皆買おう!
迷宮区に向かって歩くアッシュ、キリト、アスナは、手慣れた様子で周囲を警戒しながらも雑談に花を咲かせていた。
「そう言えば、アッシュさんの刀ってあんまり見たことない装備ですよね」
アスナがアッシュの腰に帯びている刀を見ながらそう言う。
確かにアッシュの刀は、ファンタジーな世界観のSAOには少々似合わない無骨な印象を覚える見た目だ。
「あー、まあこいつは俺みたいなの以外にはネタ武器も良いところだからな」
アッシュの言葉にアスナは怪訝な顔をしながらアッシュの顔を見る。
「こいつは他の刀カテゴリーの武器と違ってアホ程重いんだ。
見た目こそ他の刀と比べてシンプルで無骨な程度だが、重さは斧や大剣と大して変わらん。
重さの分攻撃力も高いが、ステータス補正は刀より斧やら大剣やらそっちの重量級の武器寄りの補正してんだよ」
「へぇ~、そうなんですね。……ん?でもそれって重量武器を使った方が良いんじゃ……」
「だからネタ武器って言われてるんだよ」
「ハハハッ!そういうこった!」
アスナの言葉に苦笑いしながらキリトが答えると、アッシュは愉快そうに歯を見せて笑いながらそう言った。
「どうしてそこまでその武器に拘るんですか?」
アスナが不思議そうに聞くとアッシュは再びニヤリと笑った。
「カッコいいからに決まってんだろ」
アッシュのその言葉にキリトは呆れたように肩をすくめて、アスナも思わず愛想笑いをしていた。
ところ変わって迷宮区内部。
3人はしばらく迷宮区内を探し回り、運良くボス部屋を発見することが出来た。
ボスの様子見だけをして、セーフエリアまで撤退して休んでいると、クラインとギルド風林火山の面々がセーフエリアに入ってきた。
「おー!キリトじゃねぇか!ってアスナさん!?」
キリトを見て嬉しそうに手を振るクラインだが、アスナの姿が目に入って驚いたような声を出す。
それを見たアッシュはニヤニヤとした笑みを浮かべながらアスナを見る。
「流石は有名人だな」
「もぉ、やめてくださいよ!」
「クライン達もボス部屋を探しに来たのか?」
キリトがそう聞くとクラインは おうよ! と答える。
「だったら1足遅かったな、ボス部屋ならさっき見つけたとこだ」
「マジかよ!やるじゃねぇか!」
アッシュの言葉にクラインは素直に喜んでいるようで、明るい声を出した。
そのままボスの見た目や迷宮区内の敵の情報交換しているとセーフエリアにゾロゾロと同じ装備をつけた人が大勢入ってきた。
「ALFの連中か、今さらデカイ面して出てきやがったか」
アッシュは目付きを鋭くしてその集団を見つめる。
アッシュは彼らの下層での行動により彼らのことかなり嫌っていた。
アッシュが睨み付けるように集団を見ていると、その中から1人がアッシュ達の方へ歩いてくる。
その男の話を聞けば、長い労力をかけて調べたマッピングデータをなんの見返りもなしに提供しろと言うのだ。
当然の事ながらマッピングデータを見返りもなしに提供を求めるなど論外で、攻略組なら誰もが忌避するであろう努力や苦労を掠めとるような行いだ。
それを平然と行ってきた男に対してクラインは憤るが、ALFの男曰く、攻略に協力するのは全プレイヤーの義務だそうだ。
それを聞いたアッシュは男の言葉を鼻で笑い飛ばした。
「ハッ!全プレイヤーの義務だぁ?その義務を長いこと放棄して、下層で威張り散らしてた掃き溜め共が……随分と偉そうにモノ言うじゃねぇか、あ"ぁ"?」
アッシュの明確な侮辱を含んだ言葉にALFの男達は怒ったような反応をするが、アッシュが刀を腰から抜き放つとその殆どが怯えや困惑の表情に変わる。
「不愉快だ、お前らがどれだけチンケな存在か……俺が教えてやる」
「待てよアッシュ!オレンジになる気か!」
アッシュが刀を構えようとした瞬間、キリトがアッシュの前に立ち塞がる。
