スタースクリーム:ONE   作:yaya river

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TFONE、5回目観てきたので初投稿です。

噛めば噛むほど味が染み出てくるので2回目以上の視聴を大変おすすめします。




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「ゴミだらけになって50階分這い上がったと思ったら、次はゴミと一緒に輸送されろ? 俺たちは確かにサビてるかもしれないが、スクラップじゃねえんだぞ。」

「でも、ビーが提案したこの手段、俺の考えた方法と全く同じですぜ。俺だって嫌なんですから、アンタも我慢してください。」

 

 廃棄物管理部署の管轄区域の、汚染された金属を地上の廃棄場所に運ぶための列車。その貨物に紛れ小声で会話をする集団がいた。オライオン、D、スタースクリーム、そしてビーである。友達だから! と言って当然のように同行を申し出たビーを、地上探索言い出しっぺのオライオンが歓迎したのだ。

 

 あの弾幕並みのおしゃべりを浴びてなお歓迎できるオライオンって、本当によくデキたやつとよなあ、とその時思ったスタースクリーム。とはいえ、ビーはそれなりに使えるようだし、彼にとってコグ無しの協力者は多ければ多いほど都合が良い、と思い込むことで口を挟むことはしなかった。

 しかし、いわばゴミ扱いをされているに近いこの状況。それについては多かれ少なかれ、4人全員思うことはあるようだ。

 

 

 既に列車には最後の貨物が運び込まれており、あとは列車が動き出すのを待つだけである。状況に不満をこぼしながらも、4人のほとんどは初めての地上を少し楽しみに感じていた。

 しかし、そう簡単に物事が運ばないのが世の常である。

 

「待って! まだひとつ残ってる。」

「っおい、静かにしろ。」

 

 全ての貨物を運び終わった、という作業員の会話を聞いてから列車に乗り込んだはずだったのに、どうやらまだ貨物があったらしい。ここで忍び込んだことがバレれば全てが台無しだ。4人は慌てて縮こまると、気づかれないように息を潜めた。

 

「これで全部運び終わった─────」

 だが、小型なコグ無しとはいえ、4人が隠れる為にはすこしスペースが窮屈であった。

(エリータ!? ここに転属させられてたのか!)

 最後の貨物を運んでいた機体、エリータを見て動揺したオライオンがすこし身動ぐと、横に詰めていたDにぶつかってしまったのだ。

 

 静かな車内に、その鈍い衝撃音はよく響いた。

 

 もちろんそれを聞き逃すようであれば、エリータは採掘隊の隊長にはなれなかっただろう。

 

「─────誰!?」

 4人はオプティックのみで会話をすると、潰したバネのように機体を縮こませた。

 

「ふん、まあいい。侵入者を突き出せば、少しは出世できるからね。大人しく、」

「今だ! 抑えろ!」

 4人は一斉に飛びかかった。体格と人数で負けているエリータはそれに対応できず、あっさりと取り押さえられてしまった。

 

「D-16にS-39、それにオライオン・パックス!?」

 驚く彼女だが、無理もない。廃棄物管理という採掘より更にキツい部署に()()した先で、前の部署の部下と再会したのだから。それも、良くないシチュエーションで。

 

「手荒ですまない。だが、話を聞いてくれ、エリータ。」

「聞かない、離して! どうせいつものロクでもないコトに決まってる! 私はこれ以上降格はできないの! 警備、警備!」

 

 エリータの声は焦りと怒りで震えていたが、その叫びも虚しく扉は閉まり、列車が動き出した。彼女のスパークに、まるで押しつぶされそうな不安が広がっていく。

「すまないエリータ。だがお願いだ。少しだけでいいからこれを見てくれないか。」

 降格の2文字が彼女のブレインを埋め尽くす、その時だった。

「嫌だと言ってるでしょう! 私を離し、て……。」

 

 オライオンがSOSを再生した。映し出されるアルファトライオンの姿は、トランスフォーマーなら誰も見間違えることはしない。

 エリータは抑えつけられながらも、必死に顔を向けてその映像記録を見た。先程までの敵意は既に彼女の中から失われていた。それを感じとり、オライオンはエリータを抑える手をそっと離した。

