更新が遅れてしまったのと、トランスフォーマーONEのデジタル買い切り配信が始まったので初投稿です。
もちろん買いましたよ、みんなもアマゾン・プライム様に貢いで買ってください。ヘッドフォンで聴くと映画館とは違った良さがあってオススメです。
それでは、どうぞ。
「どうした、そんなものか? 反逆者。50サイクル見ない間に、親衛隊どもは随分腑抜けになったらしい。空の守護者が全く、情けないものだ。」
センチネルタワー最上階にて。Dとビー、そして何機かの親衛隊がセンチネルと対峙していた。外ではアイアコンレースの観客のひしめく地上を他所に、親衛隊本隊がトラッカー集団とせめぎ合っている。センチネルは普段の様相とは異なり、右手をエネルギー銃に変形させ、左手にはシールドを展開しバトルマスクを装備していた。
作戦発布時、スタースクリームは念を押してとあることを周知した。いわく、「センチネルと接近戦だけはするな。」と。そして、その理由も。
だからこそ、今彼らは距離を保ちながら銃撃するだけに留まっていたのだが、その全てをセンチネルはシールドで防御するか回避していた。そして、冒頭の台詞。
「それに、まさかコグ持ちと親衛隊が繋がっていたとは、一体どうやったんだ? この私ですら、この50サイクルやつらの本拠地を見つけることは出来なかったぞ。」
シーカーたちが殺気立つ。今この場に親衛隊の幹部格はおらず、隊長 スタースクリームの
「特にサウンドウェーブが厄介でな……そういえば見かけないが、死んだか? ははっ。」
そう宣ってニヤつくセンチネルにシーカーの何機かがいきり立ち、指示を待たずに飛びかかる。スカイワープの統率の甘さが際立った瞬間だった。センチネルはそら来たと言わんばかりに、向かってくるシーカーたちの一機を軽く掴んで横なぎに振ると、あっという間に飛びかかった全員の銃口から逃れた。
「50サイクル前はアイツを出し抜くのに苦労した。あの頃のエアラクニッドの苦労を思うと、私はスパークが苦しくて仕方ない。大変だったんだぞ? ブレインスキャンされない立ち回りを維持するのは。」
自らの所業に満足げなセンチネルは、ぺらぺらと回る舌を止められないようで、攻撃の手を緩め意気揚々と普段部下以外に話せないことを語りだす。体勢を立て直すシーカーを見逃すのは、油断ではなく自負、自信と表現するのが相応しかった。
「強すぎるって! プライムじゃないならなんであんな馬力してるの!?」
そう叫びながら、ビーが奪ったトラッカーの装備でセンチネルを銃撃した。その機動力でようやく装甲に命中させることに成功するも、エネルギー弾は表面のワックスを削るだけで、傷一つ付けることもできない。微塵も運動エネルギーを損失することのなかった跳弾が壁と天井の装飾を割り、その破片が彼らの上に静かに降り注いだ。
「ほお、そんなことまで知っているとは、余程親衛隊と仲がいいらしい。さては、少し前の通信信号の相手はお前たちか?」
「なんの事だか知らねえが、裏切り者が偉そうな口きいてんじゃねえ!」
銃撃の意味が無いことを悟ったDが、割れた大きな破片を棍棒のように扱って殴り掛かる。近接戦闘を仕掛けるなというスタースクリームの言葉を忘れたわけではない。ただ、Dは信じたくなかったのだ。スタースクリームの告げた、近接戦闘を避けるべき理由を。
焦りと怒りのままに破片を振るうDの右腕は自由そのもので、武器のひとつも付いていない。────D、そしてビーのたった二機だけが、その身に武器を宿していなかった。
「おっと! 危ない、危ない。戦い慣れてなさそうだな、
大振りな攻撃をなんなく避けるセンチネル。その避けざま、センチネルはDの背部装甲を肘で強打し、強制排気によって一瞬動きが止まった彼の首を左手で掴んだ。
「そもそも、親衛隊はともかくなぜお前たち二機は私に逆らうんだ?」
センチネルの声が一段低くなり、その指がDの首をさらにきつく締め上げた。
「お前たちコグ持ちが何不自由なく
「ぐ、……!」
「D!」
声帯モジュールを圧迫され、呻き声をあげるD。この場の誰よりも上背があり体格のいいセンチネルが僅かに腕を掲げるだけで、小柄では無いはずのDはいとも簡単に床から足を離されてしまった。
「コグを抜いた労働者と違って、お前たちに暴動を起こされたらとてもじゃないがかなわんからな。 "下" を見て安心できる、何不自由ない生活をさせてやったろう。後学のために教えてくれ、何が不満だったんだ?」
