戦え!トランスフォーマーの二次創作なのに、登場人物が全然戦ってくれないので初投稿です。
今話と、あと1話くらいを挟んだ後、クーデター編となります。
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「今まで黙ってて悪かった。特に、エリータとオライオン……。」
キラキラとオプティックを輝かせるビーを横目に、スタースクリームは改めてオライオンとエリータに謝罪した。その理由はもちろん、身分詐称についてである。その横には、やや居心地が悪そうな様子のDが立っていた。
二人は顔を見合わせると、少し困惑したような表情を浮かべた。エリータがどこか挑発的に口を開く。
「クーデターの下見、ね……。正直、あのサボり魔のアンタがそんなこと考えてたなんて驚きだわ。」
「俺はいつだってノルマは越してただろが。」
ムッとしたスタースクリームが反論する。そのやり取りに、オライオンは小さく微笑みながらも真剣な眼差しで質問した。
「それにしても、どうしてこのタイミングで? 言い方は悪いが、プライムたちが敗北してもうすぐ50サイクルだ。何かこの時期に行動に至った理由があったりするのか?」
スタースクリームは僅かにオプティックの輝きを暗くさせると、一瞬考え込むように口を結んだ。そして、言葉を選びながら口を開いた。
「……契機があった。地上で腐ったままじゃダメだと思い直すきっかけが。それだけじゃねえ、アンタらも掘っていて分かってるだろうが、アイアコン周辺の鉱山は枯れてきている。エネルゴンの採掘量が落ちれば、労働者は今まで以上にこき使われるようになるし、最悪クインテッサの再侵攻が始まる。そうなりゃこの星は終わりだ。」
だからリスクを冒して、行動することにした。そう語るスタースクリームに、オライオンは引き下がった。きっかけとやらが気にならないと言えば嘘だったが、そこを踏み込むのは自分の役目ではないことを分かっていたからだ。
「話は終わったか。」
ちょうどその時、会話の切れ目を見計らっていたのか、プライムたちの亡骸に寄り添っていたアルファトライオンが5人の元へ歩いてきた。その足取りは力強くなめらかで、50サイクルのブランクを感じさせないものであった。
スタースクリームはそんなアルファトライオンをじっと目据えた。その表情がいつになく真剣な様子なので、Dは彼が何をするつもりなのか薄らとわかったような気がした。
黙ったまま見つめ合う2人。崩落した天井から風が吹き込んだ時、スタースクリームは片膝を立て、プライムの生き残りに対し跪いた。
「親衛隊長スタースクリームより、アルファトライオンに挨拶申し上げます。」
翼を滑らかに広げ、まるで舞い降りるかのように静かに跪くスタースクリーム。堂に入ったその動きはよく洗練され、確かな優美さを宿していた。軽やかに膝を地に着け頭を垂れる姿は、普段とのギャップも相まって見る者を感嘆させるほどだ。
「まずは御身の生存を疑ったこと、そして、我が隊より謀反者を輩出したこと、誠に申し訳ありません。我々親衛隊は裏切り者のエアラクニッドと反逆者センチネルから身を隠すため、あれ以来地上に潜伏しておりました。貴方が目覚めた今こそ、偽の
恭しくそう奏上するスタースクリームに4人は唖然とし、アルファトライオンは頷いた。4人はようやっと、彼が親衛隊の隊長であることを真に理解した。
しかし、その儀式じみた振る舞いは、いとも容易くその雰囲気を散らしてしまう。面を上げたスタースクリームの表情が、冷ややかなものへと変わると、その口から吐き捨てるように言葉が零れた。
「……ってのは、親衛隊長としての言葉だ。御託と義理はこんなもんでいいか? アルファトライオン。アンタのしくじりさえなければ、少なくともセンチネルか幅を利かす事態は防げたっての、分かってるだろ。」
スタースクリームの低く淡々とした声が、洞窟に響き渡った。彼のオプティックには失望と怒りが浮かび、その先でアルファトライオンを鋭く見据えている。アルファトライオンは深く排気すると、短く答えた。
「……その通りだ。」
頷くその姿には、年輪を感じさせる疲れがにじんでいる。アルファトライオンの声が震えて聞こえたのは、果たしてスタースクリームの言葉がスパークを抉ったからか、それとも自身の過ちへの後悔か。スタースクリームは容赦なく言葉を続けた。
「アンタが最後、落ち着いてセンチネルの蛮行に気づいてからSOSを送ってれば、そして、親衛隊の裏切りってのも、センチネルのクソに吹き込まれた事だってのを思い出していりゃあ、エアラクニッドにそのSOSが握りつぶされることもなかった。違うか。」
「……そうだ。」
