弊がある。オライオン達が話しかけると口数は少ないが返事はする。しかし、相手がスタースクリームなら一切口を開くことは無い。
つまり、スタースクリームはDに無視されていた。これは、プライドの高い彼にとって効果てきめんな抗議活動であった。
「無言は肯定と見なしますぜ。」
覗き込まれるも、ふいと顔を逸らすD。スタースクリームは、内々に溢れるこのクソガキが……という気持ちをやっとの事で押さえ込んだ。地下で身につけたアンガーマネジメントを彼なりに発揮しながら、Dの態度を許そうと努力するスタースクリーム。重大な隠し事をしている、という負い目をきちんと自覚していたからだ。
(言わなきゃ、いけねえんだけどな。)
スタースクリームは、胸の奥にうずまく葛藤をどう処理すべきか分からずにいた。その思いは、薄氷の上を歩くかのようだった。今の自分は自由だが、ほんの一歩踏み外せば、冷たい水へと引き込まれるだろう。それを恐れているのか? それとも、この刹那的な心地よさに溺れてしまいたいのか? 自問するたびに、答えは霧散し、また足元の氷を揺らすばかりだった。
しかし、一体どの面を下げて真実を告げればよいのだろう。「君たち労働者とは違い、本当は自分のコグを隠し持っていて、名前も嘘で、記憶喪失なのも嘘。おまけに君たちの奉ずるセンチネルも大嘘つきで、そのセンチネルの真実を知っていながら50サイクル何もせず君たちを放置した元ヒーローです。」 スタースクリームのぼちぼち優秀な頭は、これを言われたコグ無しがどう感じるかを簡単に予測した。
(だからせめて、こいつらにコグを仕立ててから言いたかったんだが、もう無理なのかもな。隠し通すのも。)
そう思いながら、彼はDに視線を向けた。すると、向こうもなにやら彼を見ていたのか、スタースクリームとDの目が合ってしまう。Dは目を合わせるつもりは全くなかったようで、機体ごと勢いよく顔を背けてしまった。無視をしている、というのは多少なりともDのスパークに罪悪感の影を落としているらしい。
Dはどう思うのだろう、とスタースクリームは思った。もし、可愛がっていたコグ無しの後輩が、本当はコグを隠し持っていたと知ったら。彼らの不当な扱いを見ないふりしてきたと知ったら。
Dは若く、純粋で、優しい。いっそ騙されやすいと形容出来るほどに。そんな彼から向けられていた信頼をこれから喪うのだ。
そして何よりも、D-16に失望されるだろうことが辛かった。
「時間だ。出発する。」
必ず訪れる未来を憂いて、スタースクリームは気がますます滅入った。
*
「歯がついた洞窟? 全然怖くないね。」
SOSの発信源は、有機物に塗れた山、その山頂付近にある洞窟だった。その入口は地殻変動の影響なのか、滴石が上下左右あらゆる面から飛び出しており、正しく "歯が生えている" と形容すべき有様である。
「本当にここに入らなきゃダメ? どうかしてるよ。」
ビーは中に垂れる有機植物の繊維をつまみながら言った。滴石だけではない。星の外から持ち込まれたであろう有機植物と、その有機的な残骸が茂る洞窟の中は、ずっとアイアコンで生活してきた彼らにとって未知の恐怖でしか無かった。
オライオンが首を振った。彼の顔は決して "洞窟に入りたくて仕方がない!" というようなものでは無かったが、そのオプティックはしっかりと洞窟の暗がりを捉えていた。
「入ろう、ビー。救難信号が示してるのはこの先だ。マトリクスがあるかもしれない。」
「マジかよ、天井からナイフでも落ちてきそうなのに? そうだ、他の入口を探すなんてのは結構いい考えだと俺思うんだけど……ダメ?」
わざとらしく肩を竦め首を傾げたビー。ゴネてなかなか入ろうとしないビーに対し、スタースクリームは引き摺ってでもさっさと中にいこうかと少し考えた。が、その後ろにいるDが目に入って実行に移すのをやめた。
スタースクリームは少し大きく吸気をして、4人に振り返った。
「……この洞窟の探索が終わったら話したいことが、」
そして、大気が激しく揺れた。
─────ゴオオオオ、ズズ……!
「伏せろ!」
反射的に身をかがめながらオライオンが叫ぶ。辺りを見回してから、エリータが思わずという風に声を上げた。彼女のオプティックは丸々と見開かれていて、焦点は遠くの空に合わさっている。
「ねえ、あれ……何?」
一瞥する前に、ビーが返事をした。そして、遅れて空を目視してからその言葉をつっかえさせた。
「俺知ってる。何回も見たもんね。あれはクインテッサのふ、ね……。え?」
有機植物のフレームに閉ざされた空。そこに、何十、下手すれば3桁を越えるやもしれない数のクインテッサの戦艦が、彼方の空からやってこようとしていた。一つだけ混じる一際大きな艇は、遠近感がおかしくなるほどだった。先程の揺れはこの巨大空挺の駆動音らしい。オライオン、D、エリータ、ビーの4人は空を見て呆然とした。
スタースクリームは巨大戦艦を見て、そのタイミングの悪さを嘆いた。そして数瞬呆けた後、スパークの内でプライマスに思いつく限りの罵詈雑言をぶつけた。
(
あの巨大空挺は、クインテッサ星人の戦艦兼輸送艇だ。50サイクル前、惑星のエネルゴンを吸い上げにくるアレの同型を、スタースクリームたち親衛隊は何度も襲撃をかけて妨害した。それが今、護衛艦を引き連れてエネルゴンの湧き出なくなったサイバトロン星に来ている。ということは、その理由は明白だ。
クインテッサ星人らは、センチネルとエネルゴンキューブの取引をするつもりなのだ。今、彼ら労働者のの目の前で!
