黒い銃弾とは何だったのか   作:黄金馬鹿

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今回は第三次関東大戦編終了までです。四巻の内容は詰め込めきれなかったよ……

今回は処刑用BGMを流しながらだと楽しめると思います

あと艦これのアニメと夜ノヤッターマン面白いですよね。なんか艦これは欝が少しありますし夜ノヤッターマンは悲惨過ぎますけど


トゥエンティーシックスパンチ

「なるほど。アルデバランとあの水銀のガストレア……アルデバランの暗殺か。実に君らしい。」

「そんな訳でお前らと喧嘩してる暇はない。」

「まぁ、私も小比奈も今日はただのピクニックに来たんだ。私が君と会ったのは単なる偶然だし、何より今の私は病み上がり。イマジナリーギミックを使うとどんな悪影響が出るかわからないんで私も喧嘩したくはない。もし顔の骨がまた歪んだらその日の内にゴートゥーベッドさ。」

蓮太郎と蛭子親子は焚き火を囲んでレーションを口にしていた。

小比奈は日本の、蓮太郎と影胤はアメリカのレーションを食べている。小比奈の背負っていたナップサックは隅に置かれている。

影胤は仮面を外して蓮太郎に顔を見られないように食べている。

「顔見せねぇのはなんでだ?」

「そうだね……君が後悔するからだ。」

「ならやめとく。」

「その判断は上々だ。」

影胤はそれだけ言うと無言でレーションを食べる。

この場所はあまりガストレアがこないらしく、少なくとも陽が昇るまではここにいても襲われる心配はないという。

まぁ、寝てる時に襲われても朝起きたら服がビリビリになって全裸か半裸になってるかなので危機感を感じる事なんて服が破られること位しかないのだが。

あと、小比奈の刀は何気にもう二本追加されて四本になっていた。

「ねぇ、あんた。延珠は?死んだの?」

いきなり小比奈が話しかけてきた。レーションはまだ半分ほど残ってる。

「あんたって……歳上だぞおい。」

「関係ないもん。で、延珠は?」

どうやら蓮太郎の事は一切合切興味無いらしい。

「生きてるよ。殺させるわけ無いだろ。」

「そうなんだぁ……」

小比奈が笑顔を浮かべる。

会いたいな、斬りたいなと物騒な事を言っているがこの際無視。何か言ったら物騒な事を叫び続けかねない。

「それで、暗殺はいつ行う気だい?是非とも見てみたいね。」

「ここで仮眠とったらとっととプレヤデスの心臓ぶっ潰して襲ってくるガストレアを血の霧に変えながらアルデバランに爆弾投げつけて爆発する寸前に連続普通のパンチかマジパンチで消す。」

「全く、キチガイな発想だね。嫌いじゃないよ。」

「いっそ嫌ってくれ。」

暫く無言のままレーションを食べ進め、食べ終わってから数十分経った辺りで小比奈が影胤に寄り添い、影胤の膝に頭を乗せるとそのまま眠りについた。

「懐かれてんな。」

「親だしね。」

小比奈の寝顔は普通にいるそこら辺の女の子にしか見えない。

だが彼女が起きて刀を握れば殺人鬼に変貌だ。

「……お前達、数日前に民警のペアを斬っただろ。」

「はて、そんな事あったかな?」

「とぼけるな。」

「ヒヒヒ……そうだよ。突っかかってきたからついね。」

「……お前ら、彰磨兄ぃに見つからなくてよかったな。見つかってたら殺されてたぞ。」

「彰磨?聞いたことないね。どんな男なんだい?」

「北斗神拳○承者。」

「おやおや、勝てる気がしないね。」

蓮太郎と影胤の会話はここで途切れた。

二人は睨み合うようにお互いに視線をぶつける。

「……その子、どうやって育てた。」

「どうやって、とは?」

「普通に育てりゃ殺人鬼になんてなりゃしねぇ。」

影胤はなに、簡単な事さ。と小比奈の髪の毛を撫でながら話を綴る。

「私は悪魔を生み出したくてね。殺し合いをさせたのさ。」

「悪魔……だと?」

「そうだ。私は五人の女を孕ませてちょっとした事を使って呪われた子供たちを産ませた。そして成長した頃合いで殺し合いをさせたのさ。腹違いの姉妹というのも知らせずにね。死んだ子供と小比奈を産ませた女は既に殺してある。」

その瞬間、蓮太郎が影胤の襟を掴む。小比奈が起きないように振動を与えず、だ。

「お前……自分のしたことが分かってんのか……!」

「分かっているとも。腐れ外道のキチガイがするような巫山戯た行為だとね。」

「分かってて何でやった……!」

「やってみたかったからさ。まぁ、その結果生まれたのは天使だったよ。邪悪な、ね。」

パパ、大好きと寝言を言う小比奈がなんだか可哀想にも見えてきたが、蓮太郎は何も言わずに影胤を離して寝転がった。

「明日は早い。俺はもう寝る。」

「もう二時間ほどで夜が明けるけどね。」

「……」

結局寝ましたとさ。

 

