とりあえず、蓮太郎達は五、六巻の間はこんなことしてたよって感じの話です
あれから数日が過ぎた。
彰磨は結局帰ってこず、翠は蓮太郎の部屋に居候することになった。
翠は最初悲しんでいたが、彰磨さんなら帰ってくるからここで待ってます。と笑顔で言った。いい子だった。
何故か彰磨のブラックカードを翠が所持していたが、それは翠の物と言うことにして食費等は蓮太郎がだし、翠の私物等は全部翠がブラックカードを使うことになった。里見家の食費は一人分増えたが、第三次関東大戦の特別報酬(聖天子によりさらに上乗せ)があるので特に痛手にはならなかった。
そして木更は。
「里見く~ん、ご飯奢って~。」
「あんたはいい加減家に飯食いに来るの止めろ!第三次関東大戦の特別報酬がまだ残ってんだろうが!」
「えぇ~、だってあんまり使いたくないんだもん。」
「だから家に来んなよ社長……!」
「だってブラックカードあるんでしょ?」
「あれは彰磨兄ぃのだ!足りない食費を補う以外に使う気はない!!」
「ぶーぶー。」
あの日以降、あの残虐な木更になることは無かった。が、延珠と夏世と翠に十分なトラウマを植え付けたらしく、三日は木更を怖がっていた。木更は泣いた。
夏世もあの日以来テンションが無理無理にも上げられないらしく、初めて会った時と同じ性格に戻っている。代わりにストレス性胃痛が発生した。
「天童社長……恥ずかしくないんですか?」
「なんかティナちゃんの言葉がグサッと……」
「そんなつもりは無いんですけど……お兄さんも天童社長より少し多く貰った程度の報酬で切り盛りしてるので……流石に毎日来るのはどうかと思いますよ?」
「うぅ……今日だけ!今日だけだから!」
木更が蓮太郎に頭を下げる。
本当に今日だけだからな。と言うと、蓮太郎はもう一人分を追加で作り始めた。今日はまだ肉がまともに食べれないイニシエーター達のために野菜炒めだ。
「計画通り……!」
「やっぱ無しで。」
「すいません調子に乗りました。」
そんなやり取りからちょっと離れたところでは……
「あ、そこですそこ。そこで天誅レッドの追加コスチュームをゲット出来るんですよ。」
「えっ、ここはもう調べたぞ?」
「私もここは何度か調べましたけど……」
「そこに天誅ブラックをリーダーにして武器は天誅ピンクの物で行ってみてください。あと、レッドはパーティから外してください。」
「ブラックを?しかもピンクの武器はステータス的にも合わないぞ……ってほんとにゲットできた!?」
「これ、かなりの隠し要素で天誅ブラックと天誅レッドの好感度が一定以上で尚且つ、天誅ピンクの武器をブラックが装備してさらに天誅レッドがパーティにいない状態でないとゲットできないんです。ほら、アニメでもレッド不在の時にブラックがピンクと共に戦ってたじゃないですか。なので、ここはピンクがブラックの武器を持っててもいいんですよ。」
「よく分かりましたね……こんな要素。アニメをよく見て場所を特定しないとこんなの発見できませんよ……しかも武器を持たせるってのも……」
「ゲーマーですから!あ、あと闇堕ちピンクも使えるんですよ、このゲーム。ほら。」
「えっ!?」
「ほんとにパーティにいる……」
「えっとこれはですね……」
一方、延珠達はつい先日格ゲーが出たばかりなのに発売された天誅ガールズのRPGで各々のデータを見せ合っている。
あまりゲームをやらない延珠と夏世は結構試行錯誤してストーリーをクリアしたのだが、翠は一日でパパッとストーリーをクリアした後、隠し要素の発掘に力を注いでいた。ティナはまだストーリーをクリアできていない。ゆっくりとやりたいらしい。
その中でも翠は延珠と夏世とは比べ物にならないほどゲームが進んでいて、隠し要素もネットの情報無しで幾つもの隠し要素を発掘している。と、言うか最早翠がネットの攻略サイトに書き込んでいる程だった。
「お~い、ゲームもその辺にして飯にすんぞ~。」
出来上がって盛りつけも終わり、ティナに配膳を手伝ってもらいながら三人に声をかける。既に木更は待機済みだ。
ゲームのセーブをして電源を切った三人が座った所で、
「いただきます!」
『いただきます!!』
食事開始。
