オルヘ不参加がくやしすぎるので初投稿です。
やたら長くなったので分割です。
下の投稿は明日28日の予定。
「プライムたちだ……。」
オライオンがぽつりと呟く。山頂の洞窟の奥、SOSの座標には、分かりきっていた事だがプライムたちの亡骸が打ち捨てられていた。有機物の繊維や塵に覆われていて、見る者に時の流れを嫌でも感じさせる有様だった。
スタースクリームはよろよろと歩みながら、その亡骸に近寄った。彼はもちろん知っていた。50サイクル前に彼らが死んだことを。だが、その亡骸を前にしてはじめて、その死を実感した。
そして、その覚束無い足取りの中、スタースクリームはプライムたちの致命傷となった破損を確認した。クインテッサ星人の装備ではなく、明らかに鋭い刃物やトランスフォーマーの銃火器で与えられたものだった。そして、その仕掛け人はただ1人しかいない。
メガトロナス・プライムの切断された頭部パーツの断面を、そっと指でなぞるスタースクリーム。かつての親衛隊が最も慕い、忠誠を誓っていたメガトロナスは、13人のプライムの中で最も戦闘向けの設計をされていた。その装甲を一刀両断する切り口は、間違いなくセンチネルの愛用する武器によるものだ。何度も見たそれを、スタースクリームが見間違えるはずもなかった。
(俺たちを、信用しなかったからこうなったんだ。これは、スパークを賭して戦ってきた俺たちよりあの詐欺師を選んだ結果で、当然の報いなんだ。そうだろ……?)
その時、ゼータ・プライムの胸部────本来、マトリクスが収まっている場所─────が空っぽであることを確認し終えたオライオンが、その場の全員に呼びかけた。
「マトリクスの手がかりを探そう。何かあるかもしれない。」
「そうね。私はあっちを、」
だが1人、そうはいかない人物がいた。Dである。
「マトリクスを探して、どうすんだ!!」
Dが、崩落した岩が折り重なった山を拳で殴りつけた。全員が、動きを止めてDを見た。
「センチネルがクインテッサ星人に屈していたのを見ただろ! マトリクスを見つけて、あの腰抜けの嘘つきに渡すのか!?」
「そ、そりゃあ見たけど……。」
ビーが心配そうにするが、怒りに支配されたDには届かない。Dは全身を震わせ、周囲を睨みつけながら叫び続けた。
「"クインテッサ星人は恐れ、我らは敬愛する" ? 笑わせんじゃねえ! 俺たちを、俺たちのすべてを、平気で騙し続けやがって!」
エリータも、オライオンもそれを聞きオプティックを逸らした。「騙されていた」、それはあの場を見た誰もが思ったことだった。Dの怒りは収まらず、その目には深い傷つきと裏切りへの苛立ちが滲んでいた。Dはスタースクリームに顔を向け、燃えているかと錯覚するほどのオレンジ色に染まり上がったオプティックで睨みつけた。
「しかも、センチネルが腰抜けの嘘つきだって、初めから知ってたヤツがいるよな!? 最大の敵がこの星の空を闊歩していて、俺たちの掘ったエネルゴンを搾取していってることも!」
スタースクリームは、黙ってその叫びを聞いていた。Dは最早、スタースクリームの名を呼ぶことをしなくなった。
「コグの無い、真実を知っても何も出来ねえ俺たちにアレを見せて満足か?! 」
「記憶喪失も嘘! 経歴も嘘! 名前も嘘!」
徐々に歪んでいくDの叫び。その感情が極限にまで達していた。そして今度は崩れるほどの威力で、折り重なる岩を再び殴りつけた。その腕はまだ振りかぶられている。
「お前は一体誰なんだ!!」
「落ち着け、D。」
オライオンが、Dとスタースクリームの間に割って入り、振り上げられたDの右腕を止めた。Dは振り払おうかと迷ったが、相手がオライオンだと分かるとゆっくりと手を下げた。
「パックス! お前もおかしいと思わねえのか!」
「Dが怒る気持ちはよく分かる。今まで真面目に働いてきたお前なら、なおさら俺よりも怒りたくなるよな。だが、それは後だ。」
Dから手を離したオライオンが、とある方向を指で指した。瓦礫の山だった場所はDが殴りつけたことによって崩れ、隠していたものを顕にしていた。
マトリクス、ではない。青くぼんやりと光るものを、その場の誰もがよく見ようと近寄った。それは、活動を止めた1人のトランスフォーマーだった。
「これ、アルファトライオン?」
エリータがしげしげと見つめ、表面を覆う有機物のゴミを手で払った。賢者アルファトライオン。13人のプライムが1人である。
「ああ、そうだ。パワーダウンしてる。エネルゴンが切れてるんだ。だが、そのスパークは─────」
ビーがオライオンに持っていたエネルゴンキューブを渡す。青い光は、アルファトライオンのスパークの輝きだった。