 

****

 

 

起きたのは日が天辺に届きそうな時だった。寝過ぎた……と落ち込む。

寝すぎたのに落ちそうな瞼をなんとか押し上げて朝食(昼食)のレーションを食おうと思ったが、最後のレーションが無くなってた。ついでに蛭子親子もいなかった。

ナップサックには特に異常がないため、おそらく蛭子親子がレーションを食ったのだろう。周りを見るとレーションの空箱があった。

「くそっ……」

ナップサックを漁ったらあったスナック菓子を貪りながら水を飲む。

EP爆弾があるのを確認して蓮太郎はもう用のなくなったナップサックを放置してアルデバランの元へと行こうとする。

「おやおや、別れの挨拶もなしかい?」

「……いたのか。」

が、また後ろから影胤に声をかけられた。

振り向かずに会話を続ける。

「小比奈がお腹すいたと言ってたのでね。レーションは頂いた。」

「……構わねぇよ。食わなくたってアルデバランとプレヤデスは殺せる。」

「だが、それだとなんだか申し訳ないのでね。ここにカレーがあるが、食べるかね?」

そこで振り向くと、影胤の手にはインスタントのカレーと飯盒があった。

おそらく、小比奈のナップサックに入っていたのだろう。

ここで食わせてもらえば貸しを作ることになると一瞬考えたが、よく考えれば小比奈にレーションを食われているのでイーブンだ。

別に毒があったところで即死級の毒なら多少胃に違和感は出てくるが、問題はない。

「……貰うよ。」

「これで貸し借りなしだ。」

「知ってんよ。」

数十分後、出来上がったカレーを食べ終えた蓮太郎は立ち上がって歩き出した。

「何処に?」

「俺を待ってるクソみてぇに可愛いガストレアちゃん達に拳のプレゼントをしてくる。」

「なら私達も行こう。」

「え~、もう帰りたいよ~」

「小比奈、私達はアルデバランとプレヤデスの倒される歴史的瞬間を見れるんだ。この程度で根を上げちゃいけないよ。」

「む~……はーい。」

なんか勝手についてくる事になってるし。と蓮太郎は額に手を当てる。

が、何を言っても彼等は頑固な汚れの如くついて来るだろう。

蓮太郎は行くぞてめぇら。と声をかけて歩き出した。蓮太郎のナップサックは投げ渡された。ポイ捨てはいけないと言われて。

まだ霧のかかる獣道を歩き、時々PDAで再び場所を確認しつつ先にプレヤデスの方へと向かう。

プレヤデスは単純に頭を消し飛ばして終わりだ。

影胤が足手まといになり慎重に進むことになったせいか、ガストレアの声が聞こえたのは夕方に近い時だった。

別に見つかっても蓮太郎がいるし、小比奈もいるので安心なのだが、蓮太郎達が見つかったせいでアルデバランが動いてしまったら暗殺に失敗する可能性もある。

「パパ、近いよ。」

「そうだね。ガストレアの声が聞こえる。」

「知ってる。影胤、斥力フィールドはどうだ?」

「数回、かな。君から貰ったダメージが大きすぎてね。」

「そのまま死んじまえ。」

数分歩くと、森の中に赤色の光を見つけた。

さらに歩くと崖になっていたが、崖の下に赤色の光を大量に見つけた。ガストレアの軍勢だ。

その軍勢の中にアルデバランとは違う明らかにステージⅣと見れるガストレアを発見した。プレヤデスだ。

「どうするんだい?」

「正面突破。襲ってくるガストレアは皆殺しだ。」

「なら私達はここで待っていよう。」

「そうかい。連れないな。」

「イマジナリーギミックが使えたら同行するんだがね。」

小比奈はどうする?と影胤が聞くと、パパと一緒にいるという答えが帰ってきた。

蓮太郎は物音立てんなよ。と注意を促すと、走った。

(※ここからはお好きな処刑用BGMを聞きながらご覧下さい。)

パァンッ!!と空気の爆ぜる音。力を既に開放している小比奈の目ですら、見えなかった。残像が幾つも残っていた。

「普通のパンチ!」

次の瞬間、ドゴォッ!!とまるで重機が壁に時速何十キロで突っ込んだような轟音。そして、ベチャァッ!!と液体が地面に当たる音。

プレヤデスは蓮太郎のワンパンで脳漿と血と肉と骨を撒き散らして倒れた。

プレヤデスからしたら気が付いたら死んでいたという状態だろう。しかも、普通のパンチでも威力は余剰だったのか、プレヤデスの体は半分が血肉と化していた。

「さぁて……ガストレア共……全滅だ。」

次の瞬間、襲ってきてもないガストレアへと人外が牙を向いた。プレヤデスの死骸を蹴り飛ばしてプレヤデスを囲っていたガストレアの一部をプレヤデスの死骸で押し潰す。そこでようやく敵がいると分かったのか、ガストレア達が咆哮を上げる。

