黒い銃弾とは何だったのか   作:黄金馬鹿

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なんか超駆け足……なのに何故一万文字を超えたのか。まるで意味がわからんぞ!!

そりゃあ学校の休み時間全て使って書いてたけどさぁ……まさかここまで文字数が伸びるとはww
あと最後らへんも蓮太郎に危機感もへったくれもないからすっごい手抜き感がww

とりあえず今回は翠ちゃんの秘密がバレ、朝霞ちゃんの秘密も少しバレます

次回で第三次関東大戦編は多分終わりです(えっ


トゥエンティーファイブパンチ

翌日。東京エリアには黒い雨が降った。

どうやら、この黒色の雨はモノリスが倒壊した事により巻き上げられた砂塵とモノリスの灰が雨に溶けた事により降っているものらしい。

だが、その雨は正しく地獄を表現するにはピッタリの色の雨だろう。

蓮太郎達は朝一に自衛隊や散っていった民警の死体を死体袋に詰めていた。数十分前に要救助者の救助という名目で駆り出されたのだが、それが伝染病を防止するためや、遺族の元に送るために死体を詰めているのだとすぐに理解できた。

死体の一つ一つにお疲れ様。と労いの言葉をかけて死体袋に丁寧に詰め込んでいく。

最初から協力していればこんなに死ななかっただろうが。とは思っているが後の祭りだ。

ここに女子供はいない。女性やイニシエーター達は怪我をした民警や自衛隊数十人の治療や介護に向かっている。

何故第二次関東大戦で圧勝した自衛隊が負けたのか。それはアルデバランと水銀を発射していたステージⅣのガストレアのせいだろう。

アルデバランがフェロモンのようなものでガストレアを指示しているのは蓮太郎は感覚で分かっていた。何やら変な物がたまに蔓延してるのは分かっていたが、フェロモンだと分かったのは自分の虫や生き物に関する知識を漁ってからだった。フェロモンという答えに行き着いたのもモノリスに蟻のガストレアが捨て身で侵入してきたのを思い出したからだ。

ここから行き着く答えは、戦闘機などは全て水銀のガストレアが撃ち落とし、地上戦は甲殻類や昆虫のガストレアで固め、接近。そのまま戦車近くへと潜り込み、殲滅。

おそらくアルデバランは指示を出したガストレアに追加でどんな攻撃にも怯むな的な指示を出していたのだろう。そうなれば歩兵は食い殺され、戦車は無尽蔵に突っ込んでくるガストレアにやられ、戦闘機は全て撃ち落とされる。

そうしたら残るのはこの惨状だ。

だが、この地獄も次の戦いで終わる。

昨日の深夜の事だった。蓮太郎は戦線からかなり遠い場所で待ち人を待っていた。

日付が変更する数分前にその人物は来た。

「お待たせ、里見ちゃん。」

「よぉ、美織。」

待ち人とは美織の事だった。彼女は頑丈そうなスーツケースを持っていた。

「これが件の物や。一発しかないからな。」

美織は蓮太郎の前で厳重なロックを外して中身を取り出し、渡す。

それは、パイプのような形をした物だった。さらにタイマーよようなものがそれについている。

爆弾。しかも、この爆弾は司馬重工が持てる技術の全てを費やして作った爆弾だ。

「これがEP爆弾か。」

「せや。ここの赤い目盛りまで本体を捻ると十秒後、爆発する。威力はアルデバランの中心で爆発させた場合、アルデバランの欠片も残さず粉砕する……筈やったんやけど、里見ちゃんの要望通り空を覆う感じのきのこ雲を巻き起こす演出用の爆弾や。本当は威力も追求したかったんやけど、時間が足りへんかったわ。ただ、爆発もするから半径十mは吹っ飛ぶで。」

これが蓮太郎がアルデバラン暗殺用に持っていく『目くらまし』だ。

蓮太郎はこのEP爆弾を使い、ガストレアの上で起爆。爆炎に呑まれながらアルデバランを拳で消滅。そして音速で逃亡し、まるで司馬重工製の爆弾によりアルデバランが消滅したように見せかける作戦だった。

