スタースクリーム:ONE   作:yaya river

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かなり難産だったので初投稿です。

完結したらきっとみんなが9とか10評価をたくさんくれるに違いない! と信じて頑張っているので、もう少しだけ本作にお付き合い下さい。




14

 

 打ち捨てられている宇宙船はいくらか崩落しており、年月の重みで外殻が剥がれ、戦闘の痕跡が無数に残っていた。50サイクルもの間、センチネルの目を逃れ続けた親衛隊残党のアジトの一つである。

 

 いざ中に入らんという場面で、ビーはわざとらしく両手をあげてアジトの感想を述べた。

「ワオ、ここがスタースクリームの家? なんていうか、歴史が感じられるね? オライオンが好きそうだ。」

 ビーは、宇宙船のくすんだ壁を軽く叩きながら無邪気に笑いかけた。それを聞いたスタースクリームの表情は一瞬ひきつったが、すぐにビーのヘッドパーツを殴ることでその場を収めた。

 

「痛い!」

「家じゃねえ、メインアジトのひとつだ。早く入るぞ、仲間たちは既に着いてる。」

 先導しようとするスタースクリームに声をかける者がいた。アルファトライオンだ。

「私はお前の合図があるまで外で待っていよう。混乱させるのは不本意なのでな。それまではせいぜい外の警戒をしておこう。」

 アルファトライオンの気遣いに、スタースクリームは小さく頷いた。

 

 

 

 アジトの屋内は、優に三桁は超えているだろう飛行型のトランスフォーマーでひしめき合っており、全員翼が窮屈そうに畳まれていた。彼らこそ、スタースクリームが呼び寄せた親衛隊である。センチネルの直属部隊以外の軍が解散した現状、武装した飛行型のみでこれ程の数を揃えた集団は、一言に壮観であった。

 

「おい、あの地上型たちって─────」

「ああ、スタースクリームが連れてくるって言ってた─────」

 

 ヒソヒソ、ヒソヒソ。

 早く入れ、と押されて入った4人は、なぜか彼らから異様な目つきでジロジロと見られ、ビー以外はすっかり萎縮してしまった。遠巻きにし、いかにも部外者ですと言いたげな扱いをする親衛隊員たちだったが、その中からスタースクリームに親しげに話しかける機体がいた。

 

「よう、リーダー。この1サイクルちょっと全く音沙汰なかったもんで、アイアコンでおっ死んじまったかと思ってたぜ。」

「よお、スカイワープ。お前は相変わらずブレインのパーツが欠損してるみてえだな。サンダークラッカーはどうした。」

 彼の名はスカイワープ。紫と黒の塗装が目立つ、スタースクリームと同型のシーカーだ。

 

「リーダーの身代わり。今頃他の隊員と一緒に、エアラクニッドとデストラッカー*1に追いかけ回されてるだろうよ。あと、次同じこと言ったらぶっ殺すぞ。」

 

 見知ったスタースクリームが、知らない相手と仲良さげに話している様子を間近で見て、そのアウェイな空気に呑まれる3人。しかしビーは持ち前の図太さを発揮して、親衛隊の面々を見ては興奮し楽しげであった。

 

「エリータ、見て! ほら、彼はスタースクリームの直属部隊のシーカー、スカイワープだよ! もう1機有名なシーカーでサンダークラッカーってのがいるんだけど、今はいないみたい。それで、あっちにいるのが側近のショックウェーブで、こっちがサウンドウェーブ! すごい、夢みたいだ! 他にウェーブがつく人は手を上げてくださ〜い! あ、まだわかるよ! あそこのシーカーは、」

「そいつを黙らせろ!!」

 

 ビーが無の表情のエリータに推しトークを繰り広げていると、突然そこに叫び声が割り込んだ。声の主は、ビーがショックウェーブと称した一つ目の親衛隊員であった。

 

「おい、スタースクリーム! なんでこんなゾロゾロ色んなやつを連れてきたんだ、しかも騒がしい! 俺は悲鳴は好きだがそれ以外は嫌いなんだ!」

「今いちばんうるさいのはお前だぞ、ショックウェーブ。」

 

 ショックウェーブは、いかにも玉座という様相の立派な背もたれ付きの椅子の脇に立ち、ビーに対する文句を垂れ流していた。椅子の反対側には、サウンドウェーブと称された機体が静かに佇んでいる。その玉座は、親衛隊の隊長────スタースクリームの為に据えられたものだった。

 

