10月31日、結束バンドは渋谷にいた 作:ふたり
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物心ついた頃から、私の中にもう1人の私がいるような気がしていた。二重人格、イマジナリーフレンド、そういうものでは無い。私と同じようにモノを考えて、同じように動く、しかし、私では無い存在。心と言えば良いのか、私の中にいて、ずっと寄り添ってくれていた。
物心ついた時から友達が出来なかった私がなんだかんだで耐えられたのはその感覚があったからだと、今になって思う。しかし、その感覚は成長するにつれて無くなっていき、中学になる頃にはそんな感覚があったことすら忘れてしまっていた。
その感覚が無くなって、友達に憧れて、ギターを始めたんだ。
だけど、ようやく思い出した。違う、また感じ出しのだ。
それが何なのかわからない、けど、私の中にいる私が、何かを伝えようとしている。それだけは分かった。
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「ひとりちゃん!ねぇ!出てきてよ!せっかくきたのだから楽しみましょう!」
中国の妖怪であるキョンシーのコスプレをした少女、喜多郁代が着替えなどを入れてきたボストンバックに向けて言う、その傍らには呆れた表情の女子が2人いる。
1人はドラキュラのコスプレをしている伊地知虹夏、もう1人は紙で適当に作った幽霊がつけている三角形のアレを頭につけた学校の制服姿の山田リョウである。
「先輩達もひとりちゃん、出すの手伝ってくださいよーー。」
喜多がそういうと、虹夏はため息混じりに答えた。
「……。嫌なら無理に参加させるのも違うんじゃ無いかな?………そもそも、私もそこまで乗り気じゃ無いし」
少し辛辣な事をいう虹夏に便乗して、リョウも答えた。
「うん、私も帰りたい。ライブも近いし」
ボストンバックに引きこもっているぼっちこと、後藤ひとりを含めたこの4人はバンド活動をしている。バンド名は結束バンドで、ついこの間、文化祭で色んな意味で伝説を残したばかりであり、色んな意味で勢いに乗り始めたばかりである。
そして、もうすぐライブを控えており、本来であれば渋谷のハロウィンになんて参加する余裕はない。しかし、ギターボーカルである喜多がどうしても皆んなで参加したいと言い張り今に至る。
「………も〜。せっかくここまで来て……。」
と、喜多は落胆したようにため息をついた。その様子に虹夏は少し考えた後に口を開いた。
「なら、今度、ウチでハロウィンパーティしようよ。ライブもあるし、少し時期は遅くなっちゃうかもだけど、それならぼっちちゃんも楽しめるでしょ?」
その言葉に喜多の目はキラキラさせた。
「ほんとですか! ありがとうございます! 頑張ってお菓子もたくさん用意しないとですね!」
「お菓子、食べ放題……じゅるり……。」
「会費は徴収するからね」
「それなら、ひとりちゃんも楽しめるわね!………それで、今日はごめんね……。無理させちゃって……。」
喜多がそう言うと、ボストンバックの横に腰を落とした。すると、内側からチャックが開いた。
「……あ、いえ。む、むむむ無理なんかしてません! 私も、た、楽しみでした、けど、どうしても、怖いんです。嫌な予感がするんです。」
「嫌な予感?」
喜多が首を傾げた。その様子に少女、ひとりは口を開いた。
「あっ、すいません。詳しくはわからないんです。でも、怖いんです。何かがある。……えっと、残穢が、あれ?私は何を?」
後半は独り言のように呟くひとりに、メンバーは「いつものことか」と特に気にしない。はずだった。たった一人、ベースのリョウだけはひとりの言葉に反応した。
「ぼっち、今、ザンエって言わなかった?」
「あ、え?はい、言ったかもしれません。けど……。」
その言葉にリョウは静かに目を閉じた後に口を開いた。
