遊戯王ZEXAL~俺の弟が可愛すぎてマジ超天使。弟のためなら何をしても構わない、というかむしろ俺に全部任せて「は?そんなことも出来ないの?」って蔑んだ目で見下してあんなことやそんなk(ry   作:雲珠

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どうも、雲珠(うず)です。
第十四話を見て下さり、ありがとうございます。

サブタイはゲーテ先生の名言です!


第十五話 あらゆる困難を乗り超えて初めて真の安息日が来る

 

「遊馬の様子が可笑しい」

「は?」

 

至極真面目な顔をしながら、自分の横を歩く拓真にそう告げた。

唐突に言われた拓真は「何言ってんだコイツ」と蔑んだ目で凍夜を見るが、当の本人は気付いていない。

 

「ここ最近、着ていく服が毎度違うし、俺が用意した弁当箱が違う物になってるし…」

「反抗期なのでは?」

「遊馬は俺に嫌いなんて言わない!言わないもん!……ぐすっ」

「男がもんとか気色悪いんですよ。あと泣くな。見苦しい」

 

立ち止まる凍夜を置いてスタスタと歩く拓真。

放っておけば少し早歩きで再び横に並んで歩いてきた。

 

「絶対、俺の遊馬に惚れた奴の仕業に違いない」

「妄想もいい加減にしてはどうですか?」

「これは妄想じゃない!俺の勘だ!」

「はいはい」

 

どちらも同じようなものでしょうと心の中で呟いた拓真は、それを口にしない代わりに溜め息を1つ零した。

 

「では私はこれで。これからバイトがあるので」

「バイト?拓真ってバイトなんかしてたっけ?」

 

凍夜が己の記憶を漁るが、悲しいことに辛辣な台詞と理不尽な暴力を受けたことしか思い出せない。

遊馬のことならばご飯の咀嚼回数から髪の毛の本数に至るまで何の迷いもなく言えるというのに。

 

「先週から始めました。まあ、短期ですけど」

「どこでやってんの?」

「冷やかしに来る気ですか?残念ながらアナタには一生縁のない場所ですよ」

 

具体性のない拓真の答えに、これは教えてくれる気はないなと凍夜は静かに思った。

しかし、秘密にされれば暴きたくなるのが人間の性というもの。

 

「じゃあ内容!内容だけ!」

「しつこい」

 

拓真はハエでも追い払うような仕草で凍夜を遠のけると、早足で自宅へと帰って行く。

その後を追うことも出来たが、そんなことをしたら確実に拳が出てくるのを容易に想像出来た凍夜は己の安寧のために遊馬に思考を移した。

 

「遊馬は渡さねぇ」

 

次の日曜日、姉の明里によって壊された盗聴器やカメラを買いに行くことにした凍夜。

あれだけ説教されたにも関わらず、凍夜は全く懲りていなかった。

 

 

 

 

 

凍夜が遊馬の服や部屋に盗聴器や盗撮カメラをこっそりと仕込むのには数日掛かった。

一歩間違えれば明里にバレて破壊されるというのもあったが、何故か遊馬の態度が普段とは違うのだ。

学校ではいつにも増してデュエルをしている姿を見るし、家に帰ってからもすぐに自分の部屋に籠っている。

今日もそうだ。いつもご飯をおかわりする遊馬がそれをせずに屋根裏部屋に行ってしまった。

 

「(何かあったのか…?)」

 

凍夜が盗聴器を仕込むのに必死になっている間に何かがあったとしか思えない。

一応遊馬の部屋に仕掛けたカメラで様子を見るが、遊馬はハンモックに寝そべっているだけだ。

 

「どうするか……行くか」

 

僅かに迷った表情を見せたが、それも一瞬のことだった。

自分の部屋を出た凍夜は真っ直ぐ遊馬の部屋に向かう。

梯子を登れば、遊馬の背中が見えた。

 

「遊馬」

「っうわ、兄ちゃん!?」

 

その背中に声を掛ければ、慌てた様子で振り返った。

目をパクチリさせながらも、何故凍夜がここにいるのかと表情が豊かに語ってくれた。

 

「悩み事か?」

「え?」

「いつもより表情が硬い。……友達に何かあったのか?」

 

ぽかんと口を開けた遊馬の頭に、凍夜の手が乗る。

まるで慰めるような動きに遊馬は思考が固まった。

そして、変態ではなく兄がいると本人を目の前に遊馬は無意識に失礼なことを考えた。

 

「な、何で分かったんだ…?」

「遊馬のことなら何だって分かるさ。それに、遊馬は優しい。その遊馬が怒るなんて友達関係以外に考えられないだろう?」

 

そう言って微笑む凍夜に、遊馬は驚かされた。

様子が変なことだけではなく、自分が怒っていることも理解されていたからだ。

変態的な行動が多い凍夜だが、その根底にあるのは揺るぎない遊馬への愛だ。

だが……

 

