スタースクリーム:ONE   作:yaya river

12 / 18

メガトロンの涙を公式が認めたので初投稿です。

メガトロンが涙を流すシーンがあるトランスフォーマーONE、よろしくお願いします! ザムービー? 知らないですね……



11 下

 

 アルファトライオンは語った。

 

 ある時、彼らプライムの補佐を務めていたセンチネルが、クインテッサ・ハイコマンダーのみが極秘に集まる集会についての通信を傍受したこと。彼がそこを奇襲すべきだと主張し、その作戦を採用したこと。

 

 奇襲作戦の当日、詳しい情報をギリギリまで集めるから、と別行動をしていたセンチネルとの集合場所に、この洞窟を指定されたこと。そして、集合場所にやってきたのはセンチネルではなく、クインテッサ星人の大群であったこと。

 

 洞窟の暗がりと閉所での混戦状態に乗じ、センチネルがプライムたちを次々と闇討ちしていったこと。アルファトライオンはパワーダウンの直前まで、その闇討ちの仕掛け人が誰なのか分からなかったこと。*1

 

 ゼータ・プライムの胸部に無く、さらに現在も失われているのであれば、マトリクスはセンチネルを新たな主と認めることは無く姿を消したのだろう、ということ。*2

 

 アルファトライオンが語り終える頃には、その場全員を暗い感情が支配していた。スタースクリームはともかく、他の4人はずっと信じていたのだ。センチネルがヒーローで、プライムで、サイバトロン星の守護者であると。それが、大嘘つきの裏切り者だったなんて!

 

 黙り続ける彼らを、アルファトライオンがじっと見つめ何かを考えていた。

 

「どうすんだ、俺たち。こんなこと知っちまってよ……!」

 左胸の階級章を引き剥がし、握りつぶすD。その残骸を地面に叩きつけ、踏み潰す音は洞窟内によく反響した。

「こんなのを知って、俺たちに何ができるんだ! コグの無い俺たちが出来るのは、真実を言いふらして嘘つき呼ばわりされて粛清されるか、このまま地下に戻って真実を黙ったまま働くことだけだ!」

 悲痛な叫びを、今度は誰も遮ることはない。 "トランスフォームコグが無い" ことは、それほどまでに彼ら4人の非力さを表していた。

 

「こんな事なら、真実を知らずに規則を守って働き続けてた方がマシだった!」

 Dの悲痛な叫びに、洞窟内の静寂が再び戻る。その言葉はまるで重荷のように場にのしかかった。アルファトライオンは、無言のまま彼らの視線を一身に受け止めていた。オライオン、D、ビー、エリータ。彼らの目には、それぞれの怒り、悲しみ、そして深い混乱が見て取れた。そして、その沈黙を破るかのように、アルファトライオンがぽつりと呟く。

 

「サイバトロニアンに、コグ無しとトランスフォーマーという区分は存在しない。みな、コグを持って生まれてくる。」

 

 その一言が放たれた瞬間、場の空気がさらに張り詰めた。オライオンが眉をひそめてアルファトライオンに視線を向ける。

 

「ああそうかい!」 Dはすぐに噛みつくように答えた。「俺は起動してからずっと記憶あるけど、(ココ)んとこはいつも空っぽだった!」

 その言葉には怒りが込められていて、胸を手で叩く仕草には諦めが漂っていた。Dが感じる胸の "空白" は、彼の生き方や信念に暗い影を落とす、文字通り胸に抱えてきた諦めと無力感の象徴だった。

 

 Dの様子を見て、ハッとなにかに気づいたエリータがアルファトライオンに疑問を向けた。

「ちょっと待って、今のどういう意味?」

「まさかセンチネルとはいえ、そんな悪いヤツが存在する?」

 ビーもなにかに思い至ったのか、胸の空洞を指でかくような仕草をする。静かにオプティックを閉じたアルファトライオンが、言葉を選びながらゆっくりと話し始めた。

 

 「……センチネルは、君たちが起動する前に、トランスフォームコグを取り除いてしまったのだ。」

 

 その告白はまるで刃のように鋭く彼らのスパークを貫いた。だが、それも仕方がない。トランスフォームコグを持たない彼らの、 "コグ無し" という後ろ向きなアイデンティティすら嘘であったとするならば、いよいよ彼らを構成する真実が無くなってしまうからだ。

 