「うるせぇんだよ!!」

そして蓮太郎は真後ろのガストレアへと全力の指弾。

ズガァンッ!!とまるで戦車砲の砲撃音のような音をあげて飛んだ空気の塊はガストレアをミンチへと変え、影胤達のいる崖の下の壁に何十メートルという深い穴を開けた。小比奈がパパ、怖い。と言った。もっともだ。

そして蓮太郎は右のガストレアの軍団へとターゲットを変える。

「必殺『マジシリーズ』、マジちゃぶ台がえし!!」

蓮太郎は地面に手を突っ込み、地面を一気に持ち上げ、上へ投げる。

地鳴りとともに地面が宙に浮き、ガストレア達が困惑する。

「さらにパンチ!!」

そして蓮太郎の拳が唸る。

シャドーボクシングのように空中で振るわれた右ストレート。そこから衝撃波が発生し、持ち上げられた地面ごとガストレア達を衝撃波で文字通り消滅させる。

小比奈がうっわぁ……と年頃のドン引き。

そして蓮太郎は最後に残った(プレヤデスの死体があった位置から)左側のガストレアをロックオン。

今度は小細工なし。ソニックブームを起こしてガストレアへと肉薄。パンチ。

ドゴォンッ!!と炸裂音。拳を当てられたガストレアは余りの威力に破裂。さらにその衝撃はガストレアを破裂させるだけに留まらず、その後ろに居たガストレアを五体破裂させる。

拳を振るったあとの蓮太郎へカマキリ型のガストレアが接近し、その鎌を振るう。だが、蓮太郎はそれを回し蹴りで蹴り折る。蓮太郎は勿論拳だけでなく蹴りだって強い。

バキャッ!!と折られた鎌は横へ吹っ飛んでいき、進行方向にいたガストレアの脳天を串刺しにする。

そして蹴りのモーションをすぐに解いてワンパン。カマキリ型のガストレアは破裂した。

だが、その瞬間地面が崩れる。

崩れた地面から現れたのはミミズに口がついたようなガストレア。全長はは見えないが、正面から見ただけならステージⅢと思えた。

普通なら死を覚悟する瞬間だが、蓮太郎は笑う。

「オラァッ!!」

真下へと拳一閃。衝撃波が巻き起こり、ミミズ型ガストレアを粉砕。蓮太郎はその衝撃を殺さずに受け、飛ぶ。

飛んだ蓮太郎はそのまま空中で体勢を変え、時に空を蹴って落ちる場所を調整。そして調整が終わったところで空中を蹴り、衝撃で地面へ一直線。

一体のガストレアへと流星となった蓮太郎が襲来。ガストレアを殴り、その勢いのまま地面を殴る。

超巨大なクレーターが出来上がり、ガストレア達の体が浮く。

「連続普通のパンチ!!」

そこで蓮太郎が連続普通のパンチを使う。

視認不可の速度で振るわれたその拳は全てのガストレアを一体一体粉砕。

クレーターが出来、ガストレアの体が浮き、着地するまでの僅か数秒のあいだにガストレアは全て肉塊と化した。

ベチャッ!!と音を立てて落ちる肉塊(ガストレアだった物)

プレヤデスの周りにいたガストレアは大体300。蓮太郎が殲滅に要した時間は僅か1分。

先日の戦いでガストレアは自衛隊の隊員をガストレア化して仲間を増やしたため、残ったガストレアはプラマイゼロの2000だった。だが、この1分の間に1700に変化した。