美織もこの計画が成功したら、司馬重工はあのアルデバランを倒して見せるほどの兵器を作れる会社として世界に名を売れるので、喜んで賛成し、協力した。

まさにwin-win。不満があるのはアルデバランだけという。

「むふふふ……これが成功したら私等はガッポガッポや。あ、もしそうなったら特別手当を司馬重工から出すから、楽しみにしといてや~。」

「あぁ。何としても成功させてやるよ。」

二人はニタァ……と悪い笑みを浮かべると握手をしてそれぞれ来た方向に歩いていった。

ちなみにスーツケースはこれからも使えそうなので貰った。

そんな事がつい数時間前にあったのを知る者はいない。

途中、ヘリコプターで記者が取材に来たが、玉樹がうるせー邪魔だと言って追っ払った。

 

 

****

 

 

半日かけて死体袋に死体を詰め終わり、蓮太郎は戦場から近い外周区の街をチラッと見たりしながら木更と延珠が手伝いをしているという救護用に宛てがわれた中学校の体育館に来ていた。

ちなみに、外周区のもう使われないコンビニには野生化したヤギがいたので「ジンギスカンだヒャッホォォォォォォォォォォ!!」と叫びながら喜々として追いかけ回した。流石に狩らなかった。

体育館の中に入ると、中は野戦病院のようだった。

ベッドやゴザの上に患者は寝かされ、包帯を巻かれたりしている。そしてツーンとくる薬品の臭い。

最早人の声と機材の声がごっちゃになって酷い雑音になっている。だが、その中で蓮太郎はピョコピョコ動く見覚えのある赤色のツインテールを見つけた。

「あ、蓮太郎蓮太郎!!」

すぐにその赤色のツインテールこと延珠がこっちへと走ってきた。頭にはピンク色のナースキャップが乗っている。

多分、今の延珠に犬の尻尾があったら振りすぎて何処かへ吹っ飛んでいきそうなほどブルンブルン振るわれているだろう。

延珠は勢い余って蓮太郎に抱き着いた。

「おっと。」

蓮太郎は常人ならすっ飛んでいくほどの突撃を軽く投げられたボールを取るかのごとく軽く受け止める。

「頑張ってるみたいじゃないか。」

「そうだぞ、頑張っているんだぞ!」

「そのナースキャップは?」

「お手伝いしてたらくれたのだ。どうだ、可愛いか?」

はいはい、可愛い可愛いとあしらってると、今度はナースキャップを被った木更がお湯の入った洗面器を持ってやってきた。

「里見くん、どうしたの?」

「いや、暇だったからな。」

「そう。ここは暇潰せないわよ?」

「わーってるよ。」

撫でられて気持ちよさそうにしている延珠を尻目に木更と会話する。

「そういえば、菫先生に挨拶した?」

「え?先生来てんの?」

「えぇ。ほら、あなたの後ろに。」

と、指をさす木更。

まさかと思いつつ後ろを見ると……

「うらめしやー。」

「うぉわっ!?本当にいた!?」

死人のような顔をした菫がいた。蓮太郎は割と本気で菫の気配を感じられなかったし、驚いた。

「やぁ蓮太郎くん。外もたまにはいいじゃないか。」

「先生……なんでここにいるんだ?」

「要請があってね。医師たちを統率してくれと。まぁ、無視するとグチグチうるさいから来てみたんだが、案外いいじゃないか。毎日こんな感じなら私も外に出れるだろう。」

「こんな地獄絵図が毎日ある世の中なんてお断りだ。」

