ワンチネルが噛めば噛むほど味がしみ出てくるので初投稿です。
本作ではD-16のことを、B-127との視覚上の区別のためDと表記しています。ディーとカタカナ表記にしたい方は、右上の表示設定より変更することが可能です。
D→ディー
ディー-16→D-16
以上の2つを設定していただくと、字幕版に則った表記になります。
よろしくお願いします。
「所属不明のコグ無しを発掘した」と報告を受けたダークウィングは、ため息をついて天を仰いだ。「ああ、また厄介事か。」と心の中で毒づく。しかも、そいつは記憶回路がイカれていて、事故前のことを覚えていないとか。もう、このままスクラップにしてしまおうかと指示を出そうとしたその瞬間、ふと昨日の事故で右腕以外吹っ飛んだヤツを思い出した。
「……いや、待てよ。これは使えるな。」
ダークウィングのオプティックが輝いた。もしこのコグ無しイカれロボを事故の生き残りに仕立てれば、事故を隠蔽できるんじゃないか? 自分を天才だと称えながら、ダークウィングはニヤリと不敵に笑った。
「これで隠蔽も楽勝だし、厄介事も消えて一石二鳥。プライマスに感謝だな。なに、どうせコグ無しだ。大した問題にはなるまい。」
ダークウィングは己の機転と運の良さに惚れ惚れした。
というような感じで、スタースクリームが労働者の群れに紛れ込むのは、労働者の扱いの悪さも相まって案外簡単だった。いや、簡単すぎるくらいだった。
「コイツはS-39。今日から私たちの部隊で預かることとなった、記憶回路不良で何も覚えちゃいないイカれ労働者だ! 今後D-16の管轄とするが、コイツはトーシロだと思いよく教育しろ!」
「はい、エリータ・ワン!」
大した力もないコグ無しは、例え罪を犯していようがすぐ労働に回される。エネルゴン不足にアイアコン中が喘ぐ今、労働者は居れば居るほどいいからだ。
Tコグを外して隠し、機体名の刻印も事故で破損したように削り取れば、エネルゴン採掘中に記憶回路を壊された労働者の完成だ。
トランスフォーマーの誇りであるコグを外すような物好きはおらず、またコグ持ち犯罪者は尽く粛清されているからこその抜け道。センチネルの腹心、エアラクニッドによる監視網は厳重だが、ひとたびくぐり抜ければ容易い、とスタースクリームは笑う。まして、外部からの侵入など。
そうして配属された先。スタースクリーム───今はS-39と名乗っている───は早速プライマスに感謝した。上司にあたるこのD-16とかいう機体、どうもメガトロンに違いないからである。「こんなに早く遭遇できるなんて!」 地べたを這う生活を早々に脱したいと思っていたので、スタースクリームは大層喜んだ。あとはすぐさまこのD-16を回収すれば地上に帰れるからだ。
だが、その目論見はすぐさま失敗に終わる。
「よう、S-39。俺はD-16。よろしくな。」
一目見てD-16をメガトロンだと直感したスタースクリームだったが、すぐにその直感に疑念を抱く。『よろしくな』と微笑み、握手待ちか手を差し出すメガトロン(かもしれないやつ)に、スタースクリームは内心で叫んだ。
────なんだこの違和感!
結果スタースクリームは混乱し、倒れた。メガトロン、いや、D-16は倒れたトーシロの新しい部下をスリープ台まで丁寧に運び、何事もなかったかのように採掘作業を始めた。
気絶から目覚めたスタースクリームは決意した。地上への帰還はもう少し待ち、しばらくの間Dの傍で彼が本当にメガトロン足るトランスフォーマーなのか見極めよう、と。スタースクリームは、Dがメガトロンであると言い切る自信を失くしていた。D-16は想定よりも……
*
スタースクリームがエリータ・ワンの部隊で労働に従事することになって短くない時間が過ぎた。彼が驚いたのは、この採掘隊の面子にだいぶ見覚えのあるトランスフォーマーが集まっていたことである。
まず、名前も一緒でわかりやすいエリータ・ワン。ウーマンサイバトロンには度々やられていたので、そのリーダー格であるこいつのことをスタースクリームはよく覚えていた。神経質で口うるさいので、こっちのエリータのこともぼちぼち気に入らないらしい。
次に、コンボイによく似た、オライオン・パックス。何となくコイツがコンボイのような気がするが、爆発もしないしお淑やか、更にはD-16と親友のようでイマイチ確信が持てずにいた。メガトロンとコンボイが昔、友達だったりしたのだろうか? そんなはずはない、とスタースクリームはすぐに考えを改めた。
まだいる。とくに印象深いのは、ジャズと呼ばれるおっちょこちょいだ。スタースクリーム的には少しブレインがユルいような気がしたが、それを踏まえてもジャズはマイスターによく似ていた。こいつの同型は他にも何人か見かけたが、多分こいつが副官殿になるんだろうと思っていた。
他にも、アイアンハイド、ホイルジャック、ハウンド、サイドスワイプ……。そもそも、スタースクリームがちゃんと機体名を把握しているサイバトロンは元々少ないので、今となってはその見た目くらいしか分からないが、他の部隊も併せればもっといる。だが、これだけ旧敵に似た機体が集まっている部隊はここだけだ。そうなるともしかしたらD-16もメガトロンかもしれねえな〜、とスタースクリームはうっすら思った。デストロンの面々っぽいヤツらは親衛隊に結構いたので、こういう所でバランスを取っているようである。
急いだところでマトリクスが再出現する訳では無いし、まずはDがメガトロンかどうかを確認することと、もしそうだった時に備えてDの好感度を上げることを優先しよう。そう考え、今日も