親衛隊は動かない。元より、彼らの目的は、スタースクリームの暴露演説を守る時間稼ぎである。センチネルが自己陶酔にひたってお喋りに夢中になることは、願ってもないことだ。いくらスタースクリームが目にかけている機体だからといって、今の親衛隊らにとってDは優先度の低い存在でしか無い。
ただ一機、ビーだけが
「お、れは……!」
Dの声が声帯モジュールから絞り出されるように漏れた。その音は掠れていて途切れがちだったが、決してセンチネルに屈したものでは無かった。
「ん?どうした。喋る気になったか?」
冷笑に満ちるセンチネルの声。その表情には自分の優位に酔いしれる歪んだ満足が滲み出ている。掴んだDの首にかけていた指圧をわずかに緩めた。その仕草には、ただ楽しむために獲物を逃がす捕食者のような悪趣味な余裕があった。
やっと強制排気の衝撃が抜けてきたのか、Dは咳き込みながら吸排気を整えると、その視線をセンチネルに向けた。彼のオプティックはオレンジに燃え上がっている。
「俺たちは、労働者だ……! お前に、コグを、全てを奪われた……!」
センチネルは意外そうに眉を上げると、エネルギー銃に変形させていた右腕の武装を解除した。Dを殺す前に聞き出すことが出来たからだ。
「労働者? だがお前たちはコグを持っているだろう。コグ持ちを殺して奪ったか? それとも、死んだ親衛隊員のコグか?」
問いかける声には、淡々とした冷酷さが宿っていた。彼にとっては、ただの事実確認に過ぎない言葉だ。コグ無しがコグを得る方法が気になっているのだろう。
Dはその質問を聞き流すようにフェイスパーツを歪め、彼をつかみあげるセンチネルの腕を握りしめた。そしてその口元から漏れたのは、声というよりも怒りそのものが形になったような叫び声だった。
「俺はお前に屈しない! 必ず復讐する! 俺が、俺たちが今まで奪われた分、そしてお前に殺されたあの人の分を!」
その叫びは激昂の塊であった。センチネルの表情が僅かに変わり、その冷ややかなオプティックに一瞬の揺らぎが走った。Dが質問に答えなかったことを咎めるのも忘れ、センチネルの口から自然と疑問が零れた。
「あの人?」
その問いは、予想外の形で漏れたものだった。尋ねた本人でさえも、自分がその言葉を口にしたことに少し驚いた様子だった。
Dは、彼を掴むセンチネルの両手に限界まで力を込めた。美しく磨き上げられたセンチネルの青い装甲に、深々と刻まれる爪痕。赤と見間違う色をしたオプティックを釣り上げ、Dは自身にとって信じたくない事実を叫んだ。
「お前が殺し、骸を暴いてコグを奪った、メガトロナスだ!」
その名が発せられた瞬間、空間全体が一瞬凍りついた。センチネルのオプティックが微かに見開かれる。そんなことまで知ってるのか、という冷静な思考と、それを塗りつぶすセンチネルにとって久しぶりの感情。Dの発する怒気は、13プライムを思わせる激しさだった。センチネルは、目の前の名も知らぬ元労働者に威圧されていた。
メガトロナス・プライム。センチネルは、史上最強のプライムとして名高い彼を謀殺した後、その胸のトランスフォームコグを奪った。50サイクル前センチネルに捕まった時、それを声高らかに告げられたスタースクリームと数機は、もちろん今でもその事を忘れていなかった。
だからスタースクリームは告げたのだ、センチネルと接近戦をするなと。メガトロナスのコグは、センチネルに多彩な武装と馬力をもたらした。そしてそれは、メガトロナスに憧れるDにとっては受け入れ難い真実であった。
Dの声はさらに高まり、その怒りが剥き出しにされる。
「俺はお前を許さねえ! そのために世界を変える力を、オニキスのコグを受け継いだ! お前とは違う!!」
「オニキス?」
センチネルは食い気味に聞き返した。単語が気になったのもあったし、アイアコンの頂点に君臨する自分が威圧された事実を認められなかったのだ。そしてあるひとつの考えに至ると、センチネルはありえないと思いながら、反逆者にとある疑問を投げかけようとした。
「まさかお前は、いや、お前たち二機はプライムのコグに、」
その時、Dたちとセンチネルの戦う最上階に飛び込んでくる黒い影があった。銃撃を上手く躱しながら飛び込んできた、独特なローターブレードの目立つその黒い機体を見間違える親衛隊員はいない。
「センチネル!」