「そうかい?私は楽しいと思うがね。」

やっぱりこの人、人としてズレている。と考える蓮太郎。

「まぁ、もうすぐそこの二人もシフトが終わる。待っているといい。」

「先生は?」

「ここで寝泊りだ。護衛として君もいるし悲鳴を聞きながら寝れるんだ。これほど安心して寝れる場所はないね。」

「あんたまともに死ねないぞ。」

「何を今更。」

んじゃ。と言って去っていく菫。延珠と木更も手伝いに戻ると言って人混みに戻っていった。

「あ、そうそう。」

「うぼぁっ!?」

だが、何故か菫がまた背後から声をかけてきた。

「さっきまで居たんだが、彰磨くんのイニシエーターの翠ちゃん、なかなかいい子じゃないから。」

「あ、あぁ。ちゃんとしてるしな。」

「ふふふ……私ととある点で話が合いそうだったがね。」

「は!?」

何で話が合うんだと聞く前に菫は笑いながら去っていった。

まさかネクロフィリアじゃないだろうな……と考えたが、あんないい子に関してそれはないと割り切って蓮太郎は外で待つことにした。

外で待つこと数分。延珠と木更が出てきた。

彰磨の携帯から送られてきたGPSを頼りに道を歩くと、ひとつの寂れたホテルについた。

センチュリーハイホテルと言うらしいが、最早廃墟である。

「……本当にここで合ってるの?」

「合ってるだろ。ま、雨風凌げりゃ十分だ。」

蓮太郎はそのまま中に入る。

「あ、お兄さん。いらっしゃい。」

中に入ると、ハタキを持って三角巾を頭に巻いたティナがいた。どうやらさっきまで掃除をしていたらしい。

「おっ、やっと来たか、ボーイに姐さん。もう飯出来てるからさっさと食おうぜ。」

と、今度はエプロンと三角巾装備の玉樹が出てきた。

余りのギャップの差に蓮太郎、木更、延珠が吹き出す。

「……その反応はひどくね?」

割と本気でショックを受けたらしい玉樹は肩を落として戻っていった。よく見るとお玉を持っていた。

玉樹の戻っていった方に行くと、もう翠とティナ、そして今来た三人以外の全員が席に座っていた。

「翠は?」

「部屋で何かやってるみたいだ。里見、呼んできてくれ。」

「はいはい。」

彰磨に部屋の場所を聞いてそこへ向かう。

結構他の部屋とは離れた部屋が翠の部屋らしい。

部屋の前に立つと何かの音が聞こえたが、気にせずノックする。

「翠~、メシだぞ~。」

『ひゃいぃ!?』

が、直後。ドッタンバッタンと何かをひっくり返したりする音が響いてくる。

「何してんだ?」

それに気になり、ガチャッとドアを開ける。丁度その時、何かが滑ってきて蓮太郎の足に当たった。

「ん?これは……ゲームの箱?」

「あっ!?」

蓮太郎がそれを持って表を見ると、そこにはゾンビの絵と散る血の絵。そして右下にR-18の文字。

エロゲには見えないため、答えは一つ。グロゲーである。

裏を見れば、ゲーム画面のスクリーンショット。一人称視点でゾンビを撃ち殺していくホラー&グロ要素がたっぷり詰まったゲームらしい。

ぁぅぁぅぁぅ……と小さな声を上げる翠。

さらに翠が持っている物に目をやると、そこには携帯ゲーム機や様々なジャンルのゲーム。格ゲーから蓮太郎でも知っている国民的RPG、さらには天誅ガールズのゲームや美少女ゲーや乙女ゲーまである。一応エロゲらしきものは入ってなかった。