その時、蓮太郎が原因ではない地鳴りが起こる。

「なんだ!?」

「里見くん、どうやらアルデバランが動いたらしい。君が殲滅してる間に逃げるように移動し始めたよ。」

影胤が移動してきて蓮太郎に説明。影胤が自分の物らしいPDAを出し、蓮太郎に見せると、赤色の光点が東京エリアへと向かっていた。

「……行ってくる。」

「ならこれを持っていくといい。餞別だ。」

影胤はPDAをそのまま渡した。

「私達は後で民警側で参戦しよう。」

「なに?」

「君を見てるとどうも血が騒いでね。久々にガストレアを大虐殺しようと思っただけさ。」

「顔は大丈夫なのか?」

「危なくなったら勝手に抜けさせてもらおう。」

「ってか、道中は大丈夫なのか?」

「掃除は任せたよ。」

「くそが。俺はル○バか何かかよ。」

影胤はほら、行くといい、○ンバくんと蓮太郎の背中を押した。

蓮太郎は援護感謝するぜご主人様。と言うとアルデバランへと走り出す。小比奈はずっと影胤の後ろで人ではないナニかを見る目で蓮太郎を見ていた。

蓮太郎が数十秒、PDAを見ながら走っていると、巨大なガストレアを発見した。アルデバランだ。

蓮太郎は更にスピードを上げる。道中いたガストレアは轢き逃げした。挽肉になった。

そして、アルデバランがEP爆弾を投げて届く距離に見えるようになった。

蓮太郎はニヤニヤしながらナップサックを一旦置いてEP爆弾を捻る。タイマーに00:10と表示される。

「くたばって俺のボーナスになりやがれェェェェェェェ!!」

ぽーい。とEP爆弾が投げられる。

捻ってからきっかり十秒後。ピカッ!!とEP爆弾がアルデバランの真上で光り、炸裂。

爆炎が舞い上がり、アルデバランを包み込む。蓮太郎は爆炎が消えぬ内に炎の中に音速で突っ込む。

アルデバランは炎の中で焼かれながらも再生していた。

「月まで飛んでいけ!必殺『マジシリーズ』!!」

炎の中で蓮太郎は叫び、アルデバランの真横につき、拳を握る。

「マジパンチッッッッ!!」

爆発音の中で更なる爆発音。

地面へではなく、空へ向かって放たれた拳はアルデバランを文字通り消滅させ、衝撃波が雲を打ち抜き、進路にあった人工衛星だったものを打ち抜き、デブリを打ち抜き、小惑星を破壊し、宇宙のどこかで止まった。

蓮太郎は久しぶりに本気で拳を放ってスッキリした気分になった後、音速でその場を後にした。爆発を遠くで確認すると、きのこ雲が上がっていた。炎は無くなっていたので、本当に爆煙を上げるためだけに作られたのだろう。爆炎があったのは数秒程度だ。

蓮太郎はすぐにナップサックを回収し、聖天子へと連絡を付ける。

『里見さん!成功したんですね!?』

どうやらきのこ雲を見ていたらしい聖天子が興奮気味に蓮太郎に問いかけた。話しかける前に話しかけられた。

「あぁ。今アルデバランとプレヤデスの暗殺に成功した。空爆も出来るしガストレアも司令塔を失って倒しやすくなる。」

『流石です里見さん!すぐにアジュバンドに戻って戦線に戻ってください!我堂団長には里見さんにより運用された司馬重工の新兵器によりアルデバランとプレヤデスの殲滅に成功したと言っておきます!』

「分かった。」

通話を切って連絡用端末をナップサックに突っ込む。

ナップサックを背負い、蓮太郎は走り出した。

 

 

****

 

 

民警達は困惑していた。夜になったらガストレアはまた攻めてくるのではないかと震え恐れていた(一部を除いた)民警達は突如響いた爆音に驚いていた。

アルデバランが居るらしい方向から上がった爆発はまるで核爆弾のようにきのこ雲を上げている。一部の爆煙が何故か吹っ飛んだが、そんなもの誰も気にしなかった。

あれは何だ。新手のガストレアか。ゆ゛る゛さ゛ん゛!!等々、民警の反応は様々だった。

我堂も困惑していた。まさか里見蓮太郎があれを?と思うのも束の間、我堂の通信端末に連絡が入った。なんと聖天子からだった。

通信には慎重に出た。

『我堂団長、里見蓮太郎さんが単独でアルデバランとプレヤデスを司馬重工の……司馬重工のッ、兵器での殲滅に成功しました。』

司馬重工という単語をヤケに強調してきたので若干引いたが、兵器に頼ったとはいえ本当に倒してくるとは思わなかった我堂は素直に驚いていた。

聖天子に礼を言って通信を切った我堂は未だ困惑しているアジュバンド達へと声をかけることにした。

「聞け!憎きアルデバランとプレヤデスは先程の爆発により倒れた!」

そんな我堂の声にさらに民警達の困惑の声が強まる。が、我堂がそれを声で制する。

「勝機は我等にあり!指揮官を失ったガストレアは最早案山子も同然!この一日でこの戦いを終わらせようぞ!!」

しばしの静寂。そして歓声。何故か少しだけ聞こえる怒声。

勝てる。我堂は確信した。

この勝負は人類の勝ちだ。

 

 

****

 

 