「みんな、早く帰ろう。今すぐ。ここから離れたほうがいい。」
その珍しく真面目な、いや、焦っているような言葉に他のメンバーは言葉を失った。不真面目な言動が目立つリョウだが、今の彼女が本気で言っているのがメンバー達には分かったのだ。
「……中学の時、ウチの病院に呪い……。妖怪が出た事がある。その時、虹夏のいとこの人が言ってたんだ。ザンエ……。妖怪の痕跡のことだって……。そういうのを見たらすぐに逃げなさいって、私は調子によっては見えるから……。」
「え?…… 潔高さんが?」
虹夏の驚きの声にリョウは小さく頷いた。その時、リョウは空を見上げて目を見開いた。
「……と、トバリ?嘘、早く、早く逃げないと!」
珍しく声を荒げ虹夏の手を引くリョウに他のバンドメンバーは戸惑いを隠せなかった。彼女が本気で慌てているのは理解できるし、心配しているのも分かる。しかし、その理由が全く分からない。
「えっと、リョウ先輩、落ち着いて下さい。何が……え?」
喜多が話してる途中で駅の方への強風が吹いたかと思うと4人の身体は浮き、駅の中への吸い込まれた。
まるで、風呂の水栓を抜いたのように4人以外の全ての人も吸い込まれる。周囲では悲鳴が飛び交い、なすすべなく吸い込まれる。
「みんな!」
そんな中、ぼっちだけは何故か冷静だった。呪いによる攻撃だと、不思議と彼女は理解できた。知らないはずなのに知識が、経験が湧き出てくる。
(
自分の魂の形を作り替える。両腕は鞭のように細く、長くなり3人への伸ばす。「届いて!」心からの叫びだが、しかし、それは叶わなかった。ここは渋谷駅だ。そして、10月31日、ハロウィンである。
周囲には数えきれないほどの人がおり、それらか雪崩れ込んでいる。すぐにぼっち達は無数の人たちに呑まれて3人が何処にいるのは分からなくなってしまった。
「みんな!虹夏ちゃん!リョウさん!喜多さん!」
吸い込まれながら人を掻き分ける。そして、3人を見つけた。が、もう遅い。吸い込まれた先には赤い魚介類のような見た目の呪霊がおり、その隣にはツギハギ顔の呪霊と、目の下にクマがある呪霊がいる。そして、その横には額に縫い目のある長髪の男。その男を観た時、ひとりは何かを思い出しそうになったが、今は無視する。
「間に合って!」
ぼっちは蛇のように身体を細くして、吸い込まれている他の人達の間を縫うように進む。
(不思議と身体の使い方が分かる)
成り上がる呪力、起動する術式。まるで生まれる前から知っていたかのように、雪崩のように思い出していく。
手を蔦のように伸ばす。しかし、3人は他の人々共に食べられてしまった。その攻撃をぼっちは目の前で見てしまった。
「………え?」
心に締める怒り、悲しみ、負の感情。それらが呪いとなって爆発した。
「返して!!!!」
叫ぶ。
吸い込みはまだ続いている。ぼっちは呪いに吸い込まれなが自身の魂の形を変え、右手を自分の身体以上に巨大化させた。そして、吸い込まれながも巨大な右手を振る。
「ーーーーッ」
その動きはまるでビンタである。呪力の込められた圧倒的な質量で放たれたそれは吸い込んでいた呪霊、陀艮を吹き飛ばし、反対側の壁へと衝突された。
「陀艮! どうした?」
一つ目の呪霊、漏瑚が叫んだ。陀艮は身体を起こし、それ以外のメンバーも周囲を警戒している。
「………誰だ。誰かいるのか?」
ツギハギ顔の呪霊、真人も身体に複数の目を作り、周囲を見渡すが気が付かない。その目の前を後藤ひとりはさも当然のようにすり抜け、長髪の男の前を通る。
「……………」
ひとりはまっすぐ、陀艮を目指す。周囲に見つからず、誰にも気が付かず、学校の教室と同じようにひとりは歩く。
その時、一匹の小さな呪霊がひとりの前を横切った。その呪霊は小さくまるでシラスだ。そのシラスは空中を泳ぎ長髪の男、羂索の身体に潜り込んだ。
「そこかっ!」