「ビー、後でコイツらにサイン書かせてやるから、今は静かにしてくれ。」

「わかったよ! ああ、楽しみだなあ。コグカバーの裏もいいけど、収納カバーの裏もいいよね! 流石に装甲表面だと一生洗浄できなくなるかも? 楽しみだなあ!」

「黙ってろって言われただろ!」

「うるさい。」

 

 荒く排気するショックウェーブ。スタースクリームはそれを見ながら玉座に腰掛けようと、4人を置いて台座に上りその玉座を手で払ったが、少し考えて腰掛けるのを辞め、玉座の正面に位置に立った。

 モノアイを瞬かせながらも、ショックウェーブは辺りを見回して合点がいったという風に頷く。

 

「……ああ、連れてきたヤツの中にいるのか、お前がここに座らせたいヤツが。どいつだ? まさか、あの黄色いチビじゃないだろうな。」

 スタースクリームは舌打ちした。

「その話は後だ。」

「同意:イズレ分カル事ダ。」

 その言葉にサウンドウェーブが追従する。それが面白くないショックウェーブは軽くスタースクリームを小突いた。

 

 

「おめえら! まずはこの1サイクル、不在にして悪かった!」

 スタースクリームが大声を張り上げた。途端、アジトのざわめきがピタリと止む。背筋と翼を伸ばし、場を支配する彼は正しく親衛隊の長であった。

 

「知ってのとおり、俺は1サイクルの間コグを外し、翼の無い非力な機体に改造してアイアコンに潜入していた。」

 先程までの喧騒が嘘のように静まり返り、真剣な目つきでスタースクリームを見つめる親衛隊員たち。無理もなかった。彼らは、スタースクリームのその口から、ある決定的な一言を聞くためだけに今まで無理をしてきたのだから。

 

「だが、その甲斐あって俺はセンチネルの蛮行の証拠を手に入れた! 取引現場の映像データと、プライムたちの墓場の場所、そして、」

 

 スタースクリームが合図を送ると、アジトの入り口からゆっくりとビースト型のロボットが姿を現した。威圧感と共に静かに進むその姿に、アジト内の隊員たちはまさかと息を呑む。かつての栄光を彷彿とさせるその姿は、サイバトロン星の歴史を背負った存在そのものだった。

 

「そこの、死に損ないのジジイ。」

 

 ざわり。腰かけて話を聞いていた隊員は立ち上がり、もたれかかって聞いていた隊員は前のめりになってそれを確認した。しばらくその姿を見ていないとはいえ、たった50サイクルである。見間違えるはずもなかった。死んだと思っていた彼らの主人の一機、アルファトライオンがそこに佇んでいた。

 

「膝を折る必要はない。もう私に、いや、我々に、お前たちを跪かせる権利は無いのだから。」

 アルファトライオンはそう言うと、ビーストモードを解いて人型に戻った。最低限のリペアで多くのパーツが欠損したその姿に、何人かの親衛隊はギョッとした。それを見届け、スタースクリームは静かに、しかし力強い声で話す。

 

「50サイクル前の翼をもがれたあの日、俺たちはスパークに誓ったはずだ。プライムたちをもう主人と仰がないことを。だから今、ここにいるのはセンチネルの蛮行の生き証人だ。間違えんな。」

 スタースクリームの言葉を聞き、悲しげにオプティックを逸らしたアルファトライオン。翼をもがれたという過去に痛ましさを感じたからだ。

 

「以前の計画では、あと1サイクルをかけて労働者にセンチネルへの疑心を植え付けてから、クーデターを起こすつもりだった。だが今やコイツがいる。この絶対的な証人は、 "味方の数" という俺たちの弱点を一発でひっくり返す強力なカードになるだろう。」

 

 疑心を植え付ける。そう聞いてオライオンは合点がいった。以前から囁かれていた、センチネルについての悪い噂。センチネルはマトリクスを持ち帰るつもりが一切無く、コグ有りとコグ無しのカーストの差を埋めるつもりがない、という話。

 今となってはそれが真実であると知っていたが、この噂を流していたのはスタースクリームだったのだ。オライオンは、彼は本当に以前からクーデターを起こすつもりでいたのだと思い知った。*2

 

 スタースクリームが拳を振り上げた瞬間、彼の翼は横に大きく広がり、その影が背後に伸びた。

「あの詐欺師の蛮行から50サイクルとなる明日! 俺たちはクーデターを決行する! この翼が飾りじゃねえことを証明する時だ!」

 背筋をぴんと伸ばす彼のオプティックには、揺るぎない決意の光が宿っていた。その宣言を聞き、親衛隊員は待っていたとばかりに歓声を上げる。全員、この言葉を待ち侘びていたのだ。

