黒い銃弾とは何だったのか   作:黄金馬鹿

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やっと三巻終わり……次回から四巻です

それと、TFSP買いました。シンクロンエクストリーム三箱買ってデッキ組んだら強い強い

早く聖刻サフィラ組みたいな~……という愚痴を漏らしながら本編をどうぞ


トゥエンティースリーパンチ

蓮太郎が生徒達を連れ出して回帰の炎に連れて行った日の夜。テントの中では既にアジュバンドメンバーがもう寝ていた。

酔ったまま寝付いたらしい彰磨と隣で寝る翠の耳を齧る延珠と夏世、そして耳を齧られて魘されている翠。片桐兄妹は自分達のテント、木更は蓮太郎のすぐに使わなくなったテントでティナを拉致って寝ている。多分、今頃抱き枕がわりにされているだろう。

蓮太郎は何かすっごいカオスな空間の中、何故か寝付けずにテントの天井を見ていた。

数時間前まで焼肉を遠慮なく食べていたため、満足感と満腹感はある。夕方から日がどっぷりと暮れて子供たちが眠くなるまでいたので大体四時間ほどだろうか。殆ど木更はノンストップで食べていたが、かなり長いこと店の中にいたので、そろそろ夜食を食べてもいい頃なのだが、腹は全く減らない。だが、眠れない辺り今日は寝付きの悪い日らしい。

気分でも変えるために外で夜風に当たろうと音を極力立てずに立ち上がってテントの外に出る。

「……少し肌寒いか?」

真夏だが、夜だったからか少し肌寒かった。一度テントに音を立てずに戻って上着を羽織り、再び外に出る。

何処か行ってみるか。とポケットに手を突っ込んだ所で横から誰かが歩いてくる。

同じ境遇の民警か?と思い横を見ると、その人物は見知った人物だった。

「あら、里見くん。」

「木更さん?こんな真夜中にどうしたんだ、一体。」

横から来たのは護身用に木刀(何故か柄の部分に洞爺湖と彫ってある土産物)を腰にさした木更だった。何でここにいるかと聞くと、寝付けなかったかららしい。

ティナは?と聞くと抱き枕にしてたらタップしだして次第に大人しくなったからそのまま寝かしてきたという。それ、抱きしめられてその大きな胸に無理矢理顔を突っ込まれて息ができずに窒息しただけじゃ……と言おうとしたが、何となくやめておいた。

