遊戯王ZEXAL~俺の弟が可愛すぎてマジ超天使。弟のためなら何をしても構わない、というかむしろ俺に全部任せて「は?そんなことも出来ないの?」って蔑んだ目で見下してあんなことやそんなk(ry 作:雲珠
第十五話を見てくださり、ありがとうございます。
今回、凍夜は登場しません。
主に拓真にスポットを当てています。
ついでに言うと、オリキャラも登場します。
今までの話の中で一番長いです。
始めて2万文字超えました…。
サブタイはソロー先生の名言!
「勘弁して欲しいものです…」
拓真は重々しい溜め息を吐きながら、目の前の光景にそう言わざるを得なかった。
凍夜と書いて頭の痛くなる原因と読む忌々しい存在は学校が終わってすぐ「今日はちょっと用事があってな」と苦々しい顔をしながらどこかに行った。
自分が振り回されなくて済むと喜んだ結果が今の現状だと言うならば、この世に神などいない。
仮に居たなら己の手で殺そうと拓真は物騒な決意を抱き、鉛でも背負っている様な足取りで現場に向かった。
「俺達にタッグデュエルを挑もうというのか?」
「ハッ、馬鹿な奴等だ」
「(数は5人のようですが、仲間割れ……でしょうか?)」
聞こえてくる言葉に冷静な判断を下しつつ、拓真はさらに近付く。
3人の大人たちと対峙する2人の子供。
それだけでも嫌な状況なのに、拓真はその内の1人が結構どころの頻度では表せない程に見慣れた人物がいた。
もう引き返してしまおうと思ったが、拓真がその行動に移る前に大人組と目が合った。
「(これは覚悟を決めたほうが良さそうですね)」
諦めることに慣れている拓真はせめてプライドだけは保とうと面倒臭そうな顔を一転させ、笑顔を浮かべた。
「こんばんは。今夜はとても良い月夜ですが、こんな場所に何か御用でも?」
隣人に話しかけるような気楽な声色に全員が一斉に拓真を見た。
そして拓真が見慣れた人物は拓真を指さしながら「ああー!!」と大声を上げた。
想像通りの反応に拓真は思わず苦笑いを浮かべる。
「兄ちゃんの友達の、えっと、えーっと……あ、拓真!……さん!」
「私はあんな変態の友達ではありません。ついでに取って付けたような敬称も不要ですよ」
友達、の時点で拓真は不快な表情を隠そうともせず全面的に押し出した。
ここが人前でなかったら盛大な舌打ちもプレゼントされていただろう。
「何で拓真の兄ちゃんがここに?」
「私の格好を見てわかりませんか?夜間警護のバイトです」
拓真は現在、青とも紺とも色の見分けがつかない厚いスーツを着ていた。
邪魔だからという理由で左手に持っていた警棒を被れば、確かに警察の服装だ。
そして拓真の発言を聞いた大人組は緊張から解かれたように鼻を鳴らした。
「ハッ、なんだ。ただのバイトの餓鬼かよ」
「不法侵入と窃盗未遂で本職呼んで欲しくなければ黙ってて頂けますか?」
「んだとガキ!」
「おや、聞こえませんでしたか?それともその耳はお飾りですか?装飾品ですか?ああ失敬、私としたことが難聴を患っているか単純に話の聞かない馬鹿か、という選択肢を忘れていました。申し訳ありません。それで難聴と馬鹿のどちらでしょうか?ああ、これまた失敬。難聴だとしたら私がこうして話していたとしても聞こえませんね。いま筆談用の紙とペンを用意致しますので少々お待ち頂けますか?」
煽るように大袈裟な手ぶりで話す拓真。
大人組は怒りに顔を赤くさせ、遊馬は恐怖で顔を青くさせる。
陵牙は軽く笑いながら「良い性格してるな」と感心していた。
ある意味では遊馬よりも忍耐強い拓真にとって、たかが窃盗未遂の不法侵入者など大した問題ではないのだ。
いや本当に。
なにせ身近に窃盗、脅迫、賄賂、盗撮、盗聴、器物損壊、情報漏洩、公然
ああ、そういえばストーカーもあったなと拓真は凍夜の罪状を追加した。
「(まあ、不法侵入を許した時点で雇い主に文句をつけられるのは嫌なのでさっさとご退場してもらって報告書に「特に問題なし」と書かせて頂きましょう)」
凍夜のことを変態やら犯罪者やら言っているが、拓真も拓真で黒かった。
仮に責任問題を取らされてもバイトの身ですし。
と、ちゃっかりと保身の道を用意する程度には拓真もえぐい思考回路をしているのだ。
「貴方がたの用件は十中八九、ここに展示されているレアデッキの窃盗。バイトとはいえ、仕事の関係上見過ごす訳にはいきませんね」
真面目な顔で話す拓真に、全員の顔に緊張が走る。
その雰囲気を肌で感じ取った拓真は遊馬と凌牙と近付き、それぞれの肩に片手を乗せて口元を僅かに綻ばせた。
「どうでしょう?3対3のタッグデュエルで決着をつけるというのは」
「はっ、おもしれぇ。どうなるか分かってるんだろうな?」
「このカードがある限り、俺達は負けはねぇ」
「その余裕ぶった面がいつまで続くか見物だぜ」
「猿が何か吠えていますが、お互い頑張りましょう」
『誰が猿だクソ餓鬼!!!』
まるで怒声など聞こえていないように振舞う拓真は、遊馬と凌牙に微笑みかける。
堂々とした風体に遊馬の心に尊敬の念が生まれ、凌牙は鼻で笑い返した。
「おう!かっとビングだぜ!」
「ふ、誰に言ってる」
「……では、始めましょう」
全員が目に光を宿し、デュエルディスクを構える。
『
陸王 LP4000
遊馬 LP4000
海王 LP4000
凌牙 LP4000
雷王 LP4000
拓真 LP4000
「先行は貰った!ドロー!俺は裏守備表示でモンスターをセット!さらにカードを2枚伏せてターンエンド」
「………」
「………」
カードを伏せる直前、陸王が海王と雷王に目配せしたのを凌牙と拓真は見逃さなかった。
しかし確信がない以上口には出せず、そのまま静寂をキープした。
「分かってらぁ!よし来た、俺のターン!ドロー!俺は《ズババナイト》を召喚!」
《ズババナイト》ATK1600 Lv3
黄金の甲冑に身に纏い、赤いマントを靡かせたモンスターが遊馬のフォールドに降り立つ。
「やってやるぜ!裏守備モンスターを攻撃だ!」
「待て、遊馬!」
「えっ!?」
突然の制止に出鼻を挫かれた遊馬は驚いた表情で凌牙を見る。
それが演技では無いと分かった拓真は「ああこれ、ルール分かっていませんね」と心の中で呟いて説明を凌牙に丸投げした。
「タッグデュエルは全てのプレイヤーが1ターン終えるまで攻撃は出来ない」
「そうなの?なら、ターンエンドだ!」
「フン、ド素人が。このデュエル楽勝だな!」
「俺のターン、ドロー!俺は《リーゼント・ブリザードン》を召喚!」
《リーゼント・ブリザードン》ATK1400 Lv4
「カードを2枚伏せてターンエンド!」
「俺のターン、ドロー!俺は《ビッグ・ジョーズ》を召喚!さらに《シャーク・サッカー》を特殊召喚!このモンスターは魚族モンスターが召喚された時、手札から特殊召喚出来る」
《ビッグ・ジョーズ》ATK1800 Lv3
《シャーク・サッカー》ATK200 Lv3
「レベル3のモンスターが2体……やる気か?」