 

「ウオオオーッ!! スタースクリーム! スタースクリーム!」

 空に拳を突き上げ、大歓声を浴びるスタースクリーム。その光景は本当に様になっていて、エリータなんかはぽかんとその様子を見ていたが、Dにはスタースクリームがどこか無理をしているように見えた気がした。

 スタースクリームは振り上げた拳を下ろすと、歓声に負けないよく通る声で話を続けた。

 

「だが、忘れるな。センチネルをあの偽りの玉座から引きずり下ろすことは、手段であって目的じゃねえことを。俺たちの使命を思い出せ! サイバトロン星をクインテッサ星人()から守ることが、俺たちの役目だ!」

 

 スタースクリームの言葉が、まるで刃のように親衛隊員たちを突き刺す。彼の威容に、周りの親衛隊員たちはオプティックを見張り、緊張がさらに高まった。彼らは彼の言葉に耳を傾け、忘れかけていた使命を、再びスパークに刻み込んだ。

 

「成すべきことを成せ!」

 

 その言葉は命令ではなく、彼ら全員への宣言だった。スタースクリームの声が響き渡り、隊員たちの決意をさらに強固なものへと変えていく。その場の緊張感は、まるで戦いの前の嵐のように静かでいて、どこか血が騒ぐような気配さえ感じさせた。

 

 

 

「じゃ、作戦を伝える。」

 

 

 

*

 

 

 

「サウンドウェーブ。」

 明日の作戦の準備をするため、バックヤードに戻ろうと去るサウンドウェーブを引き止める者がいた。スタースクリームだ。

「ナンダ。」

「地下50階の侵入経路を調べてくれたろ。あれは助かったぜ。コグ無しの俺じゃ極秘情報のハックは出来なかったからな。あんがとよ。」

 

 スタースクリームは少し気恥しそうにしながらも礼を述べた。オライオンとDの部署移動の行先と、その新しい職場である地下50階への侵入方法を調べるため、サウンドウェーブはアイアコンの極秘情報データベースに不正アクセスしたのだ。

 

 サウンドウェーブは軽く首を振った。

「ソレグライ、大シタ事デハナイ。ソレヨリ、逆探知デ居場所を特定サレテカラ、逃ゲマワル方が面倒ダッタ。」

「ああ、聞いたぜ。インセクティコン(虫ケラ)かってくらい地面を這うみてーに飛び回ってた*3らしいな。陽動部隊を引き連れて今も逃げ回ってるサンダークラッカーにゃ悪いことしたぜ。だが、お前らが作ってくれた時間は確実に役に立った。」

 

 地上に残されていた彼らが晒されていた危険。それは、この不正アクセスによってもたらされたものだった。隠匿されている地下41階より下の情報は、全て厳重な監視の元管理されている。サウンドウェーブは幾重にも間接端末を噛ませハッキングを行ったが、壊れた宇宙船にあるオンボロでは、その鍵をすりぬけ必要な情報を抜き取ることが精一杯であった。*4

 

「新シイ指導者トヤラを連レテ来ル事ノカ。D-16トカイウ奴ダロウ。流石に分カル。」

「そうだ。」

 スタースクリームは頷き、自信に満ちた表情をした。

「お前もすぐ認めるだろうよ。アイツこそ、俺たちの主に相応しい。」

 そして、ニパっと万遍の笑みを浮かべて言った。

「そのためにも、明日のアイツにゃデストラッカーをボットボットと撃ち落として貰わねえとな!」

 サウンドウェーブはこれみよがしに排気した。

「……知能レベル、最低。」

 

 

 そして、クーデター決行の朝が来る。

 

 

*1
primeに登場するビーコンによく似た、エアラクニッド直属の兵士。全員規格が同じで個性もないため、本作ではクローン兵として扱う。また、ハイクラスと思われる金色と銀色に塗装された種類も存在する。それぞれ、ゴールドトラッカーとシルバートラッカー(トレカより)

*2
5話を参照

*3
地面効果

*4
普通なら、閲覧どころかデータファイルにたどり着くことすら出来ない





サウンドウェーブ
サウンドシステムの面汚し。電気インパルスでいろいろできる有能
ショックウェーブとコンビで行動するスタースクリームの忠実な部下(パンフより)

めんたま
捕虜をいたぶるのが好き。胸が大きい
今回は初代より彼のセリフを引用した

スカイワープ
ONE本編で、声の小さいオライオンに「なんだって?」と聞き返したやつ

デストラッカー
脚注の通り
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