アルファトライオンは再び頷いた。だが、スタースクリームの怒りは止まらない。止めどなく言葉を溢れさせるその様子は、50サイクルの間に溜め込んだ痛みを吐き出すかのようであった。
「アンタが "俺" にSOSをくれてりゃあ、センチネルの謀反さえ察知できてたんなら! 俺はヤツが手勢を整える前に、全兵力を連れてアイアコンを襲撃した! 50サイクルの間コソコソする必要もなかった!」
スタースクリームの声が次第に荒くなる。長い年月の重みが言葉に宿り、溜め込んできた屈辱とやるせなさが溢れ出ていた。だが、そこに割って入るかのようにオライオンが静かに口を開いた。
「その辺りにしておけ、スタースクリーム。一刻も早く救援要請を送るというアルファトライオンの判断は、そう間違ったものではないと俺は思うが……。」
オライオンの静かな声には、怒りに揺れるスタースクリームを少しでも落ち着かせようとする意図が見え隠れしていた。しかしスタースクリームは、冷笑を浮かべて肩をすくめる。
「お気楽だなオライオン。俺たちが少なくともセンチネルを相打ちにでも持っていってれば、お前たちはコグ穴のがらんどうを知ることはなかったんだぜ。」
彼は鋭い視線を向けると、言葉の矛先を新たにDへ向けた。
「アンタはどう思うんです、D。」
突然の問いかけに、Dは少し驚いた様子でスタースクリームを見た。
「……アー、なんというか、お前。まともな言葉遣いも出来たんだな?」
スタースクリームは眉をひそめた。
「どつき回されたいならそう言ってください。」
微妙な間が場に漂い、エリータとビーは顔を見合せた。険悪になりかけた空気を感じ取りながらも、Dの機転によって辛うじて雰囲気は持ち直したのだった。
「とにかくだ。」
彼は視線を一度全員に巡らせると、重々しい口調で語りかけた。
「俺たちはもうアンタらプライムを信用しない。エアラクニッドを輩出した責任は俺たちがとる。だが、アンタらを主として敬うのは、さっきのが最後だ。センチネルはプライムの信用を裏切ったが、アンタらは俺たちの忠誠を裏切った。」
アルファトライオンが苦しそうに言葉を噛み締め、彼の表情が一層曇った。
「本当に、すまなかった。スタースクリーム。兄弟を代表して、私が謝罪する。」
だが、その言葉にスタースクリームは軽く顔をそむけ、冷淡に応じた。
「だから昨日も言ったが、謝罪は聞きたく、」
「だが、これだけは言わせてくれ。メガトロナスは最後まで、お前たちの事を信用していた。」
スタースクリームは、一瞬だけその場にぴたりと動きを止めた。
「今思えば、彼だけはセンチネルとエアラクニッドの事を、あの時から疑っていたのかもしれん。……無念な、最期だ。」
スタースクリームは目を伏せ、しばらく無言のまま立ち尽くしていた。
「……それを聞いて、俺が絆されると思ってんのか? アンタにまた忠を誓うと?」
アルファトライオンは静かに首を振る。彼の目には、深い後悔と悲しみが宿っていた。
「いや。だが、知っておくべきだと思った。メガトロナスは、プライムの中でも特に君たちと関わりが深かった。」
アルファトライオンの言葉が響くたび、スタースクリームのスパークは少しずつ揺れ動いているようだった。
「メガトロナスは、きっと君たちを誇りに思っていた。もちろん、私たちも。」
「……あんたのしくじりの貸しは、これからの働きで返してもらうぜ。アルファトライオン。」
スタースクリームはその場を仕切り直すかのように、周囲をぐるりと見渡した。
「さっきも言ったが、俺はクーデターを起こす。悪いが、お前らにも手伝ってもらう。」
エリータが小さく頷き、静かに言葉を返す。
「任せて。センチネルを放置するわけにもいかないし。」
その言葉に呼応するように、他の仲間たちも静かに、だが力強くコグの収まった胸を叩いた。
「変えてやろう、俺たちでアイアコンを!」
「やってやろうぜ。」
もう彼らは無力なコグ無し労働者ではない。世界をより良く変える力を持つトランスフォーマーであった。
スタースクリームはそんな4人を見て頷くと、地図を開いてある箇所を指した。
「さっき、俺の仲間をこっから一番近いアジトに招集した。俺たちはそこに向かわなきゃなんねえ。」
「仲間って、親衛隊!?」
仲間。その単語を聞いて、さっきからずっとオプティックを輝かせていたビーが、まるで堤防が崩れたかのように一気に喋り始めた。
「すごい! 俺めちゃめちゃ好きでさ、親衛隊のことならなんでも知ってる! ファンなんだ! それに会えるなんて夢みたい! あ、そういえばスタースクリーム、サイン書いて欲しくって、このコグカバーの裏なんだけど、」
「うるさい。」
スタースクリームはサインしてやるから静かにしろと言うと、ビーのコグカバーの裏に雑な星マークを描いた。ビーは喜んだ。