「俺はレベル3のビッグ・ジョーズとシャーク・サッカーをオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ《潜航母艦エアロ・シャーク》!」
《潜航母艦エアロ・シャーク》ATK1900 ORU2
地面から浮上するように現れたエアロ・シャークは凌牙の敵を睨みつける。
「1ターン目からエクシーズ召喚!やっぱシャークはスゲェや!」
「モンスター効果発動!オーバーレイ・ユニットを1つ使うことで手札1枚につき400ポイントのダメージを相手に与える。俺の手札は4枚。1600ポイントのダメージを陸王に与える!」
《潜航母艦エアロ・シャーク》ATK1900 ORU2→1
「ぐううっ…!」
陸王 LP4000→2400
エアロ・シャークから放たれたミサイルが陸王のライフを削る。
しかし相手は減ったライフを見て笑った。
「へっへっへ、そう来ると思ったぜ」
「罠カード発動!《ブリザード・エッグ Lv5》!このカードは効果ダメージが発生した時、ダメージを受けたプレイヤーの手札からレベル5のモンスター1体を特殊召喚する。ただし、特殊召喚出来なかった場合、プレイヤーは500ポイントのダメージを受ける」
「俺はレベル5の《ボンタン・ラヴァザウルス》を特殊召喚する!」
《ボンタン・ラヴァザウルス》ATK2100 Lv5
全身から熱気を発した恐竜が陸王の場に現れる。
「次は俺が行くぜ。罠発動!《フレイム・エッグ Lv5》!」
「効果は先程の罠カードと同じようですね」
「その通り!俺はレベル5の《メンチ・アイスバーグドン》を守備表示で特殊召喚する!」
《メンチ・アイスバーグドン》DEF2100 Lv5
ボンタン・ラヴァザウルスとは一転、冷気を放つ恐竜が海王の場に現れる。
「見たか!俺達の完璧なコンビネーションを!」
「俺達に敵う奴なんていねぇんだよ」
「へっ、タッグデュエルで無敵の俺達に挑んだことを後悔させてやるぜ」
「弱い犬ほどよく吠える、という諺を知っていますか?」
「その減らず口を黙らせてやる!罠発動《ガンつけ Lv5》!自分たちのフィールドにいるレベル5のモンスター1体につき、500ポイントのダメージを与える!俺達の場にはレベル5のモンスターが2体。よって1000ポイントのダメージを食らえ!」
「く…っ」
拓真 LP4000→3000
ラヴァザウルスとアイスバーグドンのブレスが拓真を襲い、ライフを削る。
僅かに歪んだ顔に相手はニヤリと口角を上げた。
「拓真の兄ちゃん!」
「大丈夫です。この程度のライフダメージ、何ともありません。………やはり、ソリッドヴィジョンは慣れませんね」
心配する遊馬に笑いかけた拓真は、哀愁漂う顔でぽつりと呟いた。
あまりにも小さい呟きは誰にも聞こえず、その意味を理解出来る者はいない。
「…俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド!」
「俺のターン、ドロー!魔法カード《トレード・イン》を発動!手札からレベル8のモンスター1体を墓地に捨てることでデッキからカードをドローする!俺は《神龍の聖刻印》を墓地に捨てデッキからカードを2枚ドロー!そして《ライオウ》を攻撃表示で召喚!」
《ライオウ》ATK1900 Lv4
バチバチと雷を纏った青いモンスターが雷王のフィールド上に現れる。
比較的有名なそのモンスターの効果を知ってる拓真、凌牙、アストラルは「厄介なモンスターが出てきたな」と心の中で声を揃えた。
「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
「やっと私のターンですか。流石に3対3だと長いですね。ドローフェイズ、ドロー。スタンバイフェイズ、メインフェイズ1に移行します。永続魔法《炎舞‐「
《武神‐ヤマト》ATK1800→1900 Lv4
黒い甲冑を着たモンスターが拓真のフィールドに姿を現す。
甲冑の隙間からは光が零れ、黒い鎧を赤く照らしている。
「メインフェイズ2に移行し、カードを3枚セットします。エンドフェイズ、ターンエンドです」
本来ならばエンドフェイズ時にヤマトの効果を発動することが出来るが、ライオウが場にいるため無効にされる。
拓真は内心で苦々しく思いながらも、相手を調子づかせないために感情を表に出すことはなかった。
「(………おや?)」
完全にライオウが自分のデッキに刺さっているため、対処法を考えていた拓真の耳に僅かな物音が聞こえてくる。
その音に反応して視線を動かすと、中学生らしき少女と少年がD-ゲイザーを装着した状態でこちらのデュエルを見ていた。
また侵入者かと呟きそうになったところで、拓真は自分がその2人の顔に見覚えがあるのに気付いた。
「(……ああ、そういえば遊馬君と一緒にいましたね)」
いつだったか、凍夜を連れ戻す時に見かけたなと思い出した拓真は2人のことを放置することにした。
遊馬の友達ならそう危険なこともしないだろうという判断だ。
もっとも、拓真の中での危険人物の基準が凍夜なので安全ラインはかなり広い。
少なくともガラス窓を割って建物内に侵入する程度だったら拓真の中では「ちょっと危険っぽいけど安全」に位置するくらいにはデッドゾーンの基準値が高い。
「俺のターン、ドロー!俺は裏守備モンスターを攻撃表示に変更!現れろ《パンチ・フレイムザウルス》!パンチ・フレイムザウルスのリバース効果発動!このモンスターのレベルを1つ上げ、レベルを5とする!」
《パンチ・フレイムザウルス》ATK1800 Lv4→5
「レベル5のパンチ・フレイムザウルスとボンタン・ラヴァザウルスをオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ《No.61 ヴォルカザウルス》!」
《ヴォルカザウルス》ATK2500 ORU2
「ナンバーズ!これが、アイツの…!」
「やったぜ兄ちゃん!」
マグマから現れるように陸王のフィールドに姿を見せるモンスター。
全員がヴォルカザウルスを見上げる中、この中で唯一、ナンバーズを知らない拓真が首を傾げた。
「(わざわざ番号が振ってあるということは、このカード以外にもナンバーズと名のつくモンスターが存在する…?そういえば、以前どこかで同じような名前を聞いた気が……駄目ですね、思い出せません)」
あやふやな記憶を打ち切り、デュエルに集中するように再びヴォルカザウルスを見つめる。
「もうこっちのモンだ。俺達の恐さを教えてやるぜ!ヴォルカザウルスの効果発動!オーバーレイ・ユニットを1つ使うことで相手モンスター1体を破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!エアロ・シャークを破壊!さあ凌牙、攻撃力分のダメージを受けろ!裏切り者が!」
《No.61 ヴォルカザウルス》ATK2500 ORU2→1
「ぐあぁああ!」
凌牙 LP4000→2100
「シャーク!」
「神代君!」
「ガキ共が。凌牙の心配をしている場合か?次はスババナイトを破壊だ!」
