黒い銃弾とは何だったのか   作:黄金馬鹿

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久々にギャグっぽい会話が書けて僕満足


テンパンチ

「で、お前は何処に住んでるんだ?」

あの後、少女の顔を濡らしたタオルでガッシガシと拭いた後、蓮太郎はボロボロの自転車を自分の力のみで直していた。

幸い部品が飛んでる等は無かったので歪んだフレームやタイヤをグイッグイッと引っ張って叩いて元通りにしていく。

「……わかりません。」

少女は何やらジャラジャラと何かを取り出すような音を鳴らすと、ボリボリと咀嚼する音を鳴らした。は?と少女の方を見ると、少女はボトルのようなものを持っており、今現在ボリボリと何か食べていた。ボトルにはカフェインと書かれていた。

カフェインの錠剤はボリボリと食うもんじゃねぇよと蓮太郎は言うとすぐに自転車の修理に取り掛かる。

「で、お前、名前はなんていうんだ?」

そういえば聞いていなかったと思い出し、すぐに聞く。

少女は暫く黙ってたが、

「……ティナ。ティナ・スプラウトです。」

「ティナか。俺は里見蓮太郎だ。もうすぐ直るから待ってろ。」

「……見知らぬ人の自転車を直すなんてお優しいんですね。」

「おーい、これお前の。お前が乗ってきたやつ。」

「……私、自転車になんて乗ってました?」

「どんだけ寝ぼけてんだお前。」

まさか自転車に乗って来たことすら覚えてないという。数分前の事なのに。

頭をガシガシと掻きむしりながら自転車を直していく。

「……力持ちですね。」

「まぁな。それなりに力はある。」

お前がそれなりなら他の人間は全て非力になる。

「ふぅ……こんなもんか?」

蓮太郎は直していた自転車のスタンドを上げ、ハンドルを持って少しだけ走らせる。特に問題はなかった。

すぐにスタンドを下げる。

「ほら、とっととこれに乗って帰れ。んでもって寝れ。」

「……帰り道わかりません。」

「……交番行け。俺には手が負えんと今分かった。」

「……?」

「だぁ!とりあえず覚えてる範囲で帰れ!道がわかんなくなったらこれに電話かけろ!」

蓮太郎は民警ライセンスが入っている手帳から紙を取り出し渡す。これには蓮太郎の携帯電話の番号が書かれている。

ティナはそれを受け取ると、紙を見ながら携帯を操作し、耳に当てた。数秒後、蓮太郎の携帯電話に電話がかかってきた。

「……ほぼ零距離だろうが。」

蓮太郎は電話に出てからティナに向けていった。

「偽の電話番号の可能性があると思って……」

「それやって俺に何の得がある。」

「あと、一つ伝える事が。」

「何だよ。」

「私、帰り道分かります。」

「とっとと帰れ寝惚すけ少女!!」

蓮太郎は携帯電話の通話を切った。ティナは覚束無い足取りで座ってたベンチから立ち上がると自転車に手をかけた。

「今日はありがとうございました。さようなら、蓮太郎さん。また会えるといいですね。」

そのまま覚束無い足取りで去っていくティナを見えなくなるまで眺めた。

さて、これからは戦闘(タイムセール)の時間だと気持ちを切り替え、走る。

 

 

****

 

 

辺りが暗くなる。細胞の一つ一つが覚醒していく。ここからは、私の時間だと体が告げる。

ティナは段々と意識がはっきりしてきた体で自転車を押して歩く。その時、携帯が震える。

「マスターですか?」

『定時の報告をせよ。』

簡素な言葉。だが、ティナは言葉を綴る。

「無事、東京エリアに潜入しました。これから一度アパートへ戻ってアイテムの回収地点へと向かいます。」

『何か異常は?』

「小さなトラブルが……ですが、親切な人に助けてもらいました。」

蓮太郎の事を思う。寝ぼけてた自分の相手は凄く面倒だったろうに、ちゃんと相手してくれるなんて。とティナは思う。だが、ティナがマスターと呼称した人物の言葉でその浮ついた気持ちを断つ。

