「さ、里見くんが入水自殺!?しかもガストレアに食われたぁ!?」
「残念だけど……そうみたいなんだ。」
櫃間の悲壮感に満ちた顔。だが、木更の内心はいやいや、ねーよ!で一杯だった。
蓮太郎の事だから一時間以上入水しようが死ななそうだしガストレアに食われたところで消化すらされないだろう。
「……そ、そうですか。」
木更は困惑した顔で答える。
「これが現場の写真だ。」
と、櫃間が写真を見せる。それは、蓮太郎の上着と手紙が置かれている写真と手紙……遺書を写した写真だった。
遺書を見ると、自分は周りの人に多大な迷惑をかけ、苦しめ、傷付けてきたので、その責任を取るために自殺しますという旨の内容が書かれていた。
だが、蓮太郎はそんな事で自殺するようなメンタルではない。最早アダマンっぽいチウムな金属製で出来ているメンタルとも言ってもいいくらいだ。
しかも遺書にしては文字がだだくさに適当に書いたような感じだ。
さらに斜め読みでよく見れば死ぬわけ無いだろと平仮名で書いてある。警察の捜査ガバガバ酢ぎぃ!と思った木更だった。実は警察もこれには気付いていたが、たまたまだろうとスルーしていたりする。
「……あぁ……そう……」
最早無関心な木更。だって蓮太郎が死ぬなんて想像もつかないし、入水した程度で死ぬわけが無いし。
だが、そんな無関心を通り過ぎて無表情な木更を見て櫃間は悪い笑みを浮かべるのだった。
(……うっわ~、櫃間さん悪役の顔してるぅ~……ってあれ、そういえば私、櫃間さんに何も言ってないのにSATが出動したのよね……?ってかなんで脱走犯程度にSATが……ってよく考えると天童民間警備会社、私を残して上手い具合に社員は処分されようとしてるのよね?里見くんは下手すりゃ死刑だって聞いたし、ティナちゃんは少年法を超えて処刑されようとして、延珠ちゃんは相方殺しの所に行かされかけて……って考えると権力を持ってる人が黒幕……ん?権力?)
木更はチラッと櫃間を見る。何処ぞの新世界の神みたいな顔していた。
(あっ……これは黒ね。流石に今までこんな黒い笑顔作ってる人沢山見てきたし分かるわこれ。明らかに自分の計画が上手くいって笑いが堪えられない人の顔ですわ。)
だが、黒だと断定する材料が余りにも少ない。しかし、ふと櫃間に貰った懐中時計が頭を過ぎった。
(これ、私や里見くん、彰磨くんのような人外にしか分からないけど、明らかに中に異物入ってるのよね……この中に自分の汚職とか不正の証拠を入れたとしたら……バレるわけないわね。だって、私の手に渡ってるんだから、櫃間さんを調べても証拠なんて出るわけない。とりあえず、時計屋に行きましょう。)
木更は無気力な演技をしながら、フラフラと玄関へと向かう。
「どこへ行くんだい?」
「……なんだか、懐中時計が可笑しいので、時計屋に……」
「……そうか、最近は危ないからすぐに帰ってくるんだよ。」
木更はそのままフラフラと外へと出る。
背後に気配無し。尾行はないが、監視カメラはある。あまり大っぴらな行動をして櫃間に軟禁でもされたら目も当てられない。
そのまま木更は時計屋に入る。
「すみません、なんかこの懐中時計、中に何か入ってるみたいで……」
「おや、この懐中時計は……彼から渡されたのかい?」
どうやら、時計屋の店主はこの懐中時計について知ってるらしい。
「……へ?彼?彼って櫃間さんのことですか?」
「いや、確か……水原鬼八って青年だよ。最近死んじゃったって聞いたが……これ、彼がほぼ全財産だって言ってだした金でオーダーメイドで作った時計なんだよ。」
「……水原鬼八。」
蓮太郎が殺したと言われている青年の名前だ。何故、彼の名前がここででてくるのか。
「あれ?知らないのかい?」
「……すみません、この時計について詳しく。」
「でも……」
「でももデモムービーもないの。これは恐らく私の手に渡っていい物じゃない。」
「わ、分かった。この時計には特注のギミックが一つ付いていてね。特定の日付の日付変更ピッタリにオルゴールが鳴って、ここが開くんだよ。ちょっと待っててくれよ……」
時計屋の店主が工具箱のようなものを取り出し、懐中時計を弄ると、懐中時計の一部が開いた。
そこに入っていたのは……
「……メモリーカード?」
極少のメモリーカードだった。
「……これがプレゼントとは、彼は一体何を……」
「ありがとうございます。私はこれで。これ、お礼です。お釣りはいりません。」
「あ、ち、ちょっと!?」
木更はメモリーカードを制服のスカーフに巧妙に隠すと、懐中時計をポケットにしまって外に出た。
(おそらくこれは水原鬼八からのメッセージ。もしもハッピーバースデー!とかだったら申し訳ないけど、貴重な証拠よ。会社に隠しカメラが無いか確認してから、じっくりと見させてもらうわ。)
木更はこの東京エリアで何が起こってるのか、検討もついていないが、真実に一番近付いた。
そして、菫の研究室では……
『なんか里見ちゃんが死んだってデマ流れとるけど、あれ嘘やから。』
『知ってた。』
『ですよねー。』
蓮太郎が死んだ事なんて話のネタにもならなかった。
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「……君は行かないのかい?……まだその時じゃない?そんな事言ってる場合なのかい?……彼なら心配ないだって?まぁ、そうなるな。なら、時が来るまでここに居るといい。私もこの一件が解決するまでは君をここに置いておこう。そんな訳で今日の飯だ。バレると計画が狂うのだろう?だから私はあっちに戻るよ。ではな。」
話が短い?繋ぎの話だから仕方ないね♂
そしてサラッと木更さんが櫃間が黒だと見抜いた挙句、証拠ゲット。水原ジョースターが時計注文した店と全く同じ店に行くというミラクルで証拠を握り込む
さらにサラッと最後に蓮太郎が生きてる事を口に出す美織さん。まぁ、みんな生きてるって分かってるしね。仕方ないね♂
次回は早目に更新します