「あれ、里見くんのせいよね。」

「……れんたろー、爆発も起こせたんだなぁ。」

「延珠さん、遠い目しないでください。」

一方、蓮太郎のアジュバンドは延珠が遠い目で爆発を見ていた。

「じゃあそろそろ帰ってくるかしら?」

「あそこからここまでは十秒ってところか。」

人外が蓮太郎の帰りを待つ。が、噂をすれば影と言うべきか。ガサガサと横の茂みが動いた。

「おーい、帰ったぞ~。」

蓮太郎の声だった。

「あ、帰ったのね里見く……ひゃっ!?」

茂みから蓮太郎が出てきたのだが、木更はすぐに自分の目を隠した。

「どうしたのだ?木更……うぉぅ……」

対して延珠はマジマジと。

「ど、どうしたんだ?」

ちなみに弓月、翠、夏世、ティナは彰磨と玉樹に目を隠されてる。

「なぁ、里見……なんでお前全裸なんだ?」

「えっ。」

蓮太郎はそんな彰磨の言葉を疑問に思いつつ、自分の体を見る。

傷はないが確かに全裸だった。

何故かと思ったが、すぐに原因は分かった。

爆炎に突っ込んだからだ。炎に突っ込めば蓮太郎は無事でも服は無事じゃないだろう。

とりあえずそこらへんの葉っぱで隠さなきゃいけないところは隠した。

「さて……これからどうする?」

「まずは服着てきなさいこの露出狂ッッッ!!」

木更は全力で蓮太郎を斬ってホテルの方向へ吹っ飛ばした。

延珠は顔を赤くしていたが満更でも無い顔をしていた。

蓮太郎は一分後にスペアの服を着て戻ってきた。

「よし、もうすぐガストレア共が来るから……っと。もう来てるじゃねぇか。」

蓮太郎の視線の先二キロ。ガストレアを捉えた。

「ちょっと我堂に挨拶してくる。」

だが、まだ数分はあるので我堂の元へ行くことにした。

スタコラと我堂の元へ行くと、朝霞が幽霊を見るような目で見てきた。

「よっす、我堂。」

「里見リーダーか。よくもやってくれた。」

「ってな訳でケ○タッキーとバー○ーキング各十人前。」

「分かった。戦いが終わったら天童民間警備会社に私の名義で配達させよう。着払いで。」

「ふざけんな。」

「冗談だ。資金はこちらが出そう。金は腐るほどあるのでな。」

ハッハッハと笑う我堂にイラッときたが抑える。

「里見リーダー。君は私の手には負えないと判断させてもらった。」

「なに?どういう事だ?」

「つまり、好きにやれという事だ。アジュバンドの仲間共々な。」

「……話が分かるじゃねぇか。」

「君の力の上限がわからん以上、無理に従わせるより遊撃させた方が役に立つ。」

「んじゃ、さっそくあっちにいるガストレアに突っ込んでくるから。なるべく死者は出さないようにしてくれよ。」

「そこは皆の力によるな。」

蓮太郎はスタコラと仲間の元に走り去って行った。

朝霞はそれを見届けた後我堂に話しかけた。

「……よろしかったので?」

「……胃が痛くなるからな。責任を極力受けない為には好きにさせた方がいい。」

「……なんかすみません。」

「胃が悪くなったのは私の精神の弱さだ。朝霞のせいではない。」

「完全に私のせいですね本当にありがとうございました。」

我堂と朝霞が前方に視線を戻すと、ガストレアが吹き飛んでいるのが見えた。

二人は黙ってガストレアが接近するのを待つことにした。

 

 

****

 

 

「ってな訳で遊撃許可とったから俺は突っ込んでくるけどみんなはどうする?」

「突撃ね。」

「突撃だな。」

数秒の間もなく返してくる木更と彰磨。

「いや、俺っちとこいつらはそこまで人外じゃねぇから三人で突っ込んできてくれ。」

玉樹の言葉に全力で首を縦に振るイニシエーター五人組。

『なら行ってくる。』

人外三人はガストレアの方へと向き直ると、走り出した。

木更と彰磨は全力で、蓮太郎は二人に合わせて走る。

人外が走り出したのを玉樹とイニシエーターズが把握したその瞬間、爆発音にも似た衝撃と共にガストレアが空を舞った。

一部は空中で破裂し、一部はサイコロステーキになり、一部は粉々になった。

「オラオラオラァ!!」

「走れ雪影ひゃっほーーーーい!!」

「焔火扇百烈拳!!」

人外共の暴走が始まった。

蓮太郎がひたすらにガストレアを殴りまくり、テンションが上がった木更がティナでも見えない速度で刀を振るいガストレアを片っ端からサイコロステーキに変え、彰磨が焔火扇をこれまた残像で腕が何十本もあるように見える位の速さで放つ。もちろん当たったら内側から血を撒き散らして爆発。