「そうだ、里見くん。散歩に行きましょ?」

「散歩って……まぁ、いいけどよ。何処までだ?」

「32号モノリス。」

「分かった。」

そして、蓮太郎の背中に木更がへばり付き、蓮太郎が新幹線真っ青な速さで走り出した。

30秒経たない間に32号モノリスの前へと到着した。木更を下ろすと、木更はこっちよ。とだけ言って歩き出した。蓮太郎はそれについていく。

木更は白化したモノリスの前へ行くと、それに触れた

「触っていいのか?」

「この程度じゃ崩れないわよ。それより……これは酷いわね。ほら。」

木更は蓮太郎に自分の触ったモノリスの一部を見せる。モノリスはパラパラと音を立てて崩れ、崩れた部分が地面に落ちた。

「確かに酷いな……モノリスが倒れるまであと二日か……それまで持つのか。」

「二日じゃなくて三日よ。」

「あと数分のことだろ。細かいな。」

ここで無闇に触って大変な事になったら極刑じゃ済まないのでモノリスからは一旦離れることにした。

「なんでこんな事になっちまったんだか。」

「調べるしかないわよね。それにしても、何で32号モノリスをピンポイントで攻めるのかしら。」

「そういえば、他のモノリスはどうもなってないんだよな……何でだ?」

「……まさか、モノリスを形成するバラニウムに何か異常が……例えば、不純物が入ってるとか?」

「ははは、まさか…………まさかだよな?」

蓮太郎は一旦飛び上がり、まだモノリスの無事な部分をコンコン。と叩く。次に、白化したモノリスの少し上のまだ無事な部分を叩く。

「なるほど、分からん。」

「馬鹿なの?」

木更の冷たいツッコミ。だが、蓮太郎は特に気にした様子はない。

「とりあえず、私のツテで調べてもらうわ。」

「あぁ、そうしてくれ。」

その後は特に話すことなく、二人はなんとなくテント近くの河川敷で寝転がっていた。

「星が綺麗ね。」

「そうだな……確か、あれがデネブ、アルタイル、ベガで……」

「えっ、どれ?」

「ほら、アレだよ。」

蓮太郎と木更が自然に顔を寄せあって、蓮太郎が空に指をさす。

「ほら、あの三つ。そんでもってあれがさそり座。」

「ちょっ、よく分かんないわよ。」

「ほら、あの一際目立つ星だって。」

「そんなの見当たんない……あっ、あれ?

「そうそう。あの三つ。そしてあれがウ○トラの星。」

「真面目な顔してボケないの。」

真面目な顔してボケたら木更からツッコミが入った。

バレたか。と、チラッと木更の方を見ると、ほんの数センチ先の所に木更の顔があった。

(近っ!!?)

いきなりの事に顔を真っ赤にしてすぐに元の位置に戻る。多分、今の蓮太郎の顔はかなり赤いだろう。

「よく星座なんて覚えてるわね。」

「ま、まぁ……覚えてんのはあんぐらいだ。」

平静を装って言葉を返す。

何であんなに顔を近付けても気付かなかったのやら。と木更に聞こえないほど小さく溜め息をはく。

「……なんか、こういう事してると恋人みたいよね。」

「ッ!?ゴホッ!」

いきなりの不意打ちに飲み込もうとした唾が気管に入りむせる。

「ちょっ、ど、どうしたの!?顔真っ赤よ!?」

「な、何でもねぇ……」

反則だろ木更さん……と内心思いながらもあくまで平静を装って会話する。

「……ねぇ、里見くん。里見くんは消えちゃったりしないわよね?」

「いきなりどうしたんだ?」

やっと喉の違和感が収まったところで木更が声をかけてきた。

「私ね、最近思うの。こうも何事が上手くいっていたらいつか最悪の事態が起きるんじゃないかなって……」

「今までのしっぺ返しか?」

「うん……夏世ちゃんを助けて、スコーピオンも倒せて、ティナちゃんの事もどうにかなって……延珠ちゃんの胃が犠牲になり続けてるけど……でも、いつかとんでもないしっぺ返しが……」

「来ねぇよ。来ても俺が殴り飛ばしてやる。だから、安心しておけって。」

木更はそうよね。心配した私が馬鹿だったわ。と言って蓮太郎の手の上に手を置いた。

は!?と出そうになる声を抑えて地面に向けていた手のひらを上に向け、手を繋ぐ。

「あと、1分で日付変更ね……」

「そ、そうだな……」

「……みんな、助けましょう。私と、里見くんと、彰磨くんと、財布げふんげふん……片桐さんなら楽勝よ。」

(片桐ェ……)

不憫な扱いの玉樹に向かって内心で合掌する。

そして、秒針はあと少しで一回転する。

「5、4、3、2、1…………モノリス崩壊まで、あと二日。」

「二千体のガストレアの命日も、な。」

「……ふふっ、そうね。」

気が付いたら、二人は夜が開ける数分前まで星空を見ていた。

結局、寝付けなかった。

 

 

****

 

 

翌日。蓮太郎はとある事が気になっていた。数日前、鉛を目に流し込んだという盲目の少女の事だった。

彼女には数週間は食えるほどの金は渡しておいたが、もしかしたら、という可能性もあったので行ってみることにした。

あの歩道橋の上にまた彼女はいるのだろうかと民家やビルの上を走って飛んで。数分後に辿りついた。今日は教師業を休みにしてもらってるのでイザという時は彼女をあの隠れ家に連れていく気である。