「どけキリト、こういう連中は誰かが分からせねぇといつか死ぬぞ」
「だとしてもだ!」
キリトを睨むアッシュだが、キリトはアッシュの目をしっかりと見ながら1歩も引かない。
そのまま10秒程睨みつづけ、目を閉じてため息を1つ吐くと刀を納めた。
それを見たキリトもふぅと息を吐き出して緊張を解いて、ALFの代表へ向き直る。
「あんた、マッピングデータはやるからさっさと行った方が良いぞ」
「あ、ああ、そうさせてもらおう」
キリトからマッピングデータを受け取ったALF達はそそくさと逃げるようにセーフエリアから出てく。
アッシュはその様子を恨めしそうに睨み付けていたが、最後尾が見えなくなると舌打ちを1つしてから壁際に移動し、胡座をかいてどっしりと座った。
しばらくの間どこか気まずい空気が流れていたが、アスナがぽつりと呟く。
「あの人達、攻略できるのかな?」
「正直、かなり厳しいと思う」
アスナの呟きに苦い顔をして答えるキリトの言葉を、アッシュは鼻で笑った。
「はっきり無理だと言えよキリト。
あの連中じゃあどれだけ良い装備を着けてようが、知識も経験も不十分も良いとこだ。
十中八九、全滅だろうな」
アッシュの言うことは最もだった。
資金力にものを言わせて装備だけは調えたようだが、ボス攻略は装備だけを調えれば良いというものではなく、数々の下調べの上でようやく成り立つものだ。
それを只でさえ経験の足りない者達があまつさえ初見で攻略しようと言うのだ。
アッシュの言う通り、無理というものだろう。
「それなら私達が手伝えば…!」
「馬鹿な事言うな、ここの面子は全員攻略組だろうが。
万が一1人でも欠けたら今後のボス攻略にどれだけ影響があるか……わからないお前じゃないだろう」
アッシュにそう言われ、暗い顔をするアスナ。
そんなアスナに助け船が出される。
「だけど、放っておけないだろ。
あの中には上の命令で嫌々参加してるプレイヤーだっている筈だ、今から行けばそういう人だけでも助けられるかもしれない」
「キリト君……!」
「キリト、お前なに言ってるか分かってるのか!?」
アッシュが信じられないものを見るような顔をしてキリトに言うが、キリトの顔を見た瞬間にその覚悟を理解し、押し黙った。
「俺達も行くぜ!ALFの奴らに思うことがない訳じゃないが、見殺しになんて出来ねぇよ!」
続いてクラインがそう言ったのを見て、アッシュは呆れたような怒ったような不思議な顔で長いため息をついた。
「お前らは本当にどうしようもないお人好しだ……わかった、すこぶる気は乗らないが俺も行くよ」
アッシュは自分以外が助ける気マンマンだと知り、諦めたようにそう言うと、全員でALFの後を追って走り出した。
本編で書く機会がないであろうオリ主の設定をおいておきます。
名前:アッシュ
年齢:SAO開始時19歳
身長:191センチ
体重:125キロ
詳細
3層から攻略組に仲間入りをした男。
威圧感と男らしさのある偉丈夫で、身体はリアルの仕事柄鍛え上げられている。
とある事情によりSAOに参加し、デスゲームの参加者となる。
主に重厚な刀を使っており、手足が霞む程の卓越した体術を扱う。
その拳打のスピードは尋常ではない反射神経を持つキリトをして反応出来ない事があると言わしめた。
プレイスタイルは超前衛型で、とにかく敵に肉薄して攻撃し続け、HPがレッドゾーンになってもスイッチしない時がある程攻撃重視なスタイルだが、決して無理や無謀を通そうとしてる訳ではなく、己の戦闘技能に絶対の信頼を置いてるが故の行動であり、事実彼がスイッチしない時はそのままでも問題なく戦える時であり、逆に彼がスイッチをするときは相応にヤバい状況が多い。
攻略組とは言えど、そこまで積極的に迷宮区を探している訳ではなく、専らボス戦時にタンク兼アタッカーとしての参戦が多い。