ONE6回目キメたので初投稿です。
タグに独自設定、原作死亡キャラ生存を追加しました。
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「見てみろよ、パックス。」
「ああ、見ているさ。これが地上か……。」
一足早く列車の外に出ていたDが、仲間に外を見てみろと手招きする。そこに広がっていたのは、消えゆくオーロラと燃えるような朝焼けを跨ぐ景色────空を引き裂くかのように尖り、絶え間ない地殻変動によって生と死を繰り返す、鋭利な錐面をもった群晶のような山脈だった。
その山々は息をのむほど美しくも、同時に見る者を飲み込むかのような目まぐるしい速さで姿を変えていく。空と大地がせめぎ合うかのような異様な美しさに、4人は自然の圧倒的な力を感じずにはいられなかった。
少し経って外に出てきたエリータ、ビーも思わずその光景に見とれてしまう。
「本当にきれい……。」
「俺、なんていうか、言葉が出ないや。」
オプティックを見開き、景色を焼き付けようとする4人。アイアコンの、それも地下で労働ばかりしていた彼らにとって、これほど美しい景色をみるのは初めてのことだった。遅れてハッチを登ってきたスタースクリームには、4人のその様子が面白かった。
とはいえ、ゆっくりと景色を眺める余裕がないのも事実である。スタースクリームは景色を懐かしみながらもやるべき事を確認した。
「この星は今もトランスフォームし続けてる。まずは安全地帯に向かうぞ。ここら一帯は地殻変動が激しい。このままここにいると呑まれる。」
スタースクリームが指を指す方角を見て、オライオンがうんうんと頷いた。
「なるほどな。S-39が地上に詳しくて助かったよ。」
「……アー、あんまり言えたことじゃねえが、元々地上に行くつもりだったんでな。」
そんなことを話していると、1人あることに気づいたエリータがギョッとした表情を浮かべた。
「ちょっと、向かうってもしかして……本当に動く列車から飛び降りるの? 冗談でしょ?」
それを聞いたスタースクリームはニヤニヤして頷いた。
「そうだ。受け身は各自頑張れよ。」
地殻変動が激しい分、ここら辺は "柔らかい" はずだから大した怪我はしない。そう言った彼を4人全員が信じられないという顔で見つめた。
*
河川跡、砂漠、巨大な渓谷に、外来の有機植物の森。5人が地上を歩いて既に2週間が経っていた。彼らは今、かつての地上基地であっただろう廃墟を歩いていた。
「今はどの辺りかわかる? 今の道案内係はエリータだよね! どう? 俺たち結構歩いたしもうすぐ着くんじゃないかなーって思うんだよ。いやあ楽しみだなあ! だって、もしマトリクスを見つけて持ち帰ることが出来たら、俺たちヒーロー!」
「ビー、その質問には10分前に答えたばかりよ。」
「そうだっけ? じゃあ次は……うーん、そうだなあ、俺の考えたオリジナルソングを披露するのはどう? 名付けて、『ビッグヤバトロンと4人の友達』」
5人の雰囲気は割と良かった。あまり乗り気では無かったエリータは、機嫌を伺うべき "上" のいない環境で久方ぶりの開放感を味わっていたし、そんな多少口下手とも言える彼女に対し、レスポンスがなくとも物怖じせず話しかけるビー。この2人の相性はすこぶる良かった。
それに加え、元々仲の良かったオライオンとD、そしてスタースクリーム。人好きの良いオライオンは、積極的にあとの2人をエリータやビーとの会話に混ぜたし、なにより、待ち望んでいた地上への帰還を成したスタースクリームは非常に機嫌が良かった。
「あ! 今俺と目が合ったってことは、オライオンも一緒に歌いたいんだろ? 恥ずかしがらなくたっていいぜ、歌詞はこうこうこうで、メロディは〜〜〜!」
「え!? いや、俺は……。」
いや、会話に混ぜるというよりは道連れという方が正しいのかもしれない。今回は失敗したようで、オライオンは単身ビーに連れていかれてしまった。
「うおおお! B-127、ミュージックボックスにトランスフォーム!」
残されたDとスタースクリームは顔を見合せた。
「……なんか、ビーがいてくれて助かったな。ビー抜きの4人じゃ、俺たちは今頃こうだ。 "完璧です、エリータ・ワン!" 」
「ははっ、俺もそう思います。」