影の正体。それは、別働隊が地上で引き付けているはずのセンチネルの腹心、エアラクニッドであった。普段はポーカーフェイスで何を考えているのか分からないと評されがちなエアラクニッドであったが、タワーに飛び込んできた彼女の表情は焦りと怯えに満ちている。
「遅い、エアラクニッド! なぜ通信に出なかった!」
遅れて、エアラクニッドの後方で銃撃を放ちながら、青と白の航空型─────スタースクリームのもう一人の
多くのことに気を取られているセンチネルを見て、ビーはDを助けるチャンスがやってきたことを確信する。センチネルには先程、軽くあしらわれたばかりだ。だが、あしらわれてもなんでもやらねばならないことはある。
「ウオーッ! 頑張れ、ビッグ・ヤバトロン!」
ビーは、 "今ならいける気がする" という直感を信じ、大声を上げて自らを鼓舞すると、本能のままにセンチネルに突撃した。
「D!!」
小柄な機体の非力な腕が振りかぶられる。エアラクニッドたちに気を取られていたセンチネルは、一瞬の間の後にビーに気づいた。小柄で非力なB-127がことを成すのに必要だったのは、その一瞬だけだった。
僅か一瞬の間に、ビーの両腕に発現したエナジーソードが、Dを掴みあげるセンチネルの左手の小指、そのジョイント部分を正確に切り落とした。握力を十全に発揮するために必要な小指を失ったことで、Dを掴むセンチネルの手が緩まった。
それを見逃さず、スカイワープが援護射撃でセンチネルの注意を引きつける。Dは思い切り下半身を仰け反らせると、遠心力を利用してセンチネルを両足で蹴り飛ばした。そしてその手から逃れると、バックステップで壁側まで飛び退いた。
「助かった。ありがとな、ビー。それと、アンタも。」
「任せて、それより見てよD! ソードが出た! かっこいい! ワハハハハ!!」
「はは、そうだな。似合ってる。」
「……いや、俺は、」
はしゃぐ元労働者二人、そしてスカイワープを憎々しげに睨みながらも、センチネルはエアラクニッドに向き直った。
「なにがあった!」
「通信妨害と、ノイズキャンセリングです! このタワーは今、外のあらゆることから閉ざされています!」
銃撃をブレードで弾きながら、自らの主に聞こえるようエアラクニッドは大声を張り上げた。
「スタースクリームです、センチネル! ヤツが市民の前で貴方を告発しています!」
**
放送局。オライオンとエリータが必死にプライムタイム*2に使われる放送モニターを操作し、告発映像をアイアコンじゅうに流している横にて。サウンドウェーブは機体から伸びるコードを放送局のコンピュータに繋ぎ、そのブレインで演算の限りを尽くしていた。
「タワーの
「問題ナイ。センチネルがスタースクリームの演説に気ガ付クコトは無イ。」
サウンドウェーブが本隊を離れ、放送室にいた理由。それは、タワー内部に外界の状況が伝わらないよう、放送を利用して通信妨害電波とアクティブ・ノイズキャンセリングを行うためであった。通信妨害で異変に気づいた部下からセンチネルへの報告を妨げ、さらに通常であれば聞こえるであろうスタースクリームの演説の音声、その逆位相の波長をタワー内部の放送で発し続けたのである。
コードを繋いだ彼のセンサーが、高速で複雑な波形を解析し、場所毎の最適な逆位相の周波数を見つけ出す。全ての音を無音に変えるべく、彼のプロセッサは限界まで酷使されていた。
結果、センチネルはスタースクリームの演説に気がつくことが出来ず、Dやビー、親衛隊の本隊の陽動に引っかかった。
ついでに、戦闘音を打ち消す波も垂れ流しておけば、アイアコンレースのために高層域の飛行が禁止されている市民たちは上空で繰り広げられる激戦に気が付かない。よもや気がついたところでこう思うだけだ。「ああ、また乱闘か。」と。アイアコン5000は毎回、八百長や不正を防ぐために多くの兵士やトラッカーたちが配置され、毎回何らかの乱闘が起きていた。
これらは全て、スタースクリームだけに全市民の注目を集める。ただそれだけのために練られた作戦であった。出撃前、スタースクリームは、アルファトライオンという切り札がいる限り、注目を集めさえすればクーデターは失敗しないと語った。故にこその、マイナスをゼロに戻すだけの一手である。
通常のシーカーとは異なり、サウンドウェーブはショックウェーブとバディを組み、常に二機で行動をしていた。よって、ショックウェーブもまた本隊を離れて放送局での任に就いていた。彼の任務はサウンドウェーブの補助、および "時" が来るまで待機する予定のアルファトライオンの護衛だった。