採掘の仕事はまあまあ上手くいっていた。隙を見てはサボっていたスタースクリームだが、共に働くのは元よりあの不真面目なオライオン・パックスの親友を張っているD-16である。彼はそういった手合いの面倒を見るのが嫌いではないらしく、スタースクリームは順調にDに世話を焼かれていた。
「S-39、ま〜た今日も手を抜いてただろ。ノルマも達成してたし黙ってたけどよ、それじゃずっと
ほら、お前のメシ。そう言われ雑にポイと投げられたエネルゴンキューブを、スタースクリームは慌ててキャッチした。
「ノーコン! もし俺がキャッチし損ねてたら、錆くせぇ砂まみれのエネルゴンがアンタのメシになってたところですぜ。」
「悪かった悪かった。」
エリータ・ワンの部隊の誰に対しても、へいへいと雑な態度をとるスタースクリームだったが、唯一Dの言うことには概ねきちんと従った。なぜか自分にだけ懐く "S-39" が、Dにはどうもハマったらしい。Dは熱心にスタースクリームを可愛がっていた。ちなみに、他の部隊メンバーも、Dがちょっと言えばきちんと言うことをきく彼をぼちぼち可愛がっている。
その時である。*1
「D、見てくれよコレ〜!」
「ジャズ。なんだなんだ。」
エネルゴンを舐め溶かす2人の元に、マイスターっぽいやつ────と、スタースクリームは思っている────が困った顔でやってきた。何かを抱えている。
「ほらコレ。俺のジェットパック、今日やたらアチいと思ってたら、片方が着かなくなっちまったんだ。俺もうコレ何回目だよ!」
ジャズが抱えていたのは採掘で使うジェットパックらしい。スタースクリームは2人をみてニヤニヤ笑う。
(あのマイスターがメガトロン様に泣きついるみてえでおもしれー。)
案の定、ろくな事を考えてなかった。
Dはジャズの肩に手を置いて言った。
「そりゃお前がいつも整備サボってるからじゃねえの。前はなんとか直してやれたけどあんなの偶然だ。もう大人しく修理出せ。」
「また天引きかよー! なあ頼むよD、欲しいステッカーがあるんだ!」
どうやら日頃のツケがかえってきているようだ。頼れるヤツがもうDしかいないらしく、必死に懇願するジャズ。ちなみに、普段ジャズと仲のいいオライオン・パックスだが、ああいう壊れかけた物に対しトドメをさすことについて大変な才能を持つ。さながら破壊大帝である。そして、こういうことが得意そうなホイルジャックは、必要な教育が受けられないこの環境では器用の範疇に収まっていた。勿体ないことである。
ニヤニヤしながらも我関せずを貫いていたスタースクリームだったが、ふと思いついた。これってD-16の好感度を上げるチャンスでは? と。
もし、ここで颯爽とスタースクリームがジェットパックを直したとする。Dと、ついでにジャズの好感度が上がり、尊敬され、そしてこう言われるのだ。「よくやった、スタースクリーム! デストロンの次のリーダーはお前だ!*2」 そうと決まれば話は早い。
「俺に貸せ。」
Dにへばりつくジャズからジェットパックが取り上げられる。ジェットパックを振ったり傾けたりするスタースクリームに一縷の希望を見たのか、ジャズはじっとその様子を見ていた。Dは意外だという気持ちを隠しもせずにいる。
「吸気口の中が歪んでる。単に整備不足なのもあるが、少し雑に扱いすぎかもな。大方、使い終わったり邪魔になった時、外してから地面に放り投げてんだろ。」
ちがうか? そう問いかけるスタースクリームに、ジャズはおもむろに頷いた。
「な、直せそうかい……?」
「まあな。ツールBOX持ってきたら直してやるよ。」
ジャズは走ってその場を去っていき、ツールBOXを持って瞬く間に戻ってきた。そして、スタースクリームは大して時間もかけずジェットパックを修理してみせたのだった。何のことは無い。彼の本来の機体にはジェットエンジンが積んであったので、その仕組みはよく知るところだったのである。
「これでまだ使えるはずだ。だが、中の燃焼装置の磨耗が酷いし、次壊れたらそん時は買い換えろよ。」
「ありがとう、S-39! 君は天才だ!」
感激するジャズに、直したジェットパックを投げ渡すスタースクリーム。表情を見るに、天才と言われ満更でもないらしい。
「まあ、この天才のス……俺様にかかればこの程度お易い御用だぜ。」
「このお礼は必ずするよ、本当にありがとう!」
ジャズはそれを大切に抱きしめ、軽やかな足取りで去っていった。
「やるじゃねえか。まさかそんな特技があったなんてな。」
Dが意外そうに言うも、スタースクリームは肩を竦めた。
「よしてくださいよ、あんなのこ……航空参謀って言うのは不味いな……し……親衛隊リーダーって言うのはもっと不味いな……。」
「腰?」
「いえ、なんでもないです。あれくらいこの
「それでもだ、」
Dは微笑んだ。
「よくやった。」
「よくやった、スタースクリーム。」
「メ、」
─────メガトロン様。
スタースクリームのヘッドパーツがDの手で撫でられた。
「やっぱアンタは違え!!」
ガン! とその手を振り払って、スタースクリームは己のスリープ台に向かっていった。Dは振り払われた手を少し眺め、なんなんだ……と思った。
S-39
S(スタ)-39(スク)。スタースクリームが発見される前日に事故で肘から先以外を失くした。
メガトロンっぽいやつ
やたら新人になつかれ、満更でもない。
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