エリータが耳ざとく視線を向けてきたので、2人は慌てて話題を変えることにした。
「トランスフォームといえばだけどよ、俺たちにもしコグがあったら、スタ……S-39は何になりたい? パックスとはたまにこの話するんだ。アイツは一度にエネルゴン鉱石を沢山運べる
ビーのさっきの発言で思い出したのだろう、歌の練習をさせられているオライオンを眺めながら、懐かしそうにするD。スタースクリームは少し後ろめたい気持ちになりながらも、たまには仮定で盛り上がるのもいいかと思い直し、答えた。
「俺に相応しいのはもちろんジェット機以外にないですよ。もちろん戦闘用。」
「確かに、お前の名前だとな。似合ってるぜ。」
Dは頷いた。彼は恐らく "親衛隊長のスタースクリーム" について考えているのだろう。現状、アイアコンのトランスフォーマー達は全員50サイクル以上生きていること*1もあり、そして、親衛隊の名は50サイクルで消えるほど矮小なものでは無い。その長、スタースクリームのドッグファイトはとりわけ有名な逸話である。
「でも、ちょっとイイなと思うのは他にあるんですぜ。」
スタースクリームは、自分のものでは無い感情を思い出した。
「武器にトランスフォームするんだ。」
「なんだそりゃ。せっかくトランスフォームするのに、タイヤも翼もいらないってか?」
意外だという声色のD。無理もない。Dはスタースクリームの機体を頭から足先まで眺めた。彼の機体は身長こそオライオンと変わらないが、ちょっと線が細い。タイヤも翼も足もついていない、移動に適さない姿へトランスフォームする機体は決して居ない訳ではなかったが、それがスタースクリームらしいか? と問われれば、Dはそうではないと答えるだろう。
「いっち、に、さん、し、5人の仲間〜、みんなで進むドアの隙間〜!……ドアは無いか、外だもん!」
「だから、ちょっといいなって思うだけですって。似合うとは思ってませんよ。むしろ……。いや、俺はもういいでしょう。そういうアンタは何にトランスフォームしたいんですかい。」
「マトリクスさ・が・すぅ〜!」
「俺? そうだな、俺は────」
Dが答えようとした、次の瞬間だった。
……ォオオ───────
地鳴りのような、風が吹き抜けるような音が廃墟を揺らした。その気味悪い音に、思わず5人は静まり返る。スタースクリームはただ1人、事態に気づいていた。
(この軋みと駆動音は、クインテッサの戦艦! 正直、障害物の多いこのタイミングで良かったが、スパークが冷えるぜ……。)
音の正体。それは、サイバトロン星のエネルギー資源を略奪する侵略者、クインテッサ星人の戦艦であった。かなり近づかれるまで気がつけなかった事に、スタースクリームは内心で己を叱責した。
「全員、死にたくなけりゃ屋根のある場所へ走るぞ。今すぐにだ。今の音は恐らく────」
「なあ、アレはなんだ?」
オライオンが遠くに広がる砂塵と霧の中にぼんやりと浮かび上がる巨大な影を指さした。その瞬間、スタースクリームのスパークに冷たいものが伝った。思っていたより、
「さっさと走れ、死ぬぞ! ありゃあクインテッサの戦艦だ!」
彼の声は苛立ちと焦燥で震えていたが、迷う暇はなかった。5人はその言葉に促され、咄嗟に駆け出した。胸が焼けつくような息苦しさを感じながらも、ただ一心に走る。目の前に広がる荒廃した廃墟は、多くが天井の崩落したものだった。
艇までの距離はまだ遠いが、クインテッサ星人の戦艦は確実にこちらに接近していた。スタースクリームの思考は過去の戦闘の記憶に引き戻され、全身が震えた。もし生命探知センサーに捕まれば、エネルギー砲の的となることは避けられない。そして今のトランスフォームできない自分では、即死する。
「走りながら屋根のある場所を探せ!」
スタースクリームは叫んだ。周囲の不毛な廃墟は息を呑むほど静かで、彼らの足音だけが虚しく響く。その音が、彼にはまるで自分たちの命を刻む時計のように感じられた。
幸いにも、5人は崩壊の浅い建物跡を見つけることができ、その屋根に身を隠すことができた。廃墟の淀んだコンクリートの匂いが湿った空気と混ざり、彼らの砂塵にまみれた身体を包み込む。スタースクリームは、背中を壁に押しつけながら荒い息を整えた。彼だけは緊張を解くことなく、視線を建物の外に投げ続けていたが、他の4人は安心したかのように息を吐き出した。そして、口々に思いを吐露した。
