今回の話でこの小説は一旦終わりです
五翔会による事件が終わったあと、事態は急展開を迎えた。
まず、五翔会と関わっていた警察官は即日解雇。すぐに裁判所へと送られた。
警視総監すら関わっていた今回の事件により、警察は今、蜂の巣をつついたような感じになっている。
そして、鬼八の事は菫からの事情説明により特に問題にはならず、蓮太郎も何の問題もなく冤罪は晴らされた。この際の慰謝料が少ないと木更がブツブツ言っていたがこの金の亡者には何を言っても同じだろう。
東京エリアに帰ってきてから蓮太郎達は解散。片桐兄妹と朝霞は普通に家に帰り、鬼八と火垂は二人で手を繋いで帰っていった。
その時には既に聖天子を通して菫が事情を話していたらしく、蓮太郎達も拘束されずに天童民間警備会社へと帰って遅めの就寝をとった。
その中でも帰る家のないリカはその日は天童民間警備会社へと泊まり、何故か蓮太郎の部屋に居候することになった。天童民間警備会社にそのまま泊り込めばいいじゃないかと言ったらから娯楽品が無いから暇だと言ってきた。ちなみに、ティナから予備のシェンフィールドを貰ってたりする。
そして、昼辺りに目の覚めた延珠とティナ、木更、夏世、翠に叩き起こされた蓮太郎とリカは大人しく起床。
リカは夕方辺りに雑な縫い跡と傷跡を消すために菫に手術をしてもらう事になってるので早めに出かけ、蓮太郎達は一度家に帰ろうと外に出た。ちなみに、蓮太郎は延珠と夏世のイタズラにより手にプルタブの開けられたブラックコーヒーを接着剤でくっつけられている。
全員が外に出たところで前を見れば、何故か真っ黒なリムジンがテナントビルの前に止まっていた。
「……な、何事?」
「蓮太郎さん、早く謝ってください。」
「何で!?」
「どうせ蓮太郎さんが最初にヤのつく自営業の人に喧嘩吹っかけたせいでしょ!?」
「してねぇよ!?してねぇからな!?」
ギャーギャーと蓮太郎と夏世が言い合ってるとリムジンのドアが開いた。
そこから出てきたのはリムジンの色とは正反対の色のドレスを着た聖天子だった。
「って聖天子様ぁ!?」
「蓮太郎!早く謝るのだ!手遅れにならない内に!」
「延珠!?」
「あ、あの……何故里見さんが何かしたという事になってるんでしょうか……?」
これには流石の聖天子様も苦笑い。
「いや、知らねぇよ。」
「そ、そうですか…………こほん。里見さん、借りてたものを返しに来ました。」
聖天子は蓮太郎に近付くと、懐から一枚のカードを取り出して蓮太郎に渡した。
それは聖天子に直接取られた蓮太郎のライセンスカードだった。
「わざわざ返しに来てくれたのか?郵送でもよかっただろ?」
「ついでに色々と話したかったんですよ。」
蓮太郎はライセンスを器用に片手でパスケースに仕舞うともう無くさないように胸ポケットにぶち込んだ。
「里見さん、信じていました。あなたなら、あの事件の闇を全て解決してくれると。」
「巻き込まれたからやっただけだ。ってか、聖天子様。まさか、水原の事知ってたから元から疑う気無かったんじゃ……」
「どうでしょうね?クスクスっ。」
今思えば、聖天子は国のトップであるのに、蓮太郎に対しての扱いは冤罪を晴らさせるための援助と言っても過言ではない事をした。
まぁ、それも火垂の手で滅茶苦茶になったのだが、聖天子が蓮太郎を表面上でも殺人犯として扱っていたのなら、脱走の手助けなんてする筈なかった。
「元から俺を使ってこの事件を解決させようって思ってたんじゃないだろうな?」
「さぁ?どうでしょうね。」
ハメられた……と蓮太郎は空を仰いだ。
菫と美織だけがグルだと思ってたら聖天子までグルだった。
蓮太郎が空を仰いだのは悪くないだろう。
「おい、聖天子様の前で空なんか仰いでどうする。」
だが、空を仰いで暫くすると、聖天子のリムジンからパイナップルのような頭に扇子、袴という格好をした初老の男が出てきた。蓮太郎がそれに気づきその男の方を見ると、男はよっ。と気軽に挨拶をした。
「紫垣さん?」
「ちょうどお前らのところに向かおうとしたら聖天子様に拾われてな。」
「ちょうどそこを歩いてたので。」
「歩いてきてたのかよ。」
「たまには歩かんとな。」
白い歯をニカッと笑って見せた紫垣は木更の方へ向き治り、照れたような困ったような顔をする。
「木更よ。その……今回は本当にすまなかった。今日はその詫びも兼ねてきた。よかれと思って引き合わせた結果がこれだ……本当にスマン。」
大の大人が平謝りをする。人の出来た対応に木更は特に憤慨せず微笑む。
「いえ、結局警察の汚点潰せたのでいいんですよ。実害なんてありませんでしたし。」
