ユルシテ……ユルシテ……
第75層のボス部屋の前に攻略組のプレイヤーたちが集まっており、この攻略組のまとめ役であるヒースクリフの合図を今か今かと緊張した面持ちで待っていた。
その集団から少し外れたところに彼、アッシュもいた。
彼はキリトとヒースクリフのデュエルがあった日から今日に至るまで、ヒースクリフに覚えたある確信があった故に集団から離れて少しでもヒースクリフを観察しようとしているのだ。
まあ、その成果は芳しくはないようだが。
やがて、ヒースクリフの号令とと共にボス部屋へとなだれ込んだプレイヤー達。
しかし、そこにボスはおらず誰もが困惑するなか、誰よりも早くそれに気づいたアッシュは声をあげた。
「上だ!!」
その声に反応して各々が上を見上げると、骨で出来たムカデのようなボスが彼らの眼前へと降り立った。
「スカル……」
「リーパー……!」
誰がそう言ったか、ボスの名前が呟かれる。
誰もがその異様な姿に呆気に取られるなか、スカルリーパーが近くにいるプレイヤーに対して鎌を振りおろした。
「ボサッとすんな!!!」
そう言いながら鎌とプレイヤーの間に入ったアッシュは鎌をパリィしようと下から振り上げるようにメイスをぶつける。
が、
「(ッ!?重過ぎる!……クソが!!)」
スカルリーパーの攻撃はあまりにも重く、パリィできずに鎌を止めるにとどまった。
次は鎌を横凪に振るうスカルリーパーだが、アッシュは今度は無理にパリィしようとせずに始めから攻撃が拮抗するようにメイスを叩きつけ、先程よりも幾分か楽にしのいだ。
「こいつの攻撃力は異常だ!!タンクでもまともにくらったら死ぬと思え!!」
僅かに出来た余裕でアッシュがそう叫ぶと、ヒースクリフがアッシュに声をかけた。
「アッシュ君、片方は抑え込めるか?」
「ッ……!こっちは任せろ!」
その言葉で何をしたいのか理解したアッシュは、ヒースクリフ相手だからか一瞬考えるもすぐに了解した。
「鎌は私とアッシュ君で全て受ける!君達は側面からの攻撃に専念してくれ!」
「「「オオオォォォオオオオオ!!!!!!」」」
そこからは必死と言う言葉が正しいような戦闘だった。
鎌をヒースクリフとアッシュの2人で受けきろうとも、長い胴体を振り回しての攻撃や、大量にある足に踏みつけられたり、それらの攻撃全てが即死レベルなのもあり、スカルリーパーを倒した頃にはほぼ全員が疲労困憊で倒れ込んだり座り込んでいた。
そんな中、アッシュは少し離れた所から、集団の真ん中に立つヒースクリフを睨み付けていた。
「(クソが……間違いない、こんなに近くにいたとはな……なぁ、そうだろう?)」
アッシュはメイスを持つ手にギリリと音がする程力を入れ、ドンッ!! と言う音を鳴らしながらヒースクリフに向かって踏み込んだ。
「っ!」
気づいたヒースクリフがアッシュの方を向くが防御が間に合うタイミングではない。
攻撃がヒースクリフに当たった瞬間に、ヒースクリフにはImmortal Objectという表記が出ていた。
突然の出来事にプレイヤー達が固まるなか、アッシュはヒースクリフへと語りかける。
「なぁ、今まで何を考えていやがった?平気なツラして俺たちと一緒に戦って何を思っていやがった?
答えろ!茅場晶彦!!」
「……いつから、気づいていたのかな?」
「キリトとお前のデュエルを見た時からだ。
お前も、戦っているキリトも気づいちゃいなかったろうが、デュエル中のお前の動きは俺にとっちゃ不自然そのものだった」
「不自然か、そう言うからには確信的な理由があったのだろう」
「初めて見る二刀流を盾を使って巧みに防ぎ、返す刃の反撃をキリトが紙一重で回避する……端から見りゃ一進一退の攻防だ。
だが、お前の動きは二刀流を、更に言うならソードスキルを初めて見るような動きじゃなかった。
無意識だったんだろうが、体重移動の仕方や盾の構え方、果ては反撃のタイミングまで、二刀流のソードスキルを知らなきゃ出来ない動きをしてやがった」
「しかし、それでは確信には至らなかったんじゃないかな」
「ああ、その通りだ。知ってるだけならキリト以外にも二刀流スキル持ちがいたり、どこかのNMが使ってた可能性だってあった。
だが、さっきのスカルリーパーと戦ってるお前を見て確信した。
ユニークスキルも、ボスも、知ってるやつはこのゲームを造り上げたお前しかいないってな」
「成る程、それで、君はどうする気かな?」
「さぁな、そもそもさっきのでぶっ殺すつもりだったんだが……なぁ茅場ここでお前を殺せば、このゲームはクリア扱いになんのか?」
「いいや、ここで私を倒したところで100層まで攻略しなくてはならないのは変わらない。
もっとも、そうすることも出来るが」
「ならそうしてくれ、やんのは俺と、お前だ」
「……ふむ、良いだろう」
そう言うとヒースクリフはアッシュ以外のプレイヤーにGM権限で麻痺を付与し、ボス部屋の中心で構える。
「ルールはキリト君の時と同様、初撃決着で良いかな?」
「……いや、完全決着だ」
「了解した……では始めようか」
今、プレイヤー達の未来をかけたデュエルがスタートした。