「クインテッサ星人は50サイクル前からずっと来てないって話じゃなかったの!?」
エリータが焦燥感を滲ませて声を上げた。それにオライオンが追従する。
「俺もそう聞いてた。センチネルは毎回のパトロールで、クインテッサ星人の痕跡を見つけられてないってな。でも、あれは――記録保管所で見たクインテッサの艇そのものだ。」
「おいおい、大変じゃねえか。それが本当なら、早くセンチネルに伝えないと。」
「でも一体どうやって!?」
疲労と恐怖が混じる口論が始まり、周囲は一時的に雑然とした。しかし、スタースクリームの心の中では冷たい戦慄が消えなかった。刻一刻と迫る戦艦の脅威。それは、単なる偶然ではないかもしれない。
「エリータ・ワン。地図をよこせ。確認したいことがある。」
「……いいよ。はい。」
空中に映し出されるマップには、現在地と目的地が記されている。彼ら5人が進むべき道と、艇がやってきた方角を確認して、スタースクリームは確信した。自分たちの旅路の向かう先と、クインテッサの目的地が同じ方角であると。
(まずいな……。やっぱりSOSの発信源は、センチネルの野郎とクインテッサ星人の取引場所のすぐ近くじゃねえか! クソッ、地図見てんのにこんな単純なことに気がつかねえって、腑抜けすぎだろ俺!)
センチネルは、サイバトロンのリーダーの証であるマトリクスの探索、という名目で地上探索を定期的に行っている。マトリクスが見つかれば、再びこの星にエネルゴンの源泉が湧き出る、それをセンチネルが成すと信じ、労働者たちは文句を言わずエネルゴン鉱石を採掘しているのだ。
しかし、その実態は違う。労働者が掘り出したエネルゴンをクインテッサ星人に貢ぎ、ついでに不穏分子である親衛隊の残党を探す。これが地上探索の正体である。スタースクリームはもちろん、その朝貢に使われる場所の座標を知っていた。そしてそれは、SOSの座標とほど近い場所にあった。
センチネルは、取引現場という特大の餌で、プライムたちの最期の場という爆弾を隠していたのだ!
(戦艦だらけの取引現場にゃ、日和った俺たちは近づかなかった。一帯に対するセンチネルのパトロールも、取引を守るためだと思っていたが、それだけじゃなかった!)
スタースクリームは屈辱を味わった50サイクル前のあの日を思い出した。
死体は、多くを語る。見るものが見れば、プライムたちの死因がクインテッサ星人による攻撃ではない事が分かるだろう。だからセンチネルは隠したのだ。その戦闘痕までも。
「……今後は、ああいう戦艦が増えるはずだ。目的地まではあと2、3日ってトコだが、残りは俺が先導する。障害物の多い道を選ぶ必要がある。この中で一番地上に詳しいのは俺だ。異論は認めねえ。」
スタースクリームはそう4人に告げると、SOSを左腕に格納した。そのオプティックは爛々と赤くなっていて、彼の頬までもを染まらせるほどだった。
「随分詳しいな、 "S-39" ? さっきの落ち着きようで思ったけど、お前……今もクインテッサがこの星に来てること、知ってただろ。」
「D!」
険しい顔で問い詰めるD。オライオンがそれを止めるが、スタースクリームはわざとそれを無視した。
「そろそろ出ても大丈夫だ。出発する。今は一秒ですら惜しい。」
この後から、5人の会話はほとんど無くなってしまった。Dとスタースクリームはあれだけ仲が良かったのに、一切の会話をしなくなってしまったのだ。その空気の重さは、あのビーですら、空気を読んで少し話す量を控えるほど。(実際は、先導するスタースクリームに結構喋りかけていた。)
5人は初めての遭遇以来3日をかけて計4度、クインテッサ星人の戦艦をやり過ごした。そして、いざプライムたちの最期の場へ向かわんとして、立ち会ってしまうのである。
クインテッサ星人と、アイアコンのヒーロー センチネル・プライムの取引の現場に。
ONE本編との相違点
・リペアの時間ロスは列車事故回避で相殺
・スタスクがクインテッサ星人に敏感なので遠回りし旅が延長
・それによりSOSの発信源にたどり着く前に取引を目撃してしまう
地上の旅は本編でもダイジェストだったので、当作でもサックリ終わらせました。