短めなので初投稿です。
今回は前話+アルファの答え合わせ回です。
それでは、どうぞ。
「どうしたんです、もうすぐ作戦が始まりますぜ。」
スタースクリームは、アジトの通路に立っていた。通路は崩落していて、夜明け近くのぼうっと銀色に明るくなった空を拝むことが出来た。朝日が登りきるまでにはもう少し余裕がある。
ぼちぼち作戦開始か、とスタースクリームが親衛隊のところに戻ろうとした矢先、彼の前にD-16が立ちはだかった。そのフェイスパーツには、どこか言い出しにくそうな様子が浮かんでいる。
「あー、もしかして左肩のステッカーを見せに来たんですかい? いいじゃないですか、メガトロナス・プライム。」
スタースクリームは軽く肩をすくめ、Dの左肩に貼られたステッカーを指でトントンと叩いた。
「俺は生前のソイツを知ってますけど、やっぱそのステッカーが一番似合うのはアンタですぜ。」
Dは一瞬驚いた表情を見せ、言いかけた言葉を呑み込んでオプティックを逸らした。沈黙が二人の間を流れる。スタースクリームにとって、Dと二人の時の沈黙は最早苦痛なものではなかったので、黙って彼が言葉を口にするのを待つことにした。
やがて、Dは決意を固めたようにステッカーに手を伸ばし、丁寧に剥がし始めた。気に入らなかったのか? と訝しむスタースクリーム。傷をつけないよう慎重に剥がしきると、Dはそのステッカーをスタースクリームに差し出した。
「ん、これ。」
「え、いやいやいや、急になんです!」
思わず声が上ずるスタースクリームの反応に、Dは小さく笑みを浮かべながら首を横に振った。彼の摘むステッカーは、まだ薄暗い中で一際輝いている。Dがかのプライムの熱心なフォロワーであることは、スタースクリームもよく知るところだった。それを、なぜ自分に差し出すのか。
「勘違いすんな、初版のメガトロナス・プライムのステッカーだぞ? 貸すだけだ。」
目の前の彼から顔を逸らし、オプティックを不器用に瞬かせているD。普段の様子とは裏腹に、隠しきれない気恥しさが表情に滲み出ていた。
「パックスが、ずっと渡しそびれてたっつってさっきくれたんだ。けど、俺とアイツで話し合った結果、一旦お前に預けることにした。」
受け取れないと首を振るスタースクリームを無視するD。震える発声モジュールのまま、彼は白と赤の翼に直接ステッカーを貼り付けた。
「明日の作戦はお前が鍵だ。けど、俺もパックスも明日は別行動でお前を見てやれねえだろ。お前はきっと、俺たちのことを機体年数の若いロボットで、頼りないと思っているだろうが……俺たちにとっちゃ、お前は一番の新入りで後輩だ。」
Dの言葉に、スタースクリームはなんだかスパークの内から溢れるものを感じ、ついオプティックを伏せた。そもそも、現状を打破するためにDのことを頼って会いに行ったのだ。頼りないだなんて思っているわけがなかった。それに、オライオンやエリータ、ビーだって……。
なにより、全てを知ったDたちが今なお、親衛隊長としてではなく、ただの後輩として扱ってくれていることが、スタースクリームには嬉しく感じられた。
「明日。俺たちも一緒にアイアコン5000で戦わせてくれ。後輩の晴れ姿を見れない代わりに。」
「忘れんなよ、貸すだけだ。だから────」
(─────だから必ず、返しに来い……ね。)
スタースクリームは己に貼られているはずのステッカーに思いを馳せた。アイアコン5000、そのスタート地点に
先程、センチネルが部下からの通信によって会場を離脱したばかりだ。タワーに攻め入ったDたちの事に違いない、そう確信しながら、スタースクリームは彼らからセンチネル接触の報告を待っている。
スタースクリームが立てたクーデターの作戦はこうだ。
まず、帰還する廃棄物の列車に乗り込み、アイアコンへ侵入する。エリータ曰く、一度リペアと汚染洗浄を挟むので誰かと鉢合わせることはないらしい。
そして、アイアコン5000に合わせ、Dやビー、そしてほとんどの親衛隊員でセンチネルタワーを襲撃、占拠する。センチネルの腹心、エアラクニッドは地上でサンダークラッカーたちが引き付けているので、タワーにはセンチネル本人が向かうしかない。
センチネルがタワー内部でDたちと交戦するのを待って、スタースクリームはアイアコン5000を優勝。注目と人心を集める中、ヒーローインタビューでセンチネルを告発し、クーデターを宣言する。
同時に、放送局をオライオン、エリータ、サウンドウェーブ、ショックウェーブ、そしてアルファトライオンで制圧。Dたちがセンチネルの気を引いている間に、タワー内部と近辺を除くアイアコン全域へスタースクリームの告発を流す。
そして、ダメ押しにアルファトライオンが放送局からスタースクリームを肯定すれば、センチネルの政権は終わりだ。