《ヴォルカザウルス》ATK2500 ORU1→0
「うわあぁああ!」
遊馬 LP4000→2400
「2人共、大丈夫ですか!?」
「大丈夫だ!けど、なんてパワーだ…!」
心配する拓真に遊馬は力強く頷いてみたせたものの、その効果に驚きを隠せない様子だった。
「フッハッハッハ!思い知ったか!俺達の力を!」
「これが俺達のヴォルカザウルスの力だ!」
「もうお前のナンバーズを貰ったも同然だな!ハッハッハ!」
「猿が三匹揃ってキーキー喚かないで頂けますか?耳障りです」
オーバーレイ・ユニットを使い果たしたヴォルカザウルスを見ながら拓真がそう言うと相手側、特に陸王からブチリと何かが切れた音が聞こえた。
「本当に口の減らねぇガキだ!俺はヴォルカザウルスでヤマトに攻撃!」
「罠カード《和睦の使者》を発動します。モンスターは破壊されず、ライフダメージは0となります」
「チッ、命拾いしやがったか」
ヴォルカザウルスのブレスを受け止めた薄いベールは役目を終えると静かに消える。
「俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」
「くっ、俺のターン、ドロー!《ゴブリンドバーグ》を召喚!このモンスターの召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスターを特殊召喚出来る!俺は《ガガガマジシャン》を特殊召喚!」
《ゴブリンドバーグ》ATK1400 Lv4
《ガガガマジシャン》ATK1500 Lv4
「かっとビングだ、俺!レベル4のガガガマジシャンとゴブリンドバーグをオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ《No.39 希望皇ホープ》!」
《No.39 希望皇ホープ》ATK2500 ORU2
まるでロボットのような白いモンスターが遊馬のフィールドに現れる。
そのモンスターの肩には赤い文字で39と刻まれている。
「出てきたな、ナンバーズ!」
「この時は待っていたぜ!」
「永続罠《アバランチ》発動!このカードが発動した時、召喚されたエクシーズモンスターは攻撃不可となる!」
罠カードから吹き荒れる吹雪がホープを凍りつかせ、氷像へと変えてゆく。
全身を氷漬けにされたホープは空中に浮くことも出来ずに地面に足をついた。
「ああ…!ホープが!」
「さらに、モンスター効果を発動すればプレイヤーに500ポイントのダメージだ!」
「そんな!それじゃあホープの効果が使えない!」
「エクシーズモンスター専用
ホープを封じられて悔しそうな表情を浮かべる遊馬と凌牙を見た拓真は、その雰囲気を壊すように明るい口調で話しかける。
「そんなに悲観するような事ではありませんよ、遊馬君、神代君」
「拓真の兄ちゃん…?」
「対処法は2つありますが……要はあの罠カードを破壊すればいいことです」
拓真からしてみればバーン内臓のデモンズチェーン又は拷問車輪の劣化版。
ダメージは受けるが効果を無効化されている訳でも表示形式を縛られている訳でもないし、神警神宣奈落強脱を発動されるよりはマシだという想いが楽観的なセリフを後押ししていた。
「へへっ、拓真兄ちゃんの言う通りだな!俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ!」
「ナンバーズを封じりゃこっちのモンだ!俺のターン、ドロー!メンチ・アイスバーグドンを攻撃表示に変更!」
《メンチ・アイスバーグドン》DEF2100→ATK1300 Lv5
「メンチ・アイスバーグドンで凌牙に
「俺はホープの効果を発動!モンスター1体の攻撃を無効にする!」
全く躊躇のない遊馬の発言に、凌牙が驚いたように遊馬を見た。
「馬鹿な!アバランチの効果を忘れたのか!?500ポイントのダメージを食らうぞ!」
「俺達は仲間だって言っただろ!ムーンバリア!」
《No.39 希望皇ホープ》ATK2500 ORU2→1
凍りついたホープがアイスバーグドンのブレスから凌牙を守るように立ちはだかる。
「ハッ、アバランチの効果を食らえ!」
「うわぁあああ!」
遊馬 LP2400→1900
吹雪が遊馬を吹き飛ばし、ライフを削る。
「くっ、アイツ、余計なマネを…」
「美しい友情ごっこか?良かったなぁ、いい仲間が出来て。だったらもう一発食らわせてやるよ!俺はリーゼント・ブリザードンで凌牙に
「希望皇ホープの効果発動!ムーンバリア!ぐああぁああ!」
《No.39 希望皇ホープ》ATK2500 ORU2→1
遊馬 LP1900→1400
再び相手モンスターの攻撃から凌牙を守るようにホープが前に出る。
そしてオーバーレイ・ユニットを使ったことで遊馬のライフが吹き荒れる吹雪によって削られていく。
凌牙はそんな遊馬を見て顔を伏せた後、相手の方に振り向いた。
「いってて……くっそー」
「どうした?そのまま寝てても良いんだぜ」
「うるせぇ!ちょっと休憩してただけだ!」
遊馬は立ち上がると凌牙の隣に立つ。
「勝負はまだまだこれからだ!」
「(青春してますねぇ)」
拓真は微笑ましいモノを見るような目を遊馬と凌牙に向ける。
そして脳裏にチラついた凍夜の存在を忘れるように頭を振った。
周りに何と言われようが、拓真は凍夜を友達だと思ったことはないし、恐らくこれからも無いだろうという確信めいた気持ちがあった。
拓真にとって凍夜という存在は不快の塊でしかないのだ。
「罠発動!《ヴォルカシェア》!このカードの効果で俺は海王のモンスター、リーゼント・ブリザードンを守備表示にする!」
思考の波に漂っていた拓真は陸王の声にハッと顔を上げる。
今はデュエル中。他のことを考えている暇はないと心を切り替えた。
「え、なんで仲間のモンスターをわざわざ守備表示に…」
遊馬の疑問は海王が動くことによって解消される。
「やったぜ兄ちゃん!おかげで手札から魔法カード《待機の氷洞》を発動出来るぜ!このカードは守備表示モンスターのレベルを1つ上げる!俺はリーゼント・ブリザードンのレベルを4から5にアップする!」
「レベル5のモンスターが、2体!」
「俺はレベル5のメンチ・アイスバーグドンとリーゼント・ブリザードンをオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ《No.19 フリーザードン》!」
《No.19 フリーザードン》DEF2500 ORU2
吹き荒れる雪の中から氷柱のような体を持ったモンスターが姿を現す。
「2体目のナンバーズ…!」
「フリーザードンの効果発動!オーバーレイ・ユニットを1つ使うことで仲間のエクシーズモンスターのオーバーレイ・ユニットを全て復活させる!」
「何!?」
《No.19 フリーザードン》DEF2500 ORU2→1
《No.61 ヴォルカザウルス》ATK2500 ORU0→2
2本の赤い光がヴォルカザウルスの周りを回るように浮遊し始める。