木更がいるせいか分からないが、何時もよりもかなりのハイペースでちゃぶ台の上の飯が減っていく。だが、蓮太郎はそれを見て満足したような顔をすると、全部食べられない内にと野菜炒めを食べる。
「はぁ~……やっぱ美味しいわ~、里見くんのご飯。」
「木更さん、料理作れないもんな。」
「失礼ね、作れるわよ。」
「ただしポイズンクッキングだな。」
「延珠ちゃん!?」
「まぁ、私達もまともに作れないので何も言えませんが。」
延珠と木更はポイズンクッキング、夏世はサバイバル料理と言う名の男の料理、ティナはピザマシーンなのだが、翠は料理自体をしたことが無かった。
彰磨が健康を考えて一食一食作っていたらしい。彰磨に翠と会った時のことを聞いたことがあったが、翠はガリッガリに痩せていたという。
「木更さん、そういえば最近、仕事は来てないのか?」
「えぇ。全くと言っていいほど。里見くんがやり過ぎたせいで東京エリアの周りのガストレアの殆どが消滅したらしいから暫くは安心じゃないかしら?」
そして第三次関東大戦の後の東京エリアは平和そのものだった。
人外がやり過ぎたせいで東京エリアの周りに存在し、アルデバランの軍勢に入ったガストレア達はその殆どが消滅。現在、モノリスから三キロ程外に出た程度ならガストレアに会うことはないとも言われるくらいだ。
そのお陰かモノリス建造は順調。残り数日で新32号モノリスは完成すると言われている。
「まぁ、血なまぐさい話が入ってこなくていいな。」
「私達の収入源潰れてるけどね……」
とほほ。と言う木更だが、収入がなくても一人でなら数年は過ごせるほどの金があるのを忘れてはいけない。
「……そういえば。」
ふと、蓮太郎はとある事を思い出した。
「どうかしたの?」
「いや、小学校の頃に友達だったやつが今民警やってるらしいんだけど、そいつは無事かなと。」
「里見くんの知り合いなら大丈夫でしょ。」
「いや、あいつは人外じゃないから。最初民警になったって聞いた時はビックリしたさ。あいつは呪われた子供たちの事で色々とあったからな。」
第三次関東大戦中には見かけなかったので、少し心配しつつも箸を進める。
途中、木更が蓮太郎のおかずを盗もうとしてきたが全て防いで夕食を食べ終わった。
「ふぅ……ごちそうさま。それじゃ、私は帰るわね」
「マジで飯食いに来ただけかよ……」
もう財布としか見られてないんじゃ……と内心涙を流しつつ帰っていく木更を見届けた。
「はぁ……風呂洗うか……」
軽く憂鬱になった蓮太郎は気を紛らわせるために食器を水に浸けて風呂を洗いに行くのだった。
サササッと洗って食器もパパっと洗ってテレビはちびっ子に占領されてるので適当な本を読んで時間を潰し風呂に入って。気が付いたらもう寝なければいけない時間だった。
「もう寝んぞ。明日は学校だからな。」
終戦後でも青空教室は普段通りだ。生徒の子供たちは授業を受けたがってるので、そんな期待を裏切る訳にもいかない蓮太郎達は休日出勤だ。
「え~、もうちょっと!!」
「別にいいけど居眠りしたら拳骨だぞ。」
「大人しく寝るに限るな!」
蓮太郎の拳骨と聞いたちびっ子たちがすぐに布団に潜り込んだ。流石に蓮太郎の拳骨だけは受けたくない。特に一度アッパーを受けている延珠とティナはそう思った。
ちなみに、彰磨が居なくなってから、蓮太郎は延珠、ティナ、夏世に言われて一緒に寝ることにしている。
ついでに、ティナは完全に生活リズムを逆転させて夜はちゃんと寝れるようになった。暫く夥しい量の睡眠薬の箱がゴミ箱に投げ込まれていたが。
布団に入るとすぐに延珠達は寝息を立て始めた。蓮太郎の両腕に頭を乗せて幸せそうにしている延珠とティナ、腹に頭を乗せている夏世と延珠の抱き枕にされて猫耳を齧られている翠。いつか猫耳が欠けないか心配だった。
そんな延珠達を溜め息をつきながら暫くボーっとしてそろそろ寝るかと目を閉じた時、もぞもぞと翠が動いた。
トイレにでも行くのだろうと放っておく事にしたが、何故か部屋に置いてある翠のカバンからゴソゴソと何かを漁る音が聞こえる。そしてその音が止まると今度はウィィィィ……とパソコンの起動する音が聞こえた。パチパチパチッとキーボードを押す音が聞こえる。
(何してんだ……?)
