黒い銃弾とは何だったのか   作:黄金馬鹿

5 / 46
今回は最終決戦前の話。

それと、感想で結構必殺『マジシリーズ』に普通のパンチがあるのは可笑しいという感想をもらったので直しました。普通のパンチはマジシリーズには含まれなくなりました。


ファイブパンチ

「っし、見付けた。」

32区辺りの森。そこで飛行している蜘蛛型のガストレアを肉眼で発見した。

ここで蓮太郎は思い出す。蜘蛛の糸をパラグライダーのように編んで数百キロ移動する蜘蛛がいることを。今回のガストレアはそれだと判断する。

だが、躊躇する理由はない。すぐに潰させてもらおうと思ったが、抱えていた延珠がピクリとも動いていない。

延珠にお~い、大丈夫か~?と聞く。延珠はすぐにハッとすると、蓮太郎の手を離れて木陰に隠れた。

なんで逃げるんだと聞こうとした時。

「オロロロロロ……けほっ、うぇぇぇ……」

女の子から聞いちゃいけない声を聞いたのでとっととガストレアの追跡を再開した。

音速を超えた中で吐くだけで済んだのならかなりいい方だろう。生身で外傷なしの延珠は鍛えられているようだ。

「……とりあえず片付けるか。」

トン。と地面を蹴って飛び立つ蓮太郎。狙いは飛行中のガストレア。

蓮太郎に気付いたのか逃げようとするガストレア。だが、蓮太郎はそれよりも速い。

蓮太郎の手がブレた。その瞬間、ガストレアは文字通り粉砕された。

それと同時に落ちていく手錠のついた白いケース。視界でそれを捉え、追っていく。何秒かケースが落ちる方が速かった。

蓮太郎は着地してからすぐにケースの回収へと向かった。

ケースは無事見つけた。要らないモンと一緒に。

「やぁ、里見君。」

「蛭子影胤……漁夫の利か?」

「勝てばよかろうと言うだろう?」

影胤は手を後ろに、蓮太郎はポケットに入れてお互い戦闘時の構えはとらない。その後ろで延珠は?延珠は?と言ってくる小比奈はアウトオブ眼中。

「これは私が頂こう。君達には過ぎたものだ。」

「テメェのような要注意人物に渡せるかってんだ。」

ザッ。と音を立てて足を広げてポケットから拳を出す。

「ヒヒヒッ、今までは出力を最大にしてなかったが……今回は80%のイマジナリィ・ギミックでお相手しよう。」

そして影胤の周りにあのバリアーが張られる。正直、蓮太郎にとっては紙も同然だ。

「蓮太郎!!」

そしてそこに颯爽と駆け付け、影胤に蹴りを一発お見舞いする延珠。だが、影胤に蹴りは届かなかった。

延珠の蹴りを受けて破れないということはかなり滅茶苦茶な強度を誇っている事を意味するのだが、延珠の蹴りがボクサーの右ストレートなら、蓮太郎の拳は例えるのならば核爆弾。蓮太郎の拳で破れない物などまず無い。