「オーバーレイ・ユニットが戻ったってことは、これでまたあの効果が…」
「アイツ等…!!」
「どうやら完全に黒のようですね。忌々しい…!」
「しゃ、シャーク?拓真兄ちゃん?一体どうしたんだ?」
突然、怒りを露わにする凌牙と拓真に遊馬は驚きながらも声をかけた。
今のプレイにこの2人が怒るようなことでもあったのかと考えるが、遊馬にはその答えが見つからない。
「俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」
「俺達にタッグデュエルで敵うヤツなんかいねぇんだよ」
「さっさと諦めるんだな。ハッハッハ!」
「姑息な手段しか使えない猿以下のクズが口を開かないで頂けますか?こちらの知性まで下がってしまいそうですので」
「やはりイカサマか!」
「イカサマ…?」
凌牙の言葉に反応した遊馬が同じ言葉を反復する。
その意味を聞く前に相手が先に口を開いた。
「はぁ?何のことだ?」
「とぼけるな!セコいイカサマなんかしやがって!」
「デュエリストの風上にも置けませんね。クズ共が」
凌牙と拓真が揃って相手を睨みつける。
特に拓真の方は空気さえも凍るのではないかと思うほど冷たい目で相手を見下している。
「な、なあ!一体どういうことだ!?」
「ケチな野郎がやりそうなことだぜ。アイツ等、初めからお互いに何のカードがどの順番で入ってるのか覚えていたのさ。恐らく、デュエルディスクのオートシャッフル機能にも細工してたんだろうよ」
「あ、そうか!だからあの時、レベル5のモンスターが都合良く手札にいたのか……」
「普通、レベル5なんていう面倒なモンスターを2ターンで場に揃えてエクシーズ召喚まで持ち込むなんて相当のプレイングでなければ無理です。彼等にそれほどの実力があるとは思えませんでしたし、疑って蓋を開けてみれば案の定、イカサマでしたね」
呆れた表情で相手は見る拓真だが、その目には強い怒りが宿っている。
しかし、相手はそんな拓真や凌牙に対して鼻で笑うだけだ。
「何がイカサマだ。因縁つけてんじゃねーよ」
「イカサマをやったのはテメーだろ、凌牙!お前が全国大会でやったイカサマだよ!」
「控え室で相手のデッキを盗み見たテメーがイカサマだの何だの言えた口か!」
相手の言葉に凌牙は表情を曇らせ、下を向いた。
そして、抑揚のない絞り出すような声で呟く。
「俺は……負けるのが、恐かった」
「優勝候補が負けるのが恐かったぁ?ハッハッハッハ!」
「無様だなぁ。ええ!?ぎゃはははは!」
「情けねぇ野郎だぜ!ふはははは!」
笑いながら罵倒する相手の言葉を受け、凌牙は諦めるように目を閉じる。
「神代く「笑うなぁあああぁあぁぁあ!!!!!」
「ッ!?」
このままではいけないと察した拓真が口を開く前に、遊馬の叫びが響く。
ハッと驚き、目を見開いた凌牙は遊馬に振り向く。
「何が可笑しいんだ!負けるのが恐くて、何が可笑しい!!
俺だって恐かった。負けるって分かった瞬間に急に恐くなって、だからナンバーズを使っちまった!シャークを助けるためだとか言ったけど、本当は負けるのが恐かったんだ…。俺は嘘をついていた!」
「(このデュエルの話、ではありませんね)」
まるで罪を告白するかのような遊馬の叫びに、拓真は完全に口を閉じた。
この話に自分が口出しをすべきではないと分かったからだ。
「でも、だからこそ思う。デュエルだけには嘘をつきたくないって!シャークもきっと同じだ。だからシャークのデュエルは本物なんだ!相手がどんなに卑怯な手を使って来ても、俺達は正々堂々、勝つ!それが今の俺達のデュエルなんだ!!」
真っ直ぐ前を見つめる遊馬。
どこまでも上を見るその姿は、酷く眩しい。
「(神代君が一番欲しかった言葉、なんでしょうね)」
世間から信用を失った凌牙に対して、遊馬はいとも簡単に手を伸ばした。
何の見返りも求めない無償の信頼は凌牙にどう映っているのか。
そんなものは、今の凌牙を見れば一目瞭然だろう。
だからこそ、拓真は遊馬の言葉を馬鹿にする相手が許せなかった。
嘲笑する相手に、今度は拓真の堪忍袋の緒が切れた。
「では私からも言わせて頂きましょうか。デュエリスト失格な最低人間かつ社会不適合者の犯罪者共。頭の悪い猿でも分かるように懇切丁寧に罵倒して差し上げますので耳の穴かっぽじってよぉーく聞いていて下さいね?この【自主規制】のことしか頭にない【自主規制】がカードに触っているだけでも不愉快なのに【自主規制】がデュエルをしているというのが本当に堪えられないんですよ私は。この【自主規制】が。そもそもイカサマをしておいてその偉そうな態度は何です?馬鹿ですか?阿呆なんですか?痴呆症を患ってるんですか?頭に脳味噌詰まってないんですか?せめて猿並の知性か人並みの品格を身につけてから出直して下さいます?犬のほうがまだ人の言葉を理解しますよ。【自主規制】と【自主規制】が足りてないクセに人と同じ立場になったとか思い上がってるんじゃないですか?これだからアナタ方は【自主規制】なんですよ汚らわしい「拓真兄ちゃんストップ!ストップ!」ああでも、確かにイカサマしているかしていないかなんて大した問題ではありませんね。どうせイカサマしててもアナタ方のような【自主規制】が私達に勝てるとは到底思いませんから。ええそれこそ天地がひっくり返っても絶対に有り得ませんね。そもそもこちらの年齢言えます?中学生と高校生相手に三十路超えた大人3人がかりで1人も倒せてないとか引きますね。本当ドン引きですよ。プレイングがお粗末すぎて私の方が悲しくなってきますね。それでイカサマを疑うなという方が無理難題だとは思いませんか?誰がどう客観的に見ても疑わざるを得ない状況だと思うんですよ。勿論、個人的な感情が含まれている可能性も無きにしは在らずですが……ねぇ?よく考えてみて下さい、明らかに年齢が上なら経験もそれなりに上のはずでしょう?にも関わらず何で1人も倒せていないのですか?せめて私達のフィールドをガラ空きにしてからなら上から目線のセリフも偉そうな態度も納得出来ますが……ああ、すみません、どうせ【自主規制】なアナタ方には無理難題どころではなくて試練ですね、試練。【自主規制】の頭に合わせられなくてどうもすみません。IQが20違えば会話が成立しないというのは有名な話でしたのに私としたことがうっかりしていました。それで、どの程度のレベルにまで知性を落とせば理解して頂けるでしょうか?それとも話す言語自体が違うのでしょうか?生憎と勉強不足でして日本語と英語しか話せないんですよ。そちらはえっと、猿語ですか?犬語ですか?流石に私としても人間のプライドがあるので永遠とキーキーワンワンと喚くわけにもいかないんですよ。せめてジェスチャーで意思疎通をお願いしてもよろしいですか?ではまず私の質問に頷く動作から「拓真兄ちゃんストーーーーーップ!!!!」
「おい、流石の俺もそれ以上は可哀想だと思うぞ。……いや、今のでも十分過ぎるくらいだが」
「笑顔なのに、笑顔じゃない……恐い」