驚かしても悪いので、片眼だけを開けて音源を見る。
翠は壁に背をあずけて座り込み、猫耳専用のヘッドホンを装着して膝にノートパソコンを乗せている。
「えへへ……昨日は直前で時間が来ちゃったけど今日は……」
そして翠の顔はだらしなくニヤけていた。
流石にここまでされると気になって仕方が無い。蓮太郎はそっと延珠とティナの頭の下にある腕を開放し、夏世を抱き枕を探して手をあっちこっちにゆっくり動かしている延珠に渡して物音を立てずに翠のパソコンの画面を覗き込んだ。そして、思わず吹き出しかけた。
パソコンの画面には、一枚の絵と文が。その絵は、二次元の女の子があられもない姿になっている絵だった。確実に小学生の子供がニヤニヤして見るような物ではない。流石にこれは看過出来ずに翠のヘッドホンを外す。
「あれ?ヘッドホンが……はにゃっ!!?」
「よぉう、小学生。それをやるにはあと八年は足りねぇんじゃねぇか?」
翠のやっているゲームは一目で俗に言うエロゲーだと言うのが分かった。
顔を真っ赤にして信じられないといった顔で蓮太郎を見る翠。
「え、えっとですね、これは……その……」
「……あのさ、俺彰磨兄ぃからお前を預かっている立場だからエロゲーやってるお前を見られて疑われるのって確実に俺なんだわ。何か刷り込んだだろうって。」
「いや、エロゲやってる事はもう彰磨さんにバレて……」
「どっちにしろアウトだボケ。」
「にゃっ!?」
思わず口走ったらしく、口を抑える翠。
「……何となく先生が翠と話が合うって言ったの、分かる気がする……」
蓮太郎は菫の部屋にあった数々のエロゲーを思い出して溜め息をついた。
「まぁ、俺は誰にも言わねぇから別にいいが……延珠達には見せんなよ?」
「てっきり没収されるかと……」
「彰磨兄ぃはしたのか?」
「可哀想な子を見るような目で見られました。正直言ってちょっとゾクッときました。」
あ、この子もう手遅れ気味だな。と蓮太郎は悟った。
「そ、そうか……そんじゃ、俺は寝る。翠も早く寝ろよ。」
蓮太郎はそれだけ言うと、再び布団に寝転がり、本当に寝付いた。
そして翠がその後何をしていたかは秘密。
里見家の夜は大体こんな感じで過ぎていくのであった。
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とある外周区で、一組の民警が戦っている。
「そっち行ったわ!」
「わかった!仕留める!」
イニシエーターの方は靴に安定性を上げたローラースケートのような物を装着し、それを電気で動かしながらガストレアをフォアグリップと呼ばれるアサルトライフル専用のグリップを横にして両手で弾丸をばら撒きガストレアを追う。
そして、プロモーターがイニシエーターから逃げるように攻撃してくるガストレアの真っ正面に立つ。
「コォォォォ……震えるぞハート!燃えつきるほどヒートッ!!」
プロモーターは深呼吸をしてゆっくりと構える。そして、ガストレアが食らいつこうとしたその瞬間。
「
稲妻のような物が腕を走り、その腕がガストレアを殴り付ける。その瞬間、ガストレアは感電したかのようにビクンと体を震わせる。
「離れて!」
そして、移動してきたイニシエーターがアサルトライフルから弾丸を放ち、ガストレアを蜂の巣にする。
「ふぅ……夜だから少し時間がかかっちゃったわね。」
イニシエーターは足のローラーを止めて靴から外す。
「そうだな……まぁ、これでやっと帰れる。」
プロモーターは欠伸をしながら携帯電話を取り出し、依頼完了の連絡をササッと済ませた。
「それじゃあ、帰って寝るか。火垂。」
「えぇ、鬼八さん。」
鬼八と呼ばれたプロモーターと火垂と呼ばれたイニシエーターは二人で手を繋ぎ、帰路についた。
はい、という訳で次回から話の鍵を握る鬼八と火垂の顔見せでした。二人も見てわかるとおり蓮太郎のせいで色々と変わっています。鬼八についてはアウト判定くらっても可笑しくないぐらいに
鬼八は小学生辺りからの旧友。つまり力の制御が出来ない蓮太郎と居たがために治癒もできるあの力を……
そして火垂の改変は……むせると言えば分かる人はわかります。足にローラーみたいなのついててアサルトライフルぶっぱなすあのスコープなドッグが出てくるアニメの異能的な生存体っぽいものです
そして翠ちゃんは既にエロゲに手を出してました。一体一人でナニをしていたのかはご想像にお任せします。一応、翠ちゃんは蓮太郎Love勢ではありません
それでは、次回から新章にして今のところ最終章、『逃亡犯、里見蓮太郎。ただし真正面から戦わないとは言っていない』のスタートです