スタースクリーム:ONE   作:yaya river

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本作のキレイなスタースクリーム、AHMからガッツリ影響受けてるな……という事実に気づいてしまったので初投稿です。

未読の方はぜひ読んで欲しい。あれは傑作です。




6

 

「お前らは今日付でここに移動だ! 雑魚どもが、二度とアイアコンの空を拝めると思うな!」

 

 ダークウィングは少し凹んだ機体でエンジンを吹かせ、Dとオライオンを放り出した。振り返ることもなく飛び去っていく彼に「待ってくれ!」と声をかけるも、2人はその背中を見送るしかなかった。

 

「……最悪だ。」

 Dがため息混じりに呟く。薄暗い空間が2人を包んでいた。少し動けば埃が舞い、壁の鉄骨は何十年も放置されたかのように錆びついている。

 

「せっかく苦労して昇進して、ここまでやってきたってのに……俺たち労働者はいつもこんな事ばかりだ!」

 Dは苛立たしげに床を蹴りつけ、鈍い音を響かせた。

「まあまあ、落ち着けD。怪我に障るぞ。」

 オライオンは冷静に言いながら、Dの肩をなぞった。彼の言葉には理性があったが、その顔もどこか疲れている。

 

「落ち着いていられるか! あのダークウィングの野郎、ただレース前でイラついてただけだろ! 俺たちをサンドバッグにしやがって……。まあいい、ここにいない野郎について話しても時間の無駄だ。パックス、ここはどこだ?」

「さあね。ただひとつ言えるのは "最悪" ってことさ。」

 オライオンは苦笑しながら肩をすくめた。

「でも正直、Dが殴られなくてよかった。お前の怪我で更に怪我を重ねてたら、いよいよスパークの危機でリペアポッド行きだ。貯(エネルゴン)がまた減る。」

 

 それを聞いてさっきのやり取りを思い出すD。ダークウィングが腕の持ち主であるDに私的制裁を加えようとした時、それを庇ったのがオライオンだった。

「俺特製D-16ロケットパンチは痛かったか、ダークウィング。コグが無くても、空飛ぶお前を殴り落とすことすらできそうだな?」

 オライオンはそう吹かし、ダークウィングを挑発したのだ。結果、Dではなくオライオンが暴力による制裁をくらい、それに留まらず仲良くこんな場所に置き去りにされてしまった。

 Dは少し塗装の剥がれたオライオンのヘッドパーツを見て口角を上げた。

 

「でも、守ってくれてありがとよ。」

「何があっても。」

 2人は拳を合わせた。

 

 その時である。

「2人ともすごく仲がいいんだね! はじめまして、俺はB-127。ビーって呼んで! もしくはビッグヤバトロン。正しい言い方は─────ビッグ・ヤバトロン。自分でつけたんじゃないよ? 他の人が付けてくれたんだ! 新しい仲間がこんないい人そうで俺すっごく嬉しいよ。さっきバイザーの変な人に置いてかれてたよね? あんたら2人ともここがどこか知らないみたいだし、先輩の俺が教えてあげるよ! ここは地下50階、ゴミの焼却炉さ。で、俺たちの仕事はゴミの中から使えそうなものをより分けること。簡単だろ? あんた腕失くしたみたいだけど、腕パーツならそのうち流れてくると思うから安心して! それと、寝る時は2人でコンベアの上を使って。そっちなら大きいあんたらでも足を伸ばせるだろ? 俺は少し狭いけど、こっち……ほら、この3人の友達と一緒に寝るから! 紹介するよ、右から順にEP-508、AAトロン、余所者のスティーブ! ちょっと狭いけど大丈夫、気にせずそっち使って! あ、はしゃいでゴメン、変なやつだと思ったよね? だって、地下50階に追いやられてから仲間がほとんどいなくって! それで、2人の名前は? 俺たちきっとすぐ仲良くなれるよ!」

 

 突如現れた黄色い先客のマシンガントークに、まず地下50階という単語を聞き返すことしか出来ない2人。Dはそれを右から左に聞き流しながら、薄ぼんやりとスタースクリームの心配をするのだった。

 

 

 

*

 

 

 

「ジャズ、一緒に来てくれないか?」

 

 スタースクリームは問いかけた。その声には何かを確認しようとする焦燥感が隠されていたが、彼の表情は変わらず冷静だった。彼の鋭いオプティックを一瞥し、ジャズは首を横に振った。

 

「さすがに突拍子もない話だからね。オライオンとD-16が、まさか存在しないはずの地下50階にいるって。俺は君たちの帰りを待つことにするよ。」

 

 そう答えながらジャズは肩をすくめる。だがその言葉の裏には、共に働いてきたS-39への信頼と、どこか半信半疑な部分が混在していた。それが伝わったのだろう、スタースクリームは微かに口元を引き締めている。

 

 とある "ツテ" により、スタースクリームはDとオライオンが地下50階に移動させ(連れ去)られたことを既に把握していた。そしてその────あまりやりたいとは言えない方法の────侵入経路も。

 連絡通路をジェットパックで通り抜けるのがいちばん手っ取り早いようだが、業務外のジェットパックの使用は厳しく管理されていて不可能。スタースクリームがツテを頼って調べた情報によると、地下41階以下は幽閉という文字が相応しい場所のようで、飛べないコグ無し労働者の自力の出入りを大きく制限する構造になっているらしい。