ストップをかけられた拓真は何故か震えている遊馬と凌牙の言葉に対して首を傾げた。
まるで何を言われたのか分からない、とでも言いそうな顔だ。
「えっと、罵倒度が足りませんでしたか?もっと厳しめにするべきでした…」
「罵倒度!?」
「100を基準として今のだと30程度でしょうか?まだまだ言い足りないくらいですね」
「えっ」
これで30なのか。恐ろしい。
デュエルする前に自分の心が折られると確信した遊馬、凌牙、アストラルは本気で拓真を敵に回さない決意を固めた。
「ではお説教も良い所で区切りが着いたのでデュエルを再開しますか。どうもすみません、時間を取らせてしまって」
お説教で済ませていいレベルなのかは分からないが誰も突っ込まなかった。
誰だって自分の命は惜しいのだ。こんな所で散らしたくはない。
「ふ、フン!こ、こここの状況で俺達に勝とうなんて無理に決まってるぜ!」
「そ…その通りだ!お前たちの場には氷漬けにされたホープとヤマトのみ!」
「ぎゃく、ぎゃ、逆転出来るモンならしてみやがれ!」
『………』
完全にビビっている。しかも若干逃げ腰だ。
しかし拓真を除く全員が無様だとは思わなかった。
あれだけ馬鹿にされていた凌牙でさえも僅かな同情心を向けた。
「遊馬」
「シャーク?」
「このデュエル、勝つぜ!」
「!…おう!」
「俺のターン、ドロー!俺は手札から魔法カード《エクシーズ・ギフト》を発動!フィールドにエクシーズモンスターが2体以上いる時、デッキからカードを2枚ドローする!」
「(上手い)」
口には出さなかったが、拓真は凌牙のプレイングに感嘆した。
フィールドにライオウがいるため、ドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加えることは出来ない。
しかし、エクシーズ・ギフトの効果はカードをドローする効果。
これなら何の問題もない。流石としか言いようがない。
「俺は《ハリマンボウ》を召喚!さらに手札から魔法カード《浮上》を発動!自分の墓地から水属性モンスター1体を表側守備表示で特殊召喚!現れろ、ビッグ・ジョーズ!」
《ハリマンボウ》ATK1500 Lv3
《ビッグ・ジョーズ》DEF300 Lv3
「これは…!」
「レベル3のビッグ・ジョーズとハリマンボウをオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ《ブラック・レイ・ランサー》!」
《ブラック・レイ・ランサー》ATK2100 ORU2
黒い身体に紫色の翼、そして手には赤い槍を持ったモンスターが凌牙のフィールドに姿を現す。
「俺はブラック・レイ・ランサーの効果発動!オーバーレイ・ユニットを1つ使うことでヴォルカザウルスのモンスター効果をエンドフェイズまで無効にする!」
「何!?」
「これでナンバーズが倒せる!」
「はい?えっと、ナンバーズが倒せる…とは?」
遊馬の発言に疑問を覚えた拓真が質問を投げかける。
そして遊馬から「ナンバーズはナンバーズでしか倒せない」という答えを貰った。
「(……それ、普通に戦闘破壊されない、という効果でもいいのでは)」
恐らくは誰もが思うようなことだろうが、拓真はあえて口にはしなかった。
拓真は雰囲気を優先したのだ。
「だが、攻撃力はヴォルカザウルスのほうが上だ!」
「甘いぜ、陸王!ハリマンボウの効果発動!このカードが墓地に送られた時、ヴォルカザウルスの攻撃力が500ポイント下がる!」
《No.61 ヴォルカザウルス》ATK2500→2000
ヴォルカザウルスの足元に黒い穴が出現し、そこから墓地にいるハリマンボウの針がヴォルカザウルス目掛けて発射される。
思わぬ攻撃にヴォルカザウルスはよろめく。
「これでブラック・レイ・ランサーの攻撃力が上回った!」
「俺はブラック・レイ・ランサーでヴォルカザウルスを攻撃!行け!ブラックスピア!」
「罠発動!《代償交換》!このカードはバトルを無効にする代わりに、プレイヤーがヴォルカザウルスの攻撃力分のダメージを受ける!」
海王 LP4000→2000
ヴォルカザウルスの炎が海王に襲いかかり、ライフを減らす・
「アイツ、身代りになりやがった!」
「俺が攻めて、海王が守り、雷王が奪う」
「これが俺達のデュエル!」
「俺達の戦い方よ!」
「罠発動!《灼熱の淵‐ヴォルカ・アビス》!仲間が効果ダメージを受けた時、相手の手札を確認し、モンスターカードがあった場合デッキに戻す!俺はお前の手札を確認する!」
「な、何で拓真兄ちゃん…?」
「恐らく、雷王の次のターンプレイヤーが私だからでしょう。まあ妥当ですね」
陸王が指名したのは拓真。
指名された拓真は潔く手札の内容を全員に公開した。
《死者蘇生》
《武神器‐ヘツカ》
拓真の手札にはモンスターカードが1枚。
そして、拓真の手札に死者蘇生のカードをあることを知った相手は警戒レベルを上げる。
「さあ、モンスターをデッキに戻しな!」
拓真がヘツカをデッキに戻すとデュエルディスクのオートシャッフル機能が作動する。
手札にモンスターが1枚もなく、更には内容を公開されたというのに拓真の表情に変化はない。
というのも、拓真にしてみればモンスターカードをデッキに戻す行為には何のデメリットも無かった。
それどころか、手札確認に乗じて味方にまで内容を公開出来たのは有り難いとさえ考えていた。
「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー!俺もそろそろ行かせて貰うぜ。《OToサンダー》を攻撃表示で召喚!そして効果発動!1ターンに1度、このカード以外の雷族・光属性・レベル4のモンスターを召喚する。俺は《OKaサンダー》を召喚して効果発動!1ターンに1度、手札からこのカード以外の雷族・光属性・レベル4モンスターを召喚する。OToサンダーを召喚して効果発動!《ONeサンダー》を召喚する!」
《OToサンダー》ATK1300 Lv4 (2体)
《OKaサンダー》ATK1400 Lv4
《ONeサンダー》ATK900 Lv4
それぞれ緑、紫、赤色の服を着たモンスターが雷王の場に現れる。
サンダーの名の通り、金色の髪がバチバチと音を立てている。
「レベル4のモンスターが5体!?」
「俺はレベル4のライオウ、OToサンダー2体、OKaサンダー、ONeサンダーでオーバーレイ!5体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ《No.91 サンダー・スパーク・ドラゴン》!」
《No.91 サンダー・スパーク・ドラゴン》ATK2400 ORU5
空から轟雷と共に水色のドラゴンが姿を現す。
そのドラゴンが天高く吠えれば、雷雲がゴロゴロと嫌な音を立てた。
「これが、3体目のナンバーズ…!」
「行くぞ!俺はサンダー・スパーク・ドラゴンの効果発動!エクシーズ素材を5つ使うこと相手フィールド上のカードを全て破壊する!」
《No.91 サンダー・スパーク・ドラゴン》ATK2400 ORU5→0