「─────生きてる。」
オライオンは、エネルゴンキューブをそっとアルファトライオンの口に押し込んだ。
「落ち着いて、まずはアルファトライオンから話を聞こう。彼なら何かマトリクスの手がかりを知っているかもしれない。」
キュルルル、と再起動する稼働音が洞窟の静寂を貫く。エネルゴンがアルファトライオンの機体の隅々にまで行き渡り、関節の節々から砂とゴミがこぼれ落ちた。
そして、最後のプライムのオプティックが青い輝きを取り戻す。
「クインテッサ星人だ!」
アルファトライオンの声が洞窟に響き、緊張が一瞬にして全員の体に走った。彼は目を見開いたままの状態で、辛うじて起き上がりかけるが、その動きにはどこか焦燥が漂っている。まるで今も戦場にいるかのようだ。
「やられた! ガガッ親衛隊アイアコンシティ! 早くメッセージを、」
彼の叫びが機体から力が抜けたことで中断される。ガクンと膝をついたアルファトライオンに、オライオンがそっと声をかけた。
「落ち着いてください。もう安全です、戦いは終わりました。」
オライオンの言葉は穏やかで、空気を少し和らげたが、それでもアルファトライオンの瞳に残る焦燥の色はすぐには消えない。
アルファトライオンは傷付いた重い機体を引きずって、ゼータ・プライムの亡骸を確認した。
「ああ……。」
ようやく少し落ち着きを取り戻したように、アルファトライオンは深い排気を漏らして項垂れた。
「しくじってすまない、友よ。こんな終わり方は、君には相応しく、ない……。」
語りかけるその声には、かつての仲間への惜別の念が強く滲んでいた。
「しくじってはいません!」
オライオンが思わず声を張り上げる。彼の言葉には焦りと真剣さが混じり、アルファトライオンを力強く励ます響きがあった。
「メッセージを受け取りました。だから俺たちでマトリクスを探しに、来たんですが……。」
アルファトライオンはオライオンの言葉に反応するも、再び険しい顔を見せた。
「トランスフォームコグがない! おい、何があった。何者だ?」
彼の目は鋭く周囲を見回し、目の前の者たちが何者であるかを確かめようとしていた。緊張感が再び高まり、視線を向けられたビーは思わず息を呑んだ。
エリータが素早く説明する。
「私たちは、アイアコンのコグ無し労働者です。」
「労働者?」
アルファトライオンのオプティックに、一瞬の戸惑いが浮かんだ。
「エネルゴンを掘り出してるんです。湧き出なくなったので……。」
続けて説明するエリータだったが、その声にはかすかに悔しさが滲んでいる。シリ切れとなった言葉に続けるようにして、ビーが皮肉交じりに言った。
「まあそのエネルゴンも、センチネル・プライムがクインテッサ星人にあげちゃってたんだけど。」
その言葉を聞いたアルファトライオンは、衝撃を受けたように目を大きく見開き、感情が混ざり合った表情を浮かべた。
「センチネル!? ヤツはプライムではない!」 彼は抑えきれない怒りのままに言葉を吐き出した。 「やはりあやつ、クインテッサ星人と内通していたのか……。」
その事実を受け止める一同も、深い沈黙に包まれた。アイアコンの守護者、唯一のプライムとして崇められた存在が、そもそもプライムでもなかったという事実は、全員の心に更なる影を落とした。
「……プライムですら無かっただなんて。」
誰かがぽつりと呟き、その言葉が洞窟の中に低く響いた。
オライオンが一歩前に出て、アルファトライオンに問いかけた。
「教えてください。50サイクル前、何があったのか。」
「……場所を少し移そう。眠る友の邪魔をしたくない。」
先程よりは滑らかに動くようになった機体で、アルファトライオンは洞窟の少し開けた場所に向かっていく。オライオンたちも4人もそれに追従した。そして、1番後ろを呆然としたスタースクリームがのろのろと追った。
周囲を確認し頷いたアルファトライオンが地面にてをつくと、洞窟の砂が色を纏って巻きあがった。砂はアルファトライオンを中心に旋風を描き、やがてかつてのプライムたちの姿を象った。
「わ、これって……。」
ビーが驚いて声を上げる。洞窟に入ってからずっと黙り続けていたスタースクリームが、初めて口を開いた。
「アルファトライオンの電磁サイコキネシスによる砂のホログラムだ。」
Dがちらりと彼を見たが、スタースクリームは決して目を合わせようとしなかった。
そして、アルファトライオンが語り始めた。
「─────クインテッサ星人との戦いは、何千サイクルもの間、凄惨を極めていた。」
アルファトライオン
謎の力で砂を操るねこおじい。
本編との差異
・Dが情緒不安定なため、ところどころDが言うべきセリフを他の3人が言っている