『接触は避けろと言った筈だ。あらゆる情報の流出を避け、名前も偽名を使え。』

「…………問題ありません。」

蓮太郎に名乗った『ティナ・スプラウト』という名前は彼女の本名だ。

一度くらいなら。とティナは思い、次のマスターの言葉に備える。

『最後に一つ。お前の任務はなんだ。』

ティナは迷わず、言い放った。

「東京エリア国家元首、聖天子抹殺です。必ず、遂げてみせます。」

例え、もう蓮太郎と会う資格を無くそうと。

ティナは電話を切ると、そのままの足でアパートへ戻った。

中に入るとかび臭い匂いが歓迎するが、気にせず中には入り、姿見を見る。

肩元がはだけてボタンも何個か付け間違えている上に髪の毛は寝癖大量。私だっておめかししたら可愛いのに……と若干の後悔をしながらシャワーを浴びる。

そして暗い色が主体のドレスを身にまとい、携帯のバッテリーを満充電の物に変え、小型ヘッドセットを右耳につけ、髪の毛で隠し外に出る。

首尾よくティナはコンテナルームへと到着し、その内の一つにパスコードを打ち、それを開ける。

中には多数の兵器。その内の一つ、対戦車ライフルの入ったガンケースを見つけ、中を確認する。ちゃんと中身があるのを確認して持ち上げる。が、非力な少女の力では持ち上がらない。力を開放。全身に力が満ちる感覚と共にガンケースを持ち上げる。

俯きながらコンテナルームを出て早足にアパートを目指す。後は部屋に戻るだけと慢心してたためか、背後からの車の音に気付くのが一歩遅れた。

「……マスター、不測の事態です。ポリスに見つかりました。」

『ふむ……誰もいないな?』

「はい。」

ティナは髪で目を隠しながら警察官が降りてきたのを確認する。

『殺せ。』

十秒ほど経っただろうか。警察官は重傷をおい、パトカーは使い物とならなくなった。

返り血が着いてないのを確認し、ティナは動く。もう、失態はしない。だが、何故だろう。

あの、優しい青年の事が浮かんでくるのは。もっと、考える事はある筈だ。

ティナは思考を振り切るかのように足早にアパートを目指した。

 

 

****

 

 

「こりゃひでぇな……」

蓮太郎と延珠と夏世はタイムセールの戦利品片手にとある事故らしき現場の野次馬に来ていた。

パトカーは側面が大きく凹み、その他にももう使い物にならなくなった部品が多い。そして、重傷の警察官が見える。

すぐに、子供たちの仕業だと理解できた。

「……」

「……延珠、お前のせいじゃない。お前のせいじゃないんだ。」

「蓮太郎……」

延珠は苦笑しながら気にしてはおらぬ。と言った。

「……延珠さん。気にしないでください。」

「夏世?」

「そうだ。気にするんじゃない。お前のせいじゃないんだ。」

延珠の瞳が揺れる。

「延珠……」

蓮太郎が延珠の目を見て名前を呼ぶ。

「……なんで、分かったのだ?」

「家族だからな。」

延珠は涙を流した。夏世は何があったのかは知らない。だが、知る気にはならなかった。

「……どうして、みんな仲良くできないのだ……?」

「……いつか、いつか皆仲良く暮らせる時が来る。」

蓮太郎は延珠の頭をクシャクシャと撫でながら先を歩く。俺について来いと言わんばかりに。そのすぐ後ろを夏世がついていき、数秒遅れて延珠がついていった。

「今日はすき焼きだ!たんと食うぞ!!」

「たくさんお肉が買えましたからね……じゅるり。」

「おいイルカ。涎垂れてんぞ。」

「これは失礼。」

場所は変わって蓮太郎宅。目の前にはグツグツと煮える鍋。中には肉五割と野菜五割。

なんとも蓮太郎宅では豪華な料理が胸を張って置いてある。

夏世が部屋代と言って蓮太郎に渡した札束は蓮太郎の銀行にあり、いつか夏世が一人立ちする時に渡そうと考えてある。そのため、この肉は蓮太郎の金のみで買ったという信じ難いものだ。故に、三人とも目がギラギラしている。久々の肉だと。