「翠……お前……」

「うぅぅぅ……秘密にしたかったのに……」

どうやら、翠はかなりのゲーオタだったらしい。

翠は大きなバッグを二つ持ってきていたが、一つは生活必需品、もう一つは超大量のゲームだろう。

菫の話が合うという意味が、ゲームの話が合うという事で合点がつくと、安心したような、呆れたような溜息しか出なかった。

「……ごめん。」

蓮太郎は扉をそっと閉じた。

『にゃっ!?ご、誤解なんです~!これは、その……えっと…………趣味なんです~!!』

「翠。それ、自白。」

『ふにゃぁぁぁぁぁぁぁ!!』

ガンガンガンガン!!と部屋から痛そうな音がする。チラッと中を覗くと翠が壁に向かってヘッドドラムしていた。

血が出ないうちに止めろと言いたかったが、言えなかった蓮太郎だった。

翠が出てきたのは数分後で、顔は真っ赤で額には絆創膏が貼ってあった。多分血が出るまでヘッドドラムをしたのだろう。

夕食場まで翠と戻る。

「里見くん、なんか凄い音が聞こえたけど……」

「あ~……色々あってな。」

翠が帽子を目深く被りなおす。顔は真っ赤。

そしてそれを見て例の勘違い。

「まさか……里見くん……こんな所で幼女を……」

「ちげぇよ!!」

蓮太郎、全力のツッコミ。だが、彰磨は翠の様子を見てあっ。と声を出した。

「里見、翠の大量のアレを見たのか?」

「あぁ。多分それで合ってる。」

翠はそのまま彰磨の隣に座った。

「彰磨くん?アレって何なの?」

「ん?超大量のゲームの事さ。」

「ふにゃっ!?」

まさかの展開に翠が驚きの声を上げる。

「ゲーム……?」

「あぁ。翠は重度のゲームオタクでな。そりゃあもう、グロゲーから恋愛ゲーま……」

「ニャァァァァァァァァァァァァァ!!」

バリィッ!!と翠の爪が彰磨の顔面を引っ掻く。

「ギャァァァァァァァァァァァァァ!!」

そして転げ回る彰磨。クールキャラが崩壊している。

翠はフー、フーと息を荒らげてる。耳もピーンッと立っていることだろう。

「翠、ゲームが好きなのか?」

「にゃっ!?ち、違います!好きじゃないですよ!?」

「み、翠は新作のゲームが発売する日は早朝から並んで購入するほどのゲーム好き……」

「フシャァァァァァァァァァァァ!!」

「うわっ、ちょっ、何をするやめ……」

ザクッ!ザクッ!バリッ!!と痛そうな音が響く。余りの惨状なため、丁度彰磨の隣に座っていた延珠と夏世の目を蓮太郎が塞いでいる。蓮太郎もそっぽ向いている。

反対にいる他のメンバーからは飛び散る血と彰磨の手と血に染まっている翠の爪が見えた。

数分後。

「フー……フー……」

顔を真っ赤にして真っ赤に染まった手を布巾で拭いている翠と顔が見せちゃいけない事になっているため、モザイクがかけられた彰磨が座っていた。

「ま、まぁこんな感じだ。重度のゲーオタだが付き合いは変えないで欲しい。」

喉もやられたのか声が酷いことになっていたため、彰磨は現在ボイスチェンジャーを使っている。シュールだ。

「と、とりあえず飯食おうぜ!ほら、手を合わせて!」

玉樹が機転を利かせてまだ湯気の出ている夕食を食べようとする

その声に皆が手を合わせ、

『いただき……』

「失礼します!」

唱和しようとしたところで誰かが入ってくる。

「里見リーダーはいらっしゃいますでしょうか?」

「えー、里見リーダーならこちらでございまーす。」

「ぶっふぅ!?だ、誰っ……」

裏声を使ってさらに顔にモザイクのかけられた彰磨が対応すると、訪問者は吹き出して笑い出した。蓮太郎達もそっぽ向いて口を抑えて体を小刻みに震わせている。

「が、我堂団長からし、至急本部へと来るようにと……」

「すぐに行かせまーす。」

「ぶっはっ!!しゃ、喋らないでくれ頼むから……」

「こちら葛飾区亀有公園前○出所でございまーす。」

その声でこの場にいる全員の腹筋が崩壊し笑い転げていたのは言うまでもない。

戦犯、彰磨。

 

 

****

 

 