「何だと!?」
「ってことは…!」
「全て消えてなくなれ!サンダー・スパーク・ボルト!」
遊馬、凌牙、拓真のフィールド上にいくつもの落雷が落ち、全員が激しい光に目を閉じた。
「ホープ!!」
チカチカとする目を開けて遊馬が自分のフィールドを見ると、そこには破壊されたハズのホープが顕在していた。
それどころか、凌牙の伏せカードや拓真のヤマトも無事である。
「ど、どういうことだ!?何故破壊されていない!?」
「ご自身のモンスターを見てみれば分かりますよ」
「何!?」
《No.91 サンダー・スパーク・ドラゴン》ATK2400→2800 ORU0
拓真の言葉に雷王がサンダー・スパーク・ドラゴンを見れば、攻撃力が400ポイントアップしていた。
そして、拓真の場に伏せられていたカードが1枚なくなっていることに気付く。
「まさか!」
「速攻魔法《禁じられた聖杯》を発動させて頂きました。このカードは選択したモンスター1体の攻撃力を400ポイントアップさせる代わりに効果をエンドフェイズ時まで無効にします。よってサンダー・スパーク・ドラゴンの効果は不発です」
「なっ、コイツ…!」
たった1枚のカードで最悪の状況を防ぎ切った拓真に警戒と称賛の二つの心情がぶつけられる。
特にエクシーズ素材を全て使わされた雷王は拓真に強い敵意を向けた。
「チィッ、だがまだ攻撃が残っている!俺はサンダー・スパーク・ドラゴンでヤマトに攻撃!」
「ぐううぅう!」
拓真 LP3000→2100
ヤマトに向かって放たれた雷がそのまま拓真の体を貫く。
随分と吹っ飛ばされた拓真は、雷が当たった腹部を押さえながら立ち上がる。
「拓真兄ちゃん!」
「だ、大丈夫です…」
とても大丈夫そうには見えなかったが、微笑む顔を向けられた遊馬は言葉を飲み込むしかなかった。
「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
《No.91 サンダー・スパーク・ドラゴン》ATK2800→2400
ターンを終了したことで禁じられた聖杯によって変動していたサンダー・スパーク・ドラゴンの攻撃力が元に戻る。
「私のターン。ドローフェイズ、ドロー。スタンバイフェイズ、メインフェイズ1に移行します。《武神‐アラスダ》を攻撃表示で召喚。魔法カード《死者蘇生》を発動して自分の墓地にいる《武神‐ヤマト》特殊召喚します」
《武神‐アラスダ》ATK1600→1700
《武神‐ヤマト》ATK1800→1900
光が溢れる黒と金の鎧を着たモンスターと、さきほど戦闘破壊されたヤマトが再び拓真のフィールドに現れる。
そして天璣の効果を受けて攻撃力が100ポイント上昇する。
「私はレベル4のヤマトとアラスダをオーバレイ。2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚。天上世界より降臨せよ《武神帝‐スサノヲ》」
《武神帝‐スサノヲ》ATK2400→2500
赤い鎧を身に纏い、虹色の翼を持つモンスターが2本の異なる剣を交差させながらフィールドに降り立つ。
その神々しいまでの光は確かに神と呼ばれても見劣りしない美しさだ。
「エクシーズモンスター…!だが、ナンバーズはナンバーズでしか破壊出来ない!いくらモンスターを召喚したところで無駄だ!」
「では無駄かどうか、試してみましょう。スサノヲの効果を発動。エクシーズ素材を1つ使うことでデッキから《武神》と名のつくモンスター1体を手札に加えるか墓地に送ることが出来ます。私は《武神器‐オロチ》を手札に加えます。そしてオロチの効果を発動し、このカードを墓地に送ります。バトルフェイズ。私はスサノヲで海王に
《武神帝‐スサノヲ》ATK2500 ORU2→1
「何言ってやがる!俺のフリーザードンが見えねぇのか!?」
「オロチの効果発動。このカードをメインフェイズ1に墓地に捨てることで、このターンのみ《武神》と名のつくモンスター1体の直接攻撃を可能とします」
「何だと!?」
相手の反応に拓真は更に笑みを深くする。
そして、自身のモンスターに容赦のない命令を下した。
「処罰しなさい、スサノヲ」
「ぐ、ぁあああぁああ!!」
「海王!」
海王 LP2000→0
スサノヲが2本の剣を海王の体を突き刺し、ライフをゼロにした。
海王が地面に倒れ負けが確定した瞬間、海王のフィールドにいたフリーザードンの姿が消える。
そして、海王の永続罠《アバランチ》も破壊され、遊馬のホープが氷漬けから解放された。
「ナンバーズはナンバーズでしか倒せない?だから何です?わざわざ同じ土俵に上がる必要性はないでしょう。デュエルはモンスターを倒した方が勝ちではなく、相手のライフをゼロにした方が勝ちなのですから」
「よくも海王をやりやがったな…!テメェ、許せねぇぞ!!」
「おや、恐いですね」
憤怒の表情を浮かべる陸王に対し、拓真はわざとらしく肩を竦めてみせた。
凍夜が怒った時と比べれば、この程度の怒りなど高が知れている。
「バトルフェイズを終了してメインフェイズ2に移行。私はカードを1枚セットします。エンドフェイズ、ターンエンドです」
「俺のターン!ドロー!ヴォルカザウルスの効果を発動!スサノヲは破壊してその攻撃力分のダメージを与える!」
《No.19 ヴォルカザウルス》ATK2000 ORU2→1
「罠発動!《ダメージ・ダイエット》!このターン、効果ダメージは半分になる!」
「ぐっ、う…」
拓真 LP2100→850
遊馬の罠カード《ダメージ・ダイエット》の効果で拓真のライフが僅かに残る。
相打ちを覚悟していた拓真からすれば少し意外な展開だ。
「ありがとうございます、遊馬君」
「へへ!どうってことないぜ!」
「ヴォルカザウルスの効果はまだ残ってるぜ!凌牙のブラック・レイ・ランサーを破壊だ!」
《No.19 ヴォルカザウルス》ATK2000 ORU1→0
「くっ…!」
凌牙 LP2100→1050
「ヴォルカザウルスを対象に罠発動!《ヘイト・クレバス》!このカードは自分のモンスターがカード効果で破壊された時、相手モンスターを道連れにし、攻撃力分のダメージを与える!」
「そうはさせるか!罠カード《強制変移》!罠の対象をヴォルカザウルスからサンダー・スパーク・ドラゴンに変更!ぐあぁああ!」
雷王 LP4000→1900
地面に引きずり込まれそうになったヴォルカザウルスの体は途中で止まり、代わりに雷王のサンダー・スパーク・ドラゴンが地面へと引きずり込まれ破壊された。
「雷王…!テメェ等、無事にここから帰れると思うな!!ヴォルカザウルスで凌牙に
「罠発動!《ラスト・エントラスト》!このカードはバトルを強制終了させ、さらに相手プレイヤーに自分のカードを1枚渡す。遊馬!」
ヴォルカザウルスの炎が強風によって消される。
そして、名前を呼ばれた遊馬は自分に向かって投げ渡されるカードを受け取った。
「え、俺に!?相手プレイヤーって俺でもいいの!?」
「ああ」