「……んで、歩いてそこまで行くには時間がかかりすぎる。あとはわかるな?」
「トランスフォームか!」
「そうだ。だが、耳に挟んだ感じだと昨晩トランスフォームしてみたやつはいないらしいな。……まあ、その原因は俺にもあるだろうが。」
スタースクリームとDはばつの悪そうな顔をした。その表情があまりにも同じなので、3人は思わず吹き出してしまった。
「Dに聞いたぞ、やり方が分からねえってよ。そこで、まずは俺とアルファトライオンでトランスフォームのやり方を教える。アルファトライオンも、それでいいな。」
「ああ。若者を導くのも、先人の役目だ。」
頷くアルファトライオン。一通りのリペアは済ませているので、彼の挙動に問題はないだろう。スタースクリームは4人の機体を頭からつま先まで見た。コグがなかった頃と違って力強さのある姿で、これがあるべきサイバトロニアンの様相だと頷く。
「おし。機体の使い方は移動の最中に教えるが、まあお前らの中にあるのはプライムのコグだ。並の戦闘員なら余裕だろうよ。」
しばらくの後、洞窟をギコガコという音が反響した。
*
「トランスフォームできる! すごいぞ、パックス! 俺たち、"トランスフォーマー"!」
Dは歓喜に震え、瞳を輝かせながら叫んだ。ようやく夢に見ていた自分の姿に近づけたのだ。彼の元気な声が洞窟内に響き渡り、周囲の空気を明るく染め上げた。
「ああ、夢みたいだ! 俺がまさかトランスフォームできる日が来るなんて!」
オライオンも感動を抑えきれない様子で、自分の装甲を握り締めた。ずっと不可能だと思っていたトランスフォームこ能力をようやく手に入れた瞬間に、彼のスパークは喜びでいっぱいだった。
「コグのなかった頃は、無理してトランスフォームしようとしたお前を3日かけてこじ開けてたが、もうその必要はなさそうだな?」
「それは言わない約束だろ。」
機体に備わった本能とでもいうのか、そう時間をかけずに4人はトランスフォームを身につけた。一度成功すれば慣れたようで、彼らは思い思いにトランスフォームを繰り返すと、その事実を噛み締めた。
オライオンは馬力のある安定性重視の牽引貨物車両。エリータは小回りの利く機動性重視の二輪車両。ビーは直線移動に長けた速度重視のレース用車両。そして、スタースクリームが最も気になっていたDは、キャタピラー移動の装甲戦闘車両へ。
(やはり、Dは戦闘用か。まあ、それもそうだな。)
ハンドガンにトランスフォームしたメガトロンを思い出す。やはり、そのスパークは同じでも彼とDは全く共通するわけではないのだ、とスタースクリームは改めて感じた。
オライオン、エリータ、ビーと喜びを分かち合うDを、少し離れた場所で眺めるスタースクリーム。しかし、何かが物足りない。
「D-16を見ているのだろう。」
「……アルファトライオン。」
トランスフォームの手本をみせ、そのまま四足のビーストモードを保っているアルファトライオンが、のそりとスタースクリームの近くに寄ってきた。
「彼はメガトロナスが雛形の機体だな。お前が気に入るのも分かる。」
「べ、つにそういうんじゃ……。」
確かに、それは前からスタースクリームが思っていたことであった。ヘルメットの形状、馬力、角張った機体と、そして、記憶の中の右腕の砲身。D-16は確実に、メガトロナス・プライムの設計図を元にしてプライマスに製造された機体であった。
「……メガトロナスはその強大な力を、精神力とソラスに依存すること*1で律し続けていた。しかし、彼はメガトロナスではない。」
言われなくとも分かっていると思いながら、スタースクリームはアルファトライオンを睨んだ。その英智と経験は、短い間でDの本質を見抜いたらしい。
「これまでの彼は恐らく、労働者という不当な立場と規律でそれを押さえ込んでいたのだろう。だが、それらが紛い物だと知り、不当を正しうる力を得た彼を律するものは、今や親友のオライオン・パックスと、」
アルファトライオンはそこで言葉を切り、スタースクリームを見つめた。
「スタースクリーム、お前だけだ。」
スタースクリームは目の前の死に損ないから目を逸らすと、再びはしゃぐDを見た。
「よく、彼を見て置かねばならんぞ。そして、そのスパークの支えとなってやるのだ。」
「
アルファトライオンは、スタースクリームが50サイクル前と比べて良い方向に変わったことを感じ、全てをわかっているとでも言いたげな様子で、笑みを浮かべた。
まあ結果的に親衛隊に裏切り者がいたのは事実なんですが、それもセンチネルの策略だったのが憎悪ポイントですね。作者はセンチネル大好きです。
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