「ようやく来たか。」

中学校の本校舎の一室に、我堂は部下たちと共にいた。

赤色の外骨格がガストレアの血で塗られてるようにも見えた。

「掛けたまえ。」

我堂の言葉に従う。が、その時我堂にどこか違和感を感じた。

よく見れば、我堂の足が片方ない。

「あんた、足は……」

「アルデバランにくれてやったわ。」

イニシエーターの壬生朝霞のせいで何処かへ行方不明になっていたと思っていたらアルデバランと一戦交えていたのか。と呆れたような感心したような感じになる。

「あと、英彦が世話になったようだな。」

と、今度は額に青筋立てて言ってくる我堂。

しばらく考え、わざとらしく(・・・・・・)思い出した。我堂英彦は蓮太郎がイニシエーター共々轢いていた。

「あ~……なんか凄いテンションになってたから……」

「お陰で足骨折してこの戦は戦えんわい。」

「ほんとすんません。」

普通に頭を下げて謝る。

「まぁ、あいつは本当は画家になりたかったようだし、この際転職させる。」

「サラッと言っても普通はできねぇよ。あと、アルデバランについてだが、あいつはフェロモンでガストレアを操作しているのが分かった。」

「ほう?根拠は?」

「現代の生み出した天才、室戸菫先生のお墨付きだ。」

「ふむ……」

名前を借りてすんません。と心の中で謝る。何故か報酬は君の体で。とか言っている菫が見えたが気のせいだと思う。体を貸したら何されるか分かった物じゃない。

「ならば報酬として私は君に一つ有益な情報を公開しよう。」

その時、周りにいた我堂の部下が話してはいけない、黙っているべきだと声を上げるが、我堂は手で制すだけだった。

「アルデバランの事だ。」

「ほう?」

「アルデバランは不死身のガストレアだ。倒す術はない。」

不死身。その言葉に蓮太郎の心が踊った。

本当に不死身なら、サンドバッグに出来るし、なにより自分の拳で死なないから、久しぶりに全力全開で互角に戦える相手が出来るかもしれないと。

「私は奴の脳と返す刀で心臓を貫いた。だが、奴は死なず、再生した。それに呆気取られている間に足をやられた。恥ずかしい話だ。」

つまりアルデバランが持ってるのは超再生。

不死身ならなぁ……とガックリする蓮太郎。超再生だったら何処ぞのバトル漫画みたいに細胞の欠片も残さず消し飛ばせばいいだけの話だ。

「驚かないのだな。」

「ま、ステージⅤの中でもかなり厄介なタウルスの軍団の右腕だからな。そんくらいはあるかなと。」

ただ、驚くに値しなかっただけである。

「んで、あの高圧水銀をぶっぱなすガストレアに関しては?」

「奴に関しては情報がないのでな。つい先程までガストレアXと呼ばれていたが、プレヤデスと呼ばれるようになった。」

プレヤデスねぇ。と蓮太郎はよく星の名前で名付けたもんだと思うが特に関心は抱かない。

「時に里見リーダー。君は何故ここに呼ばれたか分かっているのか?」

「命令違反だろ?知ってるよそんくらい。」

蓮太郎は一つ命令違反をしていた。それは、我堂英彦の命令を無視して背後の部隊を叩いた事だった。

軍隊では如何なる事でも命令違反は重罰。軍隊に近い組織であるこのアジュバンド軍団の中で命令を無視したら何かあることくらい分かっていた。

「ほう、自覚はあるか。」

「まぁな。で、だ。俺は何らかの罰を受けるだろうな。それか極刑だ。だったら、賭けてみねぇか?」

蓮太郎の軽い上から目線の言葉に周りから野次やら何やらが飛ぶが、一度睨んで黙らせる。

「プレヤデスとアルデバラン……邪魔だとは思わねぇか?」

ざわ……と周りが騒がしくなる。

「……つまり、君は一人でプレヤデスとアルデバランを倒してくると?」

「そうだ。別にいいんだぜ?あのステージⅤの一体、スコーピオンを倒した俺を使わずに殺したって。そうしたらあの不死身野郎を倒す術なんて……ねぇんじゃねぇのか?」

「だが、君が倒せるとは限らない。」

「いいや、倒せるね。」

「根拠は?」

「俺の力だ。」

蓮太郎と我堂は睨み合う。

だが、不意に我堂の頬が少しだけ緩む。

「ならばやってみろ。」

「……長政様、よろしいのですか?」

「構わんさ。元より散る命だ。華々しく散らせるのも良かろう。」