暫くして歩道橋が見えた。そこには、人混みが。

「チッ……来るなっていっておいたのに……」

やはりと言うべきかなんというか。内心毒づきながらひとっ飛び。

人混みの後ろに着地。そのまま人混みを掻き分けて倒れている少女の前に出る。

「止めろ。この子が何をしたって言うんだ。」

「そいつはガストレアだ!俺達を食い殺す機会を伺ってるんだぞ!」

そうだそうだと男の声に賛同する人々。

「そいつを庇うってんならお前だって同類だ!」

「ならどうする?」

「死ね!!」

人混みの中から拳大の石が投げられる。が、蓮太郎はそれを掴む。

かなりの速さで飛んできたのをなんの苦もなく掴みとったのを見てざわつく人混み。

「なぁ、お前ら。ここに岩とナイフがあるだろ?」

蓮太郎が目の前の男からナイフを一瞬でかすめ取る。男は手にあった得物が無くなったことで驚いている。

蓮太郎は見せしめと言わんばかりに岩を握り潰し、ナイフの塚と先端を両手のひらで挟み込むように持って、そのまま圧縮。グシャッと音を立ててナイフはコンパクトになった。

余りの人外地味た行動にザワザワと人混みが声を上げる。

「これが十秒後の貴様達の姿だ。」

人混みを作っていた者たちは我先にと逃げ出した。

「はぁ……大丈夫か?」

蓮太郎は倒れ込んでいる少女に話しかける。体のあちこちに殴られたような跡がある。

「あなたは……あの時の?」

少女は蓮太郎の方を向く。

「何でここに来た?もう来るなっていっただろ?金はまだあるだろ?」

「はい……でも、この先もっとお金はあった方がいいと思って……」

「……馬鹿野郎が。」

蓮太郎は優しく、コツン。と少女の頭に拳骨を落とした。

少女は少しだけ頭を抑えたが、すぐに蓮太郎の顔に向けて手を伸ばした。

特に何もされないと分かっていたので、蓮太郎は抵抗しなかった。

少女は蓮太郎の顔や首をティナにしたように一通り触った。

「もう顔は覚えました。私好みの顔です。」

「……お世辞でも嬉しいよ。」

蓮太郎は少女の手を掴むと、一緒に立ち上がる。

「……何処へ?」

少女は蓮太郎が自分をどこかへ連れていこうとしているのが分かった。

「俺は青空教室で先生をやってるんだ。その生徒を避難させてる場所がある。そこに行くぞ。」

あそこには生徒達が一週間は暮らせる位の食料や水があった。一人二人増えたところで何も変わらない。

「……私はいいです。妹も居ますし……」

「なら妹も連れて来い。食料と水はそれなりにあるんよ。」

「……いいんですか?」

「拒否権はない。来るなって言いつけを破ったバツだ。」

少女の言葉を聞かず、無理矢理おんぶして飛び上がり、ビルの上に着地する。

「わわわわ!?」

「どうだ?凄いだろ?」

目が見えてないから怖さ数倍。だが、どこか少女は楽しそうだった。

ビルの上に飛び上がるのは初めての経験だったのだろう。

「どこへ行けばいい?」

「えっと……確かあの場所から……」

少女は自分の住んでいる外周区がどこかを説明した。

東京エリアの南西側の海に近い場所だった。

「よし、ひとっ飛びで行くからしっかり掴まってろよ?」

そう言うと、蓮太郎は足に力を込めて飛んだ。

きゃーと声を出しながらも何処かはしゃいでいる少女を見ると自然と笑顔になった。

 

 

****

 

 