まさに世紀末。ガストレアはそんな人外共に恐怖を感じたのか三人の人外を避けて民警達へと走ってくる。だが、人外共はそれを後ろから追ってくる。まさに地獄。

大体200体が肉塊に変わったところでガストレアはやっと民警達と接触した。

「よっしゃ!俺っちについてこぶべらぁっ!!」

「あっ!兄貴がガストレアに吹っ飛ばされた!」

『この人でなし!!』

もちろん無傷です。

イニシエーター達はそんな玉樹を放ったらかしにしてガストレアとの戦闘を始める。

ガストレアが(人外共のせいで)降ってきたり吹っ飛んできたりする危険な戦場だがそれを気にせずにガストレアの殲滅にかかる。

「戦術なしで突っ込んでくるのも面倒ですね!」

「全くだ!」

「あーもう、体液で汚れる……」

「後衛楽ですわー。」

「夏世ちん。ほれ、死骸。」

「ぎゃぁぁっ!?何すんですか!汚れたじゃないですか!」

「夏世ちんざまぁ。」

『なら体液がかかる前に離れればいい。』

「うっさいスピード特化組!」

阿鼻叫喚の戦場の中で人外共に鍛えられたイニシエーター達はそんな漫才に近い事をしながらも着々とガストレアを葬っていく。

そして人外共は。

「マジちゃぶ台がえし!!」

「ナイス里見くん!天童式抜刀術三の型八番、雲嶺毘却雄星!!」

「轆轤鹿伏兎!!からの隠禅・上下花迷子(しょうかはなめいし)!!」

マジちゃぶ台がえしで打ち上げられたガストレアを木更が見てる者全員が斬られたと錯覚する程の斬撃でガストレアを切り刻み、彰磨が近くの岩を轆轤鹿伏兎で打ち上げてから飛び上がり、隠禅・上下花迷子で岩を蹴り飛ばし、ガストレア共をミンチにする。

「連続普通のパンチ!」

そして蓮太郎の連続普通のパンチが地上のガストレアを100体ほど殲滅する。

「もう一度、雲嶺毘却雄星!」

「ならば、雲嶺毘湖鯉鮒!」

そして木更の攻撃でガストレアが切り刻まれ、さらに彰磨のアッパーカットで吹っ飛ばされたガストレアが他のガストレアを巻き込んで吹っ飛び、破裂。さらにその吹っ飛んでいたガストレアに触れたガストレアも破裂。

『ハハハハハハハハハ!!』

悪役のように笑う人外三人組。だが、止めれる者はいない。

ちなみに、地形は地図の書き換えが必要なくらいに破壊された。

そしてイニシエーターズは。

「全部燃えてしまえばいいんですよアハハハハハハハハハハハ!!」

「ちょっ、ティナやん、その何処から取り出したか分かんない火炎放射機で片っ端から放火するのやめ熱っ!?掠った!今掠ったよ!!」

「延珠!!やり合おうよ!!」

「なんでここに小比奈がいるんだ!?あぶっ!?ガストレアと小比奈とか無理ゲーだから!!って言うかガストレアを斬れ!ガストレアを!妾も胃が痛くなってきたから勘弁してくれ!!」

「なんか三人抜けて私達ピンチ!翠さん助けて!!」

「神経毒貰っちゃいました。てへっ。」

「貰っちゃいましたてへっじゃないでしょぉぉぉぉぉ!?死ぬ!私と翠さん死んじゃうから!!」

「そこに俺っち参じょごっはぁ!?」

「つっかえませんねあの人外!!」

最早世紀末だった。

ティナは何処から持ってきたのか分からないグラサンかけて火炎放射機を振り回して弓月はそれに巻き込まれかけ、延珠は颯爽登場した小比奈に斬りかかられて応戦、残りの二人は夏世がショットガンでガストレアを殴りながらも奮戦するも前衛の翠が神経毒を貰うというポカをやらかし絶賛ピンチ。ちなみに玉樹は翠。

だがその時。

「やれやれ、仕方が無い。エンドレススクリーム!!」

夏世に迫っていたガストレアが一瞬で切り裂かれた。

「こ、この技は!?まさかあいつが生きているのか!?」

「分かり易い振りをありがとう。確か……千寿夏世ちゃんだったかな?」

「貴様は……蛭子影胤!?バカな!ヤツは池ポチャした筈!」

「もういいからね?」

「アッハイ。」

そんな訳であまりの惨状を見かねて影胤が急遽出てきた。

「そんなのいいからヘルプですー!近い近い近い!!」

一方、翠のすぐ前一メートルにはガストレアが接近してきていた。動けないので何げにピンチである。

「ホームレス・スリーパー!」

だが、影胤が扇状に広がる斥力フィールドでガストレアを切り払う。

「た、助かった……」

「大丈夫か、翠!」

ようやくそこで彰磨が駆け付けた。

「彰磨さん!」

「ふむ……神経毒か……ホワタァ!」

翠の首筋を彰磨が触ったかと思うと、いきなり彰磨が翠の体を指で突いた。

「にゃんっ!?」

「これで神経毒はどうにかなっている筈だ。」

「え、そんな訳……う、動く……!?」

(これが噂の北斗○拳か……)