瞬間、ぼっちは蹴り飛ばされ数メートル吹き飛ばされた。その一撃で全身に傷を追い、見るも無惨なほどボロボロとなった。
「………そこに敵がいる。ちゃんとよく見て」
羂索のその言葉でようやく、他の呪霊達もひとりのことを認識した。
いや、はじめから認識していた。後藤ひとりがそこにいたことははじめから気がついていたのだ。しかし、そのことを異常だとは感じなかった。気にも止めていなかった。まるで、空気でも見ているかのよう思っていたのだ。
「………術式、
楽しげにそう語る羂索に、ひとりは
「けけ、け、羂索、さん、なんで、こんなことを?」
ひとりの言葉に男は楽しげに笑う。
「趣味だよ。趣味。ほら、君を誘ったゲームの下準備だよ。」
「……み、ん………みんなを!かえして!」
話の脈略も、声量もメチャクチャなひとりの叫びに羂索は笑っていた。
「500年前と変わらずコミュ障だね!」
両手を巨大化させて振るう。瞬間、ひとりの背中を真人が触れた。「これで勝ち」と、笑みを浮かべる真人だが、しかし、その笑みは凍りついた。
後藤ひとり、彼女の魂はまるで液体のようだったのだ。触っても指の間からすり抜けてしまう。掬っても手を離せばすべて盆の中へと零れ落ちる。魂の輪郭が存在しないのた。
「っ!」
直感的に真人は手を離した。しかし、その時には既に遅かった。直人の右腕は変形し後藤ひとりの上半身へと姿を変えていた。
「っ、混ぜられた?」
ひとりの魂に触れた真人だが、その隙に真人の魂の中に自分の魂の一部を混ぜ込んだのだ。そして、その魂は真人の魂を侵食し汚染していく。
「うー、働きたくない、世間が怖い」
うわごとのように呟く真人の右腕。侵食は少しずつだが確実に広がっており、真人は舌打ちすると魂ごと右腕を切り落とした。
「太陽が熱い、焼け死ぬー」
真人の右腕だったものは、羂索と対面するひとりの元へと蛇のように移動して吸収された。
「他者の魂への侵食、君の術式は真人の下位互換だと思っていたのだけど………。そんな事も出来たのかい?……もしかして効果範囲が狭い分、こと自身の魂については真人よりも上なのかな?」
その時、ひとりの足元から炎が吹き出した。漏瑚の術式だ。その高音の炎の中、1人は燃えながら悶えていた。
圧倒的な火力の差だ。
彼女の持つ術式の一つ
「あ、ああああ!」
炎に包まれ、皮膚が焼け落ち骨が剥き出しになりながら炎の柱から這い出てる。術式の効果ですぐに肉体は元に戻るが、目の前には巨大なナマズが口を開けていた。
「獄門疆に次ぐ封印強度さ。いくら君でも流石に破れないだろう」
巨大なナマズはパクりと1人を食べてしまった。
その様子に呪霊達は急な襲撃者について羂索に問いただすのだった。
◆
渋谷駅の外、ぷかぷかとピンク色の粒子が飛んでいた。
それは周りに人がいない事を確認すると、急成長をして1人の少女になった。
「そんな、こんなのって……」
少女、ひとりはさっきまで一緒にいた仲間を想い、声をあげて泣いた。
特急呪霊・
平安時代にメロンパンによって呪物になった特級呪霊。メロンパンから呪霊も呪術師も関係なくやる競技をやるって言われ、友達ができると思い参加することを決意した。
後藤ひとり
幼い頃は呪いが見えた。小さい頃、呪霊が見えてしまったことが原因でトラブルが発生、母は頑張って霊媒師を探した結果、メロンパン(夏油になる前)に出会う。
ぼっちと真孤の親和性が高いことに気がついたらメロンパンは呪霊と人間の融合実験を行い、成功してしまう。
しかし、真孤はぼっち母の願いを聞き入れ魂の形をいじり、ぼっちは呪いが見えなくしてしまった。さらに、真孤は基本人格をぼっちに譲り中で眠ってしまう。そのため失敗だと勘違いされ、メロンパンはぼっちへの興味を失った。
受肉とは違い、メロンパンが目指したのは新たな生命を生み出すことであった。端的に言えば魂を混ぜ合わせる事である。
そのため、ひとりと