《この1サイクルと少しの間、俺はこのアイアコンシティで今日のための準備をしてきた。それも、自らのトランスフォームコグを外してだ。お前らで、コグを外して長期間過ごしたことがあるやつはいるか?》
スタースクリームの告発演説は、もちろん放送局にも聞こえていた。
《ま、いないだろうよ。コグを取り上げるなんざ、余程の犯罪者じゃなきゃされてねえからな。無期懲役で収容されてるやつくらいじゃねえか? 経験があるのは。今もそいつらが生きていたらの話だが。》
「なあ、これってどうつかえばいい?」
「ああ、それはですね……。」
放送局員は突然現れたオライオンたちに付き従い、演説の放映をサポートしている。なぜなら、彼らの傍には50サイクル前死んだと思われていたプライム、アルファトライオンがいたからだ。
長年、センチネルのプロパガンダに付き合ってきた局員たちは、アルファトライオンを見て真実を察した。そして今、自ら進んで協力してくれている。たった50サイクルは、プライムの威光を無くすには短すぎる期間であった。
《コグを外すとどうなるか、公にされているのはトランスフォームできなくなるってことだけだ。んじゃ、他には?》
局員の助けを借りながら、必死に端末を操作するオライオンとエリータ。事前に用意していた映像資料からひとつを選ぶと、映像をスタースクリームのヒーローインタビューから別のものに切り替えた。それは、コグを摘出したスタースクリームが日を追うごとに装甲を失っていき、ついには翼さえも捥げ落ちていくまでの映像記録であった。
縮小していき、胸部に空洞を持った外見に変じていくスタースクリームの姿。事前に中身を見ていたオライオンとエリータにとっても、その光景は酷く痛々しい、そして受け入れがたいものであった。もちろん、アルファトライオンにとっても。
《正解は、武装ができなくなって、機体が縮む、だ。俺は改造してある程度機体を整えたからこの程度だが、してなけりゃもっと小柄だったろうよ。俺の言いたいことが分かるか?》
《生まれついての欠陥品(劣等者)としてこき使ってきた労働者に、俺たちは何時でもなれるってことだ! そしてその欠陥は、とあるヤツが意図的に起こした!》
映像が再びスタースクリームを映した。あたりまえのことだが、スタースクリームはスタジアムに独りで立っていた。そんな彼を見て、アルファトライオンは自らが安全な場所に匿われている事実を恥じた。
《この50サイクル、センチネルは起動する前の全ての "トランスフォーマー" からコグを摘出して、意図的に "労働者" を作り上げていた! 口減らしと、都合のいい労働力の確保のために! これが、センチネルの一つ目の罪だ!!》
アルファトライオンは、50サイクル前のスタースクリームを思い出していた。正直なところ、スタースクリームはそのスペック由来のカリスマで航空型の頂点に立つことは出来ても、その日和見主義的な性格から肝心の頂点指導者としての適性は低いというのが、13プライムの見解だった。むしろ、50サイクル前メガトロナスによく付き従っていたように、副司令官としての素質が高いとすらアルファトライオンは思っていた。
だが、今はどうだ。プライムたちが
兄弟全員のしくじりをたった一機の部下に後始末させることは、プライムの名折れだとアルファトライオンは強く思った。プライマスはサイバトロニアン全員に役目を与える。そしてこの戦いはスタースクリームだけではなく、アルファトライオンにも与えられたものだ。彼は決意した。自らもまた、衆目の元でスタースクリームと共に戦うことを。
「……ショックウェーブ、私は行くぞ。」
「え!? あ、アルファトライオン様、ちょっ、クソ、おい! そこのピンクの女! 来い!」
「私!? ……もう、あとは任せたよ、パックス!」
アルファトライオンとショックウェーブ、エリータはスタジアムへ向かって駆け出した。スタースクリームの戦いを助けるために。
センチネルTUEEEEが書けて大満足。ナスコグ自慢がなかったことだけが心残りです。
それと、今話の筆が乗らなさすぎて当作の表紙を描いてみたので、良かったら見てやってください。結構いい感じかも?
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