 

「嘘、本当に? 何処で手に入れたの?」

 映像記録が終わって表示された座標のホログラムを、エリータが手で動かす。既に誰もエリータを押さえつけていなかった。スタースクリームは1人でも彼女を下す自信があったし、他の3人は彼女のことを脅威ともう考えられなかったからである。

 

「地下50階だ。S-39が本物だと断言した。彼いわく、声紋も形式もプライムの物と一致するらしい。」

「俺の友達が持ってた! でもオライオンが殺した。」

「始めから、生きて、なかった!」

 オライオンの発言をビーが補足し、そのビーの発言をDが補足した。そんな彼らを黙って見ていたスタースクリームだったが、センサーが気圧の変化を感じ取ったことで口を挟んだ。

「おい。そろそろ列車が上昇を始める。貨物に掴まってGに備えとけ。」

 

 直後、列車が垂直に傾いた。貨物に座り直す一行だが、ビーが出遅れて壁に落ちていきそうになる。その手を一番近くにいたエリータが引っ張り上げた。

「ありがとう、えっと、エリータ? だっけ。また友達が増えて嬉しいよ。最近はいい事だらけだ。俺はB-127! ビーって呼んで! もしくはビッグヤバトロン。正しい言い方は─────ビッグ・ヤバトロン。」

 エリータは無視した。

「あれ、聞こえなかった?───── ビッグ・ヤバトロン。」

「……。」

ビッグ・ヤバ

「このSOSがマトリクスの手がかりになるんじゃないかと思って、地上に行くことにしたんだ、俺たち。」

 エリータはすこし下に座るオライオンを見た。

エリータは眉をひそめ、無意識に拳を握りしめた。彼女の中で沸き上がるのは、苛立ちと不安。冷静な判断を下したい気持ちとは裏腹に、感情が心の中でせめぎ合っていた。

 

「ばかげてる、正気? 私たちはコグを持ってないのよ。一体私たちに何ができるって言うの。」

 彼女の声には苛立ちが混じり、周囲の空気を一瞬で張り詰めさせた。コグが無い。ビーとDが自分たちの現実を痛感する中、彼女はあえて挑むようにオライオンを見据えた。だが、オライオンの顔は変わらない。その冷静さが、かえってエリータをさらに苛立たせた。

 

「分からない。だが、何もしなければ現状は変わらない。俺たちがマトリクスを見つけるか、センチネル・プライムにコレを届けるか。早い方をやる。そのために地上に行く。」

 

 オライオンの言葉には確かに迷いがあったが、それでも彼は進むしかないと理解していた。スパークの賭け時は今であると。そして、今回に限ってはベットするものは多ければ多いほど成功することも。

 一方で、スタースクリームは黙ってオライオンの話を聞いていた。彼の目は鋭く、口元にはわずかな動きさえない。

 

 エリータは小さく排気すると、スタースクリームを見た。彼は足を組んで一人黙っていた。

「サボり魔のあなたがこんなばかげた事に付き合うだなんて意外だわ。それに、プライムたちのことを知ってるなんて。」

「そうかい。そりゃ期待に応えられなくて悪かった。」

 

 意外、というよりも何故、という感情を隠しもしない彼女を、スタースクリームは小馬鹿にした。彼は労働を通してエリータの有能さについてはある程度認めていたが、自分のリーダーにふさわしい機体だとは思っていなかったからだ。それに、そもそも名前がいけ好かない。

 

「生憎、そのSOSがなくとも俺は地上に出るつもりだったんでね。それで、エリータ "隊長" はどうすんだ? このまま列車がアイアコンと廃棄場を往復するのに便乗して廃棄物管理に戻るのか、俺たちの "ばかげた事" に付き合うのか。正直、俺はどっちでもいい。」

 その発言には明確な棘があった。聞きかねたDが「おい、」 と咎めようとするも、エリータはそれを手で制した。

 