「卵用意よし。」

「米よし。」

「煮え具合よし。」

「完璧だ。では、手を合わせて、材料となった全ての生物と育てた方に感謝の意を込めて!」

『いただき……』

ピンポーン。とインターホンが鳴る。

『誰だァ!!』

さぁ食べるぞという時に無粋な音。蓮太郎と延珠と夏世はイライラしながら玄関を開ける。

「里見ちゃ~ん……看病して~……」

何の断りもなく入ってきた和服の少女はドサッとその場で倒れた。

「……誰なのだ?」

「……司馬美織。知り合いだ。」

「もしかして、司馬重工の?」

「そうだ。よく知ってるな、夏世。」

「苗字が同じだったので。」

司馬美織。司馬重工の社長令嬢で、延珠の特別製の靴を製作してくれると申し出てくれた者である。

「お前の靴もこいつが作ってくれたんだ。」

「そうだったのか。」

美織の手にはビニール袋。そして、中には栄養ドリンクと風邪薬。

上げるだけ上げるか。と三人で美織を引っ張ろうとした時、今度は無音でドアが開く。

「里見くん……すき焼き……作って……」

今度は木更だった。ドサッと美織の上に倒れ込み、美織がむぎゅっと変な声を出す。

「……夏世、好きな方を選べ。捨ててくる権利をやろう。」

「要りませんそんな権利。」

「何でなのだ?」

「毒を生み出す化学反応を引き起こす。」

「要するにめちゃくちゃ仲悪いと。」

「そうだ。」

「でも片方捨てて野垂れ死にしたら私は里見さんの事をネットに流して炎上させて愉悦に浸ります。」

「お前さ、容赦ねぇよな。」

「人が焦って絶望に浸った顔……最高じゃな」

「黙れドSロリ。」

「正に愉悦。」

そして数分後。

「いやぁ、美味しいわぁ、里見ちゃん。」

「里見くん……?何でこいつがここにいるのかしら?」

「あ〜肉うめぇ。」

「肉最高です。」

「夏世!それは妾のだ!」

「取ったもん勝ち……って取り皿の中のお肉が!?」

「取ったもん勝ちなのだ。」

「ぐぬぬ……もう普通に……」

「箸がつく前に掠めとる。」

「私を虐めて楽しいですか二人とも!?」

『うんっ!!』

「死んでしまえ!!」

「って話聞けこのロリコンとドSロリとマセガキ!!」

『アァ!?』

「ひっ!?」

なんか、もう、カオスだった。美織は一人で笑顔でパクパクと肉を頬張る。

ちなみに、美織は風邪薬と栄養ドリンクを混ぜてぶち込んだら数秒で治った。

「と、とにかく!私は材料持ち寄ったけどこの蛇女はタダ飯よね!?」

「あら木更。おったんか?胸が大きすぎて顔が見えんかったわ。」

ピシガキッ!と箸から音がなり、バキィッ!!と見た事のない割れ方をする箸。

「……里見くん?箸変えてもらえるかしら?」

「その前に。」

夏世が手を出す。木更が小首をかしげる。

「箸の弁償代、払ってください。この家のものなので。」

「はい……」

木更が申し訳なさそうな顔で財布から五百円玉を取り出し、夏世に渡す。

「あぁ……この感覚……正しく愉悦。」

「性格悪いわねこのロリは!!」

「黙れ牛!!」

「里見くん!?教育がなってないわよ!?」

「肉うめぇ。」

「聞きなさいよこのロリコン!!」

「んだと牛!!」

「あんたもかい!!延珠ちゃんもなんか……」

「うるさいぞ牛!!」

「フルボッコ!?まさかの味方なし!?なんで箸折っただけでこうも責められるの!?」

『家の箸折る方が悪いわ!!』

「そうですねすみません!!」

まさかの木更のハートをフルボッコ。美織がコロコロと笑いこける。

「ああ……愉悦……」

「もう愉悦部にでも入りなさいよ……」

渡された割り箸を割って肉を食べる木更。

「メシウマやわ~」

コロコロ笑いながら野菜を頬張る美織。

「えっと、あなたが延珠ちゃんやね?」

「そうだぞ?」

「噂に聞いてた通り可愛いわ~。どう?あの靴の使い心地は。」

「最高だ!」

「それはよかった。きつくなったら新調してあげるから言うんやで?」

「うむ!」

「それにそっちは夏世ちゃんやね?家のショットガンはどうや?」

「グレネードランチャーユニットも含めてリコイルも弾の散らばり方も完璧です。」