「おい、死ぬ前提かよ。」

「ならば生きて帰ることが出来たのなら……ぱーちーでもするか?」

「長政様、言い方が親父臭いです。」

「ならケンタッキーフ○イドチキン予約しておけよ。俺達は沢山食うぜ。」

「地味に高い……」

「よかろう。ケンタッ○ーフライドチキンなりバーガー○ングなり奢ってやろう」

「長政様、バー○ーキングはガストレア大戦のせいでもう絶滅危惧です。」

何気に朝霞がツッコミに入ったが、この二人は聞いちゃいない。

「そういえば、あんたのイニシエーター、昨日はエラく暴れてたが今は大人しいのな。」

「あぁ……朝霞は剣を持つとかなり野蛮な性格になるようでな。だが、剣を持ってないときはかなりのオタ……」

その瞬間、朝霞の腕が一瞬で伸び、我堂の首を捉える。

「長政様ぁ?余り口が過ぎると早死にしますよぉ?」

「い、イエスマム……」

イイ笑顔で言った朝霞に思わず敬語な我堂。

「と、取り敢えずこのPDAにアルデバランとプレヤデスの場所の情報は入っている……それと必要最低限の荷物は後で持っていかせよう……」

「分かったらとっとと出て行ってくださいねぇ~?」

「お、おう……とりあえず○ンタッキーとバーガーキ○グは楽しみにしておく。」

蓮太郎が室外に出てから数秒後、我堂の悲鳴(お仕置き開始の音)が聞こえてきた。

追求しようとしたが、何か飛んできそうなので止めておいた。

だが、蓮太郎はニヤついていた。何故なら、

「計画通り……!」

そう、全部計画の内だったからだ。

わざと命令を無視してさらに我堂英彦を轢き、我堂のヘイト値を上げて極刑ではなくアルデバランとプレヤデスの単独殲滅を命令させる。それが蓮太郎の作戦だった

蓮太郎は校舎から出ると、聖天子に連絡を繋いだ。

『里見さん、どうか致しましたか?』

「いや、俺の建てた計画が上手く行ってな。おそらく、明日中にはアルデバランとプレヤデスを殲滅できる。」

『本当ですか!?』

「あぁ。目くらまし用の爆弾も手にある。聖天子様はふんぞり返って俺達の方に賭けてくれればいい。」

『ふんぞり返りはしませんけど……ですが、安心しました。こちらで面倒な事をしなくてもよくなりましたし。』

「そっちが本音だろあんた……まぁ、プレヤデスとアルデバランを消し飛ばしたら連絡入れるから。」

『はい、分かりました。朗報をお待ちしてます。』

ここでどちらからともなく、通話を切る。

そして、蓮太郎はニヤニヤしながらホテルに戻る。

「あ、里見くん。どうだった?」

「アルデバランとプレヤデスの討伐を命じられた。つー訳で終戦も近いぜ。」

「って待て待て!!なんでそうなった!?」

自然にそんなことをいって冷めてしまった夕食に手を伸ばした蓮太郎だったが、この中だとまだ常識人の玉樹がツッコミを入れる。

「いや、なんつーか……わざと命令違反とかして我堂のヘイト値ガン上げして誘導した。」

「うっわぁ……」

わざと命令違反してたのかよ……とドン引きの玉樹。

まぁ、そんくらいはするかな。と色々と麻痺してる延珠、木更、夏世、ティナ、彰磨。考えるのをやめた弓月。翠はもう隠すことをやめたのかどうどうと携帯ゲーム機で遊んでいる。

「ってな訳で今日の深夜に出てくから。アジュバンドは解散って扱いになるだろうから全員好きにやってくれ。」

「サイコロステーキが幾つ出来るかしらね~」

「北斗神け……あっ、間違った。俺の我流戦闘術が火を吹くな……」

「今北○神拳つったよな、薙沢の兄貴。間違いなく言ったよな。」

「妾達は……こそこそしてるか……」

「ドーンハ○マーください。」

「ありません。」

まさに人外アジュバンド。戦場の最前線でもこのほのぼのである。

もう片桐兄妹も翠も感覚が麻痺してる証拠だった。

 

 

****

 

 

「ふわぁぁぁぁ……ねっむ……」

蓮太郎は皆が寝静まった夜中にホテルの玄関で一人、我堂の部下を待っていた。

既にアルデバランとプレヤデスの位置はPDAで確認済み。EP爆弾もポケットに突っ込んだ。今すぐに行きたかったが、荷物を渡しに来ら消えていたと報告されて逃げたとか言われるのが嫌だったため、律儀に待つことにした。