「蓮太郎、ケースを取り……かえ……うっ。」

延珠が口を抑えて近くの川までダッシュする。そして、そこで開放する。

「……君は何をしたのかね?」

「ちょっと急いでたからな……」

「……彼女も大変だね。」

「皆そう言う。解せぬ。」

「解したまえ。」

影胤にすら同情される延珠。そして当の延珠は川に向かって数時間前に食べたものを還している。

どうやら一度土に還した位では延珠の体調は戻らなかったようだ。

「……ちょっと待ってろ。口をゆすぐから……」

川の水でうがいを始める延珠。本来はあまりオススメした事じゃないが、こんな自体故に仕方が無い。

「……まだきもちわるい……」

「その……なんだ。戦えるか?」

「当然だ!この程度で参ってては蓮太郎のふぃあんせは務まらぬからな!」

「はいはい。おマセなこって。」

戻ってきた延珠が蓮太郎と隣合い、構える。敵は、蛭子親子。

小比奈は狂気の笑みを浮かべ小太刀二本を構え、影胤は二丁の拳銃を手に持つ。

一触即発。

先に動いたのは小比奈と延珠だった。

二人の姿が残像のように掻き消え、瞬間、金属音が鳴り響く。

延珠の靴はバラニウムが靴底に埋め込まれた特殊性だ。故に、延珠はバラニウムの小太刀相手にモデル・ラビットが故に強化された脚力を遺憾無く発揮できる。

そして、次に動いたのは影胤。その手に持つ二丁のベレッタがフルオートで弾丸を吐き出す。

「ちゃぶ台がえし!」

蓮太郎は手を地面に突っ込み、それを一気に持ち上げる。

出来上がった土の壁がベレッタの弾丸を防ぐ。最後の弾丸が当たった刹那、音速を超えて蓮太郎が影胤へと接近する。

「マキシマム・ペインッ!!」

だが、影胤もそう簡単には拳が振るわれるのを許さない。影胤のイマジナリィ・ギミック……斥力フィールドが蓮太郎にだけ向けて展開。蓮太郎を少し押しやり、拳が目の前を通過する。

あまりの衝撃に体が後ろへと持っていかれる。が、それを利用して蓮太郎から距離を取る。

「とんだ『化け物』だよ。君は。」

「知ってらァ。」

瞬間、蓮太郎の目の前に黒い影。そして、影胤の目の前に赤い影。

蓮太郎の目の前に行った小比奈は蓮太郎の首を跳ねんと小太刀を振るう。が、蓮太郎はそれを腕で防ぎ、頭突きで小比奈を吹っ飛ばす。それと同時に延珠が影胤のマキシマム・ペインにより吹っ飛んできた。小比奈は斥力フィールドに、延珠は蓮太郎の腕にキャッチされる。

延珠の体には無数の切り傷が。小比奈の体には無数の痣が。

「蓮太郎……あいつ、強い!」

「まだ戦えるか?」

「当然だ。妾はそんなに柔ではない!」

「延珠……斬る!!」

再びの戦闘。かと思いきや、影胤が小比奈の前に手を出して小比奈を止める。

「小比奈、悪いがここは撤退だ。時間が勿体無いんでね。」

「させると思うか?」

「させるさ。マキシマム・ペイン!!」

その瞬間、先程よりも強い衝撃が蓮太郎達を襲う。さっきのが最大出力かと勘違いしてた二人はまんまと吹っ飛ばされ、近くの川に落ちた。

「蛭子影胤ェェェェェェ!!テメェ卑怯だぞゴルァァァァァァァァ!!」

「勝てば官軍だよ。」

川の流れに逆らえず、蓮太郎と延珠はどんぶらこ、どんぶらこと下流に向かって流されていくのであった。

延珠はきゃー溺れるーとかいいながら蓮太郎に抱きついていた。

二人が川から上がってそこに戻った時には、既に蛭子親子はいなかった。

「…………あ、タイムセールが……」

蓮太郎の呟きは、どうでもいいものだった。

 

 

****

 

 