「それは良かったわ。今度本来は里見ちゃんにあげるはずだったバラニウム製の散弾あげるからね。」

「それはまた……ありがとうございます。」

「私の時とは態度がえらく違うわね。」

「あなたは箸を折った厄介もの。美織さんは親切にしてくれるいい人。どっちにいい態度取るかなんて分かりきってますよね?」

「そうやで木更?」

「ぐぬぬ……」

「折ったらまた罰金です。」

「割り箸で!?捨てるのに!?」

「二本目のお金です。」

「もしかしてさっきのに一本分入ってたの!?」

「聞かなかった方が悪い。」

「せやで木更。」

『ねー。』

「こんの腹黒共は……」

プルプルと震える木更。その間にウマウマと肉と米を食べる蓮太郎と延珠。

「そういえば、どうして二人はそんなに仲が悪いのだ?」

唐突に延珠が聞いた。

「昔からの司馬と天童の因縁もあるんやけど、その前に木更の事はDNAレベルで嫌いなんよ。」

「貧乳。」

ボソっと呟いた木更だったが、美織は動じない。

「和服はな、胸の小さい人の方が似合うんやで?乳が無駄にでかい牛はお呼びでないな。わかるかえ、木更?」

延珠と夏世が全力で首を縦に振る。

そして木更から何かが切れた音が聞こえた。

「そう……雪影、蛇女の血が吸いたいの……わがままな子ね。」

木更が持っていた日本刀を抜刀する。

「里見くん。この鍋、美味しいけど何かが足らないの……なんだと思う?それはね、美織の血よ。」

ふふふ……と豹変した木更が日本刀を構える。蓮太郎が夏世と延珠に机を避難させろと目で訴える。

「私が瀉血してあげる。あんたの首から上、いらない。」

「落ち着け。」

「落ち着いてるわよ!!ものすっごいね!!」

ひっひっふーと出ちゃう呼吸法をしだす木更。駄目だこりゃと美織が乗らないことを祈る。

「あんたの会社二階建てにしてカラ売りかけて会社ごとぶっ潰してやるわ!!そんでもってあんたを跪かせて笑い飛ばしてやるわ!!」

「やめときぃ。司馬重工に売りから入るなんて自殺行為やで?たかが天童の家出娘の資金で何ができると言うん?買いから入ればたんまり設けさせてあげるで?」

「あんたの会社の株買う位なら舌噛んで死ぬわ!!」

「引く気はないようやね。」

「当然よ!!」

美織がゆらりと立ち上がり、持ってる扇子……鉄扇を構える。

蓮太郎は溜め息をつく。このままだと敷金帰ってこねぇと。だから、

「司馬流二天橘蝶霞獄───」

「天童流抜刀術一の型二番───」

そして振るわれる鉄扇と日本刀。だが、それを阻む者がいた。

ガキンッ!!と衝撃波を巻き起こしながらそれを両手で止めたのは蓮太郎だった。

「里見くん!なんで止めるのよ!」

「せやで!ここで息の根を……」

「出てけ。」

『えっ……?』

蓮太郎がドスの効いた声で呟いたので思わず聞き返した。

「出てけ。」

蓮太郎が俯いてた顔を上げて、何処か凄みのある笑顔で言い放った。

「で、でも……」

「出てけ。」

「せめてここで木更を……」

「出てけ。」

「さ、さと……」

「出てけ。」

「里見ちゃ……」

「出てけ。」

『……はい。』

蓮太郎が日本刀と鉄扇を離す。二人はすごすごと玄関に向かっていく。が、夏世だけがちょいちょいと美織の袖を引っ張った。美織が振り向く。

「司馬重工の株、買います。」

「……大好き!!」

味方(?)となってくれた夏世に抱きつく美織。だが、夏世は今、相当悪い顔をして内心でこう言い放った。

(計画通り!!)

と。

数ヶ月後、ちょっとした小金持ちの通帳と化した自分の通帳を見て夏世は悪い笑みを浮かべていた。夏世は美織が木更に言ったように、本当にたんまりと儲けたのだった。暫くは笑いが止まらなかったそうな。これが愉悦とも叫んでいた。このロリ、段々と性格が悪くなってきている。

ちなみに、その後のすき焼きは三人で仲良く食べました。




ドSゲスロリ、夏世ちゃん爆誕。ドSロリっていいよね

それにしても話が全く進まなかった今話。次回からはデュエル開始ィ!!です

何故に夏世がドSでゲスとなったかは本編で語れればいいなと思ってます

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