ティナから譲ってもらった眠気覚ましのカフェインを二十粒くらいボリボリと咀嚼しながら我堂の部下を待つ。

大体十分後、我堂の部下がやって来てナップザックを投げ渡した。

中を確認すると、携帯食料やサバイバルナイフ等、サバイバルをするには十分な物資が入っていた。

「健闘を祈る。」

心にもないであろう言葉を吐いた我堂の部下はそのまま去っていった。

蓮太郎はナップザックを背負って携帯食料であるレーションを味が物足りねぇ……とかいいながら器用に食べ歩きしつつアルデバランとプレヤデスの元へと向かう。

何気に5食分程入ってたので後先考えずにバクバク食べる。

川沿いの獣道のようなところを粉末オレンジジュースに微妙な顔をしながら歩いていると、横からガストレアの気配がした。

「あっ、ちょっと待て。今飲んでるから。」

ちなみにプレヤデスのいる森は目の前。ガストレアが居てもおかしくはない。

蓮太郎が声を出したためか、横の茂みから狼が素体らしいガストレアが何匹も現れ、蓮太郎を囲む。どうやら餌と認識されたらしい。

ちなみに、レーションに夢中で気付いてなかったが、ここに来るまでにこの狼のガストレアが付けたであろう歯形や食い散らした骨のが散乱していた。

「とりあえずワンパンで片付けるか。」

蓮太郎はオレンジジュースを持ったまま拳を構える。

そして、軽く両足に力を入れた瞬間、ガラッと何かが崩れる音がした。

「は?」

そしてやってくる浮遊感。そして岩の壁。

状況を分析したら、蓮太郎はかなり川に近い場所を歩いていた。しかも雨も降ってたから地面も柔らかくなってただろう。

つまりは。

「水落かがぼぼぼぼぼぼ!!」

ドボォンッ!!とかなり水量や水流が増した川に蓮太郎が落ちる。

「うげっ、飲んじまアバーッ!!」

さらに流され汚い水が胃に入る。なお、腹は壊さない模様。

しかも水中に未開封のレーションが散乱する。

ガボボボォォ(レーショォォォン)!!」

水中で動き回ってレーションを片っ端から回収する。

動きにくい水中でやっとレーションを回収し終わり、近くの陸地に移動する。

「ふぅ……オレンジジュースは無くなったがレーションだけは回収できた……」

だが、もう夜明けも近い。

一旦寝るか。と思って近くに隠れれる場所はないかと探していると……

『グルルルル……』

「わーお、団体五十名様。」

なんとさっきの狼ガストレア達が群れでお出迎え。

「……まぁ、腹ごなしには丁度いいかな?」

蓮太郎はレーションをそっと横に置いてトントン。と少しだけジャンプすると、足に力を込め、走る。

一瞬で音速を超えた蓮太郎はまず親玉らしきガストレアの前に移動する。

「フッ!」

そして普通のパンチで後ろにいたガストレア共々親玉を消し飛ばす。さらにそこから一秒もかけずに音速で移動。音速で移動しながらワンパンで全てのガストレアを葬る。

蓮太郎がレーションを置いてから大体五秒後。団体五十名様はミンチとなった。

「まぁ、腹ごなしにはなったっちゃあなったが……とりあえず眠てぇ。」

流石にここで寝ると偵察にでも来たガストレアに服を食われて(肉体は食われない)レーションも持っていかれて変態扱いされかねんので流石に安心して寝れる場所は確保したい。

レーションをナップザックに戻してどうしようかと思ってると、不意に後ろで人の気配がした。

相手の反応を待っていると、十秒ほど経ってから、相手から声をかけてきた。

「やぁ、我が友よ。」

「よっ、蛭子影胤。早速だが仮面割らせろ。」

「謹んでお断りしよう。前にも言ったが高いんだよこれ。」

「だから割りたい。」

「君も十分キチガイだよ。」

やって来たのは小比奈を連れた影胤だった。小比奈はミンチにされた狼のガストレアをツンツンつついていた。




そんな訳で現在顔面の骨矯正して治療中の病み上がり影胤さんと我等が邪悪な天使小比奈ちゃんの登場です。なお出番は今回と次回だけのもよう

そしてここの翠ちゃんは重度のゲームオタク、朝霞ちゃんは刀を持つと世紀末出身、刀を持ってなくてなおかつオフの時はオタ……?

なんか蓮太郎が人外だと原作だとマジで死んじゃう五秒前なシーンもなんか拍子抜け……

とりあえず次回はEP爆弾(伏線)の出番です。アルデバランさんとプレヤデスさんは本編退場組の控え室に移動する準備をお願いします

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