「(ハァハァ、もう本当遊馬可愛い。天使や女神さえも嫉妬するほどの可愛さだよ。

状況的には部屋に二人きり。これはあれだろ、神が俺に与えた試練だろ。もしくは襲えという啓示か…。押し倒してぐっちょりねっちょりした後にどろどろに甘やかしたい。

いや、その前に告白が先か?それともいっそ既成事実を作った後に逃げ道を塞いで「はい」としか言えない状況に持ちこむか…。いやいやいや!早まっては駄目だ、俺。体だけ手に入れても虚しいだけだぞ。真に欲しいのは遊馬の心!想像するんだ、俺の顔を見て怯える遊馬と、俺の顔を見て顔を赤らめた上に若干涙目な遊馬…………断然後者だろ!!前半もなくはないが、後者の状態の遊馬に「兄ちゃん。俺、兄ちゃんのことが……好き」なんて言われてみろ!軍配がどちらに上がるかなんて火を見るより明らか!……はっ!今の俺大丈夫か!?鼻血出てないか!?遊馬の表情は……よっしゃあああ!セーフ!セーフ!出てない!大丈夫だ!兄としての矜持は何とか守られた!)」

 

内心でこんなことを叫ぶ内は変態の称号は外れないだろう。

表面上の微笑みは本能を押さえるための仮面に過ぎない。

凍夜の心など全く知らない遊馬は兄が純粋に自分を心配していると思い、その口を開いた。

 

「実は…」

 

遊馬は話した。

シャークとデュエルをして負けたこと。

このままシャークを放っておけないこと。

けれど、今の自分ではどうすることも出来ないこと。

 

「シャークを助けたいのに、俺は何も出来なかった…!」

 

まるで胸に抱えたものを吐き出すように、遊馬の舌は回る。

誰にも話せない感情が言葉となって凍夜にぶつけられる。

凍夜は遊馬の言葉に返事をせず、頷きもしない。

ただ慈愛の色を帯びた瞳で遊馬を見つめている。

それが遊馬の饒舌に拍車をかけていた。

 

「シャークは言ったんだ。自分から望んでアイツ等に所に居るって。居場所のない自分に居場所をくれたって。俺、何も言えなかった…。シャークはあんな奴等と居るべきじゃないのに、それなのに…」

 

遊馬はその言葉を最後に膝を抱え、何も言わなくなった。

数秒の沈黙が流れ、凍夜がその静寂を壊した。

 

「遊馬は、神代が大切なのか?」

「当たり前だ!シャークは仲間なんだ!」

「仲間…。そうか、分かった」

 

凍夜は噛み締めるようにもう一度「仲間」と呟くと、優しい笑みを浮かべながら語り出した。

 

「神代は、4年前の全国大会で相手のデッキを盗み見て大会を失格になったんだ」

「え…?」

「当時は穢れた優勝候補、なんて言われて随分と新聞や雑誌なんかで叩かれてたみたいだな」

「兄ちゃん、何でシャークのこと…」

「遊馬に手を出したんだ。髪の毛一本残らず徹底的に調べるのは当然のことだろう?」

 

とても良い笑顔で言われた遊馬は精神的に引いた。

しかし、内容が内容なだけに表情は真剣だ。

 

「今の神代は自暴自棄なんて感情を通り越して、自分が分からなくなってるんだろう」

「自分が、分からない?」

「どうすればいいのか、何をすればいいのか。そもそも自分は何のために存在して何のために生きているのか。今まであった光が消えて、出入り口も分からない暗闇で立ち止まることも出来ずに迷子になってるんだ。一度立ち止まってしまえば、もう二度と自分が歩けないと思っている。いや、思い込んでいる」

 

凍夜は遊馬から視線を外し、天井に目を向けた。

その目はどこか遠くを見ていて、それなのに懐かしい色を孕んでいると気付いたのはアストラルだけだ。

 

「そんなの…」

「遊馬?」

「そんなの、ダメだ!」

 

強い決意を宿した遊馬が勢いよく顔を上げる。

さっきまでの硬い表情は消え、いつもの遊馬がそこに立っていた。

 

「兄ちゃん。俺は今度こそ、シャークを助ける!」

「……ああ」

(お前なら出来るよ、遊馬。現に1人、こうして救われて人間がいるからな。

 ……その対象が神代だと思うと腸が煮えくり返るどころか顔面に一発ぶちかましたい気分だが。しかし!神代はあくまでも遊馬の仲間。そう、仲間だ!恋人でも愛人でも浮気相手でも夫婦でもない。つまり、恋敵にはなりえない存在!そんな相手に敵意を向けるほど俺も心の狭い人間ではないし、遊馬が助けると言った以上、ある程度の協力もやぶさかでは無い。まあ、もし遊馬に邪な感情を一欠片でも抱いたら即抹消するがな)

 

不満げな雰囲気を醸しながらも、遊馬のことをどこか眩しそうに見る凍夜。

己の葛藤が邪魔をして素直に応援出来ない凍夜は、その代わりに遊馬の頭を撫でた。

 

「取り敢えず、今日はもう遅いから寝ろ。こんな時間まで邪魔して悪かったな」

 

遊馬をハンモックに寝かせ、有無を聞かない内にその身体に毛布を掛ける。

 

「おやすみ、遊馬」

「……おやすみ、兄ちゃん。……………ありがとな」

「(あああああああああ!!!兄ちゃんの方こそありがとうございますご褒美ですううううううう!!!ついでに超押し倒してぇええええ!!!服脱がして全身舐めたい!!)」

 

狂喜乱舞する心を無理やり抑えつけながら、凍夜は遊馬の部屋を出る。

そして自分の部屋に戻った凍夜は…

 

「ごふっ…!」

 

吐血した。

本能に抵抗した反動と脳内のキャパシティが本来の容量を超過し、大暴走した結果だ。

そのまま気絶するように眠った凍夜の顔は実に清々しかった。

 

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