 

 スタースクリームは、そんな地下50階に向かうつもりだった。

 

「まあ、君は確信してるみたいだけど。俺には言えない情報源があるんだね?」

 

 ジャズはそう言いながら、オプティックを細めてスタースクリームを見つめた。語り口は気軽そのものだったが、背後にあるのは目前の彼の意図を読み取ろうとする鋭さ。スタースクリームはその視線を真正面から受け止め、頷いた。

 どうやら教えてはくれないらしい。寂しさを感じながら、ジャズはとあるものを差し出した。

 

「忘れないうちに渡しておくよ。一応、君がリペアポッドにいる間に切断面の処置はしておいたから、問題なく くっつけることができるはずだ。」

 それは、切断されたDの右腕だった。

「確かに受けとった。お前がコレを回収してくれてて助かったぜ。」

 

 スタースクリームは努めて無表情を保っていたが、その声色には感謝が見える。Dの切断された右腕を大切に受け取り、丁寧にリペア器具も入っている袋へとしまい込む彼に、ジャズはスパークが痛くなった。

「本体は回収出来なかったけど、これくらいならお安い御用さ。」

 ジャズは明るく答えるが、その言葉には少しばかりの自嘲が混ざっていた。Dの怪我の状態がまだわからない以上、この "お安い御用" も満足感を伴うものではないからである。

 

「それを今から回収しに行くんだ。それと……。」

 Dの腕を確保し終えたスタースクリームは、代わりにと収納からあるものを差し出した。これはなんだ、と尋ねるジャズに対し、彼はことさら勿体ぶって答える。

 

「虎の子の長距離通信機! 受信しか出来ないが、ここ地下に専用の中継アンテナを設置したから、一度きりなら問題なく使えるはずだ。」

 2回目以降は感知されて妨害されるだろうが。そう続けるスタースクリームに、ジャズはオプティックを丸くした。

「どうしてこんなものを─────」

 

「なあ、ジャズ。」

 

 スタースクリームは目の前の将来のサイバトロンの副官(平行世界のマイスター)に向き直った。

「一度だけでいいんだ。俺がこれでお前に助けを求めたら、その時は助けてくれないか。」

 

「そんなの、いつでも何度でも助けるに決まって、」

 おちゃらけた様子で返事をしようとしたジャズだったが、地下の大冒険をしに行くだけとは到底思えない、決意の滲むスタースクリームのオプティックに驚いた。

「……地下50階に転属になったDに、腕を届けてあげるだけじゃないのかい?」

「そうだな。」

 ジャズは続きを待ってみるが、彼がさらに言葉を重ねる様子はなく、バイザーを曇らせた。

 

「それも、俺には言えないこと?」

 その口調は穏やかだったが、その問いには一抹の不安が宿っていた。スタースクリームの態度がどこかいつもと違うことに気づいていたのだ。だが、スタースクリームはその視線を避けず、あくまで冷静に答える。

 

「今はまだ教えられない。」

 その言葉には、彼なりの確固たる決意が込められていた。無表情は相変わらずだったが、全てを覆い隠すものでは無い。ジャズはその決意を感じ取り、少しだけ眉をひそめた。

 

「君は、戻ってくるんだよね? 地下50階から。」

 静かに問いかけるジャズ。何か重要なものを失うかもしれないという予感があった。スタースクリームはただ一言、力強く答える。

 

「必ず。」

 

 その短い言葉に、迷いはなかった。ジャズは息をのんだ。スタースクリームが本当に戻ってくるのか、地下50階で何をするつもりなのか。分からないことだらけではあったが、彼の決意が本物であることは疑いようがなかった。

 

「俺の助けが必要なんだね?」

 

 ジャズは再び少し冗談めかして言ったが、その目には鋭さが宿っていた。普段の軽口のような態度の裏には、友人としての────少なくともジャズはそう思っている────真剣な意思があった。

 

「お前が必要だ、()()()。」

 

 真剣なソレを受け言葉を詰まらせるジャズだったが、軽く頷いてスタースクリームに向き直った。

 

「任せてよ。ジェットパックを直して貰った借りは、他人の落し物を拾っただけじゃ返せないさ。」

「……ありがとよ。」

 

 お前が居てくれて助かった。そう殊勝な様子のスタースクリームの態度を、ジャズは少しこそばゆく感じた。それはいつも、彼の研修を担当したDにのみ向けられるものだったからだ。

 

(なるほど、これはDも絆されるわけだ。)

 

 大切そうにDの腕を抱えて去っていくスタースクリームの背中を見送った彼は、渡された通信機を装甲の収納にしまうと、いつもの日常に戻るのだった。

 

 

 

*

 

 

 

 リペア器具とDの腕を抱えてスクラップの山へ飛び込むスタースクリーム。

 果たして彼は地下50階にて、ボロボロのDとオライオン、そして見知らぬチビと合流した。

 





B-127
バンブルビーのサイバトロン星時代の名前。
略称「ビー」は将来のバンブル "ビー" であると捉え、またDとの視覚的な差別化も兼ねて本作ではBではなく「ビー」として表現する。
映画ONE本編ではメガトロンより多くの友人?を手にかけ、力に溺れ多くの命を手にかけているサイコキラー。こいつが一番ヤバイ。

地下50階
一般に知られているのは地下40階までだが、あと10階分キッツイのが残っている。(ヤバトロン談)
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