彰磨は天童式戦闘術(北○神拳)で翠の体を治すと周りにいるガストレアの掃除にかかった。

「天童有情破顔拳!!ハァン!!」

いきなり座ったかと思うと手からビームみたいなのを出してガストレアを倒したり、

「刹活孔!!」

地中に気みたいな何かを送り込んで敵を倒したり、

「天翔百烈拳!!」

飛び上がって何連発も拳を繰り出したりともう滅茶苦茶である。

「相変わらず人外やってるなぁ……」

「あ、蛭子影胤!こいつ何とかしろ娘だろ!!」

翠が手遅れな人を見るような目で彰磨を見てると、影胤の存在に気づいたらしい延珠(絶賛真剣白刃取り中)が小比奈をどうにかしろと言ってきた。

「はぁ……こら、小比奈。今日は延珠ちゃんとは戦わないと……」

その時、影胤の背後から猫のガストレアが影胤に接近し、影胤をくわえて走りだした。

「あっ。」

「パパ!?どこ行くの~!?」

連れ去られていく影胤を追って小比奈が走り出した。

延珠は何故か小比奈が手を離して置いていったバラニウムの小太刀を一目見ると、ニヤッと笑ってからブンブン振ってガストレアに向けて走り出した。どうやら借りパクする事にしたらしい。

「ふう、スッキリしました……あれ、弓月さん、どうしたんですか?ヤケに焦げ臭いですし。」

「ティナやんのせいだよ……」

丁度その頃、ティナが世紀末な世界から戻ってきた。どうやら周りを燃やし尽くすことに夢中だったようだ。

「あ、夏世さん、ショットガン一丁貸してください。」

「いいですよ。弾は?」

「貸してください。」

夏世がティナに予備として持ってきていた二丁目のショットガンを予備のポーチと共に渡す。

ティナは火炎放射機を背中に戻してショットガンを構えると一発試しに発砲。感触を確かめてからガストレアの軍勢へと走り出す。が、

「ひゃっほーーーー!!」

何か黒い物が目の前を通り過ぎた。前髪が何本かハラハラと舞った。

「逆刃刀なんて情けよ!ポン刀が一番よ!!」

目の前を通り過ぎたのは木更だった。

木更は高速移動しながら見えない速度で刀を振るい続けている。彼女は自重という言葉を忘れて体力という概念を何処かに放り捨ててきたらしい。

流石のティナもこれにはドン引き。

そして蓮太郎は。

「お前達に足りないものは、それは、情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ!そしてなによりもォォッ!!パワーが足りないッ!!」

こちらも色んな概念を放り捨てて延珠と夏世に近付くガストレアを片っ端から排除しながら高速移動している。最早ガストレアの数は目視で100を切っている。

「な、なぁ、蓮太郎?そろそろ自重しないと聖天子様の仕事が……」

「知ったことかヒャッハァァァァァァァ!!」

延珠の言葉を無視して殲滅を続ける蓮太郎。

「……チッ。」

「!?」

「夏世、ショットガン。」

「ど、どうぞ……」

「フラグ弾。」

「は、はい……」

急に豹変した延珠が夏世からショットガンとフラグ弾の入ったマガジンをひったくるように借りると、フラグ弾を装填し蓮太郎に向ける。

そして躊躇なくぶっぱなす。

「熱っ!?熱い熱い熱い!!」

フラグ弾に当たってやっと止まった蓮太郎を見て延珠はショットガンを放り投げて歩いて近づく。

「あ、あの~……延珠さん?」

「もうそろそろ自重しよう、な?」

「アッハイ……」

(うっわ~……やぁさぐれてる~……)

夏世は投げ捨てられたショットガンを回収しながら思った。

怒らせると一番怖いのは延珠だと。

 

 

****

 

 