「その返しは予想外だった。」
「これを巻き込んだのが運のつきですよ。」
これ呼ばわりされた蓮太郎は軽く凹んだ。
そんな蓮太郎の袖を延珠がクイクイと引っ張る。
「どうした?」
そのほうを見れば、不安そうな表情をした天童民間警備会社のイニシエーターズがいた。
「あのおじちゃんは誰なのだ?」
「あぁ、そういえばお前らははじめてだったな。あの人は紫垣仙一さん。天童民間警備会社の書類上の経営者で俺達の後見人の真似事みたいなのも請け負ってくれている爺さんだ。」
「おぉ、そんなエラいおじちゃんだったのか。」
蓮太郎は柴垣を手招きする。
「紹介するよ。俺のイニシエーターの延珠と訳アリの夏世とティナ。それと、彰磨兄ぃのイニシエーターで訳あって預かってる翠だ。」
訳アリ三人という何とも奇妙な紹介となったが、柴垣は特に気にする様子もなく延珠とティナの頭に手を置いて乱暴に撫でる。
「これまた可愛らしいのが四人も出てきたな。そういえばお前、司馬の嬢ちゃんとも出来てたよな?六股か?このハーレム野郎。ってかその手にくっ付いているブラックコーヒーは何なんだよ。」
柴垣がからかう様に蓮太郎の肩に手を置いて揺らす。
「お、おい、あんま揺らすと……」
蓮太郎の忠告が入ったが時既に遅し。ブラックコーヒーが柴垣の手にバシャッとかかった。
「アチチッ!?」
「言わんこっちゃない。」
柴垣は慌てて袖を捲ってハンカチで腕を拭くとすぐに袖を戻した。
「お、お前、何されたんだ?」
「そこのガキンチョ共のイタズラで接着剤で接着された。」
テヘッと頭に手を当てて舌を出してる延珠と夏世にゲンコツをお見舞いする。
柴垣はそんな様子を見て笑いながら天童民間警備会社の水道でコーヒーのかかった場所を冷やそうとビルの階段を上がって行った。
(なんか羽の入れ墨があったような…………まっ、気のせいだな)
延珠は柴垣の腕にほんの少しだけ見えた入れ墨を不思議に思ったが、気のせいだと割り切った。
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さて、今回のオチ。
聖天子と柴垣が帰った後、蓮太郎達は懐かしき床が吹っ飛んでいる部屋に戻って畳を直した後、一息ついた。ブラックコーヒーの缶は力づくで引っぺがした。
全員で床に寝転がってまた二度寝でもしようかと思っていた時、何の予兆もなく玄関のドアが蹴り開けられた。
『何事!!?』
「蓮太郎、ヘルプ!」
ドアを蹴り開けて突入してきたのはなんとボストンバッグとキャリーケースを持った火垂だった。
「火垂!?何でここに!?しかも何だよその荷物!」
「これを見て!」
部屋に入ってきた火垂は空いた手に持っていた手紙らしき紙を蓮太郎に見せつけるように突き出した。
『いやー、なんか波紋を教わった師匠からヘルプが来てさ。なんでも、百年ぶりに復活した吸血鬼を倒すための仲間が欲しいって言うんでちょっとエジプトまで行ってくる。何年かかるか分からないから火垂の世話頼んだ。by鬼八
P.S お土産何がいい?』
衝動的に手紙を破いた蓮太郎は決して悪くない。
「多分、朝には出て行ってもう東京エリアにはいないと思うわ……しかも大家さんに鍵を返したらしくて、さっき大家さんにたたき起こされて私の私物を纏められて放り出されたわ……」
「隠れ家はどうしたんだよ。」
「もう鍵を返したわ。」
「何で。」
「お金、もう五千円くらいしか無い……」
「あぁ……」
家賃払えないのな。という無粋な言葉は飲み込んだ。
「……まぁ、水原の頼みだし特に拒む理由はない。こんな子供を根無し草にする訳にもいかないしな。」
「ありがと。」
「お前らも異議ないよな?あっても聞かん。」
蓮太郎は火垂の荷物を受け取ると、部屋の隅、翠の荷物の横に置いた。
「あいつは帰ってきたらシバく。」
「そんでもって調きょ…………お仕置きするわ。」
「おい、今調教って……」
「あーあー聞こえないわー」
「……まぁ、自業自得って事で。」
そんな訳で、里見家には延珠、夏世、ティナ、翠、リカ、火垂の計六人のロリが住むことになった。
そろそろ本格的に御近所からの目が危ないな。と考える蓮太郎であったとさ。
くぅ~、疲れました!そんな訳で鬼八退場。何時か戻ってくるさ。そう、きっと、多分、Maybe
今回で六巻までの話が終わりましたので次回の更新は原作最新巻が発売され、丁度いいところで一区切りついたらになります
もう七巻発売から一年近く経つのでそろそろ最新巻も出てくるでしょうし、近い内にお会いするかもしれません。それでは、次の巻発売までご武運を