「今回はバトルロイヤル形式ですから、問題はありませんよ」
「無駄な足掻きを!罠カード《サンダー・ブレイク》!手札を1枚捨てることでフィールド上のカード1枚を破壊する!ホープを破壊だ!」
「そんな…!ホープ!」
どこからか現れた手から雷撃が走り、ホープの体に直撃する。
雷撃を受けたホープを体に雷を纏わりつかせながら破壊された。
「俺はこれでターンエンド。さあ、テメェの番だ!」
「お前のフィールドにモンスターはいない!諦めるんだな!」
「俺は……俺は、絶対に諦めねぇ!かっとビングだ、俺!」
勢いよくドローした遊馬は、必死になって手札を見る。
自分のやるべきことを真剣に考える遊馬にかける言葉はない。
信頼。その言葉を体現するように、凌牙と拓真は遊馬を視界に入れることなく口を閉ざした。
「…っ、そうか!俺は手札から魔法カード《死者蘇生》を発動!俺が蘇生させるのは………シャークのブラック・レイ・ランサー!」
《ブラック・レイ・ランサー》ATK2100 ORU0
遊馬の場に凌牙の墓地にいたブラック・レイ・ランサーが特殊召喚される。
凌牙は己のモンスターを見上げると、ふと笑った。
「ハッハッハ!攻撃力の低いブラック・レイ・ランサーだと?やはりド素人だな!」
「それはどうかな?」
「何!?」
「俺は魔法カード《アーマード・エクシーズ》を発動!」
「アーマード・エクシーズ…?」
「俺が渡したエクシーズモンスター専用カードだ!」
相手はこのカードを知らなかったのか、困惑した顔で凌牙と遊馬を見ている。
「このカードは、自分の墓地にいるエクシーズモンスター1体を、自分フィールドにいるモンスター1体に装備する!現れろ、希望皇ホープ!ホープをブラック・レイ・ランサーに装備!」
《ブラック・レイ・ランサー》ATK2100→2500
ホープが装備されたことにより、ブラック・レイ・ランサーの装甲がホープと似た様な色に変化し、さらに装備効果で攻撃力が400ポイントアップされる。
「ハッ!いくら攻撃力が上がろうとナンバーズはナンバーズでしか倒せないのを忘れたか!」
「木偶の坊が五月蠅いんですよ。無知もいい加減にして頂けますか?」
「何だと!?」
「拓真の言う通りだぜ。ブラック・レイ・ランサーはアーマード・エクシーズの効果によってホープとして扱われる」
「つまり、擬似的なナンバーズになれるんだ!」
「擬似的なナンバーズだと!?」
「ということは、ヴォルカザウルスが…!」
「ブラック・レイ・ランサー!ヴォルカザウルスを攻撃!」
「ぐわぁあああああ!!」
陸王 LP2400→1900
ブラック・レイ・ランサーが振り下ろした剣がヴォルカザウルスの体を引き裂く。
破壊された爆風が陸王を襲い、ライフを削る。
「さらに!アーマード・エクシーズは装備されたモンスターを墓地に送ることで」
「ブラック・レイ・ランサーの攻撃をもう一度可能にする!俺はホープを墓地に送る!
行け!ブラック・レイ・ランサー!陸王に
「ば、馬鹿な…!ぐあああぁああぁあ!!!」
陸王 LP1900→0
投擲された槍が陸王を貫き、ライフをゼロにした。
「海王だけじゃなく、陸王まで…!テメェ等、もう許さねぇぞ!」
吹っ飛んだ陸王を見た雷王が憎悪にも似た表情で遊馬達を睨みつける。
そして、海王が負けたことによりターンプレイヤーが雷王に設定される。
「俺のターン!ドロー!《カードカー・D》を召喚!そしてこのカードをリリースすることでデッキからカードを2枚ドロー!」
《カードカー・D》ATK800 Lv2
カードのような薄っぺらい青い自動車は召喚されてすぐにリリースされた。
そして役目は果たしたと言わんばかりに光の速さで消えていった。
「魔法カード《思い出のブランコ》を発動!自分の墓地にいる通常モンスター1体を特殊召喚する!来い!《神龍の聖刻印》!」
《神龍の聖刻印》ATK0 Lv8
モンスターとは思えない黄色い球体が雷王のフィールドに現れる。
僅かに聞こえる心臓の鼓動が、その球体が生きているのだと思わせた。
「なんだよ、攻撃力ゼロじゃん」
「遊馬君、あまり油断しないほうが良いですよ。攻撃力ゼロなんて嫌な予感しかしません」
ほっと安心している遊馬に、拓真の注意が飛ぶ。
確かに効果モンスターではないが、己の経験上、攻撃力ゼロで良かった場面など一度も無い。
拓真の警戒心に引っ張られたのか、遊馬がごくりと喉を鳴らした。
「良い勘してんじゃねぇか。俺は特殊召喚時に速攻魔法《地獄の暴走召喚》を発動!このカードは相手フィールド上に表側表示でモンスターが存在し、自分フィールドに攻撃力1500以下のモンスターが特殊召喚された時に発動できる。特殊召喚されたモンスターと同名のモンスターを手札・デッキ・墓地から特殊召喚する!デッキからもう1体の神龍の聖刻印を特殊召喚!」
「レベル8のモンスターが2体!?」
《神龍の聖刻印》ATK0 Lv8
黄色の球体が2つ、雷王のフィールドに並ぶ。
「そして、相手もフィールド上にいる表側表示のモンスター1体を選択して同名モンスターを特殊召喚出来るが……」
「こちらにいるのはエクシーズモンスターのブラック・レイ・ランサーのみ。特殊召喚は不可能ですね」
「ヒャハハハ!その通り!俺はレベル8の神龍の聖刻印でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ《サンダーエンド・ドラゴン》!」
《サンダーエンド・ドラゴン》ATK3000 ORU2
白い巨躯と青い翼が特徴的なドラゴンが全身に雷を纏って現れる。
鋭い眼光が遊馬達を見下ろした。
「攻撃力3000!?」
「サンダーエンド・ドラゴンの効果発動!オーバーレイ・ユニットを1つ使うことでこのカード以外のフィールド上のモンスターを全て破壊する!サンダー・エヴォリューション・ボルト!」
《サンダーエンド・ドラゴン》ATK3000 ORU2→1
「うわぁあああ!」
「ぐぅううう!」
「っ、ああぁああ!」
サンダーエンド・ドラゴンの効果をまともに食らった遊馬達は後ろに吹き飛ぶ。
特にブラック・レイ・ランサーが自分フィールド上にいた遊馬はその余波をもろに食らった。
凌牙と拓真が立ち上がった後、少しの時間を置いてよろめきながら立ち上がった。
「なんてモンスターだ…!」
「遊馬君、神代君、大丈夫ですか?」
「問題ねェ」
「俺も大丈夫だ!」
「余裕は与えねェよ!サンダーエンド・ドラゴンでド素人に
「俺!?」
「遊馬!!」
「罠カード《威嚇する咆哮》を発動。このターンのバトルフェイズを強制終了させます」
サンダーエンド・ドラゴンが攻撃のために口の周辺に力を溜めるが、どこからか聞こえてきた獅子の咆哮に体を硬直させた。
「た、助かったぜ、拓真兄ちゃん」
「先程のダメージ・ダイエットのお返しですよ」
「チッ、しぶてェ野郎だな。俺はこれでターンエンドだ!」
「俺のターン、ドロー!」
凌牙がデッキからカードを引くが、表情はあまり思わしくない。
しかし、あまり迷うような素振りも見せず行動に移る。