「つまり、俺たちは真実を知ってもなにも出来ないよう、コグを()られていた、ということですか……。」

 オライオンはそう呟くと、その拳を握りしめた。

「現状を変えたくて、ここまで来たのに……。マトリクスが見つかるどころか、こんなこと……。」

 

 

 ─────現状を良くしたい。

 

 アルファトライオンは、生前の友の言葉を思い出した。目の前の4()()は、彼らに似ていると思った。

 

(現状を変えたい、と立ち上がったこの者たちが不当に奪われ続けてきたというならば、今与えるに相応しいのはこれしかあるまい。……きっと、君も同じことを提案したろう。)

 

「トランスフォーマーの証は、胸にあるコグではない。」

 気づけば、アルファトライオンはゼータ・プライムの口癖を呟いていた。

「スパークという、機体(身体)に宿る魂だ。スパークがあればこの世をより良いものにしようという意志が生まれる。」

 

「彼らプライムたちにはその意志と気高き忠誠心があった。そして、君たちにもその意志がある。」

 

 4人のプライムたちの亡骸から、砂と共にトランスフォームコグが浮かび上がる。

 

プライマ。」

─────オライオンに。

オニキス。」

─────D-16に。

アルケミスト。」

─────エリータ・ワンに。

「マイクロナス。」

─────B-127に。

 

「彼らの力を受け継ぎ、君たちもその力を発揮して欲しい。彼らはひとつ。君たちも、ひとつ。」

 

「宇宙を、ひとつ(ONE)に。」

 

 

*

 

 

「これが、プライムのコグ……。」

 

 オライオンたち4人は、それぞれの見違えた機体にほうと排気をした。コグを得て何回りも立派になった機体なら、まるでなんでも出来そうだと彼らは感じた。

「やったね。」 「ああ。」

「似合ってんぞ。」 「本当?」

 思い思いに新しい機体────本来の機体と言い換えても良いのかもしれない────を確かめる4人。興奮が落ち着いたのか、はじめにそれに気付いたビーが、「あれ?」 とスタースクリームを見やった。彼には、未だなぜかプライムのコグが与えられていなかったからだ。

 

「あの〜〜、アルファトライオンさん? S-39にもコグをぜひ与えて欲しいんだけど……。もちろん分かる! 彼がだ〜いぶ嫌味な性格でミスをネチネチネチネチ指摘してくる鬱陶しいやつだってのは、そこまで長くない付き合いの俺でもよ〜く分かる! 今朝なんて起こすとき蹴られたからね! でも、流石にこの場面で彼だけをハブるってのは後味悪いというか気まずいというか……。」

 

 スタースクリームは、ビーのコグを今すぐにでも奪ってやろうかと一瞬考えた。それはお前の寝言がばかみたいにうるさいからだ! 次はグーで起こしてやってもいいんだぞ!

 が、そんな暇はない。まさかここで彼らがプライムのコグを得るとは思ってもみなかったので、スタースクリームは大層焦っていた。

 

 プライムの1人が生きていたことは、大変喜ばしい。 "計画" に大幅なゆとりが生まれたからだ。13人のプライムの生存者というカードは、センチネルの天下を切り崩す切り札となり得るだろう。降って湧いた幸運について、スタースクリームはプライマスに感謝した。

 

 とはいえ、これではいよいよ自分自身について話す機会が失われてしまう。本来の予定であれば、かつてスパークを散らした親衛隊の仲間のコグを4人に用立て、それでもって隠し事と嘘について情状酌量を求めるつもりだった。もちろん、特に1人はそう簡単に納得するはずも無さそうだったが、そこは友情に期待していた。それが無くなったのだ、どうして今までの不義理を彼らに見逃せと言えるだろう。

 

 デストロン航空参謀のスパークは、それくらいなんてことないだろうと囁く。サイバトロンの親衛隊長のスパークは……。

 いや、むしろプライムのコグという聖遺物に等しい力を与えられた今だからこそ話すべきでは? スタースクリームはブレインを最大稼働させて、今どうすべきかを考えていた。

 

 それに、アルファトライオンのスタースクリームを見る視線。50サイクル前と変わらない……いや、罪悪感でも感じているのだろうか? 意図的に話すことを避けているようだ、とスタースクリームは感じた。

 

「S-39?」

 

 しかし、プライマスの代弁者とも言えるプライムが1人の彼が、後ろめたいことを先送りにし続けるはずもなかった。

 

「やはり、そうか。様子が違ったからもしやと思っていたが、久しぶりだな、スタースクリーム。共に戦った同胞にして空の守護者、親衛隊長よ。」

 

 そしてそれは、スタースクリームの不義理が彼によって明かされることを意味していた。

 

(アルファトライオンのクソジジイ……!)