「……一緒に行くわ。マトリクスが見つからなくても、そのSOSをセンチネル・プライムに渡せば少しは上の覚えが良くなるだろうし。まだちょっとしか働いてないけど、廃棄物管理はもう懲り懲りよ。」

 それと、と彼女は真剣な眼差しでスタースクリームを見つめた。

「ばかげた事だなんて言って、ごめんなさい。言葉の綾でした。」

「……俺じゃなくて、言い出しっぺのアイツに言ってやれよ。」

「それもそうね。悪かったわ、オライオン・パックス。」

「え? あ、いや。いいんだ。気にしないでくれ、エリータ。」

 

 エリータが ばかげた事だと言った時、スタースクリームが僅かにフェイスパーツを歪ませたのを彼女は見逃していなかった。それは凡そ "S-39" らしくなかったし、彼女は無駄に禍根を残すつもりもなかった。

 

 実際、スタースクリームは内心、表に出ていたよりも怒りを感じていた。なぜなら、その ばかげた事を成すために彼は地上の仲間を危険に晒しているからだ。探知の恐れから無駄な通信が出来ない状況であろう彼らの安否を確認する術は、今のスタースクリームには無い。

 

(俺が親衛隊だと明かして合流してもいいが、コグ無し4人を連れて逃げ回れるほど、追手は甘くないだろう。アイツらに今、足手まといを増やすわけにはいかない。)

 

 30日は逃げ切ってみせる。お前に与えられる時間はそれだけだ。スタースクリームは最後にそう会話した仲間のことを思い出した。親衛隊の面々は速度に優れた機体は多いが、その分持久力に不安を持つ機体も多い。実際的なリミットは25日と見積もって置いた方がいいだろう。

 

(監視の無い俺たちが、直接向かうのが一番か。)

 

 今の彼が出来ることは、仲間の無事を祈りながら、一刻も早くプライムたちの最期の戦いの場へ向かうことだった。

 

「……明かす勇気が無いだけかもな。」

 スタースクリームは一人、小声で呟いた。その言葉は列車の音にかき消され、誰のイヤーセンサーにも届くことはなかった。

 

「そろそろ外に出る。列車を飛び降りる覚悟を決めておけ。」

 スタースクリームがそういうと、おずおずとビーが手を挙げた。スタースクリームは顎をしゃくって発言を促した。

「あー、S-39? 俺思うんだけど、列車を運転して目的地に向かえばいいんじゃないの?」

「ダメだ。」

 ビーの提案をすげなく切り捨てるスタースクリーム。オライオンも同じことを考えていたらしく、驚いた顔をしている。

 

「そんな事をしたら、列車のGPSで俺たちの居場所がセンチネルにバレちまう。向かう先はセンチネルならすぐ思い至るだろう。アイツにとっても思い出深い場所だからな!」

 

 もちろん、そんなことは言えない。スタースクリームは予め考えておいた言い訳を、ブレインでぼんやり思い浮かべながら読み上げた。

 

「列車が手動運転に切り替わったことは、すぐアイアコンに知られるだろ。そうなったら、地上探索部隊に連絡が行くに決まってる。センチネル・プライムの地上探索の目的はマトリクス以外にも、クインテッサ星人の痕跡を見逃さないパトロールがあるんだぞ? それを邪魔して、センチネル・プライムの足を引っ張ることが俺たちの目的か?」

 

 これは、特にDに対して効果てきめんだった。これを聞いたDは、「降りよう! 今すぐに! トランスフォームは出来ないが、俺たちの足を信じろ!」 と言って天井部分のハッチからさっさと出ていった。

 エリータ、オライオン、ビーはその様子に、顔を見合せて少し笑った。

 

 ただ1人、スタースクリームだけが険しい表情を浮かべていた。

 

 

 





エリータ
順調に昇進を重ねていたが、先日の事故の責任を取らされてキツい部署に配置換えされていた。オライオンとDを捨ててきた後に辞令が言い渡されたため、2人はエリータが廃棄物関連にいることを知らなかった。
知っていたスタースクリームは特にエリータに興味がなかったため、伝えることはしなかった。

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