「俺はモンスターをセットしてターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー!さっきまでの勢いはどうしたよ?ええ!?俺はサンダーエンド・ドラゴンの効果を発動!凌牙のセットモンスターを破壊する!サンダー・エヴォリューション・ボルト!」
「があぁああ!」
「うぅぅうう!」
「ッ……く、ぁ!!」
《サンダーエンド・ドラゴン》ATK3000 ORU1→0
《キラー・ラブカ》DEF1500 Lv3
再び轟雷が遊馬達のフィールドに降り注ぐ。
凌牙が伏せていたキラー・ラブカは雷に当たった瞬間に黒い炭と化し、破壊された。
だが相手は遊馬達の体勢が整うのも待たず、サンダーエンド・ドラゴンは攻撃態勢に入っていた。
「やれ!サンダーエンド・ドラゴン!凌牙に攻撃しろ!」
「罠発動!《ゼウス・ブレス》!攻撃モンスター1体の攻撃を無効にする!」
「フン。俺はカードを1枚セットしてターンエンドだ」
「私のターン。ドローフェイズ、ドロー」
「手札1枚で今更何が出来る!テメェ等はもう終わりなんだよ!」
雷王の言う通り、遊馬達のフィールドは酷い状態だ。
凌牙に至っては手札もなく、フィールドもガラ空き。
もし次のターンで攻撃されれば終わりだ。
絶望とも言える状況の中、けれど拓真は微笑みを浮かべて相手を見ていた。
「デュエルを始めた瞬間から終わりに至るまで、私達デュエリストが出来るのはデッキを信じることのみ。少なくとも私は今までそうしてきましたし、これからもそうです。そして生憎と私は、一度もデッキに裏切られたことはありません」
拓真の笑みが深くなる。
その表情に、雷王は自分の背中から汗が流れたのが分かった。
「スタンバイフェイズ、メインフェイズ1に移行。罠カード《剣現する武神》を発動。自分の墓地から《武神》と名のつくモンスター1体を手札に加えます。私はアラスダを手札に加えます。そして墓地にいるヤマトを除外し、手札から《武神‐ヒルメ》を特殊召喚。自分のフィールドまたは墓地からモンスターが除外された時、手札のアラスダを表側守備表示で特殊召喚することが出来ます」
《武神‐ヒルメ》ATK2000 Lv4
《武神‐アラスダ》DEF1900 Lv4
白と金の鎧を纏ったモンスターとスサノヲのエクシーズ召喚に使われたアラスダが拓真のフィールドに現れる。
「レベル4のヒルメとアラスダでオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚。天上世界より降臨せよ《武神帝‐カグツチ》」
《武神帝‐カグツチ》ATK2500→2600 ORU2
両手にはそれぞれ剣と盾を持ち、まるで拓真を敵から守るように構えている。
「エクシーズ召喚したところで、そいつの攻撃力はサンダーエンド・ドラゴンより下だ!」
「武神の真の力は他の武神によって齎されるものです。カグツチも例外ではありません。
そしてカグツチは召喚に成功した時、自分のデッキの上からカードを5枚墓地に送り、墓地に送った《武神》と名のつくモンスター1体につき攻撃力を100ポイント上げます」
「何!?」
「1枚目《武神‐ミカヅチ》、2枚目《武神降臨》、3枚目《武神器‐ハチ》、4枚目《武神器‐ヘツカ》、5枚目《武神器‐ムラクモ》。墓地に送られたモンスターは4体。よって攻撃力が400ポイントアップします」
《武神帝‐カグツチ》ATK2600→3000 ORU2
「サンダーエンド・ドラゴンと並んだ!」
「相打ちを狙うつもりか…!」
「は?相打ち?わざわざ自分のモンスターを破壊するような真似をするとでも思ってるんですか?この私が?」
拓真の言葉に全員が一瞬の躊躇いもなく「いや、それはねェな」と思わず納得しかけた。
「言ったでしょう。武神の真の力は他の武神によって齎されるのだと。
私は墓地にいるムラクモの効果を発動。自分フィールド上に《武神》と名のつく獣戦士族モンスターが存在する時、墓地にいるこのカードを除外することで相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を破壊します。私はサンダーエンド・ドラゴンを破壊」
「なっ!?」
黒い穴から黄色い四足のモンスターが飛び出し、額の剣でサンダーエンド・ドラゴンを突き刺した。
サンダーエンド・ドラゴンは雄叫びの咆哮を上げると力尽きたのか、光の泡となって弾けた。
「バトルフェイズ。処刑しなさい、カグツチ。雷王に
「ぐああぁあああああぁあ!!!」
雷王 LP1900→0
雷王のライフがゼロになったその瞬間、デュエルの終了を知らせるブザーが鳴り響く。
そして中央に遊馬達の顔がWINという表示と共に映し出された。
「よっしゃー!勝ったぜ!」
「お疲れ様です。ありがとうございました」
「拓真兄ちゃんも最後凄かったな!」
目をキラキラさせる遊馬に、拓真は微笑ましい目を向ける。
「それはそうと、あちらの方は遊馬君のお友達では?」
「え?……あ、小鳥!鉄男!」
友達に駆け寄った遊馬は何かを話しながら謝っている。
そんな様子を見ながら、拓真は地面に倒れた敗北者達に近付いた。
「さて…」
「お、俺達、こんなところで何を…」
「ひっ…!」
「コイツ等、やばい!逃げろ!」
「待っ、……行ってしまいましたね」
ここでのことを口外しないように言い聞かせようと思っていた拓真だったが、先程までの態度はなんだったのか小心者のように逃げだす相手の背中を見ることしか出来なかった。
あの様子では二度とここに近付くこともないだろうと判断した拓真は「仕方ありませんね」と溜め息と零し、見逃した。
「遊馬君、神代君……おや?神代君は?」
「シャークならもう帰ったぜ」
「デュエルに巻き込んでしまった謝罪とお礼がしたかったのですが、先延ばしになってしまったようですね」
「俺もシャークも気にしてねーって!」
「そう言って頂けると助かります。そちらの……えっと、小鳥さんと鉄男君、でしたっけ?3人とも夜も遅いですし、家まで送りますよ」
「そんな、悪いですよ」
「俺達だけでも大丈夫だぜ」
「ここで3人だけで帰してしまった後のほうが気になります。仕事も丁度交代の時間ですし、ちょっと待っていて下さい」
拓真はそう言って美術館の方に戻ると、5分ほどで遊馬達の所に戻ってきた。
制服と雰囲気のせいで大人っぽく見えていたが、私服に着替えた拓真に年相応の幼さが見える。
「お待たせしてすみません。さ、帰りましょう」
「じゃあ俺、帰るまで拓真兄ちゃんのモンスターのこと聞きたい!」
「あ、私も!」
「構いませんよ」
「やった!」
可愛らしい後輩を見ながら、拓真はにこりと笑った。
もし拓真を知るクラスメイトが彼を見れば、普段との違いに戦慄したことだろう。
それを知らない遊馬達は自宅に帰るまで途切れることのない会話を楽しんだ。
《No.91 サンダーエンド・ドラゴン》の効果は漫画版。
《カードカー・D》の効果はアニメ版です。
間違いやご指摘がありましたら感想にてお願いします。