 

 アルファトライオンの言葉で、4人のオプティックが一斉にスタースクリームを捉える。スタースクリームは舌打ちをしたくなる気持ちをぐっと抑え、アルファトライオンを睨みつけるに留まった。

 

「スタースクリームといえば、あの親衛隊(ハイガード)のリーダーの? まさか! エリート部隊のヒーローが俺たちみたいなコグ無しのわけないでしょ!」

 ビーは信じられない、という感情を隠しもせずにいる。彼は親衛隊の熱心なサポーターで、朝を蹴りで起こしてくるようなヤツがスタースクリームだと信じたくなかったからだ。いや、荒くれ者の軍人ならそれが正しいのかも? ビーはわりとすぐに受け入れた。

 

「私もそう思う。それに、彼らは50サイクルの間、ずっと地上で任務に就いていると聞いてます。それが地下で労働だなんて……あっ、」

(「記憶喪失も、経歴も、名前も嘘」 ……まさか、Dは何か知っていたというの?)

 エリータは、先程のDの慟哭の理由に思い至り言葉を詰まらせた。

 

 オライオンは、決めあぐねているのかアルファトライオンとスタースクリームの様子をチラチラと伺っていた。D-16の顔を見ることは、スタースクリームには出来なかった。

 

「まずは、」

「アンタからの謝罪なんざ受け取りたくないね。第一、俺たち親衛隊が今どんな状況かすら知らねえってのに、何に対して謝んだ。」

 スタースクリームは食い気味にアルファトライオンを拒絶した。何に対しての謝罪かを考えれば、彼1人が受け取ってハイ終わりという訳にはいかなかったからだ。

 

 彼のブレインに、50サイクル前から今までにスパークを散らした仲間たちの顔が思い浮かぶ。彼らは、プライムたちの "しくじり" によって殺されたも同然だった。オライオンとはちがい、スタースクリームはアルファトライオンが "しくじった" と思っていた。

 

「……では、謝罪は後に取っておくことにしよう。」

「そうかい。そりゃよかったことで。」

 立ち上がったままのアルファトライオンだったが、スタースクリームと目線の高さを合わせるためにゆっくりと屈んだ。オライオンとも、エリータとも、ビーとも違う、独特な青色のオプティックが近づいたことで、スタースクリームはすこし身動ぎした。

 

「それで、なぜコグを持っていない? 総じて親衛隊はセンチネルにコグを奪われているのかと思ったが、そこの彼女の言葉がそのまま事実だとするならば、違うのだろう。」

 

「そして、私の知るスタースクリームという男は、敵にコグの奪われた状態を良しとする者ではない。改めて問おう。コグをどこに隠したのだ、スタースクリーム。」

 

 じっと自らを見つめるオプティックに、スタースクリームはゆっくりと排気した。不義理を明かす覚悟を決めるために。忙しなく回転していた彼のブレインが、ようやく動きを落ち着かせた。

 

(これだからプライムは嫌なんだ。信念……って言えば聞こえはいいが、自分たちの都合が最優先。あの詐欺師は四六時中これに付き合ってたんだから、そこは同情するぜ。)

 

 スタースクリームは翼の無い肩をこれみよがしに落とした。アルファトライオンからの追求からは、逃れられない。それに、彼ら2人の会話をじっと見る4人からも。

 キャノピー(胸部装甲)の開閉部を開け、並のスキャンじゃ分からない格納部に手を入れる。スタースクリームが取り出したのは、厳重に保護し、機内に仕舞っていた彼自身のトランスフォームコグだった。ヒュッと、4人の誰かが息を飲む音が聞こえた。

 

「理由あって外してたんですぜ。まあ、当初の目的は果たしたようなもんだから、もう翼無しの格好をする必要も無い。それに、まさか生きているとは思っていなかったが、アンタとも合流できたからな。」

 

 スタースクリームがコグを胸部に戻す。途端、まるで魔法にかけられたかのように────いや、かけられていた魔法が解けるかのように、スタースクリームの姿が変化した。

 