「ってな訳でこいつらも今日からここの生徒だ。オーケー?」

「よぉし里見くん。目ぇ出せ。潰してあげるわよ。」

「解せぬ。」

「解せぬじゃないわよ!何攫って来てんのよこのロリコン!!」

「違う!俺はロリコンじゃない!!っつか攫ってきてもねぇよ合意の上だ!!」

「こんな幼女の目を潰しておいて合意の上とかよく言うわよこの異常性癖者!!」

「だぁかぁら!!違うつってんだろ!」

蓮太郎は授業中の青空教室(地下)へ盲目の少女とその妹を連れてきて懇切丁寧に説明したが、何故か木更と口論になっている。

何故か懇切丁寧に説明したのに攫ってきた扱いにされている。

「あの……天童社長?」

「ティナちゃん、お引越しよ。やっぱり里見くんは危ないわ。」

「おう木更さん。いい加減にしねぇと殴るぞゴルァ。」

「て、天童社長……彼女はお兄さんの言った通りの子ですよ……そ、それに私はお兄さんになら攫われたって……」

そしてティナからの助け舟。蓮太郎はほっと一息つく。

「えっ。」

確かに盲目の少女の方を見ると、蓮太郎にかなり懐いてるように見える。妹の方は大人しめの性格だが、すぐに生徒達の輪に加わっている。

ちなみにティナの後半のセリフは全部木更達の耳には届いてなかったもよう。

「木更さん?」

「……め、めんご☆」

「お仕置きのグリグリだ!!」

「ちょっ、やめっ……って夏世ちゃん!?なんで私を捕まえるの!?」

「絶対そっちの方が面白そうなので(笑)」

「う、裏切り者ぉぉぉぉ!!」

この後滅茶苦茶グリグリした。

 

 

****

 

 

次の日。

他のアジュバンドはピリピリとした空気を醸し出してるが、蓮太郎達人外アジュバンドはのほほんとしていた。

今日は青空教室(地下)はお休みなため、蓮太郎と木更は第三次関東大戦の後の授業を考えていた。

前日の夜に爆弾を投げ込まれたりするような事は起こっておらず、朝、確認しに行ったがみんな無事だった。

二人の後ろでは延珠が靴の裏に仕込まれているバラニウムの板に異常がないか確認、ティナと夏世はバレットライフル、火炎放射機(何処のものかは不明)、ショットガンを一度完全に分解して部品の一つ一つを確認してから組み立て直している。

夏世は二つのポーチを用意して一つに通常のバックショット弾を詰めたマガジンを詰めれるだけ、もう一つのポーチには半分をフレシェット、もう半分にはスラグ、フラグ、バラニウムバックショットを詰め込んでいる。残り数個ポーチはあるが、それは予備と空マガジン用だ。ティナは火炎放射機の燃料とNATO弾を詰めたマガジン、さらにはRaufoss Mk 211という、焼夷弾、徹甲弾、炸裂弾の効果を兼ね備えた軍事的使用が禁止された弾丸を引っ張り出してマガジンに突っ込めるだけ突っ込んだ。後衛二人はかなり本気だ。

対して前衛の人外は玉樹のみマグナム銃を装備。それだけ。

前衛のイニシーエーターも銃の装備なし。武器は己の肉体。それだけ。

「今日は陣形の確認とかあったかしら?」

「夜中じゃね?」

「それまでは暇だな。」

「なら飲まねぇか?」

「明日に響くぞ片桐。」

「うっ……」

決戦前日の会話とはとてもじゃないが思えない。せいぜい日曜日に家で休んでるサラリーマン程度の緊張感しかないだろう。

「そういえば、今日は風が強いわね~」

「そうだな。こういう日はモノリスが倒れそうだな。」

「里見、それは流石に不謹し……」

その瞬間、外で轟音。

「うるっせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「里見くんの方がうるさぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」

「ボーイも姐さんも外もうっせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

なんかもう、テントの中はカオスである。だが、彰磨と翠はいち早くテントの外に出ていた。

「モノリスが崩れている……まだ時間はあった筈なのに……」

モノリスの外では、モノリスが崩れ、灰が舞っていた。

「……風か。風のせいでモノリスを支えていたバラニウムのブロックが崩れてそこからなし崩しにモノリスが崩れたのか……」

灰は民警達のテントには少ししか届かなかった。だが、自衛隊にはかなりの被害を与えただろう。

暫くして轟音が止む。

「……どうする?」

「どうするって……あんたがリーダーでしょ。」

「じゃあ暫く待機。指示があるまではここで準備だ。」

人外アジュバンドはガストレアを駆逐するために準備を始めた。

アルデバランに悲惨な結末が訪れるまでにそう時間はない




Raufoss Mk 211については自分も詳しいことはあまり分かりません。昔wikiを見た程度です

一気に三巻の分を消化して第三次関東大戦が始まりましたが終わりも近いです←えっ

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