(だが今回を逃せば、コイツらにあの光景を見せられるのは次の取引だ。その頃にゃ親衛隊は大打撃を受けているはず。ダメだ、今見せるしかない!
スタースクリームには、センチネルの真実を知った彼ら────特にDを、御せる自信がなかった。今現在、スタースクリームは彼ら、いや、Dからの信頼を失いかけているのを理解していた。オライオン、ビー、エリータは事情があるのだ、と彼が話すのを待ってくれている。それはスタースクリームも分かっていた。
だが、Dは違う。素直で、純粋な彼は仲間に隠し事や嘘は言わないが、代わりに自分への隠し事や嘘を酷く嫌う。そんな彼が今まで信じ、見てきたものが、センチネル・ "プライム" の虚像だったと知ったら。────彼はどうなってしまう?
「……お前ら、今からの光景を目の当たりにしても、絶対にその場から動くな。」
「S-39? 何言ってんだ。」
スタースクリームは、あの裏切り者の蜘蛛女を思い出した。どれほど遠くても、警戒を強めた蜘蛛の目は身じろぐ彼らを捉えるだろう。そうなれば、5人の旅はここで終わりだ。スタースクリーム1人だけなら逃れられる。だが、4人は死ぬ。もちろん、Dも。
それだけは、避けねばならない事だった。長くは無い地上の旅でも、情がわくには十分だった。彼らとのやわらかな関わりは、50サイクルの無力感で固まった彼の心を解した。スタースクリームは彼らとの関わりで、かつて己が市民を守る軍人だったことを思い出した。コグを奪われた非力な彼らをむざむざと死なせることは、彼をヒーローと称えたあの声に対する裏切りだと思った。
「頼む。お願いだ。俺に聞きたいことも、後から何だって話す。だから絶対に、何があっても動くな。」
「S-39?」
「頼む……。」
スタースクリームの様子がおかしいことに気づいた4人は、これから何が待っているのだろうと感じながら神妙に頷いた。その中には、Dさえもが含まれていた。
そうして彼ら5人は、クインテッサの艦隊がよく見える場所に移動した。その頃には艦隊は空を覆い尽くすほど集まっていて、様子のおかしいスタースクリームのみならず他の4人も、伝え聞くクインテッサ星人との戦争を思い出し震えた。
すると、しばらくしてオライオンが軽く顎をしゃくり遠くを示した。オプティックのレンズをよく拡大したオライオンには、クインテッサの艇よりは遥かに小さな何かが遠くから飛んでくるのが見えていた。
「皆、あっちを見てくれ。」
そう言ってオライオンが更にレンズの倍率を上げる。その集団の先頭にいるのは、輝かんばかりの金と青をした飛行型トランスフォーマーだった。
「間違いない。センチネル・プライムだ。」
それを聞いて慌てて確認するD。確かに、それは彼もよく知る英雄の姿であった。スタースクリームも確認した。センチネルに追従する、あの裏切り者の蜘蛛女の姿を。
その様子をみたDが興奮したように言った。
「まさか、あの艦隊と戦うつもりなのか!? 無茶だ、止めないと!」
「でも待って、様子がおかしいよ。だって、武装のひとつも出してない。」
エリータと顔を見合わせるD。そして、スタースクリームが呟いた。
「……何を見ても絶対に動かないでくれ。難しいことを言ってるのは分かってる、でも、もしエアラクニッドに見つかったら、俺は……お前らを守りきれない。」
それきり、スタースクリームは黙った。
Dは今まで意地を張って黙り続けていたが、それでも悲痛な顔で懇願してきたのを無下にするほど、可愛がっている後輩と浅い関係を築いてきた訳ではなかった。
だから、例え
労働者が危険な状況の中必死に集めたエネルゴンを、センチネルが最大の敵にくれてやった時も。4人はみじろがなかった。
いや、事実を目の当たりにして、スパークが機体に追いついていなかったと言い換えてもいい。もうすぐマトリクスが見つかるかもしれない、という淡い期待は、信じていた英雄が存在しなかったという事実を知った衝撃で塗り替えられてしまった。
艦隊が引き上げ、センチネル達がどこかへ飛び立って行った後も4人は放心していた。冷たく乾いた空気の静寂を、微かに震えるような風が吹き抜けた。だれかのジョイントが軋む音が響き、その音が重苦しい静寂をさらに深めていく。
スタースクリームが、「洞窟の中を探索しよう。聞きたいことも、考えておいてくれ。」と言うと、4人はのろのろと動きだし、洞窟の中へ向かった。
彼らの旅が、終わりを告げた瞬間であった。
**
「エアラクニッド。取引の最中、異常はあったか?」
「ありません。万事順調でした。」
「よし、ならお前は引き続き親衛隊の信号を追跡しろ。私は先に戻る。アイアコン5000の準備があるからな。」
「承知しました、センチネル。」
「ヤツらがようやく出した尻尾だ、必ず見つけ出して私の前に連れてこい。通信相手の捜索も並行して進めろ。」
「お任せ下さい。」
敢えてセンチネルが跪くシーンの描写を軽くしました。(映画以上の描写はできないので)
ONE未視聴の方は絶対にこれを映像で見てほしいです。
本編との差異
・エアラクニッドに見ていることがバレなかった。
Dが騙されやすいのは公式より。