それから十分後。自重した人外と民警達によりガストレアは一匹残らず殲滅された。

「この戦、我等の勝ちだ!!」

「今日は祭りですよひゃっほーい!!」

朝霞と共にバラニウムの刀を突き上げ、勝利の宣言をする我堂。それと全く同時に生き残った民警達が地面が揺るがんばかりの歓声を上げる。

散っていった民警は今回参加した民警の約40%。半分も死ななかった。正に快勝であった。

誰も彼もが死を覚悟した今回の戦いは予想をいい方向で裏切る結果で終わったのだ。歴史的快挙とも言える。

だが、地図は書き換えねばならない。しかしそんな事は知ったことじゃないのか民警達は自分達の拠点に戻って酒やら何やらを持ってきて再び集まって宴会を始めた。

無礼講の食えや飲めやのどんちゃん騒ぎ。

そんなお祭りの中、蓮太郎達アジュバンドは河川敷に座っていた。

「いや~……ガストレアは強敵でしたね。」

「霧が出てきましたね……」

「ま、そんな事はさておきだ。皆あっちに行かなくてよかったのか?」

大人二人は酒を飲み、他は皆ノンアルコールかジュースを飲んでいる。

「あのムードは苦手でな。里見は分かってるだろ?」

「そうだったな。玉樹は?お前は好きそうだが。」

「俺っちは姐さんの居る所にいるぜ。」

「やだ、ストーカー?」

「愛の尾行者とも言ってください……なんちゃってな。」

「木更さんは……聞くまでもないか。」

「えぇ。誰があんなむさ苦しいところに行くモノですか。」

グイッと半分ほど残っていたノンアルコールを空にした木更は次の缶を手にする。

「おい、木更さん。それ酒。」

「バレなきゃいいのよバレなきゃ。」

木更がカシュッと開けたビールを飲もうとした時、後ろから伸びた手がそのビールを奪い取った。

「あっ。」

「子供が飲むものではないぞ。」

そう言って後ろから来た人物はビールを飲み始めた。

「げっ、我堂。」

木更からビールを奪い取ったのは車椅子でやってきた我堂だった。

「ふむ……なかなかにいいビールではないか。」

「こういう時こそこういうのを飲むもんだろ?我堂のオッサン。」

「その通りだ。」

我堂は隣にいる朝霞の手を借りて河川敷に座り、再びビールを傾ける。

「一体どういう風の吹き回しだ?我堂。」

「なに、私もあの空気には耐えられなかっただけだ。里見君。」

「そうかい。」

蓮太郎はぶっきらぼうに缶ジュースを傾けながら答えた。

「……やれやれ、嫌われたものだな。」

「いや、アンタにゃ感謝してるさ。初対面だとこうなるだけだ。」

「私に感謝だと?君を死地に送り込んだのにか?」

「こまけぇことは言いたくないが、アルデバランとプレヤデスをぶっ殺すために単独行動をする必要があったからな。」

我堂は色々と言いたいことがある顔をしていたが、ビールを一口飲み、感謝されるならその気持ちは受け取っておこう。と答えた。

朝霞はイニシエーター達と混ざって色々と話している。

「我堂。あなたは足をやられたようだが、これからはどうするんだ?もう民警をやってはいけないだろう。」

「そうだな……隠居でもするとしよう。そうなると朝霞がIISOに引き取られてしまうが……どうしようもできん。」

我堂はイニシエーター五人と混ざって楽しそうに話している朝霞を見て溜め息をついた。

「……なら俺が聖天子様に交渉してきてやんよ。」

「なに?聖天子様にだと?」

「あそこに金髪の腹黒そうなのがいるだろ?あいつも本来はIISOに身柄を拘束される立場だけど、ある一件で交渉して俺のとこに居候してるんだよ。だからアンタのとこのイニシエーターも何とかなる。」

「いいのか?礼は出来んぞ。」

「俺に単独行動をさせてくれた礼だ。遠慮するな。」

「そうか。ならば遠慮はしん。ついでに英彦のイニシエーターも何とかしてくれ。奴はあの子に溺愛していてな……」

「はいはい。任された任された。」

あら、ロリっ子以外の人に親切なんて珍しいわね~と茶化す木更にデコピンを一発入れながら、蓮太郎は缶ジュースを飲み干した。

今まで色々とあったけどやっと一息つけるなと蓮太郎は呟くと、立ち上がった。

「つまみ作ってくるがいるか?」

「おっ、気が利くじゃねぇかボーイ。大盛りで頼むぜ。」

「アイアイサー。」

蓮太郎はホテルへと向けて何を作って驚かせてやろうかと考えながら走った。

 

 

****

 

 

「えぇ、そうよ。やっと一息つけるのよ、里見くん。アイツを殺せばね……」




と、言うわけで一万四千文字もある今回の話でした。次回は木更さんのあの話です。原作との相違点は蓮太郎がモノリス崩壊の原因を知らないという点ですかね

これからの内容は次回があの話で恐らくかなり短め、その次と次辺りで休憩の日常回を挟んでいよいよ5巻6巻の内容に入ります。人外蓮太郎はハミングバード、ソードテール、ダークストーカー相手にどんな立ち回りをするのか……こうご期待!

あと、3月に今まで単行本が出ていなかったブラック・ブレットインタールードファッキューの単行本が発売されます。未だに小説でしか出番のなかった火垂ちゃんも出てるらしいので自分は買います。発売日に買います。雨の日でも買います

では、皆さん。自分が艦これのイベントにのめり込まなければ近々またお会いしましょう

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