 何も無かった背中には、大気を掴み空を駆ることの出来る翼が。脚にはジェットブーツ、腕には武器。上背は大きく、だが無駄が限界まで削られた軽量な機体。空中戦においてサイバトロン星で最強と謳われた、スタースクリーム本来の姿だ。

 

 

「俺の名前はスタースクリーム。S-39は、偽名だ。……その、なんだ。今まで黙ってて、悪かった。ごめん。」

 

 スタースクリームは居心地悪げに謝罪を口にした。オライオン、エリータは呆然としていた。無理もない、頭をぶつけたと聞いていた後輩が、実はエリートだった? スタースクリームが何かを隠しているだろうということは、この地上探索に出てから察していたことだったが、根本から覆されたようなものだった。ビーは伝説の戦士に会えて感動していたが、空気を読んで黙っていた。

 

 ただ1人、Dだけは様子が違った。

 

 

「……コグ無しってのすら、嘘だったのか。」

 

 俯きながら、Dがぽつりと呟いた。6人と亡骸しかいない洞窟では、小さな呟きを聴覚センサーが拾うのは簡単な事だった。

「……そうだ。」

 スタースクリームは、同意した。その瞬間、Dの顔があがる。酷い形相だった。オプティックからは冷却水()が零れていた。ビーやエリータにはそれが怒りの感情に見えた。オライオンには、寂しがっているように感じられた。スタースクリームには、失望に感じられた。

 

「今まで、俺たちを見下してたんだろ? コグ無しの出来損ないだって。俺に以前、スタースクリームの名前を教えてくれたことも、コグ無しならたとえ真実にたどり着いた所で何も出来ないと思ったからか? お前はいつも、嘘嘘嘘嘘……」

 力んだDの両腕がブルブルと震える。オライオンは慌ててDに駆け寄ろうとした。

「お、落ち着けD。S-39……いや、スタースクリームにも理由が 、」

 

「信じてたんだ、何もかも! だが全てが嘘だった! センチネルも、プライムの末路も、スタースクリームも!」

 叫びが洞窟を反響した。スタースクリームは黙ってそれを聞いていた。

 

 Dが右腕を振り上げた。今度は、オライオンも間に合わなかった。スタースクリームは抵抗せず、甘んじてそれを受け入れようとした。折檻には()()()()()、と思い込むことで、スパークのキリキリとした痛みを無視できると考えたからだ。

 何より、Dには自分を殴る権利があるとスタースクリームは思っていた。

 

「この、裏切り者が!」

「D!!」

 

 ────Dの右腕は、スタースクリームの真横の壁を殴った。

 

「……頭を冷やしてくる。しばらく1人にしてくれ。」

 

 そう言うと、苦々しい表情を浮かべながら、Dはその場を後にした。

 

 その場にはすこし崩れた壁と、沈黙する5人が残った。アルファトライオンは、今の一連の事に対する自身の浅はかさを後悔していた。

 

「……Dを許してやってくれ、アー、スタースクリーム。君と彼はとても仲が良かっただろう? だから余計、受け入れるのに時間がかかるんだと思う。本心からの言葉じゃないさ。もちろん、俺たちもあんなこと思っちゃない。」

 オライオンの必死な、しかし本心からとわかるフォローに、乾いた笑いが漏れるスタースクリーム。

 

「……いや、俺もわかってるさ。信用できねえってことくらいはな。自慢じゃないが、俺ァプライム達にすら疑われてた親衛隊のリーダーだぜ?」

 その自嘲にアルファトライオンがさらに苦い表情を浮かべる。一方、他の3人はよく分かっていない様子だった。

 

「詳しく知りたきゃそこの死に損ないにでも聞くんだな。俺は久しぶりに外を飛んでくる。お互い、少し時間が必要だろ? 見つかるようなヘマはしねえから安心しろ。」

 そう言いその場を去ったスタースクリームは、屋外に出るや否や変形して飛び立った。

 

 待ちわびていた、久しぶりの空。楽しくないはずがないのに、スタースクリームのスパークにはDに対する言い表せない感情がべったりと張り付いていて、楽しむことが出来なかった。

 

 

 

*1
SOSにセンチネルの名前が無いため

*2
センチネルがマトリクスを手にした時、アルファトライオンは既にパワーダウンしているため、恐らくアルファトライオンの想像による映像だと思われる。





メガトロンとスタースクリームがギスってるのが耐えられない、作者みたいな読者のためにネタバレをすると、ぼちぼち仲直りパートに突入します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。