だが、どうも少しタイミングがギリギリだったらしい。スタースクリームは、これはレース開始に間に合わないだろうことを察した。
センチネルがタワー内部に入るまでスタースクリームが飛んではならない理由は簡単だ。センチネルなら、スタースクリームがどんな機体を象っていたとしても、飛行を見ればすぐさまその正体を看破するからだ。スタースクリームにとってセンチネルは憎くていけ好かない、今すぐにでもオールスパークに還してやりたい相手であったが、決して侮ってはいなかった。中継が目に入る可能性がある以上、スタースクリームは大事をとって報告があるまで飛ばないでいる覚悟を決めた。
案の定、通信が来る前に開始の合図がおりてしまい、スタースクリームは内心排気をした。そして、どうせ出遅れたのなら、とことん現状を利用してやろうと思った。人心を掴むのに必要なのはエンターテインメントだと、センチネルはその身をもって教えてくれていた。
スタースクリームは、奴に出来て己に出来ないことはないと自身を鼓舞し、こうなったらどんなハンデがあろうと優勝してやると息巻いた。
《B-127よりスタースクリームへ! センチネルだよ! 今Dが戦ってる! 親衛隊員は外で兵士たちを引き付けて戦ってるけど、数が厳しいみたい! こいつら一体なんなのさ! 同じ顔が多すぎる!》
「そいつはクローン兵だ。機体自体は大して強くはないが、センチネルを裏切らないようプログラムされてる。手持ちの装備はイイもん持ってるから、上手く奪って利用しろ。いいか、お前らの仕事は告発が終わるまでの時間稼ぎだってのを忘れんな。」
ようやくセンチネルがタワーに着いたらしい。スタースクリームは掲示板のランキングを見た。1位は現在、800地点を過ぎたところ。こんな中途半端な数字では、観客に何か理由があったのかと後で勘繰られて終わりだ。
勝つなら、圧倒的な勝利を。センチネルの与えた偽の平和の中毒を上回る熱狂を。スタースクリームの翼が力む。1000差を単独飛行で覆すことを、可能だと言い切ることは今までの彼でもって厳しかった。
(でも、俺の翼なら、どんな逆境も飛び抜けることが出来る。こんなおキレイな飛行で、俺が負けるわけないんだ。)
『970、980、990、』
(ただ、今だけはどうか、俺に勇気をください、メガトロン様。)
『1000!!』
(アンタの名とインシグニアを背負って、俺は勝つ!)
さて、スタースクリームはかつて名を馳せたシーカーの機体……とは異なるオルトモードでレースに臨むことで、その匿名性を確保した。
─────F-15。スタースクリームの内に宿るスパークの欠片が、かつて地球という星でとっていた姿である。
今までの彼は、そのスパーク片を別次元の己であるとは認識していても、どこか別人の記憶であるという意識が抜けきらずにいた。少なくとも、自認では。だからきっと、このF-15での飛行は違和感があるだろうと、速度と制御が落ちる覚悟さえしていた。
しかし、そうではなかった。彼にとってこの慣れないオルトモードは不調どころか、すさまじい好調をもたらした。ミリ単位の機体制御も、まるで
「……そうか、やっとわかったぜ。」
本来、塗装の上からのステッカーなんて機体制御を狂わす異物でしかない。しかし、今のスタースクリームにとっては違った。
F-15という姿を取ったこと、 "懐かしい" 位置に紫のソレがあること、なにより、メガトロンを強く意識したこと。この3つの要因が混じり合ったことで、スタースクリームはひとつの結論を導いた。
エンジンの出力が理論値を超え、実況が、観客が、レーサーが、スタースクリームの飛ぶ姿に息をのむ。その速度はもはや、テックスペック9より上を表す10、その範疇にすらおさまりきれずにいた。
「
スタースクリームのスパークはこの瞬間、ようやく
スタースクリーム
真の意味でスパークがひとつになったことで、テックスペックが上昇。Dとの交流や、プライムに対する踏ん切りをつけたことも重なり、ようやく翼にインシグニアを背負う覚悟を決めることができた
ステッカー
メガトロナス・プライムのすごいやつ
今までの話で、スタースクリームがメガトロンへの情景や諸々の記憶を自分のものだと思ったり、他人のものだと思ったりでブレブレだったのは、自認ではスパークを自己と同一視出来ていなかったからです。
どっちかというと支部のキャプションに対するアンサーで、ハーメルンだと少し分かりづらかったかも? とりあえず、タスクのひとつだったタイトル回収は出来たのでよかったです。
活動報告もよければどうぞ。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=319713&uid=155940