翌日。天童民警事務所の中はお葬式ムードだった。

「……ごめんね、里見くん。私のせいで……」

「木更さんのせいじゃないさ……」

「そうだ……妾がちゃんと時間を確認してれば……」

ここで違和感を感じる人もいるだろう。

まず、三人の目の前には芋。さつま芋がホカホカと湯気を上げている。

「私がタイムセールにあの時行かなかったばかりに!今日はなんかタイムセールなかったのよ!!」

「違う!俺がとっととあの仮面野郎をしょっぴいておけば!!」

「二人のせいではない!妾があそこでリバースしてなければ……」

『延珠(ちゃん)のせいじゃない!!』

そう。今日は何故かいつものスーパーでタイムセールをやっていなかったのだ。

おかげで三人のご飯は朝はもやし炒め、昼はお茶碗一杯のお米。そして夕飯はさつま芋一個である。

東京エリアが滅亡の危機なのに何に嘆いているのかこの三人は。

ちなみに、蛭子影胤の持ち去ったケースはガストレアステージⅤを呼び出せるというのは既に聞かされている。そして、影胤追撃作戦があるのも。

その為に前勝祭でもしようかと思ったらこれである。

「……はぁ、もうそろそろ時間よ。」

もぐもぐと三人で焼き芋を頬張る。蓮太郎と延珠はさっさと食べ終わった。

聖天子直々のブリーフィングは終わっている。後は、菫の元へ行き、装備品を受け取るのみ。

「そんじゃ、行ってくる。」

蓮太郎は焼き芋を食い終わってからすぐに菫の元へと向かった。

菫の研究室の周りは何も変わっていなかった。

「ほら、君のパトロンからだ。」

「……十分だ。」

蓮太郎は菫から渡された装備を確認する。それは、非常食の詰まったウェストポーチだけだった。

蓮太郎は司馬重工の司馬美織と装備を提供される契約をしている。司馬重工が蓮太郎へと装備を提供する代わりに蓮太郎は今いる高校へと通っている。

だが、今回渡されたのは装備ではない。ただの非常食だ。

だが、蓮太郎はこれで十分だった。蓮太郎にナックルグローブはいらない。一発で使い物にならなくなる。メリケンサックも必要ない。一発で形が変形して使い物にならなくなる。防弾ベストや防刃ベストはいらない。機動力が削がれる。故に、蓮太郎の装備はこれだけで十分なのだ。

「それと、おまけらしい。」

さらに缶詰を渡される。ヘリで食えとでもいうのか。だが、今は腹がほとんど満たされてないため、ありがたく頂いた。

「それと、これは私からだ。」

菫から渡されたのは液体の入った注射器五本。

「これは?」

「AGV試験薬だ。死にかけたら使うといい。まぁ、君が死にかける事があるのならそれは人類の滅亡に繋がるがな。」

「ま、使わねぇと思うが貰っておくよ。」

蓮太郎はAGV試験薬の入った注射器をしまって、研究室の扉に手を掛ける。

「……先生、ちょっと東京エリア救ってくるわ。」

「お土産も頼むよ。」

まるで旅行に行くようなノリ。だが、余りにも重いノリなんて二人には似合わなかった。

そして、蓮太郎と延珠は木更に見送られながらヘリへと乗った。

「ほら、食え。延珠。」

「最後の腹ごしらえだな。」

「ばぁか。いつもどおりの晩飯だよ。最後じゃねぇ。」

「そうだったな。こんなの妾と蓮太郎にとっては危機でもなんでもないからな。」

「よく分かってんじゃねぇか。ほら、とっとと食っちまおうぜ。」

缶詰を二人でかきこんで胃に落とす。程よい満腹感が二人の気持ちを安らげる。

これから行くのは戦場だ。生きるか、死ぬかの。

だが、二人は確信していた。これは勝ち戦だと。

何故なら、居るからだ。希望が、負ける筈の無い一人の人間が。

それは、自分(蓮太郎)。例え斬撃を飛ばせようが、バリアーを張れようが、その前に立とうものなら一撃の元粉砕される。

正しく無敵。死ぬ要因など二人には見えない。

自分が守るから。守られるから。だからこそ、死ぬ事なんてない。

延珠が蓮太郎に寄りかかる。蓮太郎はそれについて何も言わず、空いた手で延珠の頭を撫でる。

そして、パイロットの着きました。という声を聞き、立ち上がる。

「行くぞ、延珠。」

「うむ、蓮太郎。」

時は来た。最終決戦のゴングは鳴り響く。ならば、叫ぼう。ここからは、悪を倒すために正義()を振るおう。

『正義執行ッ!!』

死にたくなければそこを退け。正義が怖ければそこを退け。今からそこには正義が通る。今からそこには希望が通る。絶望なんて殴り飛ばす、無敵のヒーローが通る。

死にたくなければそこを退け。正義が怖ければそこを退け。今からそこには正義が通る。今からそこには希望が通る。今からそこには『ワンパンマン』が通る。




延珠、ゲロイン化

と、言うのは置いておいて、なんか最終回っぽくなりましたがまだ続きます。影胤ぬっ殺すまでは続きます

それと、いきなりお気に入りがPON☆と増えて何事かと思ってたらなんかランキングに乗ってました。感謝の極みです

次回はあの子(ボロボロ)が登場です。さて、蓮太郎と延珠はどうするか。それではまた次回

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。